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Gianni Gebbia - Gianni Gebbia (Utopia Originals:UTO002)
Gianni Gebbia - Gianni Gebbia

現代的なクラブ・ミュージックにホームリスニング、そして気鋭の新人アーティストから世に知られていない秘蔵音源の再発まで、ジャンルに束縛されずに様々な音楽を手掛けるUKのUtopia Recordsは、多様性が重視される今という時代のために生まれたようなレーベルだ。そんなレーベルが新たに立ち上げたUtopia Originalsは特に貴重で入手が難しい音源の復刻を目的としているそうで、第一弾にはニューエイジ再燃の現在に最適なIury Lechによる1989年のデビューアルバムである『Otra Rumorosa Superficie』(過去レビュー)を取り上げていたが、第二弾も1987年のGianni Gebbiaによる同じようにオブスキュアなデビューアルバムを発掘している。Gebbiaはシチリア島パレルモ出身のサックス奏者で、70年代に独学でジャズを習得し伝統的な音楽と実験的な音楽を結んだ活動を行っていたようで、初めて完成させた作品が本作だ。何か特定のジャンルに当てはめるとしたらコンテンポラリー・ジャズという事になるのだろうが、ニューエイジやアンビエントに現代音楽のミニマルといった性質も感じ取る事が出来て、その意味ではこのタイミングでの再発はジャストという他にないだろう。一部の曲では打楽器や鍵盤で他のアーティストも参加しているが、大半はGebbiaによるサックスとシンセの多重録音で成り立っており、即興性が強いながらもそれがより感情性を強めて非常に綺麗なロマンティシズムを奏ででいる。アルバムの開始は、今で言うドローンの和んだ持続から始まり一日の始まりを告げるような爽やかなサックスの旋律が高らかに響く"Osso Di Seppia"、平穏な日常の時間が過ぎるように穏やかな響きはアンビエント的でもあり、心が洗われる。"Le Cou Oblique"では打楽器奏者が参加しており軽やかな太鼓の音が爽やかな風を吹き込み、しかしそこに加わるのはサックスの多重録音のみで、原始的なリズム主体の曲は現代ミニマル的でもある。"Danza Contrariusa"ではサックス(ソプラノ/アルト/バリトン)を使い分けて、それぞれがリズムと旋律を担当してサックスのみでミニマル×即興のジャズを生み出している。一方で清らかで透明感のあるシンセのミニマルなフレーズを用いた"Cud"は、そこに自由に舞うジャズのサックスを合わせてはいるものの、シンセの終わりの無い反復が心地好くニューエイジ的な作風に繋がっている。同様にシンセが存在感を示す"Vedersi Passare Le Cose Attorno"はしかしどんより曇ったドローンが満ちた感覚がアンビエントに思われ、そこに内向的なサックスが湿り気を帯びた叙情性を加えていき、決して明るいムードではないものの昼下がりの白昼夢を誘う。30年も前の作品だと言うのに全く古ぼけた感覚は無く、これが逆に現代のアンビエント/ニューエイジに馴染んでいるのは不思議だが、忙しない日常を忘れさせてくれる牧歌的な世界観はBGMとしても最適だろう。素晴らしい再発に、今後もUtopia Originalsの動向から目が離せない。



Check Gianni Gebbia
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 20:30 | comments(0) | - | |
Iury Lech - Otra Rumorosa Superficie (Utopia Records:UTO 001)
Iury Lech - Otra Rumorosa Superficie
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2017年には2ndアルバムである『Musica Para El Fin De Los Cantos』(過去レビュー)がCockTail d'Amore Musicから再発され、更にはそこから現行ダンスミュージックの気鋭がリミックスしたEPへと派生し、アンビエントやニューエイジが再燃する現在において注目を集める事となったIury Lech。スペイン生まれのLechは作曲家ではあるが、また作家や映画監督もこなすマルチアーティストで、1970年代後半から映像や音楽に関わるようになり長いキャリアを持っているが、特にスペインのニューエイジ方面では現在では多大な存在感を放つSuso Saizと肩を並べるアーティストのようだ。とは言っても恐らく知っている人は知っている…というような存在だったとは思うのだが、昨今のニューエイジ再興の流れの一環的に2ndアルバムが再発された事は日の目を見る機会となり、そして今度はデビューアルバムである本作がUtopia Recordsの再発シリーズであるUtopia Originalsからリイシューとなった事でLechへの再評価は間違いものとなった。元々は2つの短編映画「Final Sin Pausas」と「Bocetos Para Un Sueno」の為に書き下ろされたという本作は、それもあってかシネマティックで静謐な世界観がアンビエント/ニューエイジとの親和性は抜群で、終始浮世離れしたようなフラットな安楽が持続する。アルバムはぼんやりというかどんよりというか抽象的なシンセのドローンが睡眠を誘う物静かな"Bocetos Para Un Sueno"で始まり、宗教的な感覚もある荘厳なピアノが美しく反響する"Adagio Seme Janza"や、逆に柔らかなノイズ混じりのエレクトロニクスが持続するドローン・アンビエントの"Hipodromos De Acero"など、基本的にはビートレスで鎮静作用さえ感じさせる穏やかな音楽だ。10分超えの大作である"Emblemas"は物哀しく滴り落ちるようなピアノのメロディーにどんよりと揺らぐ電子音を合わせて、派手に展開する事もなくただひたすら切ない感情を誘うように、成程情景が浮かび上がるシネマティックかつロマンティシズムに溢れた作風だ。多くの曲では繊細で悲哀に満ちたピアノが主導し、そこにエレクトロニクスが静謐さを保ちながら味付けをする構成で、感情の昂ぶりは一切ないどころか精神の安定をもたらす癒やし的な響きに包み込まれていく。ニューエイジの文脈で語るには生真面目というか俗っぽさは無く、快楽的なアンビエントに振り切れるわけでもなく、やはり元々は映画音楽であった事から内面を掘り下げていくような感覚が強いが、それが深い穏やかな瞑想へと誘う効果へと繋がっている。



Check Iury Lech
| TECHNO14 | 21:30 | comments(0) | - | |
Iury Lech - Musica Para El Fin De Los Cantos (CockTail d'Amore Music:CDALP 002)
Iury Lech - Musica Para El Fin De Los Cantos

アンビエントやニュー・エイジの再考は既に珍しくない環境になっているが、こちらは2年前の2017年にユニークなダンス・ミュージックを送り出すCockTail d'Amore Musicから再発されたIury Lechによる1990年作。Lechはスペイン在住のアーティストで、そしてまた作家でもあり映画監督でもありとマルチな活動をしているそうだ。スペインと言えばアンビエントやニュー・エイジの方面では一際注目を集めるSuso Saizがいるが、本作も元々はSaizが作品をリリースしていたHyades Artsからリリースされていた事を知れば、このアーティストについて造詣が無くとも少なからず興味は湧くだろう。本作は全編ビートレスでミニマル性の強い構成とフラットな感覚のアンビエントに振り切れており、基本的には電子音楽という意味合いでは統一されているので、ニュー・エイジの文脈だけでなくテクノの延長線上として聞く事でも全く違和感は無い。物悲しさが漂うシンセのリフレインが続く"Cuando Rocio Dispara Sus Flechas"、大きな変化も無くアルペジオも用いながら出口の無い迷路を彷徨うアンビエントな世界観と、ある意味ではインナートリップを誘発する。"Barreras"は左右に振れる軽やかなシンセのディレイが浮遊感を生み出しており、果ての見えない大海原や野外の開放感を思わせる壮大な空間の広がりが正にフラットな心地好さに繋がっている。"De La Melancolia"も同じタイプの曲でディレイを効果的に用いた空間の奥深さの演出を軸にしつつ、それ意外の音は省きながら多層的に聞こえながらも実はシンプルな構成によって、すっきりと軽やかなアンビエント感覚を作っている。最もアンビエントやニュー・エイジの瞑想的な雰囲気が強い"Ukraina"は16分越えの大作で、これにしても大きな展開もなく空間を埋めるような幻想的なドローンの隙間に煌めく電子音を散りばめて、ただひたすら物静かながらもドラマティックに叙情を強めていくアンビエントな構成。アルバム総じて取り立てて目立った山場という山場もなく、感情をいたずらに刺激しないようにひたすらフラットな存在感の構成で、その意味ではただそこで鳴っていて意識的に聞く事も必要としない環境音楽そのもの。心を落ち着かせる瞑想のお供に、または就寝前のBGMとしても役に立つ静謐なアンビエントだ。



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| TECHNO14 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |