Kim Brown - Pleasuredome Continuum EP (Needwant Recordings:NEEDW 056)
Kim Brown - Pleasuredome Continuum EP
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Sven Weisemannの変名でありつつ当初は謎のアーティストだったJouemや全く経歴の分からないProstituneらを送り出してきたJust Another Beat自体も派手な活動をするでもなくミステリアスな佇まいを発しているが、そんなレーベルの主軸であるのがこのKim Brwon。当初はソロアーティストかと思っていたら、実はJi-Hun KimとJulian Braunの名からアーティスト名を取ったユニットである事が判明するなど、やはりその幻のような存在感は他のレーベルメイトと同様だ。柔らかい有機的な音色や美しい電子音のパッドを活かしたディープ・ハウスは、静謐の一言でダンス・ミュージックと言うよりはリスニング性が強く、気品ある響きは熱狂や興奮とは真逆の快適性に優れている。しかし目下最新作である本作は過去のどの作品よりも躍動感を増してダンス寄りに接近し、明らかに夜のフロアを意識した音楽性へと向かっている。"Helical Scan"はそんな躍動感をエネルギッシュで生々しいブレイク・ビーツで表現しており、そこに羽毛のようにふわっとしたパッドが幻想的な旋律を被せながら、真夜中のダンス・フロアから朝焼けが登ってくる時間帯にかけての雰囲気を伴った清々しい高揚感を得たエモーショナルな展開をし、ダンスでありながらもKim Brownらしい情緒豊かな作品だ。同様にブレイク・ビーツを用いた"Ceramic Unicorns"は疾走するのではなく抑えめのビート感で、マイナーコード調のか細いパッドにディレイをかけながら奥深い空間演出を行うが、ざくざくとした荒々しいハイハットなどのリズムがオールド・スクール感を強めている。そして他にはLet's Play Houseなどからもリリースする新興勢力のEarth Boysと、ブリストルのニューカマーであるKembackがリミックスを提供している。"Helical Scan (Earth Boys Remix)"は原曲の雰囲気を全く損なわずにリズムはフラットなディープ・ハウスに均し、その分だけ水平線をすっと滑っていくような心地好い浮遊感が生まれており、透明感のある上モノも上手く綺麗に活きたリミックスになっている。対して"Ceramic Unicorns (Kemback Remix)"は原曲よりも厳ついキックを用いて杭を打ち込むような力強い4つ打ちを刻み、反復するヒプノティックな上モノやアシッド寄りなドラッギーなベースラインも強調して、ピークタイム向けのパワフルなハウスでがらっと様相を変えているが、このEPの中では単純に一番盛り上がれる印象だ。Kim Brownにしては随分と荒ぶれたリズムを刻むダンス性の強いEPではあるが、それと共に流麗でエモーショナルなシンセワークも健在で、彼等の魅力を損なわずに新たなる魅力も獲得している。



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| TECHNO14 | 11:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kim Brown - Wisdom Is A Dancer (Just Another Beat:JAB 12)
Kim Brown - Wisdom Is A Dancer
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Kim Brownというソロワークっぽい名前なものの、実はJi-Hun KimとJulian Braunの名前を拝借したそのまんまのユニットである二人組は、ベルリンの柔らかめのディープ・ハウスを得意とするJust Another Beatの主力アーティストの一人だ。ちなみに同レーベルには他にSven WeisemannやProstituneも作品を提供しており、決してメインストリームを歩むような派手さはないものの、ベッドルームにも耐えうるリスニング性の高い音楽性で統一感を持っている。Kim Brownも2013年に同レーベルより初のアルバムである『Somewhere Else It's Going To Be Good 』(過去レビュー)をリリースしており、柔らかく繊細な電子音によって洗練された気品と淡い情緒を溶け込ませたディープ・ハウスを聞かせ、新人ではありながら流行に左右される事のないクラシカルな存在感さえ発していた。それから3年、ようやく2枚目となるアルバムが到着したが、良い意味で前作から変わりがなく、羽毛のような軽く柔らかさを持った電子音による穏やかなディープ・ハウスを鳴らしている。始まりの"Rehearsed Engineering"では変化球的なリズム感につんのめりつつも、清流が湧き出すような透明感のある上モノがゆっくりと流れ、じわじわと仄かな情感が溢れ出す事でアルバムの開始を告げる。続く"Optionism"は刺激的なハンドクラップと柔らかいキックが端正な4つ打ちを刻み、幾分か夜のダンス的なムードが現れるも、揺らめく上モノの電子音は官能的でしっとりとした質感を含む。やはりアナログ感のある4つ打ちのキックを刻む"Everything But A Piano"は電子音の奥にはピアノ等の有機的な音色が密かに隠れており、実は動きのあるベースラインとも相まって落ち着きながらも躍動を伴うディープ・ハウスだ。特にピアノの音色を強調した"Millions"や"Transparent "はクラシカルで気品が漂い、音の隙間を強調するようなシンプルな作風だからこそピアノの旋律がより際立ち、波が引いていくような余韻を残す。終盤の"We Are Elementary"ではクラシック的なストリングスが美しく伸びて、生っぽいキックやスネアとの相乗効果で人肌の温もりが伝わってくるようだ。何処を切り取っても真夜中の興奮を誘うダンス・ミュージックらしさはなく、昼下がりから夕暮れ時のうたた寝してしまう時間帯にぴったりな穏やかで物静かな響きが心地良く、前作に続きノスタルジーに包まれる良作だ。本作も以前と同様にアナログ盤にはダウンロード・コードが付いてくるのも、非常にありがたい。



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| HOUSE12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
I'm Starting to Feel Okay Vol.7 (Mule Musiq:MULE MUSIQ CD 53)
Im Starting to Feel Okay Vol.7
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恐らくダンス・ミュージックで括られるレーベルの中でも、Mule Musiq程に幅広く才能あるタレントを抱えたレーベルを他に列挙するのは難しいだろう。例えばこのレーベルに所属するアーティストだけでパーティーを行ったとしても、それはフェスティバルとして成立してもおかしくはなく、間違いないのない審美眼と継続してリリース出来る運営力を兼ね備えた日本が誇るべきレーベルだ。そのように多くのタレントを抱えているからこそ、多様な個性を一つに集約するコンピレーションの体裁はMule Musiqに適しているのだろうか、近年は2年おきにショーケース的なコンピレーションをリリースしている。本作はその第7弾でここ2年間にリリースされた既発の曲や、また本作の為に制作されたであろう新作までが纏められており、例えレーベルに興味が無くとも参加したアーティストの豪華さに惹き付けられてもおかしくはない。レーベルに初参加となるLord Of The IslesやFrankey & SandrinoにKim Brown、または蜜月の関係を築いているEddie CやOskar OffermannにFred P、そして日本からはお馴染みのKuniyuki TakahashiにSauce81、その他に多くのアーティストが収録されているのだが、その幅の広さと各々の素質の高さが際立つ人選に頭を垂れる思いになる。Eddie Cによるサンプリングをベースとした生っぽいニューディスコの"Flying Blue"、Rubiniによるエレクトロニックな質感を活かしたディープ・ハウスの"Still Clock"、Kuniyukiがニューウェーブからの影響を受けて退廃的な雰囲気を打ち出した"Newwave Project #11"など、それぞれの個性は自然と表現されながらそのどれもがフロアに即したダンス・ミュージックである事を外れない。また、Bell Towersによる柔らかな音色とゆったりとしたグルーヴで広がるディープ・ハウスの"Midday Theme"、Fred Pによるエモーショナルなパッド使いが素晴らしいテック・ハウスの"Days In Time"辺りを聴くと、Mule Musiqが決して真夜中の享楽的なクラブで踊る事を目的とした音楽だけではなく、リスニングとしても耐えうる普遍性も目指している事が感じられる。意外なところでは奇抜なエレクトロニカを奏でるGold Pandaが変名のDJ Jenifaで"Dresscode"を提供し、Gold Pandaとは異なりシカゴ・ハウス風の乾いたビートで不良的なハウスを披露してたり、またAril Brikha & Sebastian Mullaertが"Illuminate"で彼等の個性を発揮したトランス感の強いミニマルなトラックを提供していたり、レーベルに控え目程度ではあるが新風を吹き込んでいる。既に大御所レーベルとしての存在感がこれだけのアーティストを集約出来るのだろうが、それでも尚レーベルの質の高さが全く失われないのは、やはりレーベルを主宰するToshiya Kawasakiによるセンスの賜物に違いない。



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| HOUSE11 | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Mood II Swing - Strictly Mood II Swing (Strictly Rhythm:SRNYC022CD)
Mood II Swing - Strictly Mood II Swing
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90年代のNYハウスは正に黄金時代、兎にも角にも雨後のタケノコようにハウス・ミュージックが量産され、そしてそれらは今も尚燦然と輝くクラシックとして現代へと語り継がれている。多くのアーティストが生まれ、育ち、一時代を築き上げたが、そんな時代の空気を目一杯吸い込んだ作品が、Mood II Swingによる3枚組コンピレーションの本作だ。Lem SpringsteenとJohn Ciafoneの二人組によるユニットは、Nervous RecordsやKing Street SoundsにCutting Traxx等のハウスの名門レーベルから作品をリリースし、またその手腕が買われハウスのみならずR&Bやポップ方面からもリミキサーとして起用され、そのアーティストとしての音楽性は評価も名高い。つまりは彼等は完全なるプロダクション・チームであり、NYハウスと呼ばれる音楽の立役者の一人(いや、二人か)と呼んでもよい存在だ。作風自体が何か特徴があるかと考えるとそうでもなく、スムースーなハウスの4つ打ちの上に丁寧なコード展開やメロディーを載せて、実直に温かくソウルフルな雰囲気に染めるシンプルかつ丁寧な、つまりは非常にクラシカルなスタイルを貫いている。だからこそ、今になってこの様にコンピレーションが企画されても、時代に影響を受けない音楽性がある事でハウスの素晴らしさを伝える事が出来るのではないか。冒頭の"Do It Your Way"からして滑らかなハウス・グルーヴと控え目に耽美なリフを軸に囁くようなボーカルを用いたベーシックを守るハウスであり、決して派手さを強調する事はない。続く"Living In Ecstasy (Mood II Swing NY Mix)"はもっとソウルフルなボーカルが前面に出て、飛び跳ねるような軽快な4つ打ちと綺麗目のメロディーが伸びる心がウキウキとするハウスで、もうこの時点でハウスの魅力が全開だ。更に数々のMIXCDに使われるハウスのクラシックである"Closer (King Street Moody Club Mix)"は、このシャウトするような熱量の高いボーカルに情熱的に展開されるコードや生っぽさも残したラフなビートも相まって、体の芯から熱くするようなソウルフルな感情が爆発する。オリジナルの素晴らしさは当然として、ハウスへと系統していた時代のEBTGやトランシーなBTの曲等を見事にアンダーグラウンドなハウスへと生まれ変わらせたリミックスも収録しており、それらもMood II Swingらしい人間味と温度感のあるハウスなのだから、リミックスと言えでも彼等の音楽性が十分に反映されたものとして見做してよいだろう。全33曲で4時間20分のお腹いっぱいなボリュームでオリジナルとは別にダブバージョンでも収録されている曲があり、もう少し曲を絞った方がより質を高めつつ聴きやすくなるのではと思う点もあるが、Mood II Swingの魅力を伝える観点からは問題はないだろう。ハウス・ミュージックの入門としても適切な作品だ。



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| HOUSE11 | 12:00 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Grandbrothers - Ezra EP (FILM:FILM001)
Grandbrothers - Ezra EP
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ドイツに新しく設立されたFilm Recordingsからのカタログ第一番は、鍵盤奏者のErol SarpとコンポーザーであるLukas VogelのユニットであるGrandbrothersによる初の作品。当方はJust Another Beatで活躍するKim Brownと、UKの大ベテランであるGreg Wilsonがリミックスを提供している事で反応したが、どうやら各レコード店でも即売り切れ続出となり注目を集めているようだ。A面のオリジナル2曲である"Ezra Was Right"と"Notbrause"は、どちらも静謐なピアノソロやコード展開が際立っており、そこにエレクトロニクスを加えた非常に慎ましいモダンハウスとなっている。ピアノを軸に置きながら数少ない音でシンプルに構築されたハウスは、無駄無くすっきりと洗練された分だけよりピアノの美しい響きをより強調し、クラブ・ミュージックと言うよりはまるでサウンドトラックにも思われる世界を生み出している。そして裏面のリミックス作品も秀逸で、流麗なピアノのコード展開はそのままにをパーカッションやキックを強めて流れるようなハウスのビート感を打ち出した"Kim Brown Iron Rave Remix"と、哀愁に満ちたギターカッティングに力強い雄叫びや壮大さを演出するSEを加えて、空へ上り詰めるようなブギーかつバレアリック感を打ち出した"Greg Wilson & Derek Kaye Remix"は、オリジナルよりもダンスフロアでより魅力的に聞こえるに違いない。曲自体が非常に強い個性を放っているのでアフターアワーズの即戦力になりそうな気はするが、ホームリスニングとしてもお勧めしたい素晴らしい一枚だ。



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| HOUSE9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kim Brown - Somewhere Else It's Going To Be Good (Just Another Beat:JAB 08)
Kim Brown - Somewhere Else Its Going To Be Good
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2009年に始動したディープ・ハウスをリリースするベルリンのJust Another Beat。まだ知名度もないアーティストを手掛けているが、以前には今ではSven Weisemannの変名と明らかになっているJouem名義の作品もリリースしたりと、アンダーグラウンドかつカルトな活動が一部で注目されているようだ。そんなレーベルから新たに送り出されたKim Brownは、ソフトな音質と厳かな佇まいのディープ・ハウスからまたもやSven Weisemannの変名かと予想していたが、蓋を開けてみるとベルリン出身のJi-Hun Kim & Julian Braunによるユニットである事が判明した。Kim Brownは2012年にJust Another Beatからデビューし2枚のEPをリリースしているが、本作はその続編とでも言うべき初のアルバムである。デンマークの小さなコテージで制作されたそうだが、その影響かどの曲も非常に内向的で落ち着いた叙情が漂うディープ・ハウスとなっていて、所謂フロアの享楽的な喧騒からは遠く離れている。角の取れた幻想的なパッドがエレガントに装飾しながら、物悲しいエレピやピアノが繊細かつ丁寧に配置され、真っ白な霧の中で微睡みに溺れるようなふんわりとした心地良さが特徴だろう。乾いたようなリズムトラックはアナログマシンによるものだろうか、オールド・スクールな懐かしい響きがあり、感情豊かな上モノに対してさっぱりとしたリズムが作品全体が重くさせる事もなく適度にバランスをとっている。重圧があるアッパーに盛り上げる曲は皆無だが、ベルリンから生まれるディープ・ハウスの時流を意識したであろう気品漂うクラシカルな響きが、リスニング系のアルバムとしての完成度を高めているのだ。淡いノスタルジーに満たされたディープ・ハウスは、Mojuba Recordsが好きな人には間違いなくお気に入りになるであろう。筆者はアナログで購入したが、DLコードも収録されているのでご安心を。



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| HOUSE9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Terry Lee Brown Jr. - Terry's Cafe 10 (Plastic City:PLACCD051-2)
Terry Lee Brown Jr.-Terry's Cafe 10
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テクノ帝国ドイツにはまだまだ自分の見知らぬ音楽が埋もれています。今日はドイツでディープなテックハウスをリリースするPlastic Cityの看板アーティスト・Terry Lee Brown Jr.のMIXCDを聴いてみました。Terryは既に10年以上も音楽活動をしているベテランらしいのですが、驚くべき事に毎年の様にこのMIXCDシリーズをリリースしているので今年で10作目です。10年も出していれば最初期と現在の音を比べたりして、その時の流れも掴める意味では面白いですね。さて10枚目の本作のDISC1は現在の時流に乗っ取った、ミニマルでディープなテクノ/ハウスを披露しております。Poker Flatの音などが好きな人にしっくりくるフラットで冷ややかなミニマルテクノですが、少ない音数ながらも無駄を排したその構成でインテリなセンスを感じさせます。またうっすらと色気を出していて、決して無表情にならずに情緒を伴っている事は心地良さも演出していますね。最近の田中フミヤに色気を足した感じと表現すれば分かり易いでしょうか。そして僕が気になっていた"Terry's Classics"と冠されたDISC2ですが、こちらは正にクラシックを惜しみなく使用しております。Link(Global Communication)、Hardtrax(Richie Hawtin)、Maurizio、David Alvarado、Villalobos、Mr. Fingers(Larry Heard)らの名作と言われるトラックが豪華に並んでいて、Terryが影響を受けた音楽を体感する事が出来ます。DISC1に比べるとMIXCDとしてはまとまりが無いのですが、素直に古き良き日を思い出させてくれて感慨深い内容ですね。ここに収められているクラシックスは作品としては古くても、時代が変わろうともその輝きが失われる事は決してないのでしょう。

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| HOUSE3 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |