Culross Close - Forgotten Ones (Esencia:ESC003)
Culross Close - Forgotten Ones

まだ決して知名度があったわけではない2014年、2枚組EPの『Insecurities』がKyle Hall主宰のWild Oatsからリリースされた事が起爆剤となり、一躍人気アーティストの仲間入りを果たしたロンドン出身Kieron IfillことK15。ハウスからヒップ・ホップ、フュージョンからネオソウルまで横断した自由自在なリズムと美麗なメロディーを武器とするこのアーティストは、実際にHenry WuやKuniyuki Takahashi等のアーティストと共同制作を行っている事からも分かる通り、00年代前後に繁栄した西ロンのブロークン・ビーツを現在に継承する存在だ。そんなK15が新たに立ち上げたレーベル・Esenciaにおいて力を入れるプロジェクトがCulross Closeで、これはK15名義よりも更にジャズへと傾倒しているそうで、実際に本作でもIfill自身はピアノや歌も披露しつつ、他アーティストがドラムにパーカッション、ベースやシンセにサクソフォンまでプレイするバンド形態となり、クラブ・ミュージックの枠を越えて果敢にも本格ジャズへと挑戦しているのだ。だからこそフリーフォームで曲毎に異なる姿があり、冒頭の"Fractured"では耽美なフェンダー・ローズとコズミックなArpシンセが咽び泣くような応酬を見せ、終盤に入るとけたたましく野性的なドラムが暴れる繊細さと激しさが交錯するジャズを披露。続く"Forgotten Ones"では落ち着いたフェンダー・ローズと愛らしい鉄琴がメランコリーを奏でつつ、落ち着きながらも切れ味のあるジャジー・ドラムが仄かに跳ねたビートを刻み、人肌の温もりを感じさせる音がしっとりと耳に入ってくる。ヒップ・ホップやブロークン・ビーツの要素がある"Acceptance"で00年代前後のクラブ・ジャズ黄金時代の雰囲気があり、ピアノとドラムとベースと歌のすっきりした構成はだからこそ逆に各パーツがはっきりと際立つ誤魔化しようのないもので、シンプルさを強調させながらアーバンかつメランコリーなジャズになっている。奇妙なシンセや変幻自在なドラムのビートがスピリチュアル性を醸す"Mood"はインタールード的な短い曲だが、そこから5/4の変拍子を刻む"The Tiniest Lights Still Shine"はアルバム中最も躍動感に溢れた曲で、ムーグの奇抜なコズミック・サウンドとサクソフォンの情熱的なメロディーや中盤以降ではアフロ・パーカッションが炸裂しパワフルなグルーヴを発揮するなど、一気に熱量を増して盛り上がる。そしてArpやムーグのシンセにピアノが前面に出て大人びた優雅さで舞う"Healing"で、ラストを飾るに相応しいモダンでエレガントなフュージョン/ジャズによって平穏へと還るように、うっとりとする余韻に包まれて締め括る。K15がクラブ寄りだとすると、このCulross Closeは恐らくK15のルーツ志向を実践するジャズの場であるのだろうか、しかしこの後者が単に懐古主義なのではなく両者が表裏一体としてアーティストの成熟を促す関係に違いない。Culross Close名義も注目すべきプロジェクトなのだ。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
K15 - Be Glad You Create Anything (WotNot Music:WOT030)
K15 - Be Glad You Create Anything
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Kyle Hall主宰のWild OatsやFloating Points主宰のEgloなど、人気沸騰中のレーベルからも作品をリリースした事もあってか注目を集めているロンドンの新世代アーティストであるKieron IfillことK15。しなやかなグルーヴと情緒的な雰囲気のディープ・ハウスを軸にブロークン・ビーツやフュージョンにヒップ・ホップまでと、多彩なリズム感も取り込んで作品毎に異なる豊かな才能を発揮したその音楽性は、ロンドン出身らしく西ロンのかつてのフューチャー・ジャズの系譜上にある。ダンス・ミュージックの枠である前提は変わらないが、ただ踊れるだけでない音楽的にしっかりとした構成やハーモニーやメロディーの響きが必ずあり、例えばクラブ・ミュージックなんかは聞かないというジャズファンにだって訴求する音楽性を含んでいる。最新作は過去にもリリース歴のWotNot Musicからで、このレーベル自体がK15と同じようにヒップ・ホップやディスコにネオソウルなど様々な音楽を手掛けており、その点からするとK15とレーベルの相性は抜群である事は言うまでもない。ここでは僅か3曲16分程の小規模なEPではあるが、それとは対照的にK15の豊かな音楽性を知るには十分過ぎる程の曲が収録されている。ブロークン・ビーツやフューチャー・ジャズ路線の"Be Glad You Create Anything"は優美で情緒溢れるエレピにコズミックなオルガンが絡む幕開けから、徐々にハンドクラップやしなやかなで切れのあるリズムがビートを刻み、フュージョン色の強い光沢溢れるシンセのリフで装飾するモダンなハウスだ。やはりプレイしている姿も想像出来るような楽しげなキーボードの旋律は素晴らしく、またぐっと抑えられながらも躍動するエネルギーを秘めたビートメイクは流石で、ハウスやフュージョンにジャズ等の要素が見事に一体化している。また"Communion"は序盤こそ静けさが際立つ静謐なピアノのコードが繰り返されるが、そこに踊るような耽美なエレピと弾けるキックの4つ打ちが入ってくると途端にグルーヴ感を増し、その後も物憂いなムードでしんみり情緒が続くハウスはフロア向けな作風だ。そしてラストはロービート/ヒップ・ホップ調の"You're Alive (There's Still Time)"でねっとり粘るリズムを刻み、メロウなエレピや輝きのあるコズミックなシンセを用いてぐっと温まる。収録されたどの曲も異なるリズム感でK15のクロスオーヴァー性が存分に活きており、そしれ何よりも感情性豊かなキーボードプレイが素晴らしく、ぐっと心に訴え掛ける音楽性は共通している。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki & Friends A Mix Out Session - Mixed Out (Soundofspeed:SOSR023)
Kuniyuki & Friends A Mix Out Session
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ここ数年、DJ NatureやVakulaにJimpsterなど著名なアーティストと積極的にコラボレーションを行い、プレイヤー/アーティストとしての手腕を発揮しているKuniyuki Takahashi。一連のシリーズとして続いたそのラストはロンドンの気鋭アーティストであるK15とのコレボレーションだが、K15と言えばWild Oatsからの作品を始めとしてオーガニックで情熱的な響きを打ち出してハウスのみならずブロークン・ビーツやダウンテンポやジャジーなものまで巧みに披露するアーティストで、そういった素養があるからこそKuniyukiとの共同作業は当然の如く相乗効果として働くに違いない。ここでは二人で制作した楽曲をそれぞれが解釈したバージョンで収録されているが、"Moving Minds (Kuniyuki Version)"はKuniyukiらしい人情味溢れる作風なのは当然としてフュージョンらしいの光沢のシンセが躍動し優美なエレピでしんみりムードを強めつつ、軽快ですっきりしたジャジーなマシン・ビート感で肉体を程良く揺らす。ジャズのスウィング感と呼んでも全く違和感はなく、Kuniyukiらしい熱き感情を誘発する作風が発揮されている。一方"Moving Minds (K15 Version)"も艶と温かみのあるシンセのメロディーで引っ張る点は変わらないが、全体的に慎ましくスピリチュアル性を増したモダン・フュージョンで、内面へと深く潜っていくような繊細なディープ性が際立っている。そして本作には過去にリリースされたJimpsterとの共作をTerre ThaemlitzことDJ Sprinklesがリミックスした"Kalima's Dance (Sprinkles' Deeperama)"が収録されているが、ある意味ではこれもリミックスという作業を通してのコラボレーションと解釈するのもありだろう。ジャズやファンクの要素に華麗な雰囲気もあった原曲から一転、DJ Sprinklesらしく無駄な脂を落としたつつ乾いたパーカッションも加えて枯れた侘び寂びの世界観を演出したディープ・ハウスは、全く派手な瞬間はないものの深い残響を活かしたアンビエント性によってしみじみと心に染み入る彼の作風へと生まれ変わっている。どれもアーティストの誠実さが伝わるような素晴らしい作品だが、特にDJ Sprinklesの枯れた中に存在する退廃的な美しさは圧巻だ。



Check Kuniyuki Takahashi & K15
| HOUSE13 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Wu15 - Wu15 EP (Eglo Records:EGLO48)
Wu15 - Wu15 EP
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破竹の勢いに乗るFloating Pointsが共同主宰しているEglo Recordsの新作は、WU15なる耳にした事のないアーティストだ。実はこのユニットはKyle Hallの主宰のWild Oatsからも作品をリリースしたK15、そしてEglo Records傘下のHo Tepから作品をリリースしたHenry Wuによるもので、ロンドンの新世代が手を組んだ企画なのだ。両者とも温かみのある素朴なディープ・ハウスやメロウなヒップ・ホップやR&B、そして小気味良いブロークン・ビーツまで手掛ける柔軟性があり、今注目を集めている若手である。本作はコラボとは言いながらもそれぞれのソロ作も収録しており、K15による"Love's Gambit"は優美なエレピやパッドに素朴なシンセなどのメロディーが融け合うように重なり、金属的なざらつきのあるマシンビートはヒップ・ホップやジャジーな雰囲気を発し、非常に手作り感のある構成やビートはラフながらも温かみが伝わってくる。Henry Wuによる"Shahada"はもっとMPCのプログラミングによるヒップ・ホップ寄りなビートでエッジを効かせており、そこにフュージョン風な煌きのあるシンセのメロディーがしっとりと入る事で、ファンキーなのにメロウな大人の味わいだ。WU15名義では2曲収録されていて、コズミックなシンセが反復する上に物哀しいエレピが場末の酒場感を生むねっとりダウンテンポの"Space And Time"、動きのあるメロウなエレピやシンセとジャジーな臨場感のあるビートが強調された"The Anthem"と、これらもやはりヒップ・ホップやフュージョンにジャズの要素を盛り込んでいるのが特徴だ。とても若手とは思えない渋くて大人びた世界観で、新世代ビートメイカーとしての面目躍如なる作品だ。



Check "K15" & "Henry Wu"
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 13:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Altz.P vs Being Borings - Dodop / The Romance Edit Sculptors (Crue-l Records:KYTHMAK15)
Altz.P vs Being Borings - Dodop / The Romance Edit Sculptors

関西を代表すると言っても過言ではない変態DJ・Altzが新たに立ち上げたバンド・Altz.Pは、既にライブを中心とした活動で注目を集めているが、この度正式に音源がリリースされる事となった。リリース元は瀧見憲司が主宰するCrue-l Recordsとなり、瀧見憲司+神田朋樹=Being Boringsによる新曲も収録したスプリット盤となっている。Altz.Pによる"Dodop"は女性によるソウルフルな歌もフィーチャーしているが、確かにバンドと言う形態をとっている影響か生の臨場感や躍動感を生かしたサイケデリックかつファンキーな要素が強い。密林の奥で息づく原始的な胎動が鳴り、脳味噌を刺激するアシッドなベースラインが咆哮する鈍くも強烈なダンストラックだが、中盤以降は曲調が変化してもドコドコとトライバルな地響きが炸裂するより肉感的なディスコ・ダブへと流れ込む展開が面白い。そして再度アシッドへの回帰…と10分にも及ぶトラックは中毒的に粘りながらぶっ飛んでいる。対してBeing Boringsによる"The Romance Edit Sculptors"は瀧見氏曰くロマンティックなミニマルだそうで、Altz.Pの曲に比べると随分と明快で軽快だ。コズミックなシンセや金属的な光沢のある音が眩い光を放ちながらも、実は色々なサンプルが細かく入り混じったミニマルな構成にもなっており、徐々に闇夜を抜けだして朝方の開放感へと変遷するアフターアワーズ系なドラマティックな構成が息を呑む程に美しい。両面で2曲の収録ながらもどちらも10分超えの大作で、聴き応えは十分だ。

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Check "Being Borings" & "Altz"
| HOUSE9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Tomoki Kanda - Interstellar Interlude (Crue-L Records:KYTHMAK151DA)
Tomoki Kanda - Interstellar Interlude
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Crue-L Recordsから期待の新人が鮮烈にデビュー・アルバムをリリース、かと思いきや実は12年ぶりにCrue-Lへと帰還した神田朋樹の2ndアルバムである。前のアルバムが12年前の事なので活動については不明な点も多いが、近年はレーベルオーナーである瀧見憲司とのユニットであるBeing Boringsで陽の目を浴びていた事は記憶に新しい。が調べたところによると長い空白の間には他アーティストのプロデュース、曲の提供、ミックスエンジニア、そしてプレイヤーとして音楽業界にずっと関わっていたそうだ。本作ではそんな活動から得た経験が活かされており、楽器の演奏からプロデュースにミックスダウンまで神田自身が全てを手掛けた内容となっている。その為か非常に私的で内向的とも言える湿っぽい情感が通底しているが、重苦しさとは距離を置いたある種の遊び心も溢れていてリラックスしたムードに包まれている。エレクトロニクスを基調にしながらギターやキーボードの演奏も加えた構成で、ソウルやフォークにAORやソフトロックが根底にある打ち込み系なのだが、手作り感を重視しているようで全体的な温度感は人肌程度に温もりがあり適度なざっくり感が生まれている。目玉は"Everybody Wants To Rule The World"のカバーだろうが、これはクラブの朝方にも聴きたくなるアフターアワーズ系フォークで、無駄を削ぎ落として繊細なアコギの音が染み入るようになった叙情的なアレンジだ。他の曲も大半はインストメンタルなおかげで神田によるトラックそのものに自然と耳が傾き、魂を現実のものとして描き出すようなシネマティックな世界にすっと入り込めるだろう。所謂クラブで聴くダンス・ミュージックではないが、しかしCrue-L Recordsらしく夢の世界へのトリップを約束してくれる。

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| ETC3 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Quadrant - Infinition (Basic Channel:BC-QD)
Quadrant-Infinition
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遂にライブが明日に迫ったMoritz von Oswald Trioですが、そのMoritzとMark Ernestusの伝説的ユニット・Basic Channelの名作を一つ紹介。彼らは色々な名義で活動していますが、その一つQuadrantは1993年になんとPlanet Eからリリースされた物。すぐにR & S Recordsにもサブライセンスされ大ヒットした名作中の名作ですが、僕が持っているのは2004年にBasic Channelからリイシューされた盤です。リイシューだとオリジナル盤から数曲が削除され2曲しか収録されていないのが残念ですが、それでも十分に価値のある一枚でしょう。特に注目すべきは彼らの作品の中では結構まともにダンストラックを披露していて、クラブでかかったら本当に気持ち良さそうな音である事。A面の"Infinition"では強烈な4つ打ちキックが続いていて、その上をアトモスフェリックな残響音が反射していく心地良いダブテクノ。柔らかいシンセのディレイが空間に満たされ、ほわほわな浮遊感を生み出しております。B面の"Hyperprism"もシンセのメロディーを多用した珍しいトラックですが、どことなく不安気で物悲しい感じです。ディレイやエコーは余り使用せず、ディープなテックハウス辺りに属する音ですね。しかし本作が既に1993年に生まれたいたなんて、やはりオリジネーターの力は偉大だなあ。

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| TECHNO6 | 08:20 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Max Mohr - Trickmixers Revenge (Playhouse:PLAYCD020)
Max Mohr-Trickmixers Revenge
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Kompaktとドイツ帝国の双璧を成すPlayhouseの最新作は、デビューEPから7年を経て遂にアルバムがリリースされたMax Mohr。本当に作品数が少ないので全然人気もないと思いますが、"Famous When Dead "(過去レビュー)に収録された"Old Song"が余りにも良かったのでアルバムも即購入です。"Old Song"に限って言えば哀愁を帯びた泣きのジャーマンディープハウスなんですが、アルバムは新人らしからぬバラエティーと創造性に富んだ充実した内容になっていました。ダビーな重めのリズムを生かしたテックハウスや、ブリブリなシンセサウンドがファンクネスを醸し出すディスコ風味なテクノ、陽気なピコピコなシンセが面白く可愛いテクノ、そして無味乾燥な渋いミニマルテクノとその幅の広さは一見統一性がないと思われます。ただどの曲もPlayhouseと言うレーベルの割にはストレートなダンスミュージック性を感じさせ、4つ打ちオンパレードのフロア仕様な所に統一性を見つけました。Playhouseらしいミニマルハウスは少なめですが、ビートの強さを前面に打ち出した事に僕は大変嬉しくあります。またどの曲も分かり易い明解なポップさがあるでの、Playhouseにしては少々異色かも。まあでも毒気のあるベースラインは、Playhouseが得意とするアシッディーな点を上手く強襲したりもしていますね。新人と言う事を考えると、充分過ぎるアルバムでした。

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Check "Max Mohr"
| TECHNO4 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |