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Jonny Nash / Lindsay Todd - Fauna Mapping (Island Of The Gods:IOTG003)
Jonny Nash Lindsay Todd - Fauna Mapping
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ニューエイジの再評価が著しい昨今の中で、その要素の一つであるスピリチュアルな癒やしを体現する作品がリリース。リリース元はインドネシアはバリの新興レーベルであるIsland Of The Godsからで、「Island Explorer Series」ともう安直以上の何物でもないシリーズ(レーベル名もだが)の一環となっているが、それを手掛けているのが現行バレアリックを代表するMelody As Truthを主宰しMusic From Memory等からも作品をリリースするJonny Nash、そしてエジンバラの秘境レーベルであるFirecrackerを運営するLindsay Toddの二人だ。そんな二人が揃えば当然現実から逃避したミステリアスな辺境音楽が繰り広げられるのも自然な事だが、その上本作は2016年12月にバリにてセッションを行い録音されたと言う内容で、その島に息衝く生命の響きも含まれるフィールド・レコーディングを用いてこの上ないニューエイジを展開している。アルバムは便宜上各曲はタイトルは分けられているが基本的には一つの連なりとして聞ける持続性があり、バリという島の秘境めいたエキゾチック性が続く。原始的な打楽器の訝しい響きや水しぶきらしき音の静かな胎動から始まり神々しい電子音が入ってくると、途端にスピリチュアル性を増す"The Gecko That Wore Its Skin Inside Out"で開始し、土臭いパーカッションや不思議な木製の打楽器の響きが絡み合い未開の森の中を彷徨う"Dengue"、深い残響のダブ・パーカッションが広がって大気が振動するような"Pigeon"と、バリ島とは言っても観光向けのバカンスな海ではなく人の手が入っていないような生命力に溢れた緑が茂る森のムードだ。フィールド・レコーディングや電子音や交えてごちゃごちゃと音が混沌とした"Fauna Mapping"は、その不鮮明な音像の中から生命の胎動にも似た動きが感じられるだろう。そして沼地を歩くズブズブとした環境音で臨場感を生む"Petrol & Nag Champa"を通過し、桃源郷へと辿り着いたのか美しいパッドが伸びる夢現なアンビエント"Kokokan (Heaven Herons Of Petulu)"に安堵する。しかしそこから不思議な民族系打楽器や笛の音色に環境音が気分を高揚させる"Pipe To Pipe Bushment"でビート感を獲得し、宗教的なガムランと鳥や蛙の鳴き声による"A Series Of Small Frogs"で深い瞑想へと誘われ、最後の"Mushroom Omelette"ではオーガニックな響きと合わさった牧歌的な電子音のドローンによって内面を探るアンビエントへと振り切れる。フィールド・レコーディングを大量に用いた事で神秘的な森の中の生命力がリアルに迫ってくるような臨場感が生まれ、そしてその大自然の中で心の平穏へと行き着くヒーリング性を兼ね備え、バリ島に行った事の無い当方にとってもその風景を換気させていっときの現実逃避となるようだ。ある意味、極楽浄土が広がる霊的サウンド・スケープでもある。



Check Jonny Nash & Lindsay Todd
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D.K. / S.K. - D.K. / S.K. (Melody As Truth:MAT9)
D.K. S.K. - D.K. S.K
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近年のバレアリック・ミュージックの隆盛は目を見張るものがあるが、そのムーブメントを作る一つのレーベルとしてMelody As Truthを欠かす事は出来ない。元Discossessionのメンバーであり近年はGaussian Curveとしても一躍名を挙げたアーティストであるJonny Nashが主宰するレーベルだが、そのレーベルのもう一人の中心人物がオランダで活動するSuzanne Kraftで、同レーベルをベースに穏やかな静けさの中で夢遊する有機的なアンビエントをリリースしている。そしてまた別に静謐なバレアリック/アンビエント方面で評価を集めているDang-Khoa ChauことD.K.というアーティストがいるが、このS.K.とD.K.がコラボレーションした本作はその両者に期待する音楽性が見事に融和しており素晴らしい。鈍いスネアや優雅なハイハットは間を作りながらゆったりとしたビートを刻み、そこに波紋が広がっていくような零れ落ちる鍵盤のメロディーや美しいパッドが抽象画のようにぼやけて彩りを行う、物憂げなニューエイジ風の"Xerox"からして音の余韻が美しい。そして神秘的な鍵盤のフレーズから始まる"Burn"はそこにリバーブのかかったピアノやギターらしき音を導入しながら、その数を絞る事で繊細に音の間が美しく映えて白昼夢に浸るかのようなアンビエントだ。そしてタブラらしきパーカッションを用いて何処か寺院のようなスピリチュアルな響きもある"No Man's Ground"は、アジアンな打楽器も取り入れる事でエキゾチックな雰囲気を携えつつも、夢の中を彷徨うようなイマジネーションを刺激するニューエイジ色が強いか。"Hammond Blue"では透明感のあるシンセの粒が舞い踊る中で優雅なパッドがアクセントを作る事で豊かな色彩を伴うビートレスながらも動きのあるアンビエントで、そして"Bricks In White"において抽象的なサウンドコラージュに合わせて静謐なピアノのフレーズを被せてミステリアスに展開していくニューエイジな作風は神々しく、最後の"Fade"では何処までも伸びる美しいドローンの上にセンチメンタルなメロディを配して消え入るように静かに、しかし感情性を高めていく。全体を覆う軽くリバーブの効いたもやもやとした音響の中に、音と音の間の余白の美しさが際立つようなシンプルな構成が、すっきりとしながらも気怠い安眠を誘うようなアンビエント/バレアリックな世界は期待以上。寝起きのBGMとしても、昼下がりのうとうとする時間帯にも、夜中寝る前の時間帯にも適したアルバムだ。



Check D.K. & Suzanne Kraft
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Tommy Awards - Inre Rymden (Remixes) (Origin Peoples:OP005)
Tommy Awards - Inre Rymden (Remixes)
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静謐なアンビエントやバレアリックを手掛けるJonny Nash、Earth Trax名義でのディープ・ハウスで注目を集めるBartosz Kruczynski、UKの現行バレアリック前線のCoyoteらがリミキサーとして参加した本作、そういった名前でピンと来た人はTommy Awardsなるアーティストを知らなくても本作を聞いておいて損はないだろう。Awardsはスウェーデンのバレアリック系のユニットだそうで、2017年中頃にはアルバム『Inre Rymden』をリリースしている。そちらは購入はしなかったものの試しに聞いてみた限りでは、ゆったり夢現なニュー・エイジやニュー・ディスコの要素を用いながら桃源郷広がるバレアリック色に染め上げており、朗らかでメロウな世界観を作り上げていた。そんな作品を前述のアーティストがリミックスしたのが本作で、参加しているアーティストからも分かる通りリスニング向けな落ち着きのあるバレアリック・ミュージックを更に深化させており、元の作品を一切知らなくてもこの手の音楽を好む人にとっては愛聴盤になるに違いない。"Prometheus (Jonny Nash Remix)"は原曲よりも更にビートや音数を削ぎ落としサックスやピアノを用いながらも、音の間に美学を見出すような静謐さ際立つディープ・ジャズへと姿を変え、如何にもNashらしいスピリチュアルな作品だ。本アルバムで特筆すべきは15分まで拡大した"Hans Logan (Bartosz Kruczynski Remix)"だろうか。元々は空高く飛翔するような開放感溢れるバレアリック作品だったが、序盤の想像力を刺激する重厚な瞑想ドローンによるニュー・エイジの展開から、清々しい電子音のシーケンスが浮かび上がって反復によるアンビエントへと移行、その間もピアノや木琴が耽美な響きを聞かせながら瞑想状態を持続させる流れは、壮大な一大叙事詩のようだ。こちらも10分に及ぶ大作の"Mike Sierra Foxtrot (Eirwud Mudwasser Nag Champa Radio)"は元のサイケデリアを活かしながら、廃れたような簡素なリズムも導入して侘び寂びなエレクトロニカ風にも思われる。"Ursa Minor (Coyote Remix)"は原曲の牧歌的なムードを壊す事なくおおよそ予想のつく開放感のあるバレアリック仕立てだが、"Rexy (The Normalmen Savana Reinterpretation)"は元の幻想的なスローなバレアリックからがらっと姿を変えて、奇抜な効果音もふんだんに用いて陽気なトリップ感のあるニュー・ディスコでアルバムの中で一番のダンス色強い曲だ。5曲のみなものの40分を超えるボリューム、そして期待通りに各アーティストのバレアリック性が現れた充実した内容で、Music From MemoryやMelody As Truth周辺の音楽が好きな人には食指が動くに違いない。



Check Tommy Awards
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Jonny Nash & Suzanne Kraft - Passive Aggressive (Melody As Truth:MAT8)
Jonny Nash & Suzanne Kraft - Passive Aggressive
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「静寂の次に美しい音」というコンセプトを持つECMという有名なレーベルがあるが、Jonny Nashが主宰するこのMelody As Truthもそんな音楽性からは決して遠くないのではと思うこの頃。2014年から活動を始めたこのレーベルは主にJonny NashとSuzanne Kraftの作品をリリースする場所になっているが、ニュー・エイジからバレアリックにアンビエントやドローン等の音楽性の境目を無くしたリスニング性の高い音楽が特徴で、特にアルバムに力を入れた構成力が耳を惹き付けている。本作はそんなレーベルの主軸二人による共同作品だが、今までに二人がソロで手掛けてきた音楽性が反映されながらより抽象度を高めた静謐なアンビエントへと至っている。正にタイトル通りのようにモノクロな電子音のドローンから始まる"Photo With Grey Sky, White Clouds"は物悲しく囁くような繊細なピアノが現れて、薄っすらとした電子音の持続にそっと情緒を付け加えるが、大きな展開はなく静寂さが際立つオープニングだ。"Refractory Cafe"では朗らかなエレピに合わせて弾力のあるウッドベースが刻まれるのが目立ち、動きの多さが静けさの中に落ち着いた躍動を生んでいる。"Hanging Glass Structure"でもウッドベースや透明感のある電子音の持続が聞こえるものの多少の原始的なパーカッションがアクセントになっており、それが素朴さへと繋がっている。"Inside"は特に音の隙間を強調した曲で、微かな持続音に上に一定間隔でピアノのコードを鳴らしてある意味ではミニマル的な展開を見せ、静謐の中に響く美しさが映えるのだろう。一方で"Small Town"では静けさを発するピアノに合わせヴァイオリンだろうか、弦楽器らしき音が強弱を付けて大胆にメロディーをなぞる動きの強い曲で、アルバムの流れの中ではっと目を覚まさせる。ラストの"Time, Being"ではNashによるメランコリーなギターをフィーチャーし、そこにピアノやウッドベースに和んだ電子音も登場して、それらが一体となりぐっと切なさを誘うコンテンポラリー・ミュージックとなっているが、余韻を残す事なくさっと音は消えてしまう辺りにこのアルバムを直ぐにでもリピートさせたいと言う欲望が生まれるのだ。気持ちを高めるでもなく冷めさせるでもなく、淡々とした佇まいを保ちながら空気に馴染んでいくような快適性の高い音楽は、日常の中で心地良い環境音楽になるに違いない。



Check Jonny Nash & Suzanne Kraft
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Jonny Nash - Eden (Melody As Truth:MAT6)
Jonny Nash - Eden
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バレアリック旋風の中でまだ歴史は浅いものの一際注目を集めているMelody As Truth、それを主宰するのがギタリストのJonny Nashだ。コズミック・ディスコなプロジェクトのDiscossessionの元メンバーとして、ユニットであるLand Of Lightの一人として、そして近年ではバレアリック旋風の真っ只中にいるGaussian Curveのメンバーとしても活躍するNashは、ソロ活動に於いても秀でた作品を残しておりドローンやエコーも用いながらも音の間や静けさに惹き付けられるアンビエントを作り上げている。アルバムとして3枚目の作品になる本作、元々静寂の中にこそ存在する耽美な響きの音楽性が特徴のNashだが、更にここでは何かスピリチュアルで原始的な佇まいも纏っており、それはロンドンのみならずバリ島での録音も影響しているのだろう。開始となる"Agape"では空間を浮遊するぼやけたドローンに微睡みながらも、その中に隠れるように土着的なパーカッションが遠くで聞こえるように響いており、生命の息吹を感じさせるアンビエントな始まりだ。引いては寄せる波の如く繰り返されるレイヤーのような電子音や、そして森の奥地から響いてくるような奇妙な鳴き声や打楽器の響き、"Maroon Crisp"はさながらバリ島のウブドの密林をイメージしているのか。"Down In Babakan"では研ぎ澄まされたピアノを点描風に音和を抑えて鳴らしつつ、ガムランを導入して銅鑼や竹製楽器の異国情緒な雰囲気を生み、どちらかというと瞑想を手助けするニューエイジ寄りな作風だ。"Police Bribe"でも柔らかな鐘の音色や打楽器を用いてガムランの手法を取り入れているが、そのゆったりと胎動する生命的な響きの間に繊細でか弱いピアノ薄いパッドを埋め込んで、しみじみと染み渡るメランコリーが湧き出しいつしか黄昏れてしまう。『Eden』と言うアルバムが示す言葉通りに、なる程確かに本作は現実の世界から逃避し俗世の享楽とは無縁の楽園的な世界にも思われ、これもまたバレアリックという系譜に連なっている。ストレスとは無縁の桃源郷への入り口は、本作を聞けば開けるだろう。



Check "Jonny Nash"
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Gaussian Curve - The Distance (Music From Memory:MFM018)
Gaussian Curve - The Distance
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音楽のマジックが起きるなら、きっとこんなユニットだとは思わずにいられない組み合わせ、それが現代音楽やバレアリック面から再評価著しいGigi Masin、Melody As Truthを主宰するギタープレイヤーのJonny Nash、そしてイタリアのディスコやバレアリックを掘り起こすMarco Sterk AKA Young MarcoによるGaussian Curve。Masinのスタジオで遊びながら音楽を作っていた事がきっかけでこのユニットが発足し、2014年にはMasin再評価の後押しを行ったMusic From Memoryから初のアルバムをリリース。それ以降はそれぞれが考えるアンビエント〜ニューエイジ〜ディスコな方面で各々の個性を見せ付けていたが、2016年にはアムステルダムで再度スタジオセッションを行う機会があり、その成果が結実したのが本作だ。各々がプレイヤーである事が各曲に強く影響しており、生演奏も電子楽器も分け隔てなく用いながら生命が萌芽するような芳醇な色彩や柔らかい響きを奏で、それらは未だ見果てぬ桃源郷への道を指し示すかのように淡くドリーミーな風景を見せる。"Breathe"ではNashによる物哀しいギターがしっとりと染み、そこに繊細なMasinのピアノやSterkによる淡い電子音が被さりながら、琴線を震わす情緒が湧き出してくる。続くタイトル曲の"The Distance"ではシルクのように滑らかで優しいストリングスとそこに連なる穏やかなリズムが先導し、徐々に空間に割って入るようにNashによる咽び泣きするギターが現れて、木漏れ日が降り注ぐ白昼夢の中を彷徨うようだ。透明感のある情緒的なシンセがリフレインする"Dancing Rain"はMasinのソロワークの延長線上にあるメランコリーな曲だが、"T.O.R."の現代音楽的なミニマル性を強調する機械的なシンセのフレーズにじっくりと感情を刺激するトランペットのソロや浮遊感を伴う電子音を配して水平方向にへと伸びていく感覚は、3人だからこそのニューエイジやバレアリックの要素が融和しているように思われる。そしてうとうと眠りを誘うぼやけたシンセから始まる"Another Place"、ここではMasinによる呟きのような声やか細いピアノ等が慈愛で包む如く鳴っており、今にも壊れそうな程の繊細な優しさに心が穏やかになっていく。何処を切り取っても一点の曇りも無い純真のような真心や優しさに満たされた淡くも繊細なアンビエントやニューエイジ、そして爽快な広がりとなるバレアリック感が自然と溶け合い、ここは天上かユートピアかと思う程の至福な音楽。Music From Memoryと言うレーベルの音楽性、そして3人のそれぞれの音楽性が見事に発揮され、淀む事のない美しきサウンド・スケープが広がっている。



Check "Gaussian Curve"
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Suzanne Kraft - What You Get For Being Young (Melody As Truth:MAT5)
Suzanne Kraft - What You Get For Being Young
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Music From Memory等のレーベルによる静謐なバレアリック/アンビエントへの注目は今や疑いのないものだが、その流れに共振するレーベルとしてUKのMelody As Truthも注目して間違いはない。Crue-l RecordsのDiscossessionの元メンバーであるJonny Nashが2014年にUKにて設立したレーベルであり、基本的にはLPでのアルバム制作にてアンビエント〜ニューエイジにも近いリスニング志向の音楽性を突き詰めていて、静寂の中に美しい情景が浮かび上がるような耽美な音が特徴だ。そんなレーベルの5作目はアムステルダムを拠点に活動するSuzanne Kraftによるもので、2015年に同レーベルよりリリースされた『Talk From Home』も高い評価を得て注目されるべき存在になっている。活動の当初はRunning Back等からモダンなニューディスコをリリースしていたようだが、それにも黄昏時のメランコリーにも似た郷愁が存在しており、その路線を更にリスニングへと向けているのが現在の作風なのだろう。本作は朧気なドローンが伸びる中に淡いシンセが長閑な旋律をなぞる"Body Heat"で、極彩色の光が交じり合い幻想的な光景を生むような開始をする。続く"Bank"はアルバムの中でも最もリズムが強調された曲だが、芳香のように立ち上がるギターや光沢のあるシンセも導入して異国情緒も匂わせる原始的な響きも。"One Amongst Others"も尖ったリズム感があり軽快さを生んでいるが、牧歌的な鍵盤使いにほっと心がリラックスさせられる。そして"Fragile"はビートレスながらも動きの早いシンセが活発なリズムに繋がっていて、夢のようなアンビエントな心地良い響きの中にもグルーヴが感じられる。"Ze"は本作の中でも最も静謐な曲だろう。音を削ぎ落としながらピアノやシンセのディレイを用いたドローンによって引いては寄せる波のような揺らぎを生み、その反復が深い瞑想状態を導くような静けさの中に美しさが際立つアンビエントだ。最後も同様にアンビエントらしい"Further"だが、ここでは空間を埋めるようにぼやけた電子音が持続する中に鈍い金属音がアクセントを付けていく動きのある曲で、盛り上がりながら感動的なラストを迎える。ぼやけた電子音の中にちょっとしたオーガニックな響きが温かさを作り、さりげなく実験的でもありながらメロウでもあり、単なるイージーリスニングとは一線を画すアルバムだ。



Check "Suzanne Kraft"
| ETC4 | 10:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Gigi Masin, Alessandro Monti, Alessandro Pizzin - The Wind Collectors / As Witness Our Hands (Diplodisc:dpl 009)
Gigi Masin, Alessandro Monti, Alessandro Pizzin - The Wind Collectors / As Witness Our Hands
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Music From Memoryからの編集盤である『Talk To The Sea』やJonny NashやYoung MarcoとのユニットであるGaussian Curveの作品により、近年はクラブ・ミュージック側からもその動向が注目されるイタリアのGigi Masin。鍵盤奏者でありエレクトロニクスも導入する実験音楽家でもあり、そして静謐なアンビエントやニューエイジのような何処か瞑想じみた要素を感じさせる音楽を制作するプロデューサーだ。クラシックからのルーツも匂わせる美しさを放つディープ・ハウスを得意とするSven WeisemannがMasinをリミキサーに起用したり、橋本徹がGood Mellowsシリーズに彼の作品を収録したりするのを知れば、Masinというアーティストについても何となく想像出来るかもしれない。『The Wind Collectors』はそんな彼が1991年にリリースしたアルバムで、同郷のマルチプレイヤーであるAlessandro Montiと鍵盤奏者であるAlessandro Pizzinとセッションを行って出来上がった物だが、ここでは当時は録音されたものの収録されなかった曲まで追加された完全版として蘇っている。シンセサイザーとピアノの音を軸にギターやベースを用いた演奏は、一切の荒波を立てる事もなく、ただただ穏やかな地平線が広がるような静かな海の景色を喚起させる。強い主張をしないシンプルで繊細なメロディー、薄っすらと淡く広がるシンセサイザーの響き、静けさの中に宿る叙情など、非常に無垢で弱々しくも飾り気のない分だけ嘘偽りなく心に響く音楽だ。クラブ・ミュージックの観点からのアンビエントとは異なるし、かと言って実験が際立つ作品でもなく、ミニマルなコンテンポラリー・ミュージックとでも呼べば適切なのだろうか。そして、この度のリイシューでは何とデモ音源や未発表のセッションも収録した『As Witness Our Hands』も追加されており、そこではMasinの永遠の名曲である「Clouds」のデモやTerry Rileyのカバーである「Medusa's Refrain」も聞ける。話題性は十分であるのは当然として、これらのセッションを含んだ盤は幾分か感情が強く出つつ実験的な面も滲み出ており、古楽やフォークにプログレッシヴ・ロックの要素等が目を出している。だが気難しく構える必要はないだろう。ただただ淡い抽象画のような美しいサウンド・スケープに耳を傾ければ、穏やかな時間が待っている。



Check "Gigi Masin"
| ETC4 | 07:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Good Mellows For Moonlight Rendezvous (Suburbia Records:SUCD1003)
Good Mellows For Moonlight Rendezvous
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橋本徹が設立したSuburbia Recordsは、正にこの『Good Mellows』シリーズの為であったのだろう。由比ヶ浜にあるバーガーショップ“Good Mellows”でのDJ経験を基に、貴重な音源を用いながらも根本はメロウな音楽の領域を広げる事を目的としたこのシリーズは、橋本が予てから手掛けている『Free Soul』のファンとは異なるクラブ・ミュージックのリスナーにもアピールする内容だ(だからこそ、逆に『Free Soul』のファンにも聴いて頂きたい)。第1弾の"週末の浜辺"から第2弾の"夕暮れ時の感情"へ、そして本作では遂に"月明かりの下のランデブー"へと夜の時間へと入った事を示す内容だ。ありがたい事に毎回アルバムには橋本自身による丁寧な曲解説が収録されているので、こんなレビューを読むよりはもうアルバムを買って聴いて読んで…と思うばかりだが、当方からも作品の紹介はしたいと思う。冒頭には2015年に残念ながら亡くなられた横田進による"Amanogawa"が配置されている。横田と言えばテクノやハウスのみならずアンビエントやディスコなど、奇才とでも呼ぶべき多彩な才能を発揮していた日本のクラブ・ミュージックに於ける先駆者の一人であり、その才能は早くから海外でも認められていた程だ。ここでは正に月明かりに下にいるような、柔らかく優しい音色が天の川のよう連なるアンビエントな曲で、今回のシリーズの幕開けに相応しいだろう。続くLexxによる"All That Is Now"、哀愁のギターが広がるフォーキーな雰囲気でぐっと湿っぽさを増す。次のDonsoによる”Waati”ではアフリカらしい民族的な歌やパーカッションも聞こえるが、可愛らしいエレクトロニクスの使い方のおかげで随分とモダンにも思える。アルバムの途中にはMark BarrottやEddie CにAndrasなど話題のアーティストの楽曲も収録されているが、夜の雰囲気ではありながらもどれも落ち着いていてパーティーの喧騒からは離れた静謐な世界観が発せられる。そして中盤のメロウさがピークに達するPortableによる"Surrender"は、全く無駄のないすっきりとした構成でメロウネスを浮かび上がらせるボーカル・ハウスで、胸を締め付けられる程に切ない。後半の聞き所と言えば間違いなくMarcos Valleによる"1985 (Theo Parrish Remix)"だろう。原曲のメロウネスを全く壊す事なくざらついたビートダウンへと塗り替えた本作は、力強いビートながらも優しく包み込む包容力に満ちあふれている。最後はジャズ・ピアニストのJessica Laurenによる"A Pearl For Iona"で、これまた波以外の音が消え去った浜辺で、しんみりと月を望むような風景が浮かび上がる情緒的な曲でラストに相応しい。多くの曲が初CD化と音楽的に貴重である事は抜きにして、ただただ橋本による夜の風景を喚起させるような想像力のある選曲が素晴らしく、『Good Mellows』という言葉通りの内容にジャンルを越えて愛すべき作品だと感じずにはいられない。さて、次は一体どんな場面、どんな時間帯へと移り変わるのだろうか。

Tracklistは続きで。
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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 08:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Gigi Masin - Wind (The Bear On The Moon Records:BAR003)
Gigi Masin - Wind

2015年の音楽的な出来事の中で、Gigi Masinの再評価を抜きにして語る事は出来ないだろう。Masinは70年代から活動するイタリアの実験音楽のアーティストで、どういう訳か最近ではSven Weisemannのリミックスを行い、またニュー・ディスコ系のTempelhofとの共同でアルバムを制作、そしてJonny NashやYoung MarcoとのGaussian Curveを結成したりと、クラブ・ミュージックの方面から注目を集めている。2014年にはオランダのMusic From Memoryから編集盤である『Talk To The Sea』がリリースされるなど、確実にMasinの再評価の動きは強くなっていた。そんな状況の中、今年になって遂にMasinが主宰するThe Bear On The Moon Recordsから1986年作である本作が遂にリイシューされたのだ。この作品は当時は500枚程プレスは終わったものの、その大半が洪水被害に遭い殆ど販売されないまま、少々のみが出回ったとされる非常にレアな物だ。ただそんな稀少性のみが特別扱いされる理由ではなく、勿論その音楽性は今も尚古びれる事もなくその当時のまま輝いているのだから、現在も評価される所以なのだろう。本作でMagin自身はシンセやピアノにギターを演奏し、そして歌まで披露しているが、他にもサックスやトランペットにベースやストリングの奏者まで率いて、限りなく静謐なアンビエントを形成している。"Call Me"ではMasinによる消え行くような物哀しいボーカルと共に朧気なストリングスや静かに浮かび上がるピアノのメロディーが、一体となり儚くシネマティックな風景を見せる。"Tears Of Clown"もやはりピアノのメロディーがとても美しいが、それは瑞々しく昼下がりの夢現な快活さがあり、アナログの柔らかいシンセとの合間から気高いトランペットが目覚めを引き起こすようだ。逆にぼんやりとしたシンセが抽象的にゆっくりとうねる"Tharros"は鬱蒼とした空気が満ちたドローン風で、室内楽を通過したアンビエント的だ。また"The Wind Song"では穏やかなシンセのコードに割って入ってくる牧歌的で和んだトランペットに涙しそうになり、"Celebration Of Eleven"では羽毛のような柔らかいシンセが反復する中に哀愁のギターやベースが零れ落ちる展開が琴線に触れ、全く汚れのない清らかな音が心身共に洗い流すような日常生活の中に存在するアンビエントとして受け止める事が出来る。その極限まで静謐で美しい世界観はBGMとして聞き流すのではなく、しっかりと相対し面と向かって耳を傾けたくなる程に真摯な内容で、部屋の空気を一変させるリスニング作品として素晴らしい。



Check "Gigi Masin"
| ETC4 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Land Of Light - Land Of Light (ESP Institute:ESP009)
Land Of Light - Land Of Light
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Crue-L Recordsからデビューした日本のコズミック代表格とも言えるDiscossessionのメンバーの一人・Jonny Nash、そしてサイケなエレクトロを手掛けるSpectral Empireの一人・Kyle Martin、その二人が新たに仕掛けたユニットがこのLand Of Light。このユニットの初の作品が40分に及ばないとは言えいきなりのアルバムなのだが、面白い事に二人の個性がぶつかり合ってコズミックやエレクトロ中心なのかと思いきや、イージー・リスニングかニュー・エイジまで遡ってしまった極楽浄土へと昇天する電子音楽となってしまった。幕開けとなる"Flares"からして神聖な光の中で幻想的なシンセ音や哀愁のギターに爪弾きされる弦楽器が浮かび上がり、意識も溶ける程に甘ったるくそして妙に宗教的な瞑想へと誘う大仰さを炸裂させ、和とも洋ともとれる音楽文化のブレンドを聞かせている。それ以降の"Bell Rock Outpost"や"A Strange Attractor"では幾分かニュー・エイジ色は弱まるものの、ギターやシンセも大袈裟に泣きっぷりのメロディーを奏でていて、サントラとかにしっくりとくるドラマティックな世界観を作り出す事に専念しているのが感じられる。Discossessionなんかもかなり快楽的なサウンドを発していたものの、あちらがまだディスコダブやロックのリズムを打ち出して現実感があったが、Land Of Lightはリズムも穏やかで完全に現世を離れてあっち側の世界に逃避するメディテーションな意味合いが強く出ているのだ。流石にニュー・エイジし過ぎていて大仰な作風に多少の押し付けがましさはあるが、有無を言わせぬリラクゼーションな音楽としての効果は抜群なのも事実だ。ただひたすら快楽志向へと突き抜けている。

試聴

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| ETC3 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |