2019/8/23 Hi-TEK-Soul @ Contact
デトロイト第一世代の中でも最もDJとして精力的に活動するDerrick May、そんな彼によるテクノソウルを表現するパーティーがHi-TEK-Soulだ。DJとしての精力的な活動は言うまでもないが、近年はちょくちょくと自身で主宰するTransmatの運営にも力を入れており、忘れた頃にレーベルから新たなる才能を送り出したりもしている。そんなレーベルからIndio名義でアルバムもリリースした事もあるデトロイト第二世代の一人であるJohn Beltranも、Derrick同様にエモーショナルなテクノソウルを持つアーティストであり、その幻想的なアンビエンスは特に稀有な個性だ。今回Derrickと共に出演するBeltranはアンビエントセットを披露するという事前情報があり、そんな点でも興味深いパーティーになっている。
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John Beltran - Hallo Androiden (Blue Arts Music:BAMCD005)
John Beltran - Hallo Androiden
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20年以上にも及ぶ音楽活動において、今間違いなく第二の春を迎えているJohn Beltran。デトロイト第二世代の中でも特にアンビエント性が強く美しいハーモニーによる情緒的なテクノに長けたこのアーティストも、しかし2010年前後の作品は今思うとどこか吹っ切れずに迷いが感じられ、活動初期に於けるデトロイト・テクノ×アンビエントな音楽性に魅了されたファンにとっては物足りなさが残っていただろう。がここ2〜3年の復調は目を見張るものがあり、大らかなアンビエントを展開するシリーズの「The Season Series EP」や今年3月に発売されたPlacid Angles名義の22年ぶりのアルバム『First Blue Sky』(過去レビュー)等でも初期作風である叙情性豊かなアンビエンスや躍動するブレイク・ビーツやジャングルまでの多彩なリズム感が復活し、ファンにとっては待ち望んでいたBeltranらしさを感じていた者は多いだろう。そしてこのBeltran名義の新作だ、何と日本のインデペンデント・レーベルである福岡のBlue Arts Musicから世界に先駆けてリリースとなったが、その内容もこれこそBeltranと呼ぶべき夢のような素晴らしきアンビエントな世界が広がっている。前述の『First Blue Sky』はどちらかと言えばブレイク・ビーツを多用しダンス性を強調していたが、本作はメロディーやハーモニーの甘美なまでの美しさを強調しており、その分だけ陶然と酔いしれる魅力が溢れている。オープニングの"Alle Kinder"は牧歌的なシンセのリフレインと幻想的な呟きを反復させ、詰まったリズムのキックでじっくりとこれから待ち受けるドラマの幕開けを展開するようにじわじわと盛り上げ、アルバムの雰囲気をリスナーに知らせる。続く"A Different Dream"はキックレスの完全なアンビエントだが、躍動するシンセのシーケンスと壮大なパッドによる叙情性爆発な世界観はTangerine Dreamのコズミックな電子音響を思わせるところもあり、リズム無しでも脈動する感動を呼び覚ます。軽快に連打されるリズムが爽快な"Himmelszelt"はシンセの旋律も軽い躍動感を伴い揺れ動き、やや陽気なラテンフレーバーもあるダンス・トラックだ。ヒスノイズらしきチリチリとした音響の奥からぼんやりとしたドローンや素朴なアルペジオが浮かび上がる"One Of Those Mornings"はビートレスな夢幻のアンビエントで、続く"It's Because Of Her"も同様にビートレスで天上から光が降り注ぐようなシンセと荘厳なストリングスの掛け合いは祝祭感があり、この世とは思えない美しさは桃源郷か。勿論"Perfect In Every Way"のように複雑なブレイク・ビーツで踊らせるダンス性の強い曲にも魅力があり、豊潤なシンセの響きがあり底抜けにオプティミスティックな雰囲気としなやかに刻まれるリズムで、心身を快活にさせてくれる。完全にBeltranの初期の作風が復活した本作に対し否定的な意見など出て来る筈もなく、この夢に溺れてしまう麗しい甘美なアンビエント・テクノの前には称賛以外の言葉は見つからない。ただひたすら、この世界は美しい。



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| TECHNO14 | 08:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Bonobo - Fabric Presents Bonobo (Fabric:fabric201)
Bonobo - Fabric Presents Bonobo
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ロンドンの名門クラブ・Fabricがパーティーの雰囲気を再現すべく17年間に渡りリリースし続けてきた4つ打ちを軸とした『Fabric』とブレイク・ビーツを打ち出した『Fabric Live』のミックスシリーズは、しかしネット上に溢れるストリーミングの無料ミックスの台頭を前に、遂にそのリリースは終焉を迎えた。最早販売されるミックスに未来は無いのか…否、確固たるコンセプトやマネージメント力のあるレーベルをバックに制作されたミックスだからこそ、ある一定の品質が保たれ信頼を寄せる事が可能となる事だってある筈だ。一度はミックスのリリースを止めたFabricもクラブ/パーティーの現在形を表現するべく、再度その歩みを始動させて手掛けるのが『Fabric Presents』シリーズで、タイトルからして殆ど変わってないのはご愛嬌か。第一弾に抜擢されたのはトリップ・ホップやジャズにアンビエントやエレクトロニカと様々に音楽を横断するNinja Tuneの人気アーティストであるSimon GreenことBonoboで、その知名度や実力からしてシリーズ立ち上げに迎えられたのも納得だろう。さて、当方はBonoboのDJプレイを体験した事はないが、ここでのプレイは4つ打ちのテクノ/ハウスを主軸に用いて高揚感のあるパーティーの雰囲気で、そこにスパイスとしてジャズやアンビエントも盛り込むなど、思っていたよりもダンス性の強い内容ながらもBonoboの音楽性も表現されている。初っ端自身の未発表曲である"Flicker"はセンチメンタルモードなエレクトロニカ風で、そこからまたも自身のどっしり4つ打ちながらもエキゾチックな"Boston Common"、そしてブラジリアンなサンバのりながらも優雅な"Jacquot (Waters Of Praslin)"、森林の訝しいエキゾチック感溢れるハウスの"Hidden Tropics"と、音楽性は様々ながらも確実に序盤から踊らせにくる選曲だ。また"Nia"や"Maia"などヒプノティックなシンセを前面に出した覚醒的でメランコリックなディープ・ハウスで盛り上がりつつ、中盤は"TKOTN"や"By Your Side"など変化球的に崩した情緒的な雰囲気に包まれるブロークン・ビーツのリズムで揺らしつつ、同じブロークン・ビーツでも何処か刺々しく不穏でもある"Roach"や"Perpetrator"で攻撃的に攻める瞬間もあり山あり谷ありで大きく揺さぶる。そこからドラマティックにじわじわと盛り上がるテクノの"Mirapolis (Laurent Garnier Remix)"を通過し、終盤はフューチャー・ジャズやブロークン・ビーツのしなやかなリズムとメランコリーで空気で落ち着きを取り戻し、最後は微睡みに落ちていく有機的なアンビエントの"Collage Of Dreams"によって平穏を取り戻す。色々なリズムと温かく豊かな感情性でBonoboらしい幅広いクロスオーヴァーな音楽性ではあるが、しかし滑らかなグルーヴ感によって持続的なダンスな感覚に纏められており、これがDJミックスではあるがおおよそBonoboらしい音楽性が表現されている。この新シリーズにどういった意味が込められているのかまだ分からないものの、幸先が良いスタートを切っている。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(1) | |
Placid Angles - First Blue Sky (Magicwire:MAGIC017)
Placid Angles - First Blue Sky
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初期デトロイト・テクノに於ける重要なレーベルであるRetroactiveのカタログに名を連ね、その後1997年に『The Cry』という叙情的なアンビエント・ブレイクビーツの名作アルバムを残したまま、その名義では活動を停止し続けてある意味伝説化したPlacid Angles。それこそデトロイト・テクノの中でも屈指のアンビエント性を誇るJohn Beltranの別名義で、彼らしい優雅で美しいメロディーに躍動感溢れるブレイク・ビーツを絡めた作風は、どこか哀傷的な気持ちさえ呼び起こす素晴らしいものだった。だがしかし2000年以降になるとBeltranはやたらラテンなりオーガニック性の強い音楽、またはポストロックやエレクトロニカ方面に手を出したりとやや行き先を見失っていたと思う。ところがこの2〜3年の活動では初期のブレイク・ビーツを含めたダンスのグルーヴをはっきりと打ち出し、多くのファンが望んでいる初期作風が見事に戻ってきている事を感じた者は多いだろう。そして2019年、John Beltran名義の素晴らしいアンビエント・アルバム『Hallo Androiden』とほぼ同時期にこのPlacid Angles名義では22年ぶりとなるアルバムがリリースされた。先ず断言しておくと期待を越えて素晴らしいアルバムであり、冒頭の"First Blue Sky"からして喜びが溢れ出して体が飛び跳ねるような力強いジャングル風なビートが走っており、そこに清涼で爽快なパッドと希望に満ちたシンセのメロディーが大胆な動きを見せ、スケール感の大きい叙情性と共に躍動感が突き抜けている。続く"Angel"は悲哀が心を浸すアンビエントなムードで始まりつつも、次第に鋭利なリズムが加わって骨太な4つ打ちを刻みながら、メランコリーに染めていく感傷的なテクノだ。"A Moment Away From You"は近年よく見受けられる作風で、キック抜きでスネアやハイハットによる荒々しいリズムが溜め感を作りつつ、動きの多いIDM系の美しいシンセも躍動感を作る事に付与する曲で、キック抜きでも十分にグルーヴを生み出している。また"Vent"も過去の作風でも印象的だった幻想的な女性ボーカルを用いており、そこにしなやかなドラムン・ベースのリズムが荒れ狂うようにリズムを叩き出し、桃源郷へと上り詰める如く美しいシンセによって上昇気流に乗る激しくも叙情的な一曲。ジャジーな感覚もあるざらついたブロークン・ビーツ寄りな"Bad Minds"は、シンセのドラマティックなコード展開と希望溢れるポジティブなリフによって、うきうきと跳ねながら喜びが溢れ出しているようだ。そして最後の"Soft Summer (Revisited)"、これは1996年のBeltran名義の作品のリメイクなのだが慎ましく静謐な弦楽器の美しさが際立つアンビエント寄りなテクノで、リズムは入っているものの実に穏やかで優しいビート感にうっとり夢心地となる。ファンとしてはもう文句無しの期待通りでリズミカルかつデトロイト的な叙情性爆発のアンビエント/テクノの応酬で、今Beltranが再度アーティストとして春を迎えている事が感じられる。8月には来日予定もあり、今から期待せずにはいられない。



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| TECHNO14 | 11:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - The Season Series EP Autumn
John Beltran - The Season Series EP Autumn

今だからこそ正直に言えるがここ数年の作品はエレクトロニカやニュー・エイジ、または優しく包み込む有機的な響きの作風を軸にしたアンビエント作が多く、予てからファンであった人にとっては物足りなさがあったのも否定は出来ないだろう。デトロイト・テクノ第2世代のJohn Beltranは90年代前半から活躍するベテランであり、そしてその世代の中では数少ない今も尚新曲を作り続ける貴重な存在だ。だからといって手放しに全ての作品を称賛出来るわけでもなく、近年はややリスニング志向になり過ぎていたと思う。変化の兆しは2017年リリースの『Moth』(過去レビュー)位からだろうか、アンビエントな雰囲気の中に明確なダンスビートが現れるようになり、ファンが期待しているであろう音楽性が戻ってきたのだ。そして2018年、更に復活を決定付ける動きがあったのだが、それこそ秋から始まり一年の中に流れる各季節をコンセプトにしたシリーズで、その第1弾は秋。幕開けとなる"Lustrous Orb"からして初期の躍動感溢れるグルーヴとセンチメンタルなメロディーが広がっていくアンビエント・テクノな作風で、ファンからガッツポーズをしたくなる程の期待に応えた曲だ。この曲はキックは入ってないものの荒々しい質感のスネアがけたたましくビートを刻み、そこに重層的なシンセがデトロイト・テクノばりばりな叙情的な旋律を描き出して、じわじわと感傷的なムードを高めていくドラマティックな流れで、特に中盤以降の美しいシンセの絡みはこの上ない至福の世界だ。"Beautiful Things Cry"も全くキックは用いずにハイハットやスネアの軽やかなビートを活かしつつ、弦楽器らしき音のミニマルなリフに透明感のあるシンセの上モノを被せて、清涼感たっぷりに浮くような感覚で快活に疾走する。キックを用いないのは本作の特徴だろうか、"Pumpkin Skies (Jordi's Song)においても同様でその代りにブレイクビーツ風なスネアが軽快に躍動感あるビートを叩き出し、多層的に覆い被さっていくような朗らかなメロディーによって淡くドリーミーな世界観を演出する。"Autumn's Key (What Will You Be)"も作風としては前述の曲と一貫しておりスネアやハイハットの爽やかなビート感があり、そしてディレイも用いた清涼な上モノによって開放感を打ち出したメロウなアンビエント・テクノで、遂に最後の"Lose You"は完全にビートレスになり振動するように細かいシンセが躍動して壮大さを生むパッドと相まって物静かに感動を高めていく。秋の雰囲気の一つに哀愁があるが、正にそんな季節に思いを馳せる切ないアンビエント・テクノはコンセプトを的確に表現している。自身のBandcampのみで販売されている事からも分かる通りパーソナルな作品でもあり、非常にBeltranのエモーショナルな性質が打ち出されたこのシリーズ、ファンならば必聴だ。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Moth (De:tuned:ASG/DE015)
John Beltran - Moth
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昨年から季節のコンセプトを打ち出した「The Season Series EP」のリリースを開始、そして過去の名作のリイシューがなされ、今年は22年ぶりに別名義でのPlacid Anglesでリリースを予定していたりと、再度活動が活発になっているデトロイト第二世代のJohn Beltran。ここ数年も決して活動が止まっていたわけではないが、その音楽はおおよそテクノからは離れてリスニング志向なエレクトロニカ/アンビエントが中心だった事もあり、昔からの生粋のファンにとっては物足りなさもあったに違いない。しかし2017年にはベルギーのDe:tunedからアルバムをリリースしていたのだが、このレーベル自体がデトロイト周辺を含む名作の復刻も行うレーベルでオールド・スクールへの理解は深い事も関係るのだろうか、そのアルバムは恐らく多くのファンがBeltranに求めている初期のアンビエント成分も強いダンス・トラックで占められており期待に応えた内容だ。アルバムの冒頭にある"Wet With Rain"からして期待通りな音楽性で、ざらつきのあるリズムは変則的なブレイク・ビーツを刻んで跳ねており、そこに複数のシンセのメロディーが重層的に重なってアンビエントな雰囲気を作っているのはAIテクノの路線だ。そして中盤から入ってくるドリーミーなパッド、これが聞ければもうデトロイト・テクノのエモーショナルな世界観そのもので、後半はリズムも消失しひたすら桃源郷のこの上ない幸せな時間が続く。続く"Flight"は太いキックが大地を揺らす力強いハウス・トラックで、爽快な鳥の鳴き声らしきサンプリングや懐かしいシンセの響きを用いて青々しく楽園的な風景が広がるこの曲は、808 Stateの"Pacfic"を思い出すだろう。そこから一点して、落ち着いたハウス基調のグルーヴに懐かしいアナログ・シンセの素朴で簡素な旋律を合わせた"The Retuning Dance"や、ざらつきのある荒いリズムから徐々に叙情的なシンセが浮かんで伸びていく牧歌的なテクノの"Nineteen Eighty Nine"は、90年代のBeltranそのもので新鮮味はないものの彼に期待されている音がそのまま反映されている。また淡いアンビエント性が強く出ている曲もあり、崩れたブレイク・ビーツとカラッと乾いたパーカッションを用いながらも純朴で淡い色彩が滲んだようなシンセが甘く誘う"Whatever The Road Brings"、ビートレスでドローン的にパッドが持続する奥で人の声が反響している静謐な"Street Lights"と、大きく躍動する曲から静けさが広がる曲でもBeltranのピュアなアンビエント性が発揮されている。昨年Peaceflogから再発された名作『Ten Days Of Blue』の続編と呼んでも差し支えはないデトロイト・テクノとしては久しぶりにそれらしいアルバムで、時代の流行や先進性とは無縁なもののそんなものに左右されない素晴らしい作品だ。



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| TECHNO14 | 14:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2018/5/12 Sunset Lounge @ 江ノ島展望台
Sunset Lounge1

温かくなり始める春の季節と共にやってくる、そう今年も遂にやってきた湘南は江ノ島で開催されるSunset Loungeも前身のFreedom Sunsetから含めると15周年。海風が吹き抜ける江ノ島の頂上から夕暮れを見下ろせる絶好のロケーション、開放的な場で心も体も踊り出すダンス・ミュージックを浴びるパーティーは、人種や老若男女を問わずに魅了する。今回の5月開催ではレジデントとも言える井上薫を筆頭にオールジャンル・ミックスなクボタタケシ、繊細で煌めく電子音を聞かせるInner Science、DJ Kenseiらによるプロジェクトのcolorful house band、湘南をベースに活動するDJ Dante、そして主宰者であるshibaをユニットのsorto&nodo+shiba+No.9と、今年もジャンル問わずにダンスとリスニングの両面で楽しませてくれるアーティストが集まっており、期待せざるを得ない。
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| EVENT REPORT6 | 16:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Everything At Once (Delsin:dsr-d4-cd)
John Beltran - Everything At Once
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デトロイト・テクノ随一のアンビエント・マスターであるJohn Beltran。ロマンティックで甘美なテクノから有機的で柔らかいラテンやフュージョンまで、時代によって多少は音楽性に変化を加えつつも、どの作品に対してもアンビエントな感覚を必ずと言ってよい程に込めて夢に溺れさせるような世界を展開する。近年その活動は再度活発になりオランダのデトロイト・フォロワーであるDelsin Recordsと手を組み、新作やベスト盤にコンピレーションまで多数の作品を送り出している。そして2015年には映画音楽に影響を受けた『Espais』(過去レビュー)をリリースし、ビートレスな作風はフロア対応型のテクノからは距離を置きつつも荘厳で耽美な響きは正にBeltranであるものを主張していた。新作も雰囲気的にはその路線を引継ぎつつも、IDMやポストロックにダウンテンポの要素を用いて幾分かはダンス側に振り戻っている。アルバムの始まりこそ抽象的なアンビエントの面影を残すビートレスな"Under This Sky"ではあるが、続く"Faux"では弦楽器を爪弾きするような音色とアトモスフェリックな電子音が絡み合いながら、そこに複雑で生々しいビートが入り込んでくると何だか90年代のインテリジェンス・テクノを思い起こさせる。タイトル曲の"Everything At Once"はすっきり爽快な4つ打ちに何処までも開放的な音響があり、しかし牧歌的で柔らかい有機と電子の狭間のような音の質はフォークトロニカ的だ。ピュアな電子音のメロディーと繊細なブレイク・ビーツによる"Mother"も往年のUK系インテリジェンス・テクノの現代版と言うべきか、そしてBeltranらしい叙情性が加わっている。完全電子化する前のKraftwerkのカバーである"Tanzmusik"も、だからこそオリジナルのBeltranの淡い叙情性と自然と適合しており、元の曲の雰囲気を引き継いだ透明感に満ちた水彩画のような綺麗なリスニングになっている。アルバム後半には感情の昂ぶりが最高潮に達する"Dream Lover!"が待ち受けており、しなやかで弾力のあるリズムが弾け希望を高らかに告げるピアノが染みるアンビエント・ジャズとでも言うべきか、この生命力が満ちた自然との調和を思わせる音楽性はBeltranだからこそだろう。リスニング系からダンスまで適切に盛り込まれたアルバムだが、どれも光の粒子が飛び交うような煌めきや白昼夢に溺れるような快適性があり、デトロイトきってのアンビエント使いは伊達ではない。但し欲を言えばもう少しテクノ寄りなり、ダンスを意識した作風へと回帰してくれたら、そう活動初期の青々しくも刺激的な音楽性もたまには聴いてみたいとも思う。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Israel (Soul Research:SR-007)
John Beltran - Israel

2012年に設立されたSoul ResearchはYotam AvniやTitonton Duvanteらの作品をリリースするなど、特にデトロイト・テクノのフォロワー系に力を入れ、そしてアナログ・オンリーの販売に拘って運営しているレーベルだ。そんなレーベルの2014年のカタログにはデトロイト・テクノの純粋な古参の一人であるJohn Beltranも名を連ねており、そのリリース内容から明確なコンセプトが伝わってくる。そのレーベルに再度Beltranが帰還して新作をリリースしたのだが、リミキサーにはデトロイト・テクノを心から愛する屈指のフォロワーであるKirk Degiorgioが迎えられており、音を聞かずしてもこの手の音楽を好む人にとっては食指が動かずにはいられないだろう。タイトル曲となる"Israel"は近年のBeltranの中でもフロアへの視点が向けられた作品で、ざくざくと切り裂くようなリズムに乗せて滲んだ色彩を放つ幻想的なパッドが物悲しさも含んだような切ない叙情を含み、勢いのあるグルーヴだけでなく彼お得意のアンビエントな感覚も持ち込んだ、つまりは昔のBeltranの作風が蘇っている。"Achva"も同様に草原を駆け抜けるような疾走感&爽快感を伴う跳ねたグルーヴが先導し、そこにぼやけて何だか淡い抽象画のようなパッドや電子音がエモーショナルな情感を生み、有機的な質の強いデトロイト・テクノといった作風になっている。テクノという前提はありながらも、しなやかで温かみのあるオーガニックな音楽性は、クロスーヴァー路線もこなすBeltranにとってはお得意の作風なのだ。裏面には10分にも及ぶ大作となる"Israel (Kirk Degiorgio Remix)"をDegiorgioが提供しているが、これは原曲以上に弾けるパーカッションやキックに嬉々とした力が満ち、そして祝祭感溢れ神々しい光を纏ったような上モノが何処でも疾走するテクノで、デトロイト・テクノの伝統に則ったような存在感を放っている。当然と言えば当然だが、デトロイト・テクノに造詣の深いベテランが組んだのだから、期待を裏切る訳がない作品だ。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Espais (Delsin:DSR-D3-CD)
John Beltran - Espais
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デトロイト随一の抒情派アーティストであるJohn Beltranは、ここ数年はオランダ屈指のデトロイトへの造詣を持つDelsin Recordsと蜜月の関係を築き、オリジナルアルバムやコンピレーションを協力して制作するなど順風満帆に状態になりつつある。その流れの中でBeltranはまたもDelsinより新作をリリースしているが、本作は『Amazing Things』(過去レビュー)のようにニュー・エイジ的な瞑想感覚を引き継ぎながら、更にTrent ReznorやVangelisにDaniel Lanoisなど映画音楽を手掛ける作曲家に触発されて制作された事が明らかになっている。冒頭のボーカル入りの"Intro"を聴けば、既にBeltranがテクノから距離を置き始めている事は明らかで、フィードバックギターなども用いられた淡い抽象画的な音像はアコースティック・アンビエントの方がしっくりとくる。続くタイトル曲の"Espais"でもクラシックのような荘厳なオーケストラに静謐なピアノが柔らかく響き、確かにサウンドトラックらしい壮大な世界観が広がっている。続く"Many Moments To Come"もバックにはぼやけたノイズが終始鳴りつつも、研ぎ澄まされたピアノがゆっくりと情緒を流し続ける切ない曲で、Beltranらしい耽美な印象は期待通りだろう。今年にBeltranが手掛けたアンビエント・コンピレーションにも提供された"Music For Machines"はここにも収録されており、輝かしく光るストリングスがゆっくりと舞う余りにも壮大で、余りにも至福なムードに満たされたこの曲は確かに映画の感動的な一場面で使われるようにも思われる。但し映画音楽やサウンドスケープである事に拘り過ぎた影響だろうか、リズム感やグルーヴ感は希薄化し、ピアノやギターにストリングスを中心とした音からは既にテクノの面影はおおよそ失われている。確かにBeltranらしい甘く夢のような世界、または天国のような汚れのない美しき光景を臨む事は出来るものの、ファンが彼に求めているのはやはりアンビエント成分を含む躍動的かつエモーショナルなテクノであり、それはデトロイト・テクノと同じ方向を見据えていた筈だ。そう言った前提を踏まえると、本作の映画音楽らしいコンセプトは理解しつつも、物足りなさも残ってしまう。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran Presents Music For Machines (Delsin Records:DSR-D1-CD)
John Beltran Presents Music For Machines
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デトロイトの中でも特に叙情性の強い音楽を手掛けるJohn Beltranは、一時期はまっていたラテン・ミュージックからここ数年は再度テクノ〜アンビエントに回帰している。オランダはDelsinからリリースされたベスト盤の"Ambient Selections 1995 - 2011"(過去レビュー)と再びピュアなアンビエントを披露した"Amazing Things"(過去レビュー)からも、彼の中でアンビエントの2度めの春を迎えていた事を感じていた者は多いだろう。そのようにアンビエントによってDelsinとの関係を深めた彼が更にDelsinと手掛けたのは、John Beltranが選ぶアンビエント作品集だ。アンビエントへの情熱や造詣が深いBltranだからこそコンパイラーに迎えられたのは言うまでもないが、アンビエントにも色々な方向性がある中で本作はBeltranのファンにこそ、先ず一番に聴いて欲しいようなBeltranが考えるアンビエントが収められている。やはり本作に収録された音楽の特徴はノンビートである事は前提として、不明瞭なドローンが続くものやスピリチュアルで瞑想的なものとは異なり、カラフルな色彩を以ってして豊かな叙情性を展開している事だ。ただ自然に空気と同居しているような存在感を現さないアンビエントとは異なり、音楽としての存在感を落ち着いて発しつつ耳に入る事で静かに心に訴えかけるような感情的な性質は、元来Beltran自身が制作していたテクノ/アンビエントと同列である。例えばGreg Chinによる"Dashboard Angels"を聴いて欲しい。しなやかで優雅なストリングスに絡んでいく色彩豊かで可愛らしい電子音によるこの曲は、言われなければBeltranによる未発表曲だと思う程に、夢の世界で羽ばたくようなノスタルジーに溢れている。Mick Chillageによる"Only In My Dreams"も素晴らしく、ドローンのような前半から重力が無くなりキラキラとしたシンセの反復で浮遊感に満たされる爽やかで情熱的なアンビエントは、何処までも澄んでいて清らかだ。アルバムの冒頭を飾るWinter Flags(ApolloからデビューしたGachaの変名)による"Winterfall Winds"も、淡く消え去りそうな穏やかなノイズが吹き荒れるシューゲイザー風アンビエントで、この物哀しさにも似た郷愁は本作の方向性を示唆しているようだ。他にもクラシックを取り入れたようなゆったりと壮大な曲から透明感の強い電子音が伸びるドローンのような曲、有機的な鳴りも取り入れながらただただ美しいサウンドスケープを描き出し、Beltranならではの音による癒やしが待ち受けている。紛うことなき素晴らしいアンビエント・セレクションだ。



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| TECHNO11 | 06:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
100DSR Compilation (Delsin Records:100DSR)
100DSR Compilation
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オランダと言えば古くからデトロイト・テクノに影響を受け、実験的かつフロアだけに集約されない広範囲なテクノをリリースする事に長けたレーベルが多い。その中でも1996年にオランダはアムステルダムに設立されたDelsin Records(とその傘下のAnn Aimee)は、ベテラン勢の安定した作品を手掛けると共に新人の発掘・育英にも力を注ぎ、数々の名作を世に送り出してきた重要なレーベルだ。最初にデトロイト・テクノに影響を受けたと述べたが、勿論そこから大きく飛翔しミニマルやブレイク・ビーツにリスニング系なども手掛けており、その多様性を十把一絡げに述べる事は最早出来ない。そんなレーベルの運営も17年に及ぶが、そのカタログ100番を飾るために用意されたのが本コンピレーションである。CDでは2枚組で、Delsinに関わりの深い新旧アーティストが(全てが新曲と言う訳ではないが)曲を提供しており、正にDelsinの音楽性を知るためにはこれぞと言うべき内容になっている。如何にもDelsinらしいピュアな響きを持つBNJMNによるリスニング系の曲もあれば、Delta Funktionenによる鈍い響きと低いベース音がダークな雰囲気を持つテクノもあり、ダブ・ステップに傾倒した今っぽいA Made Up Soundによる曲もある。Claro Intelectoの荒々しい残響が交錯するダブ・テクノもあれば、IDM的な音と戯れるようなCimのエレクトロニカもあり、Ross 154(Newworldaquarium)の退廃的なビートダウンだってある。極み付きはデトロイト第2世代のJohn Beltranが雨上がりの感動的な情景が浮かび上がる余りにも切ないアンビエントを披露している。これがDelsinだ、決して安住の地に留まらずに様々な音を吸収しながら、今という時代の音を創り出す現在形のテクノ・レーベルなのである。もしテクノを聴いていてDelsinに馴染みが無いのであれば、是非この機会に接触するには良い機会となるだろう。



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| TECHNO10 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Amazing Things (Delsin Records:98dsr)
John Beltran - Amazing Things
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デトロイトのミスター・ロマンティシストと言っても過言ではないJohn Beltran。正直なところ派手な作風でもなければ、使い易いダンストラックを作るトラックメーカーでもない為に、20年と言う長い音楽活動に対してその存在自体が秀でて目立つわけではない。がデトロイトの熱狂的な信者に対しては取り分け信頼されているだろうし、部屋に篭ってメランコリーに浸れるダンスに偏らないアンビエントテイストな音楽は、流行と言う濁流からは外れたタイムレスな存在だろう。本作はオリジナルアルバムとして実に7年ぶりとなる作品だが、本格的にソフトウェアを導入して制作した事や、00年代前半に傾倒していたラテンやブロークンビーツから初期のアンビエントへと回帰したなど、幾つかの変化が聴き取れる。ソフトウェア制作がベースとなった影響なのか少々小ぢんまりとし硬さも残るように感じるが、その分音はより研ぎ澄まされ清流のように癒しの音が溢れ出し、昼下がりの白昼夢に入り浸れるようなニュー・エイジ感覚さえも生まれている。相変わらず俗世的で体を激しく揺さぶるダンストラックが無いのは当然だが、しかしそうだとしてもピュアで一点の汚もれない音はパーティー後の疲労が蓄積した身体に優しく作用するであろうし、精神的にも全くの嫌味の無さは清々しく爽やかだ。アルバムに対するコンセプトは特に無かったそうだが、この7年の間に父親となったJohnの二人の子供への愛で、つまり沢山の愛によって制作された作品であるそうで、確かにここには夢見がちな甘いノスタルジーが待ちわびている。デトロイト・テクノを好きな人ならば当然として、忙しない毎日に忙殺されている人にとっても癒しの音楽として最適だろう。

試聴

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Moodman - Crustal Movement Volume 03 - SF (tearbridge records:NFCD-27351)
Moodman - Crustal Movement Volume 03 - SF
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最初に断言しておくとこのアンダーグラウンドなダンス・ミュージックを様々なスタイルで纏め上げた"Crustal Movement"シリーズは、MIXCDが良くも悪くも大量に生産されるこのご時世において決して安い値段ではない。がミックスの技術からメジャーでリリースする事によるライセンス許可の取得、そしてマスタリングまで手抜き無しに仕事がされている事を考慮すればこその価格であり、実際に聴き終えた後にはその価格に見合った内容であると理解出来た。このシリーズは国内の3人のDJによって同時に3枚リリースされたのだが、今日紹介するのはジャンルに囚われる事なく振り幅を敢えて持ちながら時代を駆け抜けてきたMoodmanが手掛けている盤だ。本作が面白いのはもう15年以上も前のJohn BeltranとTerraceの曲である往年のインテリジェンス・テクノから始まり、そしてKirk Degiorgioのリミックスへと続いて行く事だ。序盤にしていきなり90年代前半を象徴するスタイルが出現するが、実はそれ以降はここ2~3年の作品で纏められており、特に後半は近年のダブ・ステップがそれ自体を強く主張させる事なく自然と並んでいる。インテリジェンス・テクノ、ブロークン・ビーツにダブ・ステップ、ディープ・ハウスやエレクトロニカと小刻みに曲調は変わっていくのだが、不思議とその直列には違和感はなく自由奔放なビートの組み合わせが各所に散りばめられているのだ。恐らく本人もインタビューで述べているように曲としてではなく素材/ツールとしてデジタル的なミックスを行った事がそれを可能としているのだろうが、曲自体が存在感を主張しない為にBGM的な平たくスムースなムードを生み出し、何時の間にか聴き終わっているような心地良さが発せられている。とてもさり気なく過去から現在へと繋がりを聴かせる知的さ、そして今と言う時代の空気も取り込んだ洗練さを兼ね備え、大人の余裕さえ漂う音にただただうっとり。

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| HOUSE9 | 11:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2012/3/24 LIQUIDROOM & METAMORPHOSE presents HOUSE OF LIQUID @ Liquidroom
久しぶりのHOUSE OF LIQUIDはゲストにAkufenのライブにこれまた珍しい砂原良徳のDJ、リキッドロフトではInner ScienceやDJ Yogurtによるノンビートセットと、フロア毎に音楽に差を作り上でも下でも楽しめるパーティー仕様となっておりました。Akufenはマイクロサンプリング、又はカットアップハウスと呼ばれる独特の手法で一躍名を轟かせたアーティストであり、この名義では9年程は新作を出していないにも拘らず今でもファンが多いアーティストです。そして砂原ことまりんはライブ中心の活動を行う為、今回のDJセットは一体どうなるのかと言う楽しみもありました。更にはアンビエント中心のロフトも含め、一体どのような一夜となったのでしょうか。
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| EVENT REPORT3 | 09:00 | comments(4) | trackbacks(0) | |
BEST OF 2011
あけましておめでとうございます。2011年は東日本大震災や原発事故と言う想像だにしなかった災害が日本を襲い、その影響で音楽シーンにも暗い影を落としていたように思われます。しかし多くの海外からの支援や、また国内のチャリティー活動もあり少しづつではありますが、復興に向けて進んでいるのも事実です。そしてそれは音楽と言う文化に於いても同様で、一時期は萎縮してしまったパーティーやクラブミュージックも今ではまた以前と同じ位までに活動を盛り返しております。そんなご時世の中で素晴らしい音楽も、特にそれが日本から多く出てきた事は本当に喜ばしい事で、そんな音楽は僕に人生を楽しく過ごす為の原動力となってくれています。さて今年も本当に沢山の音楽を聴きそれぞれが素晴らしかったのでどれがベストと言うのも難しいのですが、今の気持ちで気に入っている作品を選んでみました。皆様のポジティブな力の原動力となる事を祈って紹介致します。
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| BEST | 09:00 | comments(2) | trackbacks(1) | |
John Beltran - Kassem Mosse & Sven Weisemann Remixes (Delsin:87dsr)
John Beltran - Kassem Mosse & Sven Weisemann Remixes
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先日オランダのDelsinからアンビエントベストをリリースしたJohn Beltranが、そこからリミックス盤をカットしております。リミキサーに選ばれたのはHardwax系のハウスレーベル・Workshop等からもリリースするKassem Mosseと、ベルリンディープハウスの最深部・MojubaからもリリースするSven Weisemannと、どちらもベルリンの今を体現しているアーティスト。Kassem Mosseはシカゴハウス風なローファイなリズムトラックの上に幻想的なパッドを薄く張りつつ、じっと低温で燻り続ける炎のようにしんみりとした温度を発し、終始ミニマルな展開のハウスを披露。じっくりと眠りに落ちるように、トロトロと心地良い空気が拡がって行きます。そして芸術的で華美なトラックを創る事には天才的な才能を発揮しているSven Weisemannは、"Sven's Glorify Tribute To John Beltran"と言うリミックス名に相応しい神々しいダブアンビエントを披露しておりました。ストリングス、パッド、パーカッションが浮遊するように絡み合い、深い奥底から今にも広大な空の中へと溶けこむように音が拡がっていくスケールの大きい交響曲みたいで、聴く者に最上級の安堵を齎してくれるに違いないでしょう。ダンスフロアで踊り疲れたパーティーの最後に、こんな曲がかかったら泣いてしまうかもしれない、それ程に慈愛に満ちたアンビエントです。

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| HOUSE7 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Ambient Selections 1995 - 2011 (Delsin:88dsr/jbn-cd1)
John Beltran - Ambient Selections 1995 - 2011
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素晴らしい、本当に言葉を失う程に素晴らしいベストアンビエントセレクション。真夏の到来と共にやって来たむさ苦しい真夏の為のカンフル剤とも言える。John Beltranは若かりし頃にデトロイトテクノに影響を受け、Carl Craigの伝説的なレーベル・RetroactiveからPlacid Angles名義で衝撃的なデビューを飾る。初期はデトロイトテクノやアンビエントに影響を受けたテクノをR & S RecordsやPeacefrog Recordsからリリースするも、その後はジャズやラテンなどの有機的な音楽へと矢先を向けてしまった。勿論創作性の高い彼ならではのラテンジャズの楽曲でもヒット作は出していたものの、世界各地での音楽活動に疲れた彼が最終的に求めたのはアンビエントであった。そして今だ、彼のアンビエントな楽曲を網羅したコンピレーションが届けられた。タイムレスと言う言葉が相応しい、そう16年間の歳月を全く感じさせない普遍的かつ夢見心地で郷愁を帯びた微睡みのアンビエント。雲一つ無いクリアブルーな空が脳内に拡がるドリーミーな音色に、身も心も全てを委ねて解放されるべき音楽。只のビートレスでだらしない音を垂れ流すBGMでもなく、宗教的で胡散臭いヒーリングとも違う、エレクトロニクスと生演奏の両方を通過してきたからこそ成し得る有機的なデジタルソウルを奏でる芳醇なアンビエント。心身の隅々まで洗われるようにピュアな音が血潮に乗って体を循環し、気怠いこの夏に於いても貴方の心を癒してくれるであろう傑作だ。

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| ETC3 | 17:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Len Faki - Berghain 03 (Ostgut Tontrager:ostgutCD08)
Len Faki-Berghain 03
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現在のドイツテクノの中心の一端を担うOstgut Tontragerから、ベルリンの代表的クラブ・BerghainのオフィシャルMIXCDの第三弾がリリース。新作を手掛けるのは割とソリッドでハード目なテクノを得意とするLen Faki。ミニマル隆盛の現在においても旧ミニマルらしい作風を残してもいるし、去年体験したDJプレイでも激アッパーで勢いを感じさせてくれたので本作にも期待をしておりました。で内容はばっちし、期待を裏切らない硬派なテクノ中心。オープニングはいきなりチルアウトなんでびっくりしましたが、それ以降は硬めで暗黒系ミニマル中心。さほどハードではないけれどメタリックで黒光りする音の響きが深い世界を展開し、中盤で自身やRadio SlaveのトラックでBasic Channelばりのダビーなミニマルに移行、かと思えばそこからはディープハウスやLaurent Garnierのクラシックでぐぐっとエモーショナルに染まるなど、意外にもバラエティーに富んだ展開。相反する金属的な冷たさと人間的な温かさが並んではいるものの、抑揚のある展開や奥行きを感じさせる音響があって飽きないミックスだと思います。ようやくテクノの中心地ドイツからミニマルブーム以降の音が、徐々に増えてきたので個人的には嬉しい限り。

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| TECHNO7 | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
LTJ Bukem Presents Earth Volume Four (Earth:EARTHCD004)
LTJ Bukem Presents Earth Volume Four
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ドラムンベースアーティスト・LTJ Bukemが既存のドラムンベースを逸脱する為に立ち上げられた「Earth」シリーズでありますが、そのシリーズ4作目では既にドラムンベースの影は身を潜めここでは"ハウス"が前面にフューチャーされています。何と言ってもデトロイトのJohn Beltranから2曲も収録されている時点で、ハウスへの意気込みが違います。特にグルーヴィーな4つ打ちに綺麗目のストリングスシンセを載っけたディープハウストラック「Seven Miles High」は、モロにデトロイト直系の郷愁に満ちていてこのアルバムを象徴すると言っても良いでしょう。もう一曲の「Aztec Girl」は、ピアノ、ギター、ベース、ドラムなどを生演奏したブリジリアンフュージョンで、南国系の楽天的な気分に爽やかさが加わっています。Lacarno & Burns、Taylaらもアトモスフェリックな上物が心地良いテッキーなハウスを披露していて、Good Looking Recordsの未来的な所は今作でも生かされているのがミソ。また全編ハウスかと言うとそうでも無く、Flying Fish、K-Scopeらはファンク色の強いブロークンビーツを披露していて、ソウルの籠もった過去の音楽の影響を受けている事を感じさせます。また日本人アーティスト・Makotoからは2曲収録されていまして、ブロークンビーツにスムースーなハウシーさが加わったタイプ。空をも越えて遙かなる宇宙を目指すフュージョンハウスと言うべきか、ドイツのハウスユニット・Needs辺りの感覚に近い物を感じますね。アルバム全体には南国の爽やかな森をイメージしたジャケットの如く、音にも空気の清涼感、大地の美しさが表れている気がします。正に「Earth」に相応しい音なんですね。

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| HOUSE2 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Human Engine (Milan Records:36177)
John Beltran-Human Engine
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元デトロイト在住、かつてTransmatからも作品をリリースしていたJohn Beltran。ここ何年かはラテンフレイバーを強めテクノから距離を置いていましたが、今作は前評判ではデトロイト回帰しているとの談もあり楽しみにしていました。ところが実際の音を聴いてみると、いかにも打ち込みのシンセ音は増えたけれど近年のラテンフレイバーも消えてはいませんでした。しかし今作の切なさ、郷愁の度合いは凄い物がありますね。全編に渡ってとろけてしまいそうな程甘いメロディーがふわふわと漂っています。彼の作品の中でも、ここまでロマンティックなのは初かも。うっとりするオプティミスティックなシンセサウンドと相まって、イビザ宜しくなチルアウトワールドを展開しています。またはラテンアンビエントでも言うべき、温かい夢想空間。テクノと言う言葉で括るほどテクノではないけれど、昔のJohn Beltranの作風に近いのは確か。一時はJohn Beltranから離れてしまった人も、是非この作品は聴いて頂きたい。

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| TECHNO4 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Jazzy Jeff - In The House (ITH Records:ITH11CD)
Jazzy Jeff-In The House
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ハウスシーンにおいて「In The House」「Soul Heaven」などの人気ハウスMIXCDシリーズを送り出しているDefected。とにかく派手でクラブヒットはするだろうけどちょっとミーハー過ぎるんじゃないと思う曲をリリースしたかと思えば、時には生真面目にアンダーグラウンドな曲をリリースしたり、バランスが取れているんだか否かとにかく売れっ子レーベルなのは間違いなし。そんなレーベルの「In The House」シリーズには、Danny Krivit、Joey Negro、Bob Sinclar、Masters At Work、Miguel Migsなど売れっ子ハウサーが今まで参加しています。その中で異色なのがございまして、なんとヒップホップ畑のJazzy Jeffが参加しているのです。僕は彼に関して詳しくは分からないのですが、ヒップホップでは凄い有名な人らしくかつては(今では俳優として有名な)Will Smithとクラシックを生み出していたそうです。とまあそんな豆知識は知っていようとそうでなかろうと、このシリーズを聞くのには関係ないですね。

DISC1は比較的近年のハウスが中心で、「Samuri」や「Strings Of Life」などのヒット曲も混ぜつつ、ソウルフルで黒いビートをたんまりと聞かせてくれます。ヒップホップあがりのせいかどうかは分かりませんが、4つ打ちだけれどもスムースと言うよりはザクザクとしたビート感でリズミカルですね。NY系王道ハウスで気分も高揚する事間違いなし。

DISC2は前半がほぼダンスクラシックの連発なのでしょうか。年代の古いディスコ物で占められていてレイドバックしつつ、後半はしっかり華麗なスィートハウスで爽やかな風を吹かせます。朝のまったりアフターアワーズな空間を感じられて、DISC1のピークタイムプレイとは対照的ですね。上手い具合にテンションを下げてしっかり閉めに持って行ってます。

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| HOUSE2 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
P'Taah - Compressed Light (Ubiquity Records:URCD060)
P'Taah-Compressed Light
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おやしらずを抜いた為、療養中のマチュでございます。抜いた後はそんな痛くないけれど、飯が喰いづらい。またおやしらずがあった場所を縫い合わせているので、その糸が何となく口の中で触って邪魔。落ち着かないなー。

さて先日John Beltranと言うクロスオーヴァーなアーティストを紹介させて頂きましたが、同じくUbiquity RecordsからリリースしているP'Taahと言うアーティストはご存じでしょうか?知っている方はハウス好きの方だと思いますが、日本でも大人気のAnanda ProjectことChris Brannの別の活動がP'Taahなのであります。Ananda Projectと言えばディープハウスの大傑作「Release」(過去レビュー)と言うアルバムを残していて、とにかく深いエモーションとセクシーな世界観は段違いなアーティストであります。しかしこのP'TaahはUbiquity Recordsからリリースしているだけあって、クラブミュージックに止まらないフューチャージャズ路線ですね。Ananda Projectが終始4つ打ちを意識したハウスなのに対し、P'Taahはリズムが複雑でプログラミングを使用しているとは思えないバンドの様な迫力があります。ただ彼の作風に一貫するのは崇高でオーラを放つスピリチュアルな雰囲気がある事。アーティストとして気品が感じられ、作品に対する生真面目な意気込みが見受けられます。そう、Chris BrannはDJではなく完璧にアーティストなんですよね。それだけに一曲一曲の質と言うのは、本当に高く妥協が無いと思います。クラブミュージックの中からこんなジャズが生まれてくるなんて、きっと昔のジャズファンには信じられないでしょうね。Ian O'Brienにも匹敵するフューチャージャズだ。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ1 | 23:00 | comments(2) | trackbacks(0) | |
John Beltran - Americano (Exceptional Records:EXLPCD0201)
John Beltran-Americano
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先日紹介したデトロイトのアーティスト・John Beltran、彼の中の転機となった作品がこの「Americano」。かつてはCarl CraigのRetroactiveやDerrick MayのTransmat、もしくはUKのPeacefrog Recordsから作品をリリースした様に、テクノが中心となりそこにジャズやアンビエントを注入した作品が多かったです。しかしこのアルバムからはテクノ色は徐々に弱くなり、オーガニックなアコースティック路線が前面に出て来ました。それまではデトロイト在住だったらしいですが、この作品からマイアミに住み始めたのが関係あるのでしょうか。この後にリリースされたアルバム「Sun Gypsy」はモロにラテン過ぎて微妙でしたが、今作ではディープハウス、ラテン、ドラムンベース、ダウンテンポ、アンビエントなどが自然に存在しています。幻想的、透明な空気を一杯に含んだ柔らかい音色で、午後の昼下がりの微睡みを誘発する世界観。ラテンの要素が入っていても決して暑苦しくないのは、アンビエントに含まれるチルアウトなムードがあるからでしょう。大海原に太陽が沈んでゆく黄昏時の瞬間の、海がオレンジに輝いている景色が浮かんでくるね。イビザみたいな享楽的な世界観とは異なるしっとりした高揚感が感じられます。夏がぴったりな傑作です。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ1 | 22:00 | comments(2) | trackbacks(1) | |
John Beltran - In Full Color (Ubiquity Records:URCD142)
John Beltran-In Full Color
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最近暑い日が続いていますねー、ほんとに不快指数の高い毎日です。や、まあそんな時はラテングルーヴで気持ち良い風を感じましょう。John Beltran、かつてはCarl Craigの伝説的レーベル・Retroactiveからデビューを果たしたデトロイトのアーティストです。デトロイトテクノの叙情性を前面に出し、アンビエントやジャズまでも取り込んだサウンドで人気を博しています。ところが途中からアコースティックな音色を多用したラテンハウス色を強めていき、一時期はちょっと生音やりすぎな位だったので微妙に興味が無くなりかけていました。そんな彼の起死回生の一発が、この2004年の最新作。掻い摘んで言うと過去のアンビエント+最近のラテンハウスな、調度良いバランスの上にあるクロスオーバーなアルバムです。ラテンの血がたぎるノリノリのリズム感、あーこりゃ南国気分で爽やかだね。からっと乾いたパーカッションの音が本当に気持ち良い。その上に以前の様な薄いシンセのヴェールが被さり、柔らかい空気に心が包まれて行くような優しさを感じられます。木陰の中、ハンモックの上に横になりながらうとうとと聴きたいな。デトロイトテクノの影響はほとんど感じられないけれど、彼の新しい路線がここに結実した良質なアルバムだと思います。ラストの「Pictures And Indian Summer」は完璧アンビエントハウスって感じだけど、これはまじで素晴らしすぎます。泣ける!

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ1 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(1) | |
Tom Middleton - The Sound Of The Cosmos (Label: Hooj Choons:HOOJ CDLP011)
Tom Middleton-The Sound Of The Cosmos
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Global CommunicationのTom Middletonが気合いを入れて作った3枚組のMIXCDを、ようやく手に入れたので気合いを入れて聴きました。いやー、3枚もあるとほんと全部聴くの大変ですね。数日前に紹介したGlobal Communication名義の「Fabric 26」はそれ程アンビエント色もなく、ファンはちょっとがっかりしていたかもしれません。しかしこれはボリュームもさることながら、内容もアンビエント色強めなプレイも入っていて納得して頂けるのではないでしょうか。CD1はRhythmがテーマでありまして、テクノ、ハウス、クラブジャズなどジャンルに拘らずに、リズムが強調されているトラックが中心です。多彩なビートを織り交ぜて、爽やかで軽やかなプレイを披露しています。対してCD2のテーマはMelodyで、まあいわゆるハウスですね。最初から最後まで4つ打ちで通し、甘さたっぷりのスウィートな展開でムードたっぷりです。Melodyがテーマと言う事に嘘偽り無く、一聴して耳に残るハウスばかりです。これはかなり良かったですね。そしてCD3こそGlobal Communicationファンがお待ちかね、Harmonyがテーマのアンビエント色強めなプレイです。トラック的にはダウンテンポやクラブジャズっぽいのが使われていますが、身体の中から疲れが抜けていく様な気持ち良さは正にチルアウト。重くドラッギーなアンビエントではなくて、快楽を重視したヒーリングアンビエントって感じでしょうか。こちらも充実したプレイで満足です。相当なボリュームながらも、三者三様のプレイが楽しめて文句の付けようがないですね。Middletonの宇宙を全身に感じられる素晴らしいMIXCDです。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ1 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |