2024/2/16 Reprise @ Womb
今では世界的なDJにまでなったDJ Nobuがここ日本で2021年の夏より主催しているパーティーがRepriseだ。「ダンスミュージックの反復するビートのように、当たり前だった穏やかな日常を時代に合わせて進歩しながらも繰り返し続けていけること」という思いが込められているようで、丁度コロナ禍の中で立ち上げられた事も影響していたのだろう。現在に至るまでにも何度も開催され、その度にDJ Nobuが皆に聞いて欲しい期待のDJや実力あるベテランを選び抜き、前衛的にダンス・ミュージックの開拓を行ってきた。そして今回の目玉は各々がDJ/ライブアーティストとての熟練者であるSatoshi Tomiie & Kuniyuki Takahashiによるレアなライブセッションが日本初披露と、貴重な体験の一夜が待ち受ける。
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| EVENT REPORT7 | 21:38 | comments(0) | - | |
Satoshi - Ambivalent (Selected Works 1994-2022) (Soundofspeed:SOSR030)
Satoshi - Ambivalent (Selected Works 1994-2022)
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2017年にYoung Marco主宰のSafe Tripからリリースされた『CZ-5000 Sounds & Sequences』(過去レビュー)によって、一躍注目を集める事となった双子ユニットであるSatoshi & Makoto。長い間、CZ-5000という古い時代のシンセサイザーを駆使してひっそりと作り上げてきた楽曲群はアンビエント/ニュー・エイジの方面で評価され、制作から長い時間を経てリリースされたにもかかわらず尚その響きは新鮮で、素晴らしい曲は時代を越えていく事を証明していた。その後、ユニットの一人であるSatoshiは2020年に初のソロ作『Semi-Vintage』(過去レビュー)をリリースしたのだが、ダンスとアンビエント/ニュー・エイジのバランスを取りながら相も変わらぬCZ-5000を主体としたメランコリーな響きの楽曲を披露し、音楽的才能は最早疑いようのないものとなった。それから3年、遂にSatoshiによる初のアルバムである本作もリリースされたのだが、タイトル通りにこの30年の間に制作された曲が収録されているそうで、A面には比較的近年作が、そしてB面には90年代制作の曲が纏められているそうだが、性質としてはダンス寄りの前半とリスニング寄りの後半という傾向が見受けられる事から、自然とシーンを意識したかのようにも思われる。アルバムは揺らぐような浮遊感のあるシンセの重なりの中に耽美なピアノを潜めて実に優雅に舞うようなノンビートでアンビエント調の"Sazanami"で始まり、そしてしっかりと4つ打ちを刻んで大らかに闊歩するようなビート感が心地好いハウス調の"Coastlines"でもCZ-5000の素朴ながらも透明感のある響きが牧歌的で、和風バレアリック・ハウスとでも呼ぶべきか。A面で特筆すべきは"New Dawn"で現在注目を集めるBenedekとKunyuki Takahashiをフィーチャーしているのだが、Satoshiによる琴線に触れるメランコリーなメロディーとコードを軸にKuniyukiによる有機的なパーカッションの響きとBenedekによる哀愁ふんだんなギターも織り込む事で生々しいライブ感もあり、今までの作品群の中でも突出した狂おしいまでの叙情性を持ったハウスを聞かせている。A面はこのようにリズムもしっかりと入っており、Satoshiがダンスフロアも意識するようになったのかと思われる作風だが、対してB面は基本的にノンビート主体でありその意味では従来のSatoshi & Makotoのようにベッドルーム内で黙々と作り続けてきたであろう路線を踏襲している。ノンビートながらも緩やかに上昇と下降を繰り返すようなシンセのシーケンスが永遠の如く続き何だか夢想に耽けてしまうような"Chimney Pipes"、モヤモヤと不鮮明なシンセと広がるようにディレイがかけられたシンセによる重層的な響きが無重力感を生み出し正にタイトルのように雲をイメージさせる"Behind The Clouds"、美しいパッドの上で小刻みに動き回る可愛らしいシンセがほんのりとビート感を生みつつも何処か内省的で物静かに叙情性を発する"Aerial View"など、どれも素朴で穏やかなアンビエント・テイストだ。このようにアルバムの前半と後半で作風にやや変化は見受けられるものの、CZ-5000を舐め尽くすように研究し利用したシンセの牧歌的な響きがSatoshiの音楽に統一感を持たせており、揺るぎない説得力を持ったメランコリーなエレクトロニック・ミュージックが素晴らしい。



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| TECHNO16 | 21:58 | comments(0) | - | |
Takashi Sekiguchi - Bamboo From Asia Plus (Silent River Runs Deep:SR2D-1012)
Takashi Sekiguchi - Bamboo From Asia Plus
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2018年発足、東京を拠点に運営されるSilent River Runs Deepはアンビエント/ニューエイジを中心に、流行とは無縁の名作の復刻を行っているが、各作品のジャンルは異なれどもどれにも共通するのは秘境音楽としてのレフトフィールドな感覚で、その意味では大きな括りとしてニューエイジ系のレーベルと捉えられる。2022年には日本の霊的でさえもあるアルバムを3枚も復刻させたのだが、その内の1枚が今日紹介する本作で、関口孝による1998年作『Bamboo From Asia Plus』だ。元々は日本の環境音楽の先駆者である芦川聡によって設立されたサウンド・プロセス・デザイン社が、傘下にCrescent(吉村弘やイノヤマランドもカタログに入っている)というレーベルを立ち上げてリリースしていた作品なのだから、何となく音楽の方向性も掴めるのではないだろうか。なのでアンビエント/ニューエイジという大きな枠組みの音では間違いないが、そこに東南アジアで吸収した民族音楽の影響も匂わせるアコースティックな演奏も用いて、フォークやワールド・ミュージックといった要素も見受けられ、何だかそういった異国を旅しているかのような錯覚さえも感じさせる。空間を感じさせるギターの残響、軽やかで素朴な民族パーカッションの緩やかなリズムに導かれる"ペンション・ノーヴァ"、物静かで何処か辺境の田舎的な感覚の曲によってアルバムは開始する。口琴であろうビヨンビヨンした奇妙な音のループに弦楽器を合わせて静謐さが強調された"キムとムックリ"、民族的な打楽器のミニマルなリズムで深く意識へ潜り込んでいくような"推移"と、序盤から広大なアジアの何処かに居るが如く辺境のミステリアスで霊的な感覚が貫きアジアのサウンド・スケープか。何故か日本からは横浜の地だろうか"山下公園にて 黙祷"という曲もあるが、ここでも民族打楽器の揺らぐような穏やかなリズムに引きずられ和の笛や琴が素朴な響きを添えて、最先端の都心とは真逆のよりシンプルでより素朴な原始的な生活の匂いが広がっている。最もニューエイジらしいのは"Wave (オリジナル・バージョン)"で、和楽器を用いて何処か深い山奥の寺院で鳴っているような荘厳な響きがあり、ノンビートな事もあって美しくも神秘的だ。そこに続く"大正琴ソング (オリジナル・バージョン)"は逆にタイトル通りに大正琴を用いた祭事のような賑やかな民族音楽で、大衆が音楽に合わせて陽気に踊っている風景が浮かび上がる。日本を含めたアジアを旅するアルバムとでも解釈すればよいのだろうか、国境を越えて各国の異文化に触れながら情景を浮かび上がらせるサウンド・スケープは、穏やかながらも神秘的だ。ここ数年のニューエイジ・リバイバルの中で、本作も注目すべき一枚だろう。尚、今回の初バイナル化に際しKuniyuki Takahashiがリマスターを施している。



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| ETC(MUSIC)5 | 16:40 | comments(0) | - | |
Daisuke Matsusaka - つねひごと・WAVE 〜あなたが世界を鳴らしている (Off-Tone:OFTCD-002)
Daisuke Matsusaka - つねひごと・WAVE 〜あなたが世界を鳴らしている
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エレクトロニック・ミュージックやクラブ・ミュージックとも密接な関係にありながら特に此処日本においてはパーティーやフェスではなかなか主軸とならないアンビエント・ミュージックだったが、その状況に一石を投じたパーティーがダンスフロアでアンビエントを展開して踊る事から離脱した「Off-Tone」で、それはいつしか野外へと巣立ち「CAMP Off-Tone」という究極的な野外アンビエント・フェスへ進化を遂げ、名実共に現代アンビエントのリーダー的存在となった。そのパーティー/フェスを主宰しているのが松坂大佑で、本人はDJだけでなくサウンド・デザイナーとしても活躍しながら前述の「Off-Tone」やフジロック運営にも携わるなど、常に音楽と共にある人生を送っているようだ。そんな彼が周りに存在するあらゆる音、そして自分達もがその音の一部である事を気付き直してもらうために取り組んだアルバムが、この『つねひごと・WAVE 〜あなたが世界を鳴らしている』である。タイトルにある2つの言葉は、本人に依るライナーノーツをかなり要約すると当たり前の日常に存在する音の「つねひごと」と環境音からメロディーを生成する「WAVE」を意味しているそうで、制作方法からしてコンセプチュアルで正にサウンド・デザイナーらしく思われる。そしてコロナ禍において活動の場を失ったアーティストに対し助力になればと、「CAMP Off-Tone」に出演した井上薫、ワタナベヒロシ、Sound Furniture、高橋邦之、Hakobune、今西紅雪といったアーティストも制作に迎えて完成したのが本作でなのだ。Sound Furnitureによるフルートとバイオリンの優美な響きの奥にひっそりと鳴る小鳥の囀りが極自然に調和する"馨りあうこと"は、春の石神井公園の環境を用いているそうだが、確かに桜が咲き人々がその美しい光景に歓喜する長閑な公園の風景が浮かび上がってくるようなアンビエントだ。"緑となったあなたの中で"では井上がギターとヴィブラフォンを演奏し生命の営みのような響きを聞かせつつ本物の自然の生命の環境音と被らせて共鳴を果たし、その一方で空間の間が和の寂静を際立たせて、豊潤ではありながら何処か侘び寂びを感じさせる。虫の鳴き声と共に高橋による荘厳なエレクトロニクスによって自然と同化して深い瞑想を引き起こす"茫洋"、そしてHakobuneによる長い長いドローンと環境音は境目が無く融合しこれぞアンビエント的な"顕れた心と時間"と、各曲に対しアーティストの個性も的確に反映されている。そしてワタナベによるピアノやストリングスにブラスが大々的にフューチャーされた"Space"は圧巻で、宇宙から何か生まれる胎動かのような重厚で圧倒的なスケール感を持つアンビエントで、今生きているこの時間さえもが美しく感じられる。全編ノンビートな構成、また環境音も特別な瞬間や場所ではなく公園や自宅前に街の中といった極日常的な素材を用いて、正にアンビエント=環境の音楽として表現したアルバムは自然体とも言えよう。そして束縛からの心の解放を促す要素もあり、貴方にとってきっと癒やしの時間を提供してくれるに違いない。



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| TECHNO16 | 22:00 | comments(0) | - | |
Soichi Terada - Asakusa Light (Rush Hour:RHM041CD)
Soichi Terada - Asakusa Light
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2015年のアンソロジーアルバムである『Sounds From The Far East』(過去レビュー)はゲーム音楽方面で注目を集めていた彼を、元居た場所であるハウス・ミュージックのシーンへと返り咲かせた記念碑的な作品であり、それは90年代当時の彼を知らなかった人をも魅了するタイムレスなハウス・ミュージックとして重要な一枚となった。その人こそジャパニーズ・ハウス黎明期のレジェンドである寺田創一だ。そのアルバム以降は世界的なジャパニーズ・ハウスの再発見の流れが生じ、氏の旧作も掘り起こされつつ新たなハウスを制作する事にも着手した事で世界的な知名度を獲得し、今や世界各地にライブ出演として呼ばれたり、または現行アーティストであるKuniyuki TakahashiやSauce 81との特別なライブセッションも行ったりと、アーティストとして90年代以上に強い存在感を放つ程になっている。過去のアーティストではなく今という時代を象徴するアーティストとして第二の春を迎えているといっても過言ではなく、だからこそ新たな作品が求められていただろうに違いないが、ようやく25年ぶりとなるアルバムが蜜月の関係を築いたRush Hourよりリリースされたのだ。しかしこれが氏の過去のハウス・ミュージックの道をそのまま真っ直ぐに歩んだ内容で、まあ何ともファンへの期待通りの回答なのだから悪いわけがなく、クラシカルやタイムレスといった表現が相応しいアルバムだ。幕開けを飾る"Silent Chord"はファイルターで変化を付けていくキーボードにキラキラとした効果音や弾力感のあるベースでじわじわと高揚感を増していくが、そこから敢えて一切キックを入れずにエモーショナルながらも焦らしていく展開が憎らしく、アルバムのそれ以降への期待を含ませる絶妙な入りだ。そこに続く"Double Spire"でようやくキックの4つ打ちによるハウスビートが現れ、幽玄なパッドや切なく叙情的なピアノコードなど何だかは90年代フレイバーが漂い懐かしく、華美ながらも派手になり過ぎずにすっきりと無駄を省いたトラックだからこそメロディーが際立つのだ。"Bamboo Fighter"でも弾けるような快活な4つ打ちにキャッチーなシンセコードのループを尊重しつつ、そこに味付けとして尺八風な笛の音色がエキゾチックでミステリアスな空気を持ち込んでおり、こういった日本的な味付けは氏の遊び心としてもユニークだ。4つ打ちだけではなく"Marimbau"ではエレクトロっぽいベースや叩き付けるようなタフなキックが不規則なビートを刻み、ピコピコとした可愛らしい電子音を散りばめたこの曲は何だかゲーム音楽のようにも思われ、その後の"Takusambient"も序盤ビートレスな流れにピコピコ8ビット調な電子音を重ねたアンビエント性もある曲も含め、ゲーム音楽制作に於ける活動が少なからずダンス・ミュージックの方面にも影響を及ぼしているようにも思われる。しかしどの曲にしても全体に通底するのは過去への懐かしみ、90年代というクリスタルな時代の空気だが、それもそのはず氏は30年前のフィーリングをやり直すべく「浅草ライト」と呼ぶ心の光を見つけ、制作に取り組んだのだから。古いハードウェアシンセに過去のマシン音のサンプルも引っ張り出しながら、それをPCも用いて編集する事で、過去と今という時代を結び付けたのだ。甘くもほろ苦いディープ・ハウスは正にそんな時代の空気から生まれたのだが、しかし光が聞く者を照らし出すようなポジティブなアルバムでもあり、これが今の時代の新たなるクラシックとなる名作だ。



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| HOUSE16 | 22:00 | comments(0) | - | |
Chari Chari - Mystic Revelation of Suburbanity (Seeds And Ground:SAGCD039)
Chari Chari - Mystic Revelation of Suburbanity
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2020年にChari Chari名義では18年ぶりとなるアルバム『We Hear The Last Decades Dreaming』(過去レビュー)をリリースし、クラブミュージックという枠の中に収まる事なく人種や国境を超越していくコスモポリタンな彼の音楽的個性が、特に反映されていたChari Chari名義の復活を成功させた井上薫。敢えてその名義での活動は避けていたように見受けられたが、クラブミュージックの業界に対しこの数年の間にニューエイジやアンビエントの大きな侵食があり、そういった音楽は彼が追求してきた音楽の中でも大きな部分を占めるからこそ、その業界の流れはChari Chariの復活に少なからず影響したのではないだろうか。事実として、現在ではニューエイジやアンビエントを含むダンスの枠に収まらないレフトフィールドな音楽によって、真夜中のダンスフロアの狂騒とは視点が異なる神秘的な体験へと誘うEuphonyというパーティーを青山Zeroで定期開催しており、彼の中に存在していた秘境的な音楽を制約から解き放たれたようにプレイし今まで以上にDJ=選曲家としても強い魅力を放っている。そしてその更なる成果が『We Hear The Last Decades Dreaming』のリミックス集となる本作で、Bartosz KruczynskiやKnophaといった現在のニューエイジのシーンで台頭する新星を引っ張り出し、Kuniyuki TakahashiにChidaといった日本のベテラン勢からこれからを担うであろう世代のMamazuやYoshiharu Takedaまで起用し、よりバラエティー豊かにより秘境性を強めたアルバムを完成させた。"Luna de Lobos (Kuniyuki Remix)"は言うまでも素晴らしく、大空へ飛び立つような爽快感のある原曲はそのイメージを壊す事なく、何処か未開の地の神秘的なムードを纏った上で大地の鼓動の如くアフリカン・グルーヴが力強く刻まれ、地球のエネルギーが大爆発を起こすような壮大な祝祭に満ちたトライバル・ハウスに刷新されている。圧巻というか驚かされたのはKruczynskiによる"Uluwatu Monkey Dance (Bartosz Kruczynski Remix)"で、民族的なパーカッションを用いた古代の祭事のような原曲は、ここでは幻想的な電子音によるレイヤーを用いる事で一気にモダンなニューエイジ化しており、そこに原曲のオーガニックな音も自然と同居させながら瞑想的なミニマル感で完全にKruczynski色に染め上げている。中国ニューエイジの期待であるKnophaも負けてはおらず、"Esfera de Agua (Knopha Remix)"はエレクトロニックかつ繊細で複雑なブレイク・ビーツへと塗り替えられて、インテリジェンス・テクノらしいベッドールーム内で最果ての見えない世界を夢想させるような世界観だ。しかし同じ曲でもTakedaが手掛けた"Esfera de Agua (Yoshiharu Takeda Rework)"は原曲を踏襲した上で有機的な打楽器やメロディーでライブ感を生み、そしてアジアの何処か田舎のようなのどかな雰囲気を含む牧歌性を増している。元々は電車の音を使ったオーバーチュア的な曲だったのでリミックスは難しいと思っていたが、"Tokyo 4.51 (Chida Remix)"ではフロアに即した4つ打ちのどっしりしたリズムも加えて、環境音を用いたアンビエントな面も残しつつフローティング感溢れるテクノへと作り変えており、Chidaの長いDJとしての経験が活かされた好リミックスだ。また"Fading Away (Mamazu Remix)"は有機的な原曲に対し快楽的なシーケンスのシンセベース等のエレクトロニックな響きを増したトリートメントを行い、フラットなビート感の4つ打ちを用いて何処までも上り詰めるグルーヴを纏い、異国情緒と多幸感が溢れるダンスフロアでの抜群の効果を発揮するディープ・ハウスへと改変されている。流石に井上本人が信頼足るアーティストにリミックスを依頼しただけあり、どれも各アーティストの個性とChari Chariの個性が一つになった魅力的な曲ばかりだが、本作には更に自身が施したリミックスや新曲まで収録しており、それらによって単なるリミックス集ではなくChari Chariの新たなるアルバムとしての纏まりを果たしている。オリジナル・アルバムにも劣らないここではない何処か的な神秘性、そしてダンスフロアとの適度な距離感を両立させて、これが今のChari Chariの音だという啓示のようだ。



Check kaoru Inoue
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 21:30 | comments(0) | - | |
Fumio Itabashi / Henrik Schwarz / Kuniyuki - Watarase (Studio Mule:Studio Mule 37)
Fumio Itabashi Henrik Schwarz Kuniyuki - Watarase

最先端のクラブミュージックをリリースするMule Musiqからがらりと様相を変えて、傘下のStudio Muleは古き良き時代の和モノ発掘をコンセプトにしているが、2018年にはどうしたことか前者のMule Musiqからジャズ・ピアニストである板橋文夫の1982年作『渡良瀬』がリイシューされていた。まだStuido Muleが始まった時期だからかレーベル間の都合もあったのかもしれないが、それから3年が経過して今度はStudio Muleから『渡良瀬』に収録されていた"Watarase"のリミックスがリリースされた。手掛けているのは過去にも文句無しの相性を見せていたHenrik Schwarzと高橋クニユキで、クラブミュージックにもジャズにも造詣の深い二人だからこそこうやってジャズへ取り組むのも自然の流れだろう。しかしこの二人が板橋との絡みを見せたのは初めてではなく、実は2009年には『Waking In The Naked City』(過去レビュー)に収録された"Once Again"でクラブミュージックという枠組みを越えて、三人によるセッション性の強いジャズを披露していたのだから、再度ジャズへ取り組むのもなるべくしてなる事だろう。公式サイトの説明では数年前に3人によってこの曲の再録音が行われたそうで、そこからKuniyukiとSchwarzの2バージョンへと分かれたようだが、それぞれジャズとハウスへと分かれた音楽性が打ち出されている。"Watarase (Henrik Schwartz Version)"はハウス寄りでシャッフルするようなハウスビートがミニマル性を獲得しており、原曲のピアノのコードに加え笛やモノクロームな電子音のコードなどの音色も加わり、大きく揺さぶりをかける事なく安定した流れで淡々としながらも、ゆっくりと淡い情緒が滲み出てくるような渋みがある。一方で"Watarase (Kuniyuki Version)"は4つ打ちながらもジャズ感あるキレのあるリズム感に、優雅な繊細なピアノコードやか弱い鉄琴らしき旋律、そして原曲にあった情熱的で咽び泣くようなピアノソロもふんだんに用いて、大胆に強弱の展開を用いてドラマティックなジャズ・ハウスを聞かせている。敢えて分けるならダンスフロア向けの前者、リスニング向けの後者になるのかもしれないが、何にせよ二人の音楽性が存分なく発揮されて自らの曲といっても過言でない程にまで仕上げた内容だ。どうせならこの3人でアルバム一枚作って欲しいというのは、望み過ぎというものだろうか。



Check Fumio Itabashi, Kuniyuki Takahashi & Henrik Schwarz
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | - | |
Jungle By Night - Livingstone Remixes (New Dawn:ND 004/005)
Jungle By Night - Livingstone Remixes
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レコードストアの文化を祝い活性化を促すべく発足したRecord Store Day(結果的に大手のレコード屋が恩恵を受けるなど、賛否両論の状態だが)では気になる作品もちらほらリリースされるものの、先に述べたような理由もあって当方は基本的には手を出していない。本作は2019年と2020年のRSDで限定でリリースされていたEPを後から配信で一纏めにしたもので、実は入手したかった作品なのでデジタル化は非常にありがたい。なんと言ってもシカゴハウスのレジェンドであるRon Trentや日本が世界に誇るKuniyuki Takahashiらのリミックスが収録されているのだから、喉から手が出る位に欲しくなるのも当然だ。Jungle By Nightはアムステルダムを拠点に活動する9人編成のアフロ・ファンク・バンドで、2018年に『Livingstone』というアルバムを出していたのだが、そこからシングルカットされたのが前述の2枚のEPであった。失礼ながら原曲については全く未聴だが、このリミックスだけに関して言えばアーティストの個性が的確に反映されたり、エキゾやミニマルなどの意外性もあったりと、期待に応えた内容となっている。Bruxasは知らないユニットだが音楽性としては南国のサイケデリアを目指しているそうで、"Hangmat (Bruxas Remix)"でも確かにジャングルの動物達の生命の息吹らしきサンプリングや肩の力が抜けた土着的なパーカッションを用いて異国情緒溢れるエキゾダブを聞かせ、妖艶なギターサウンドや笛の音が入れ代わり立ち代わり登場し、未開の地へと誘うかの如く。いつもは非常に神妙な音楽性が強いKuniyukiは、この"Loveboat (Kuniyuki Remix)"ではトランペットの祝祭感溢れるフレーズを用いつつ弾けるハウスビートを刻み、そして彼らしい情熱的な鍵盤ワークを織り交ぜて、ポップでファンキーかつバレアリックな高揚感を持つハウスに見事に仕立て上げている。ドイツのDJであるOceanic による"Spending Week (Oceanic 'Cornucopia' Remix)"もオリジナリティーを感じさせ、前半はキック抜きにヒプノティックな電子音のリフをミニマルに展開しつつダビーなホーンを重ね、中盤からメロディーに起伏を含ませながら変則的なキックによってズブズブ状態ながらも盛り上がっていくひりつくような緊張感を持った曲調は、C2がクラシック・オーケストラに取り組んだ時の作風を思い起こさせる。そして"Spending Week (Ron Trent Remix)"は言わずもがなTrentらしい爽快感や浮遊感のある作風は変わらず、情熱的なオルガン演奏や土着的なパーカッション乱れ打ちを用いつつディスコやファンクといった黒人音楽を根底にし、DJが作りながらもバンド感を打ち出した音楽性でJungle By Nightとの相性は最も良い事を証明している。四者四様それぞれの個性がありリスニングとしてもDJ用としても楽しめるリミックス集だが、あっと驚かされたのはOceanicのリミックスでなかなかに魅惑的だ。



Check Jungle By Night
| HOUSE15 | 18:00 | comments(0) | - | |
Sleep D - Rebel Force (Incienso:INC007)
Sleep D - Rebel Force

ここ数年ダンス・ミュージックの業界で勢いを伸ばしているオーストラリア、特にメルボルンは新たな才能が続々と生まれている。レーベル自体も活況で2013年にレーベルとして開始したButter Sessionsは、元々は音楽の交流の場として同名のブログが開設されていたのだが、それがミックスショーとなりパーティーとなり、そしてレーベルとなってからは積極的にオーストラリアからの新鋭を後押ししている。メルボルンという地元の活性化を担うそんなレーベルの主催者がCorey KikosとMaryos Syawishから成るSleep Dで、2012年にデビューした頃はまだ高校生だったと言うのだから、正に新進気鋭のアーティストだろう。そんなSleep Dによる初のアルバムだが、レーベル自体に多様なアーティストが名を連ねテクノやハウス、エレクトロやミニマルにアンビエントとゴチャ混ぜ感がある事もあり、本作も同様に一色に染まりきらずに多種な音楽性が快楽的なレイヴ感で纏め上げられている。出だしの"Red Rock (IV Mix)"は快楽的でレクトロニックなベースライン、神秘的な上モノを用いたスローなトランス風で、暗闇の深海を潜航するようなディープな曲でアルバムはじんわりと開始する。続く"Central"はダブ・ステップ風なリズムと不気味に蠢くアシッドのベースサウンドが強烈でびしばしと鞭で打たれるような刺激的な曲だが、中盤に入るとそこにアンビエンスな上モノが幻想的な装飾をする面白い作風だ。そしてヒップハウス風な弾けるリズムが印象的な"Danza Mart"は、しかしビキビキと麻薬的なアシッド・ベースやトリッピーな電子音に頭をくらくらさせられ、ダンスフロアの狂騒が脳裏に浮かんでくる。更にテンポをぐっと落としてダウンテンポながらもゴリゴリなハードウェアのローファイ感を打ち出した"Twin Turbo"、底辺を這いずり回るビキビキなアシッドのシーケンスと奇妙な電子音のエフェクトが入り交じるディープなトランス風の"Fade Away"と、勢いが抑制されたスローモーな曲もアルバムの中でずぶずぶとした粘性による魅力を打ち出しており、多彩な音楽性がそれぞれの曲の個性を更に強くしている。"Morning Sequence"では何とKuniyuki Takahashiをフィーチャーしているが、オーガニックな太鼓の響きやメロウな鍵盤の旋律を用いたディープ・ハウスな性質はKuniyukiの影響がかなり反映されており、アルバムの中ではやや異色ながらもSleep Dにとっては新機軸と言えるだろう。非常に雑食性のあるアルバムでとっ散らかった雰囲気もなくはないが、そこは全体としてローファイなレイヴ・サウンドとして捉えると、こういった何でもありな音楽として成り立っているように思われる。



Check Sleep D
| TECHNO14 | 14:30 | comments(0) | - | |
Kuniyuki Takahashi - Early Tape Works (1986 - 1993) Vol.2 (Music From Memory:MFM032)
Kuniyuki Takahashi - Early Tape Works (1986 - 1993) Vol.2
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隠れた名作から埋もれしまった未発表曲まで、時代に取り残されてしまった曲群を抜群の嗅覚を以て掘り起こすMusic From Memoryが次に目を付けたのは、テクノやハウスにジャズやアンビエントといった多用な音楽を、エレクトロニクスと生演奏を駆使してライブ性溢れる有機的な作風に仕立て上げるKuniyuki Takahashi(高橋邦之)だ。作品をリリースし出したのは1995年頃ではあるがそれまでにも音楽制作は行っていたようで、1986〜1993年に制作された音源をプライベートでカセットテープという形に残していたようだが、一体何処から嗅ぎ付けたのかMFMがそんな音源を2枚のアナログに渡って編纂している。本作はこの前にリリースされた『Vol.1』(過去レビュー)に続く第二弾で、路線としては全く変わらずに旧式のシンセやリズムマシン、そしてテープレーコーダーやサンプラー等レトロな機材を用いて、古くもどこか懐かしい響きを持ったアンビエント志向な音楽を手掛けている。"Island"は現在のムーブメントであるニューエイジそのもので、微睡んで叙情的なパッドに深い森の中で聞こえるような鳥の鳴き声らしきサンプリングを被せ、生命が宿る神秘のジャングルから大地の香りが沸き立つような桃源郷エスノ。ダウンテンポなしっとりダビーなリズムも入り、Kuniyukiらしい有機的な温かみを発するメロウなシンセに引っ張られる"Your Home"は、ドラマのロマンティックなシーンで流れるBGM的で物憂げな情景を浮かび上がらせる。後の作品に繋がるようにしみじみとしたギターの音色、生っぽいドラムやパーカッションを用いた"Echoes of The Past"は、Mule Musiqからのアルバムで見られるオーガニックなジャズ×ディープ・ハウスに開眼した作風のプロトタイプと言えるだろうか、非常に熱の籠もった感情性の強い響きはKuniyukiの特徴が顕著に現れている。重厚な湿っぽいストリングスと祈りのようなコーラスによる瞑想アンビエントの"Ai Iro"は霊的な存在感を放ち、静謐なピアノと琴らしき弦による悲哀の旋律と内向的な笛の音色を組み合わせ瞑想へと誘う"Sakura No Mizu"はそのタイトル通りに和の儚い侘び寂びの美しさが表現され、こういった音楽性には後のKuniyukiらしさが散見される。Mule Musiqからリリースする以降の熟練者としての卓越した技術による綺麗な響きや練られた構成の音楽に対し、本作はまだまだ辿々しく未完成な雰囲気も残る作風ながらも、それは素朴さへと繋がりKuniyukiの心の中からほっと温まる音楽性と自然な調和を成している。現在のアンビエント/ニューエイジの視点から見ても素晴らしいのは当然として、Kuniyukiの音楽性の初期胎動を感じられる作品として意義深い。



Check Kuniyuki Takahashi
| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Studio Mule - BGM (Studio Mule:Studio Mule 18 CD)
Studio Mule - BGM
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今や世界レベルでの重要なレーベルとなった日本のMule Musiqが、ここ数年再燃する日本の音楽にターゲットを合わせて、クラブ・ミュージックからは少し距離を置いたStudio Muleを設立したのが2017年の暮れ。それ以降、日本のシティポップのコンピレーションや日本のジャズやフュージョンにアンビエントの名作を復刻してきたが、並行してレーベル名を冠したStudio Muleというプロジェクトも進めていた。これはレーベル主宰の川崎氏によれば「特定のメンバーを持たないユニット」による「オブスキュアな日本の名曲のリワーク」を目的としているそうで、今までにもDip in the Poolの甲田益也子をボーカルに起用しMule Musiq代表格のKuniyuki Takahashiがプロデュースを手掛けて、大貫妙子による"カーニバル"を含むカバーEPの3枚をリリースしていた。懐かしい時代感を含む国産ポップスはその空気を壊さずに現代版へと生まれ変わり、昔からそれらに魅了されていた人にとっても今新たにシティポップにはまっている人にとっても、それは新鮮な風が吹くシティポップとして新しい魅力となって聞こえるものだった。その流れからのアルバムは、前述の甲田に加え渋谷系元祖と呼ばれる佐藤奈々子やシンガー・ソング・ライターの寺尾紗穂も迎えて、全てが名作カバーと呼んでも差し支えない程に充足した内容になっている。小池玉緒による"鏡の中の十月"はなんとYMO名義では唯一のプロデュースだったそうだが、ここではそのときめきテクノポップな雰囲気は損なわずに滑らかなビート感と音の厚みを増しながらも洗練したクリアな響きとなり、確かに古き良き時代感覚はありながらも今風という表現が相応しいアレンジだ。また、甘美な囁きのウィスパーボイスが特徴的な佐藤の歌も胸キュンキュンで、テクノポップなトラックに上手くはまっている。近年再発が成された山口美央子の"夕顔"はオリジナルはアンビエント・テイストの強い歌だったが、ここではエレクトロニック性を強めつつダビーな音響で奥深さも生まれており、そこに寺尾の悲壮感さえもある歌が切なさを増幅させる。そしてなんとYMOの"バレエ"のカバーまで収録されているのはテクノファンにとっては嬉しい限りだが、こちらも原曲のアンニュイで陰鬱な空気はそのままにリズムはやや力強さを覚え跳ねており、シンセベースも太みを増してファンキーなうねりとなるなど、現在のダンス・ミュージックに長けたKuniyukiの手堅いプロダクションが見事だ。大沢誉志幸のヒット曲である"そして僕は、途方に暮れる"はインストカバーだが、そうした事で清々しくも甘酸っぱい青春を感じさせるシンセのメロディーやアタック感の強い打ち込みリズムが明確に打ち出され、現代的に言えばバレアリックとでも呼ぶべきなのか、都会のネオンに囲まれたクリスタルな気分の多幸感に溢れる曲になっている。勿論前述の先行EPである"カーニバル"に"心臓の扉"や"Face To Face"も収録と、全てが名曲以外の何物でもない素晴らしいリワークが並んでおり、ジャパニーズ・アンビエントやシティポップのリバイバルの流れに乗った見事なプロジェクトだ。リミックスのようにリミキサーの新たな個性で塗り潰す如く手を加えるでもなく、シティポップをそのままシティポップとして現代風に解釈しているが、それはオリジナルへの愛が故だろう。



Check Studio Mule

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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Culross Close - Forgotten Ones (Esencia:ESC003)
Culross Close - Forgotten Ones
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まだ決して知名度があったわけではない2014年、2枚組EPの『Insecurities』がKyle Hall主宰のWild Oatsからリリースされた事が起爆剤となり、一躍人気アーティストの仲間入りを果たしたロンドン出身Kieron IfillことK15。ハウスからヒップ・ホップ、フュージョンからネオソウルまで横断した自由自在なリズムと美麗なメロディーを武器とするこのアーティストは、実際にHenry WuやKuniyuki Takahashi等のアーティストと共同制作を行っている事からも分かる通り、00年代前後に繁栄した西ロンのブロークン・ビーツを現在に継承する存在だ。そんなK15が新たに立ち上げたレーベル・Esenciaにおいて力を入れるプロジェクトがCulross Closeで、これはK15名義よりも更にジャズへと傾倒しているそうで、実際に本作でもIfill自身はピアノや歌も披露しつつ、他アーティストがドラムにパーカッション、ベースやシンセにサクソフォンまでプレイするバンド形態となり、クラブ・ミュージックの枠を越えて果敢にも本格ジャズへと挑戦しているのだ。だからこそフリーフォームで曲毎に異なる姿があり、冒頭の"Fractured"では耽美なフェンダー・ローズとコズミックなArpシンセが咽び泣くような応酬を見せ、終盤に入るとけたたましく野性的なドラムが暴れる繊細さと激しさが交錯するジャズを披露。続く"Forgotten Ones"では落ち着いたフェンダー・ローズと愛らしい鉄琴がメランコリーを奏でつつ、落ち着きながらも切れ味のあるジャジー・ドラムが仄かに跳ねたビートを刻み、人肌の温もりを感じさせる音がしっとりと耳に入ってくる。ヒップ・ホップやブロークン・ビーツの要素がある"Acceptance"で00年代前後のクラブ・ジャズ黄金時代の雰囲気があり、ピアノとドラムとベースと歌のすっきりした構成はだからこそ逆に各パーツがはっきりと際立つ誤魔化しようのないもので、シンプルさを強調させながらアーバンかつメランコリーなジャズになっている。奇妙なシンセや変幻自在なドラムのビートがスピリチュアル性を醸す"Mood"はインタールード的な短い曲だが、そこから5/4の変拍子を刻む"The Tiniest Lights Still Shine"はアルバム中最も躍動感に溢れた曲で、ムーグの奇抜なコズミック・サウンドとサクソフォンの情熱的なメロディーや中盤以降ではアフロ・パーカッションが炸裂しパワフルなグルーヴを発揮するなど、一気に熱量を増して盛り上がる。そしてArpやムーグのシンセにピアノが前面に出て大人びた優雅さで舞う"Healing"で、ラストを飾るに相応しいモダンでエレガントなフュージョン/ジャズによって平穏へと還るように、うっとりとする余韻に包まれて締め括る。K15がクラブ寄りだとすると、このCulross Closeは恐らくK15のルーツ志向を実践するジャズの場であるのだろうか、しかしこの後者が単に懐古主義なのではなく両者が表裏一体としてアーティストの成熟を促す関係に違いない。Culross Close名義も注目すべきプロジェクトなのだ。



Check K15
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | - | |
Kuniyuki Takahashi - Early Tape Works (1986 - 1993) Vol. 1 (Music From Memory:MFM027)
Kuniyuki Takahashi - Early Tape Works (1986 - 1993) Vol. 1
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ジャンルの垣根を越えて、そして特に知名度に頼らないどころか寧ろ敢えて時代に埋もれてしまった音源の発掘を積極的に進めるMusic From Memoryが、またしても素晴らしい仕事を遂行した。およそ2000年頃から作品をリリースし始めMule Musiqを拠点に日本から世界へと羽ばたいた高橋邦之は、今やこのクラブ・ミュージックの界隈では名の知れた存在だが、何とMusic From Memoryはそのデビューの遥か前の1986〜1993年に制作されたという未発表音源を掘り起こしてしまった。今までのレーベルの方向性としては世に生まれながらも不遇にも見過ごされてしまった作品に対し再度視点を向けるような流れだったと思うが、本作は既に知名度があるアーティストの完全なる未発表音源を発掘したという点において、そのアーティストの初期音楽性を体験出来る意味で興味深い。公式デビューの遥か前に制作された本作は古いシンセやリズムマシンにテープレーコーダーやサンプラー、そして彼らしくギターやフルートも用いて制作されるなど既にマルチプレイヤーとしての片鱗は見せているが、当時のクラブ・ミュージックに触発されて向かった先はダンスではないアンビエント志向な電子音楽の探求であったのだ。"Night At The Seaside"を聞いても全くビートは入っておらず、幻夢のドローンに覆われた電子音響の中にぼんやりと抽象的なメロディーやノイズにも近い音が浮かび上がっては消えるアンビエントな作風は、しかし既に邦之らしい温かい情緒が存在しており現在の作風へ繋がる点も見受けられる。続く"Day Dreams"では爪弾きのギターらしき音やベルなどが和の侘び寂び感を醸しており、山奥の寺院の中で鳴っていそうな瞑想的な音楽は現在のスピリチュアルな性質と紐付いている。明確なダンスビートではないがリズムが入った"Drawing Seeds"、内なるイマジネーションを刺激する多層なシンセの旋律は重厚感もあり、深いインナートリップを誘発する。一方で現在のシーンの中にあっても全く違和感の無い曲もあり、例えば"You Should Believe"では催眠的なシンセのループと快楽的なベースライン、そして官能的な女性の歌も導入してInnnervisions系のディープな曲調を思い起こさせる。"Signifie"に至ってはTR系のリズムとTB系のベースラインが鳴っており、シカゴ・ハウス/テクノに影響を受けたであろうローファイな音響と相まってライブ感溢れるダンス・ミュージックは、実に邦之らしいフィーリングだ。まだ手探り状態で焦点が定まっていないためか曲調にばらつきはあるが、邦之の単なるダンス・ミュージック以上の豊かな世界観はこの時点から既に存在しているし、またアンビエントやニュー・エイジの要素が強いからこそMusic From Memoryからリリースされるのも納得な内容だ。



Check Kuniyuki Takahashi
| TECHNO14 | 14:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2019/3/9 Funky Sensation @ Contact
Body & Soulの一人としても活躍しニューヨークのディスコ時代から活動を続けるDJ中のDJ、Francois Kevorkian。ダブをコンセプトに長らく開催してきた「Deep Space」を終了させた彼が新たに向かうのは、自身のルーツを顧みるようにディスコやファンクを軸としよりパーソナル性の強い音楽で、それこそ「Funky Sensation」だ。ディスコやファンク、ハウスやテクノから時にドラムン・ベースやロックまでその言葉通りにクロスオーヴァーな音楽性を体現するDJではあるが、ここ10年程はパーティーによってはかなりテクノ色を打ち出した時も少なくはなく、その意味ではルーツ回帰な面もあるコンセプトは逆に新鮮味を帯びている。当方にとっては2016年のContactのオープニングにKevorkianが抜擢されながらも開始早々に中止になってしまって依頼なので、リベンジの意味もある今回のパーティーに寄せる期待は大きい。
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| EVENT REPORT7 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2018/9/14 solfa 10th Anniversary ”DAY 1” @ Solfa
2008年9月に中目黒という場所にオープンしたSolfaも今年で10周年。決して周りにクラブが多いわけでもなく環境的に優位でもないにもかかわらず、知名度だけではない確かな国内外のアーティストのブッキング、そしてまた都会的で洗練された内装等を売りに、堅実に10年の間運営を続けている。そんなクラブの10周年パーティーは4日間に渡って開催されるが、その初日は今や世界的アーティストであるGonnoやKuniyuki Takahashi、ベテランであるMoodmanやDr.Nishimura、そしてYou ForgotやNuboによるライブユニットのUnconscious Fusion OrchestraとBOW & SISINOBUと若手までフィーチャーし、中規模のクラブでありながらその内容はそれ以上と非常に楽しみに一夜だ。
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| HOUSE13 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki & Friends A Mix Out Session - Mixed Out (Soundofspeed:SOSR023)
Kuniyuki & Friends A Mix Out Session
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ここ数年、DJ NatureやVakulaにJimpsterなど著名なアーティストと積極的にコラボレーションを行い、プレイヤー/アーティストとしての手腕を発揮しているKuniyuki Takahashi。一連のシリーズとして続いたそのラストはロンドンの気鋭アーティストであるK15とのコレボレーションだが、K15と言えばWild Oatsからの作品を始めとしてオーガニックで情熱的な響きを打ち出してハウスのみならずブロークン・ビーツやダウンテンポやジャジーなものまで巧みに披露するアーティストで、そういった素養があるからこそKuniyukiとの共同作業は当然の如く相乗効果として働くに違いない。ここでは二人で制作した楽曲をそれぞれが解釈したバージョンで収録されているが、"Moving Minds (Kuniyuki Version)"はKuniyukiらしい人情味溢れる作風なのは当然としてフュージョンらしいの光沢のシンセが躍動し優美なエレピでしんみりムードを強めつつ、軽快ですっきりしたジャジーなマシン・ビート感で肉体を程良く揺らす。ジャズのスウィング感と呼んでも全く違和感はなく、Kuniyukiらしい熱き感情を誘発する作風が発揮されている。一方"Moving Minds (K15 Version)"も艶と温かみのあるシンセのメロディーで引っ張る点は変わらないが、全体的に慎ましくスピリチュアル性を増したモダン・フュージョンで、内面へと深く潜っていくような繊細なディープ性が際立っている。そして本作には過去にリリースされたJimpsterとの共作をTerre ThaemlitzことDJ Sprinklesがリミックスした"Kalima's Dance (Sprinkles' Deeperama)"が収録されているが、ある意味ではこれもリミックスという作業を通してのコラボレーションと解釈するのもありだろう。ジャズやファンクの要素に華麗な雰囲気もあった原曲から一転、DJ Sprinklesらしく無駄な脂を落としたつつ乾いたパーカッションも加えて枯れた侘び寂びの世界観を演出したディープ・ハウスは、全く派手な瞬間はないものの深い残響を活かしたアンビエント性によってしみじみと心に染み入る彼の作風へと生まれ変わっている。どれもアーティストの誠実さが伝わるような素晴らしい作品だが、特にDJ Sprinklesの枯れた中に存在する退廃的な美しさは圧巻だ。



Check Kuniyuki Takahashi & K15
| HOUSE13 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2017/7/28 mule musiq presents cats Kuniyuki New Album Release Party @ Contact
おそらく日本のレーベルとしては最も世界的に成功したと呼べるmule musiq。レーベルの現在のレギュラーパーティーとして「Cats」が定期的に開催されており、潤沢なレーベル所属アーティストのおかげで国内勢/海外勢問わずに実力あるアーティストが出演し、レーベルの音楽性を伝える共に現在形のダンス・ミュージックの普及に努めている。今回はレーベルを代表するアーティストであるKuniyuki Takahashiによるニューウェーブ・プロジェクトのライブお披露目がメインになるが、海外からはフレンチ・ハウスのChateau FlightからGilb'rとコズミック系のDaniele Baldelliという大物も来日する他、レーベル主宰者であるToshiya KawasakiにChee & KzaやSisi & TosiのB2Bもあるなど、とても豪勢な面子が集結している。
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| EVENT REPORT6 | 20:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki Takahashi - Newwave Project (Mule Musiq:MMD-61)
Kuniyuki Takahashi - Newwave Project
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生演奏の温かさ、スピリチュアルな世界観、有機的な響きを含んだハウス・ミュージック、高橋邦幸の音楽についての一般的に知られているイメージはそのようなものだ。工業で機械的というイメージとは真逆で、電子楽器を用いながらも生命の営みを彷彿させるハウスは慎ましく厳かで、何より大地の胎動と共鳴するような霊的な力を含んでいる。しかしそんな彼が近年取り組んでいたニューウェーブ・プロジェクトと名付けられたシリーズは、そのタイトル通りにニューウェーブやインダストリアルミュージックに寄り添ったものだ。本人に拠れば元々それらの音楽性もルーツにあったそうで、実際にDRPというEBM(Electronic Body Music)系のユニットも組んでいたりするのだが、ここにきて"新たな波"を生み出した原動力はやはり彼の創造性に対する渇望が故なのだろう。これまでのオーガニックなハウスは封印し、むしろサンプリングも用いてダークで退廃的なテクノへと寄り添った本作は、Kuniyukiが考える現在のニューウェーブなのだ。そうは言いながらもKuniyukiらしさはそこかしこに残っており、民族的なパーカッションの響きが目立つ"Steam"は正にそれだが、しかし機械的に刻まれる冷えたスネアの8ビートや灰色のトーンが工業的な風景を喚起させる。続く"Cycle"は擦れたような荒いリズムでグルーヴは走り出すが、色褪せたようなモノトーンな音が続く。先行EPの一つである"Newwave Project #2"は展開は抑制してミニマルでハウシーなグルーヴで踊らせるツール系の曲だが、そういったところはダンス・フロアを忘れないKuniyukiらしくもある。ブレイク・ビーツ系のざらっとしたエレクトロのリズムとヒプノティックなシンセを用いた"Blue Neon"、アシッド・ハウスを更にインダストリアル的に歪ませたような"Mind Madness"、ニューウェーブとジャズが融合したような奇怪なリズムを見せる前衛的な"Puzzle"などは、このプロジェクトだからこその挑戦が強く打ち出た曲だ。Kuniyukiの既存のオーガーニックでメロディアスな路線とは異なるこのプロジェクト、異色を感じはさせるがやはりライブでこそ映えそうな曲質は、そこもKuniyukiらしい音楽性があり是非ともフロアで体験すべきだろう。



Check "Kuniyuki Takahashi"
| TECHNO13 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2016/8/29 Party Paradise Gallery × Night Museum ”Joy” @ Contact
Party Paradise GalleryがプロデュースするJoy、平日は月曜のオールナイトのパーティーながらもKo UmeharaがDJを務め、そしてTransmatからの作品で更に注目を集めているHiroshi Watanabe、Mule Musiq等で活躍するKuniyuki Takahashiの二人がライブを行う…だけではなくその両人のセッションライブも予定されるなど、平日にはもったいなさ過ぎるパーティー。台風も来襲しておりタイミングは難しかったものの、特別な夜になる事を期待してパーティーへと足を運んできた。
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| EVENT REPORT6 | 08:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Joaquin Joe Claussell - Thank You Universe (Sacred Rhythm Music:SRM.1003)
Joaquin Joe Claussell - Thank You Universe
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実に8年ぶりとなるアルバムのタイトルは「Thank You Universe」、Joe Claussellによる無限の可能性を秘めた宇宙からインスピレーションを受けた意味合いが込められている。Joeはダンス・ミュージックを根底にしながらも創造性や霊的な力を頼りに、ハウスだけでなくアフロやジャズにサウンド・トラック的なもの、またはパンクやロックにまで枝分かれするほど幅広い音楽性を開拓し、その名義の多さもあって熱心なファンであっても全ての音源を把握するのは困難だ。そこに届けられた本作は近年のベスト盤と言うべきか、レア・バージョンやリミックスに未発表曲などを纏めた内容になっており、Joeの深い精神世界が体験出来る内容になっている。一言で表現するならばスピリチュアル・ハウスで、彼が得意とする温かみのあるアコースティック・ギターや爽快なパーカッションを用いたハウスが中心で、恐らくファンが最も好んでいるであろうスタイルが多くを占めている。1曲目の"Agora E Seu Tempo (Acroostic Percussion Mix)"は最早クラシックとさえ呼んでいい名曲で、オリジナルよりも頭のパーカッションを強調し生命力の躍動を表現したような展開から、そっと入ってくる美しいスパニッシュ・ギターのフレーズで優しさや希望に満たされるこの曲は、正にスピリチュアル・ハウスを体現する。Mental Remedy名義の"Heloise (Pt. One)"は初披露の曲で、ピアノとストリングスの音色を前面に打ち出し旋律の美しさを強調したインタールード的な趣きだが、ハウス中心のアルバムの中で安堵の場所を提供している。幾つかあるバージョンがある中でもレアな物が収録となった"The Sun The Moon Our Souls (Electric Voices Mix)"は、Joeもきっとお気に入りのバージョンであろうと思われ、2014年のBody & Soulでも夕日でオレンジ色に染まった背景の下でプレイしていたのが記憶に残っている。物哀しいアコギの旋律と層になって伸びるダビーなパーカッション、そしてゴスペルの祈りにも感じられる歌などが一つなり、今生きている事に感謝の念を述べるような儚いディープ・ハウスは永遠のクラシックだ。また盟友であるKuniyuki Takahashiの曲をリミックスした"All These Things ( Joaquin's Cosmic Arts For Otto Version)"は、7つのパートに分かれ22分にも及ぶ大作で、KuniyukiとJoeの相乗効果によって思慮深くも包容力に満ちた慈愛を体感するであろう。そして最後の目玉でもある"Most Beautiful (Joaquin's Sacred Rhythm Version)"、これも2014年のBody & Soulでプレイしフロアを沸かせていた曲で、爽やかなラテンビートと情熱的な歌による感情の起伏をもたらすソウルフル・ハウスは、ギミック無しにメロディーやリズム感の良さを打ち出して心と肉体を躍らせる。どれもこれも人間の内に秘めた感情を刺激し、そして肉体を鼓舞する躍動があり、Joeの祈りにも似た音楽は生命力をもらたすダンス・ミュージックなのだ。



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| HOUSE11 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(1) | |
2016/6/10 Lose Yourself @ Sankeys TYO
2015年3月、ベルリン・ハウスシーンの魅力的なDJ/アーティストをフィーチャーするというコンセプトで立ち上がったLose Yourself。一端はAirの閉店と共にパーティーも立ち消えになるかと思ったが、Airの跡地に新設されたSankeysで目出度く再始動する事になり、その再始動の初回にはAirでと同様にIan Pooleyがゲストとして呼ばれる。そして日本からはTakahashi Kuniyuki、パーティーのレジデントであるMotoki a.k.a. Shameらが出演し、Sankeysという新たな場所でどんな軌跡を描き出すのか。
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| EVENT REPORT6 | 11:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
I'm Starting to Feel Okay Vol.7 (Mule Musiq:MULE MUSIQ CD 53)
Im Starting to Feel Okay Vol.7
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恐らくダンス・ミュージックで括られるレーベルの中でも、Mule Musiq程に幅広く才能あるタレントを抱えたレーベルを他に列挙するのは難しいだろう。例えばこのレーベルに所属するアーティストだけでパーティーを行ったとしても、それはフェスティバルとして成立してもおかしくはなく、間違いないのない審美眼と継続してリリース出来る運営力を兼ね備えた日本が誇るべきレーベルだ。そのように多くのタレントを抱えているからこそ、多様な個性を一つに集約するコンピレーションの体裁はMule Musiqに適しているのだろうか、近年は2年おきにショーケース的なコンピレーションをリリースしている。本作はその第7弾でここ2年間にリリースされた既発の曲や、また本作の為に制作されたであろう新作までが纏められており、例えレーベルに興味が無くとも参加したアーティストの豪華さに惹き付けられてもおかしくはない。レーベルに初参加となるLord Of The IslesやFrankey & SandrinoにKim Brown、または蜜月の関係を築いているEddie CやOskar OffermannにFred P、そして日本からはお馴染みのKuniyuki TakahashiにSauce81、その他に多くのアーティストが収録されているのだが、その幅の広さと各々の素質の高さが際立つ人選に頭を垂れる思いになる。Eddie Cによるサンプリングをベースとした生っぽいニューディスコの"Flying Blue"、Rubiniによるエレクトロニックな質感を活かしたディープ・ハウスの"Still Clock"、Kuniyukiがニューウェーブからの影響を受けて退廃的な雰囲気を打ち出した"Newwave Project #11"など、それぞれの個性は自然と表現されながらそのどれもがフロアに即したダンス・ミュージックである事を外れない。また、Bell Towersによる柔らかな音色とゆったりとしたグルーヴで広がるディープ・ハウスの"Midday Theme"、Fred Pによるエモーショナルなパッド使いが素晴らしいテック・ハウスの"Days In Time"辺りを聴くと、Mule Musiqが決して真夜中の享楽的なクラブで踊る事を目的とした音楽だけではなく、リスニングとしても耐えうる普遍性も目指している事が感じられる。意外なところでは奇抜なエレクトロニカを奏でるGold Pandaが変名のDJ Jenifaで"Dresscode"を提供し、Gold Pandaとは異なりシカゴ・ハウス風の乾いたビートで不良的なハウスを披露してたり、またAril Brikha & Sebastian Mullaertが"Illuminate"で彼等の個性を発揮したトランス感の強いミニマルなトラックを提供していたり、レーベルに控え目程度ではあるが新風を吹き込んでいる。既に大御所レーベルとしての存在感がこれだけのアーティストを集約出来るのだろうが、それでも尚レーベルの質の高さが全く失われないのは、やはりレーベルを主宰するToshiya Kawasakiによるセンスの賜物に違いない。



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| HOUSE11 | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2016/2/20 Mule Musiq presents CATS @ Arc
ドイツのアンダーグラウンドなハウス・レーベルであるWhiteの主宰者であるOskar Offermannが、昨年は遂にMule Musiqからアルバムをリリースするなど、その活動は浮上をして日本でも注目を浴びつつあるように感じられる昨今。今までに2回の来日経験があり、GrassrootsやLiquidroomなど場所の大小問わずしてその個性的なDJで評判を集めるが、今回はMuleからのリリースに合わせてレーベルのパーティーであるCATSへの出演が決まった。日本から迎え撃つは同レーベルの中心的存在であるKuniyuki TakahashiやMuleのボスであるToshiya Kawasaki、Rainbow Disco ClubのSisiと、リリパに対してしっかりを脇を固めた布陣となった。
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| EVENT REPORT6 | 14:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2015/6/27 CATS feat. Fred P @ Air
飛ぶ鳥を落とす勢いとは正に彼の事だろうか、最近では多くのアーティストからリミックスを依頼され、自身ではSoul People Musicと共にMule MusiqやUnderground Qualityからもテクノ〜ハウスをリリースしているFred P。またの名をBlack Jazz ConsortiumやAnomalyなど変名も用いながら、USハウスの中でも特に叙情性やアンビエント性も含むディープ・ハウスを手掛けて、自身の音楽性を確立させているアーティストの一人だ。今回はMule Musiqからニューアルバムをリリースするのに合わせてリリースパーティーでの来日となるが、日本からはレーベルメイトでもある高橋クニユキがライブで参戦、そしてSoul People Musicからもリリース歴のあるNaoki Shinohara、Mule MusiqのボスであるToshiya KawasakiやSisiらも出演と豪華な布陣となった。
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| EVENT REPORT5 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Koss - Silence (Mule Musiq:mule musiq cd 47)
Koss - Silence
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Mule Musiqの中心的存在である高橋クニユキ - 事実、レーベルはクニユキの音楽を世界へと紹介するべく設立された - が、クニユキ名義とは別に電子的でミニマル、そして実験的な側面も追求するべく始めたプロジェクトがKOSSだ。過去にもMule Musiq傘下のMule Electronicから複数のアルバムをリリースし、クニユキの有機的でダンス性の強いハウス・ミュージックとは異なるベクトルで音楽性を拡張し、アーティストとして多彩な才能を知らしめていた。しかし近年はクニユキ名義での活動が中心だったためKOSSとしての新作がリリースされる事は無かったが、この度KOSS名義でMinilogueと共作した"The Mollan Sessions"から4年ぶり、完全なソロでは"Ancient Rain"から実に7年ぶりと久しぶりの新作が古巣Mule Musiqから届けられた。近年のクニユキ名義では様々なアーティストとのコラボレーションにより多様なグルーヴを展開するのに対し、このKOSS名義では一人で制作された影響もあるのか、クラブと言うよりは室内的で外交的と言うよりは内向的で、非常に繊細で理知的な美意識を感じさせる。最初にKOSSは電子的と述べたが以前に比べればヴァイオリン等の弦楽器やピアノからマリンバも用いて有機的な性質も強くなってはいるものの、それを強調するような鳴り方ではなくあくまで装飾的に使われ、その向こう側には環境音的なノイズや微かなパーカッションがスムースに鳴っている。ビートのない静謐な世界観はアンビエントやサウンドトラックとも呼べそうだが、軽々しくないその思慮深く意識的な音楽は深い瞑想へと誘うようだ。そんな雰囲気もあってクニユキのクラブ方面の要素ではなく、現代音楽やジャズの要素を打ち出しながら更にインテリジェンスに仕立て上げたような洗練された美意識があり、これは例えば現代音楽とジャズのレーベルであるECMのコンセプト「静寂の次に美しい音楽を」と共感するものがある。そう、「Silence」と言うアルバムタイトルにも納得な、静寂の中に美しい音色が静かに存在しているのだ。



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| TECHNO11 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2014/6/14 Acid City @ Air
これまでも徹底的にハウスと言う音楽を追求し続けてきたDJ EMMAが、この時代に敢えてアシッド・ハウスを大々的に取り上げ日本初のアシッド・ハウスのコンピレーション「Acid City」を送り出したが、2014年にはそれを題材にした同盟パーティーをレギュラー開催で始動させていている。基本的にはコンピレーションに参加したアーティストをパーティーのゲストへと招いているようだが、今回の「Acid City」のゲストにはモデルとして活躍するElli-RoseことVan Cliffe、そして日本が誇るスピリチュアルなハウス・アーティストの高橋クニユキが招かれ、各々が考えるアシッド・ハウスを表現する。
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| EVENT REPORT5 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2014/4/25 blotter @ Louver
昨年9月に新宿の外れ、どちらかと言うと大久保よりの地下に出現したクラブ・Louver。昨年末に一度遊びに行った時の印象ではコンクリートジャングルの中に存在する廃退的な雰囲気がテクノに合うと思っていたが、やはりそれ以降のブッキングもアンダーグラウンド性を高めたテクノ中心で、クラブ不毛の地の中で孤軍奮闘している。そして今回はKoss aka Kuniyuki Takahashi、Ko Umehara、Jinnoらが集まるテクノパーティーがあったので、久しぶりに足を伸ばしてきた。
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| EVENT REPORT5 | 17:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Herve Samb & Daniel Moreno - Anta Diop (Remixed By Kuniyuki Takahashi) (Sacred Rhythm Music:SRM-269)
Herve Samb & Daniel Moreno - Anta Diop (Remixed By Kuniyuki Takahashi)

Joe Claussellが主宰するSacred Rhythm Music新作は、Herve Samb & Daniel Morenoのリミックス盤。元々Joeの作品にパーカッショニストとして参加していたDaniel、様々なアーティストのサポートをしてきたギタリストのHerveによるこのユニットは、2011年にアルバム"Kharit"をリリースしていたが、本作ではそこからの"Anta Diop"をJoeの盟友でもある高橋クニユキがリミックスしている。オリジナルはアコギや民族的な打楽器を用いてエキゾチックな世界観を強く打ち出した曲で、本作の裏面にも収録されている。がクニユキによる"Kuni's Main Mix"はギターやフルートにストリングス、そして電子音のシーケンスまで加えながら壮大なスピリチュアル・ミュージックへと作り変え、5分にも満たない原曲を13分にまで拡大している。元々慎ましく神妙な世界観を持った曲ではあったが、クニユキはそう言った世界観を損なう事なく原曲を尊重し、その上でクニユキらしくエレクトロニックな音とオーガニックな音を自然と共存させているのが聞き所だ。壮大な展開と瞑想を誘発するスピリチュアルな世界観だが、大袈裟と言うよりは大らかで包容力を感じさせる大地の響きと言うべきで、聖なる音が魂を浄化する。そしてダブ・バージョンらしくよりパーカッシブな太鼓系の音が強調された"Kuni's Drum Dub"も10分に及ぶ大作で、こちらの方が明確なグルーヴが浮き上がり肉体への作用が強く働くディープ・ハウスとなっている。どれもパーティーの朝方や終盤、疲労の溜まった時間帯に渇望するであろう癒しの作用がある曲で、ただただその聖なる音に身を委ねたい。

試聴

Check "Herve Samb & Daniel Moreno"
| HOUSE9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki Takahashi - Remix Collection (Mule Musiq:mmd45)
Kuniyuki Takahashi - Remix Collection
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DJではなくアーティストとして自身で様々な楽器を演奏し、有機的な音色からディープ&スピリチュアルな世界を奏でる高橋クニユキ。トラックメーカーとしての素質は日本のみならず世界からも評価されており、その結果として様々なアーティストからリミックス依頼があり、成果として多数のリミックス作をアナログに残してきた。勿論相当なファンでもない限りそんなアナログを集めるのは困難であるが、日本盤のみでそれらの楽曲を纏めた高橋クニユキによるリミックス・コンピレーションが発売されている。DJ SprinklesやMr Raoul K、Lord Of The IslesやP'taahと言った海外の著名なアーティストから、サカナクションやNabowaからMarewrewにMarterら日本勢までのリミックスを収録した本作ではあるが、単なるリミックスアルバムではなくもはやこれは高橋クニユキの個性が光るオリジナルアルバムと言ってもよいだろう。筆者がオリジナル作品を熟知しているわけではないのでクニユキの手が加わった事による変化を知る由もないが、しかしディープ・ハウスのみならずジャジーな作風やトライバル系、果ては現代音楽な曲調までバラエティーには富んだリミックスを披露しつつも、そのどれもにクニユキらしい奥ゆかしくも人肌の温もりを感じさせる包容力に溢れた音が通底している。DJ Sprinklesの慎ましい美しさを保ちつつ、より自然の生命力を吹き込んだ"Brenda's $20 Dilemma (Kuniyuki Dub Remix)"、 Mr Raoul Kによる呪詛的な訝しい曲に脈動するアフロビートを持ち込んだ"Africa (Kuniyuki Main Remix)"など、アーティスト間での相性の良さが引き出されたリミックスは期待通りだ。それとは逆に意外な組合せが面白い作品もあり、エストニアの伝統音楽をリミックスした"Sampo Tagumine (Kuniyuki Remix)"では既存のダンス・ミュージックの殻を破る神々しさがあり、アイヌの伝統歌を歌うMarewrewをリミックスした"Rera Suy (Kuniyuki Remix)"では、祈りを捧げるような歌に研ぎ澄まされたピアノや弦楽器を重ねて宗教的な雰囲気を持たせていて、どんな作品でもクニユキ色に染められる事を証明している。そして感動の瞬間はラストに待ち受けている。Nabowaの"Ries (Kuniyuki Remix)"はジャジーテイストに味付けしながらアコギやストリングスが美しく伸びるインスト曲だが、徐々に光り輝く空の中へと飛翔し消え行くような清涼感に満たされていて、心が綺麗に洗われる感動の1曲だ。様々なアーティストの曲をこうまでもクニユキらしいオーガニックな世界に落とし込み、様々なスタイルとして昇華するリミックス、やはり高橋クニユキはDJではなく音楽家なのである。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 08:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki Takahashi - Remixed Vol.2 (Mule Musiq:mmcd43)
Kuniyuki Takahashi - Remixed Vol.2
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北海道を拠点に世界へと飛翔した高橋クニユキ。その生命力が満ち足りたオーガニックなハウス・ミュージックは世界からも高い評価を獲得し、そこからアーティストとして多くの交流が生まれた結果として"Remixed"(過去ビュー)と言うリミックス作品が結実したのが2008年。本作はリミックス集としてその続編にあたるが、Joe ClaussellやLarry Heardと言った以前からクニユキを高く評価しているアーティストや、Roman FlugelにDJ Sprinklesらベテラン勢、Barnt(=Magazine)らニューカマーによるリミックスに加え自身によるリミックスも収録している。前もって述べておくとそれらの楽曲群は既にアナログ化されているものの、全てを揃える事の費用的な問題も考慮すれば、こうやってCDとして纏められた事自体は非常にありがたい。さて、本作では同じ曲を複数のアーティストがリミックスしており、その違いを楽しむのも醍醐味の一つだ。エレクトロニックな音に繊細な強弱をつけながら覚醒的なテックハウスに仕上げた"Earth Beats (Roman Flugel Remix)"に対し、原曲の儚いギターアルペジオを生かして端正なディープ・ハウスへと深化させた"Earth Beats (Fingers Deep Mix)"、そして辿々しいリズムを刻むチープなドラムマシンの音に奇妙な電子音によるメロディーが絡む蠱惑的な"Earth Beats (Magazine Remix)"と、三者三様に自身の音へと染め上げたリミックスを披露しているのは端的な例だろう。またクニユキによるセルフリミックスは、例えばアンビエントなり例えばダンスグルーヴなりと、より一方面への音楽性を前に進めつつも人情味溢れる温かい血潮は失っていない。そんな中で最大限に愛を込めてクニユキの世界観を拡張させたのが"All These Things (Joe Claussell Remix)"だろう。原曲の切ないピアノの音粒が滴り落ちるジャジーな作風を引き継ぎつつも、22分超えの7楽章にまで拡大解釈した壮大な展開を繰り広げるリミックスは、Martin Luther King Jr.の有名な説法も導入されて霊的な力も携えたコズミックなディープ・ハウスへと世界を広げている。Joeのスピリチュアルな性質に染まった圧倒的なまでに神々しい世界観に対し、謙虚な気持ちでその聖なる音を一身に受け入れたくなる至高の曲だ。同じ曲のリミックスが多いのは少々気になるところではあるが、リミキサー自体に確かな才能を持つアーティストが招かれている事もあり、クニユキとの高い親和性を持ちつつバラエティーに富んだリミックス集となっている。

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| HOUSE9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki feat. Henrik Schwarz - The Session 2 Remixed (Mule Musiq:mule musiq 163)
Kuniyuki feat. Henrik Schwarz - The Session 2 Remixed
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世界規模のレーベルであるMule Musiqを代表すると言っても過言ではない、日本が誇るディープかつオーガニックなダンス・ミュージックの探求者・高橋クニユキ。本作は昨年リリースされたアルバム"Feather World"(過去レビュー)からのシングルカットとなるが、元々Henrik Schwarzとの共作で話題性抜群のトラックであったものを更なるリミキサーを迎えて、新たな魅力を携えて還ってきた。リミキサーにはたまたまなのかHenrikとも繋がりのある新鋭・Johannes Brechtと、そしてFirecrackerやShevshenko含め数多のカルト・レーベルから引っ張りだこのLord Of The Islesと、抜かりない面子が起用されている。Johannes Brechtについては詳細は不明なものの、本人がベースとキーボードのプレイヤーなのが影響しているのだろうか、オリジナルの笛やキーボードなどのオーガニックな質感をそのまま生かしながら、展開だけは抑揚を抑えてミニマルなグルーヴが今っぽいハウス感を強めている。その一方で目を見張るリミックスを施しているのがLord Of The Islesで、こちらもオーガニックな質感は生かしているものの、オリジナルよりも更に音楽的拡張を実践している。電子音楽として、生音として、その両者が原始的な胎動を始めるようなライブ感や生演奏風なプレイを重視したコズミックなサウンドは、優美なアンビエンスと血の通ったラフなテクスチャーで塗り固められている。大らかな包容力を増した温かみのあるハウス・ミュージックとして、完全にLord Of The Islesの個性で上書きされたリミックスとして秀逸だ。

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| HOUSE9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2013/5/5 Rainbow Disco Club @ Harumi Port Terminal
2010年に奇跡的にも8年ぶりにDJ Harveyを来日させて始まったRainbow Disco Clubは、2011年は東日本大震災により、2012年は悪天候の影響により中止となる不遇な状態が続いていた。そして今年のRainbow Disco Club、1会場3フロアのスタイルを改め晴海埠頭、WOMB、SECOと場所を分けての天候も考慮したであろうスタイルでの開催となったが、自分はハウスアーティスト勢が固まった晴海埠頭のイベントへと参加してきた。
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| EVENT REPORT4 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Vakula & Kuniyuki - Session North #1 (Soundofspeed:sosr 011)
Vakula & Kuniyuki - Session North #1

ジャズ/ファンク/チル/アンビエントと言った要素をダンス・ミュージックとして解釈し、国内外問わずに良質なアーティストの作品を粛々とリリースしている日本のSound of Speed。カタログにはEddie CやJimpsterも名を連ねているが、本作は過去にもレーベルから作品をリリースしているVakulaと高橋クニユキによる音楽性豊かなコラボレーションだ。両者ともツールとしてではなく音楽として作曲能力の高い事から、本作でもその絡みは上手く作用し生演奏のフィーリングを活かした作風となっている。面白いのは二人で2曲を共作し、それらの曲を各々がリミックスをする事で両者の違いを聴ける事だ。太くうねるベースラインとざっくりと生々しいハウスのグルーヴは力強いが、透明感のあるキーボードや爽快なカリンバ風のメロディーが清々しく、途中から入るピアノがクニユキらしいスピリチュアルを生み出す"Session North #1 (Kuniyuki Version)"。対してVakulaによる"Session North #1(Vakula Version)"もカリンバ風のメロディーを使用しているが、グルーヴがよりジャズを匂わせる有機的な躍動があり上モノはスペーシーで、全体としては優雅なフュージョンテイストになっている。また"Passage To The Moon"も両者のバージョンが収録されており、特にVakulaによるバージョンは複雑に入り組んだリズムトラックはジャジーだが、ロマンティックなシンセやエレピの使い方はうっとりする甘美で、中盤以降は広大な宇宙の無重力空間へと放り出されるドラマティックな世界が広がっている。EPで2曲だけのコラボレートでは本当にもったいない、そんな気持ちになる素晴らしい1枚だ。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Mr Raoul K - Mande (Still Music:STILLMDCD007)
Mr Raoul K - Mande
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シカゴからアナログな音楽への愛を示すStill Musicの新作は、西アフリカはコートジボワール出身で現在はドイツで活躍するMr Raoul Kによる2ndアルバムだ。デビュー・アルバムはMule Musiqからのリリースだったものの、どういう訳か本作はシカゴのStill Musicからとなったのは意外だが、レーベルの世界各地の素朴でソウルフルなダンスミュージックを送り出す方針からすれば意外ではないのだろう。前作で見せたドイツのディープ・ハウスと自身のルーツである西アフリカの融合は本作でも変わらず、プログラミングから生み出すダンスビートとギターやパーカッションにサックスなどの有機的な絡みはそれが自然な状態として存在している。しかし本作では前作以上によりライブ感が顕著だが、それもそのはず彼が故郷に戻り昔のバンドと共にセッションを行った結果が本作へと繋がっているそうで、曲によっては原始的で剥き出しのままの陽気なトライバル感が炸裂している曲もある。勿論基本は電子的なシーケンスが生み出す深い陶酔感があるのだが、そこにサックスやギターの呪術的なサウンドが被せられる事で空気は一変し、太古の狂信的な祭事を思わせるマッドさも発せられるのだ。また興味深いのは同じ曲でも異なるバージョンを収録しており、"Rainforest"のCoratouchmixは乾いたギターがメロウながらも躍動するパーカッションが土着的なグルーヴを生み出すハウスなのに対し、Chicagomixは微睡みを誘発するパッドやフルートらしき可愛げのあるメロディーがアンビエンスを生み出す穏やかなハウスで、対照的な表情を見せる面白さもある。プログラミングを基にしながらもオーガニックで柔軟な音色や展開豊かな構成などはKuniyuki Takahashiにも通じるものがあり、DJと言うよりはアーティスト性の強い音楽と言えよう。

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| HOUSE8 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki Takahashi - Feather World (mule musiq:mmd40)
Kuniyuki Takahashi - Feather World
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世界規模に拡張している日本のレーベルであるmule musiqを代表すると言っても過言ではない高橋クニユキ。リミックス・アルバムを挟んで、前作から3年ぶりとなる新作が遂に完成した。コンピューターやプログラミングを駆使しつつ、自らもキーボードやフルートにパーカッションなど様々な楽器を演奏する彼は正にアーティストと呼ばれるべきだが、そんな彼の音楽へのスタイルに共感するのか様々なアーティストが彼の周りには集まってくる。この新作でもInnervisionsからHenrik Schwarz、クラブ界隈からも注目を集めるノルウェーのピアニストBugge Wesseltoft、前作にも参加したジャズピアニストの板橋文夫、ボーカリストのJoyce Bowden、そしてニューウェーブ世代の歌手であるAnne Clarkまでもが集結し、クニユキと共に深遠な世界を創り出しているのだ。前作がクラブミュージックから敢えて距離を置くようにジャズに傾倒していたのに対し、新作ではまたハウスのビートを基調にしたオーガニックな音楽へと戻っているが、その上で世界各地のアーティストとの共演がこれまで以上にワールド・ミュージック的な音として反映されているのが興味深い。元々そう言った傾向は以前から見られてはいたが、ここではジャズやファンクにアンビエント、そしてアフリカから日本までと曲毎に国やジャンルを投影された作風が聞こえてきて、各アーティストとの共演が色濃く表現されている。ともすれば方向性が散らばってしまうところを、そこはクニユキらしく切ない心象風景を喚起させるディープかつ優しい音楽として纏め上げている。アルバム・タイトルである「羽の世界」を本人が意図するのは、羽のように柔らかく包み込む世界観がありながらか弱く繊細なものであるとの事だが、確かにどの曲も人間らしい温かさがありながら無駄な音を削ぎ落とした繊細な構成となっている事が感じられるであろう。闇雲にソウルを振りかざす音楽ではなく、冷えた心にそっと手を差し伸べられるようなじんわりとした温かみのある音楽で、これからの寒い季節に粛々と聴くのにぴったりだ。

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| HOUSE8 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2012/12/1 groundrhythm 10th ANNIVERSARY @ Air
代官山にAIRと言うクラブが出来た当初から続くgroundrhythm。井上薫をレジデントに迎えたこのレギュラーパーティーも遂に10周年を迎える事になったが、何事においても10年も継続する事は並大抵の難しさではない。特に移り変わりの早い消費型のクラブミュージックが土台にあるパーティーでは、自分の個性を保持しながら時代にも適応すると言う相反する行為を成立させなければ、10年の長い期間のパーティーを継続させる事は不可能であろう。しかし井上薫はそれをやり遂げた事実がここにある。この10周年のパーティーは一つの到達点となり、そして未来へと続く新たなる始まりでもある。
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| EVENT REPORT4 | 18:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki - Earth Beats (Live & Larry Heard Remix) (Mule Musiq:mule musiq 151)
Kuniyuki - Earth Beats (Live & Larry Heard Remix)

世界へと羽ばたいた日本のレーベル・Mule Musiqを代表するアーティストである高橋クニユキの新作は、幾度目かの復活となる"Earth Beats"のリミックスEPだ。初出は2005年でその後Henrik SchwarzやChateau Flightにリミックスされ、最近もRoman FlugelとMagazineにリミックスされたばかりなのだが、その勢いを止める事なくシカゴ・レジェンドであるLarry Heardの手に依って更なる復活を果たした。これだけリリースを重ねると言う事はクニユキ氏本人にとっても特別な思いがあるのだろう、本人がライブ演奏した"Kuniyuki Live Version"も収録されている。このライブ盤はオリジナルの繊細なジャジーテイストから一変して、アコギのメロディーは残しつつも硬質なエレクトロニックサウンドを強調したテクノテイストになっており、こんなアレンジもあるのかと驚かされてしまう。そしてLarry Heardはなんと3バージョンも提供している事から相当の気合の入れようが伝わってくるが、やはり素晴らしいのはディープ・ハウス仕様の"Fingers Deep Mix"。しっかりと芯のある強いイーブンキックな4つ打ちをベースにしながらも、繊細で儚いアコギの爪弾きラインに愁いに満ちたシンセストリングスなどを被せてしっとり感とフロア対応のダンスグルーヴを共存させ、Larry節とも言える郷愁の世界を演出している。更にはLarryがシカゴ出身である事を今更ながら思い出させる"Fingers Acid Edit"は、これぞシカゴの特徴と言える中毒的なアシッドベースを導入した神経を麻痺させるようなディープ・ハウスとなっており、エグいDJセットにも使えそうな癖のあるアレンジになっている。そして最もメロウな旋律を生かしたビートレスバージョンである"Fingers Ambient Mix"は、踊り疲れたフロアの朝方にほっと心を癒してくれるであろう美しき空間が広がるバージョンだ。と様々な作風の"Earth Beats"が収録されているのでDJにも重宝するであろうし、どのアレンジも素晴らしいのでDJでなくとも手元に置いておきたいものだ。

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| HOUSE8 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2012/6/23 SALSA SOURCE @ Unit
UNITのHPからの引用では、SALSA - 其れはスペイン語でソースだったりダンスだったり、はたまた楽しさ・面白さを意味する言葉。日本のアンダーグラウンドなクラブミュージックの、そしてテクノ/ハウス/ヒップホップ/ファンクなどの格分野のDJ/アーティストが、一斉に集結した正に色々なSAUCE(SOURCE)が混ざり合うパーティー、それがSALSA SOURCE。UNIT、UNICE、SALOONの3箇所のフロアを使用し360度全方向型のパーティーは各フロアが人でごった返す程に充実したパーティーとなりました。
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| EVENT REPORT3 | 15:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Koss / Henriksson / Mullaert - The Mollan Sessions (Mule Electronic:mule electronic cd 22)
Koss Henriksson Mullaert - The Mollan Sessions
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微熱の籠もる有機的なハウスを奏でる高橋邦之のエレクトロニック名義・Kossと、プログレッシヴトランス界隈からテクノ方面にまで人気のあるMinilogueのメンバーであるHenrikssonとMullaertが、スウェーデンにあるMinilogueのスタジオにて行ったセッションを2枚組CDとしてパッケージ化。Kossは静謐で厳かな佇まいのアンビエントを行い、かたやMinilogueも純粋なアンビエント作品をリリースしており、その両者が手を結ぶと一体どうなるのか。CD1では不鮮明な音像に包まれたダウンテンポから始まり、チリチリとしたノイズや奥深い音響がフィールドレコーディングらしい音像を描き出します。そして宗教的な神秘性もあればジャズのグルーヴもありサイケの混沌とした先の読めない世界もあり、セッションと言う偶然性の高い演奏を生かして、徐々に現実離れして潜在意識へとダイブし深い心の奥底へと連れていかれます。中には20分にも渡る4つ打ちのハウスもありますが、ふらふらと波に揺られる浮遊感覚が長く続く中で目まぐるしく展開は入れ替わり、雑食性の高い両者の音楽性が見事に融和していると言えるでしょう。そしてCD2には16分と60分の長尺な2曲が収録されており、特に後者の"Horizon"ではMinilogueとしてのトランス感覚溢れる繊細なメロディーやクニユキの躍動感と生命力に溢れたトライバルなリズムが、そして生演奏とエレクトロニクスが見事に一体化し壮大なダンストラックを形成しています。トライバル・アンビエント・ハウスとでも形容すべき心地良さと力強さを伴い、まるでライブと思う程の臨場感さえ感じられました。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 13:00 | comments(2) | trackbacks(0) | |
2012/1/8 Chillout Village 2012 @ 高井戸倶楽部
年末年始のパーティー三昧で疲れた心身をリフレッシュするパーティーがChillout Village。高井戸倶楽部と言う普段はレストランになっている場所でデコレーションに手を掛け、普通のダンスミュージックとはチルな味わいを持つ音楽で、仲間と共に緩い空気を楽しむ、国内屈指のお洒落かつラグジュアリーなパーティーだ。アーティストやDJは国内各所で活躍するおのおのが個性を持った人が呼ばれ、Kuniyuki Takahashi、Yogurt & Koyas、Hikaru、Kensei、Bing、Utsumi、Shhhhh、Q a.k.a. Insideman、Sinnなど贅沢な布陣となっていた。
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| EVENT REPORT3 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2011/11/4 mule musiq presents Endless Flight @ Eleven
mule musiqが送るレギュラーパーティー"Endless Flight"、今回のゲストはmule musiqにも馴染み深いHenrik Schwarzと日本からは高橋クニユキの二人。トラックメーカーとして才能を発揮している二人のライブが同時に見れるのは幸運な機会であり、Elevenへと足を運んできました。建物の前に着くと紫色に輝く"ELEVEN"と書かれたスタンド看板が新たに設置されており、一見さんには分かりづらかった場所にも遂に目印が出来ておりました。
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| EVENT REPORT3 | 14:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki - All These Things (Joaquin Joe Claussell Remix) (Mule Musiq:MMLTD5)
Kuniyuki - All These Things (Joaquin Joe Claussell Remix)

3年越しの邂逅、アメリカが誇るスピリチュアルメッセンジャー・Joe Claussellと、その彼とも親交の深い日本の高橋邦之。クニユキがジョーにリミックスを依頼し、本来は2008年のリミックスアルバム"Remixed"(過去レビュー)に収録される予定だったと言う曲が、ようやくアナログのみでリリースに至りました。ま、こんなプロジェクト自体があった事も知らなかったので特段待った訳でもないけれど、7楽章22分にも及ぶこの大作を聴くと妙に神妙な気持ちになってしまう。二人の交流は以前からのものでお互いの気持ちも通じ合っているためか、リミックス自体も原曲のイメージを壊すでもなくオリジナルを更に艶やかに、そして二人のオーガニックな音を調和させた神々しい内容となっております。有機的で心に染み入る手弾きのピアノやしっとりとした吐息の漏れる女性のボーカルはどこまでも儚く、コズミックなSEで天上の高みへと連れてかれながらも、中盤のブレイクではMartin Luther King Jr.の説法も導入されるまさに大作と言うべき展開。22分と長尺ながらもその長さを感じさせるよりも永遠とも思われる優しいグルーヴが続く事への陶酔が勝り、祈りにも似た慈愛へと包まれる事でしょう。クニユキ×ジョーの個性が奇跡的に融合した名曲ですね。裏面にはオリジナルバージョンと、クニユキのアンビエントバージョンも収録。

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| HOUSE6 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki Takahashi - Dancing In The Naked City (Mule Musiq Distribution:MMD14)
Kuniyuki Takahashi - Dancing In The Naked City
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10月にElevenで高橋クニユキのライブを初めて聴いた時、アルバムのメロウな作風からがらりと変わり予想以上にフロアを意識したライブで驚いたものでした。ズンドコと力強いキックを打ち鳴らし躍動感を感じさせながらも、しかしながらライブ感溢れるインプロビゼーション的な演奏を交えた音楽で、人情味と侘び寂びを感じさせるクニユキの作品に通じる点も残しつつ…。その時ご本人からリミックスアルバムを出すよと聞いていたのですが、それが"Waking In The Naked City"(過去レビュー)をダンスバージョンに再構築した本作。ここで聴ける音は確かにElevenで聴いたライブと同じ力強いハウスやダブの加工がされたリミックスで、ジャジーな印象の強いオリジナルよりももっと直線的でフロアでミックスし易いアレンジとなっております。だからと言って単調なクラブミュージックかと言えばそうでもなく、クニユキ自身がキーボードやパーカッション、管楽器を演奏し、そしてフィールドレコーディングまでも取り入れたサウンドは、温かい抱擁力がありながら野性味も感じさせるトライバルな響きもある豊かな音楽性に溢れております。普段よりは感情を押さえ気味で渋さが目立ちますが、所々で曲も軽くミックスされておりクラブらしい臨場感も楽しめるはず。

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| HOUSE6 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2010/10/08 E-NAUT @ Eleven
国内の良質なエレクトロニックミュージックを紹介する東京電子音楽ショーケース・E-NAUT。今回はアルバムをリリースしたばかりのCalmとKuniyuki Takahashiのライブ、そして日本の地下ダンスミュージックシーンの大ベテラン・DJ Noriと本パーティーのオーガナイザー・TAKAMORI K.のDJと素敵な人選だったので遊びに行ってきました。早めに行こうと思ってたところ、家を出る直前に友達からの電話によりElevenへ着くのが遅くなり、到着した頃にはTAKAMORI K.のプレイも終わりかけ…。Paperclip Peopleの"Remake"をプレイしていて、ゆったりとそして官能的な音がフロアに海の様に拡がっていて心地良かった。
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| EVENT REPORT3 | 15:30 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Waves - Encounter (BEAMS RECORDS:BBR-C-6025)
Waves - Encounter
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かつてはR & Sから作品をリリースしたり、近年はCode E名義でMule ElectronicからもグルーヴィーなテックハウスをリリースしているEbizoと、日本が誇るスピリチュアルなアーティスト・高橋クニユキが手を組んだユニットがWaves。インプロビゼーションを基本としたユニットである為に、ゲストにはIan O'Brienとみどりんの二人のプレイヤーを迎えほぼ生演奏でアルバムを仕上げたとの事。メンバーがメンバーだけに当然クラブミュージック的な要素、テクノやハウス、ディスコな音もあれば、それだけに留まらないインプロビゼーションから生まれる地響きを思わせるベースラインや躍動感のあるドラムス、熱い感情が湧き出たギターなども入っていて、彼らの思惑は成功したと言えるであろう。そして曲によってはIan O'Brienが作曲から参加している事もあり、クラブミュージックにはあまり見受けられないふくよかなコード感があったりと、クラブのフロア以外で聴いても十分に聴き応えを感じさせる音楽と言える。むしろその拡がりを感じさせる開放的な音は、開放的な野外ライブにこそ映える内容で、ライブが醍醐味なユニットに違いない(そう言えば春の渚にも出演してました)。自然体な4人のアンサンブルから生まれた音楽は、清々しく、そして温かい人情に溢れている。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Koss - Ocean Waves (Mule Electronic:Mule Electronic 68)
Koss - Ocean Waves
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高橋クニユキが実験的な音を追求するエレクトロニックユニット・KossのリミックスEP。収録曲全て"Ancient Rain"(過去レビュー)から"Ocean Waves"のリミックスとなっておりまして、どれもよりクラブ仕様な調理がされております。クニユキ自身による"Return To Ring Mix"は、マリンバが瞑想的な世界を演出するスローなディープハウス。煙がモクモクと立ちこめるように視界は遮られ、暗く深淵な洞窟へと誘われるようなアンビエンスでもあります。もう一つ"Mercury Dub"もクニユキ自身のリミックスで、こちらはトランス風な上物がサイケデリックに響くダンストラック。淡々と、そしてじわじわとエクスタシーを誘発するトリッピーなリミックスですね。で今回ぶっ飛んだリミックスを提供してくれたのがMinilogue。"Minilogue Moves The Waves To The Woods"は10分以上に及ぶ長尺なトラックで、潜水艦の中で金属音が乱反射するようなサイケデリックでミニマルでダビーなテクノを披露。多段に反射するエコーが最高に気持ち良くて、なのにドロドロした不気味な感覚もあり、恍惚と不安の狭間を彷徨う様です。これはクラブで聴いたら相当ヤバイ事になりそうな予感。

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| TECHNO7 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Henrik Schwarz - Live (Studio !K7:!K7220CD)
Henrik Schwarz - Henrik Schwarz Live
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今やベルリンテクノを代表すると言っても過言ではないINNERVISIONSの最重要メンバーの一人・Henrik Schwarzのライブ盤は、自身の曲や自身が手掛けたリミックスを使用したライブミックス。これがテクノやハウスと共にジャズやファンク(例えばJBやSun Ra、Kuniyuki Takahashiなど)までおさえた選曲で幅広いながらも、漂う香りはブラックマシーンソウルと言ったどす黒いグルーヴが渦巻いていて興奮が収まりません。アシッディーで不気味な雰囲気の漂うシカゴ系、流麗な黒光りするテックハウス、汗臭い熱を帯びたファンク、感情を揺さぶる歌物ディープハウスなどが目まぐるしく展開し、フロアの興奮を感じさせる上げ下げの効いた展開が広がっていきます。色々なジャンルからの選曲となっているものの、だいたいは本人が関与した曲の為かとっ散らかった印象は無く、むしろ夜の妖艶さが滲み出るアダルティーな感覚に統一されております。そして血沸き肉踊るライブ感もありながらクールな感触はドイツらしくも、この艶のあるエロさや鈍く光る黒さがドイツのシーンから出てきたと言うのは、今でも不思議な程に意外性があります。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 11:00 | comments(4) | trackbacks(1) | |
Kuniyuki Takahashi - Waking In The Naked City (Mule Musiq Distribution:MMD13)
Kuniyuki Takahashi - Waking In The Naked City
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生演奏と電子の有機的な絡み合い…と言っても今更珍しくもないでしょうが、それでも高橋クニユキの奏でる音楽からは血が通っていると言わざるを得ない温かさが伝わってくる。前二作においてはハウスやクラブサウンドとの接点を保ちながらクロスオーヴァーな作風を見せていましたが、三枚目となる新作ではもはやクラブミュージックと言う方向を意識する事も無くなっている様に思える。出だしの"Once Again"はどこを聴いてもジャズじゃないか!そう本作にはジャズピアニストの板橋文夫、そしてクラブシーンで大人気のHenrik Schwarzらも参加し、本格的にセッションやライブ感を打ち出して来ている。正直な感想を言うと多少方向性が変わった事で戸惑いもあるが、しかし柔軟で繊細に生き生きと鳴るピアノの音や渋みが滲み出るギターを聴くと、ジャンルがクラブミュージックであろうがなかろうが心に響く音と言う意味では変わってないなと感じさせられる。美しいとか小洒落たとか上品とかじゃなくて、ほのぼのと胸の奥にしまっておきたくなる様な泥臭さと温かさ溢れる音楽なんだ。ノスタルジーが手からこぼれる様に流れ出して、空間に切なさが満ちていく。人間だからこそ奏でられる音って、きっとこんなんだ。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 10:30 | comments(2) | trackbacks(0) | |
2008/10/13 NAGISA MUSIC FESTIVAL @ ODAIBA OPEN COURT
Derrick Mayが渚に出演すると言うので前売りチケットを買ってしまった。そうしたらその後に、代官山AirでDerrickがロングセットをやると言う情報が公開された。そう言った情報は先に公開してくれないか?Airでロングセットが聴けるなら、わざわざ渚には行きませんよ。だいたい前売りチケットを持っているのに当日客と同じ列に2時間以上も並ばされると言う最悪の運営をしていた渚ですから、嫌な思い出があって金輪際行かないなと思っていたんですよ。ま、しかし前売り買ってしまった訳だし、それならそれで渚を楽しめばいいやと気軽な気持ちで出陣。1時頃に会場に着いたけれど5分位しか待たずに入れたので、少しは運営も改善されたみたいですね?
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| EVENT REPORT1 | 08:00 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Koss - Ancient Rain (Mule Electronic:MED13)
Koss-Ancient Rain
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ここ数年の躍進ぶりは目を見張る物がある高橋クニユキですが、そんな彼のエレクトロニックな音楽をリリースするKoss名義の新作が登場。本人名義ではオーガニックで柔らかな音色を響かせるハウスをやっておりますが、このKossでは電子的でありながら有機的でもありややアンビエント寄りの音を主軸としております。本作では前作までの長尺の作風は封印しどれも10分以下に収まるコンパクトな内容になった分、大作志向が苦手な人にも聴き易くなりましたが、アルバムを通して一つの音楽となる様な流れがあるので決して壮大な世界観が無くなった訳ではありません。また"古代の雨"と言うタイトル通りどこか原始の森や太古の草原の景色が浮かび上がるその音像は、地球に存在する人間や動物の生命の循環や進化と同調していて、地球のうごめく胎動を感じさせてくれます。ここには湿った空気、降り注ぐ雨、大地の躍動が存在していて、その超自然の中で人間は生きている事を改めて実感するのでした。体や心に溜まった邪気や雑念を洗い流すのは、"Ancient Rain"。それは聖なる癒しの雨。きっとこの音楽は、日常に疲れた貴方の心に一時の安らぎを与えてくれる事でしょう。

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| TECHNO6 | 21:15 | comments(0) | trackbacks(1) | |
UPCOMING EVENT
2008/09/05 (FRI)
SQ presents AGORIA WORLD TOUR'08 @ Unit
DJ : Agoria, R.i.v.e.r, Dr.Shingo

2008/09/06 (SAT)
FLOATRIBE @ Unit
DJ : Kaoru Inoue, Kentaro Iwaki
Live : Kentaro Iwaki×Toshizo×Nori

2008/09/12 (FRI)
PUBLIC IMAGE @ Mado Lounge
Special Guest DJ Set : First Transmission From Jeff Mills
Live : Ryo Murakami
DJ : Akr, Sisi, Zuyack

2008/09/13 (SAT)
MINUS CONNECTED #04 -PLUS8 SPECIAL
DJ : Adam Beyer, Akr

2008/09/19 (FRI)
Endless Flight @ Unit
Guest Live : Isolee
Live : Koss aka Kuniyuki
DJ : KZA, Toshiya Kawasaki

2008/09/19 (FRI)
In:Flame @ Air
DJ : RAUDIVE a.k.a. Oliver Ho, DJ Sodeyama, Takuya

2008/09/20 (SAT)
NIXON presents "om:tokyo" @ Liquidroom
DJ : Mark Farina、J-Boogie、Anthony Mansfield、Groove patrol
Live : Samantha James

2008/09/22 (MON)
CHaOS @ Womb
DJ : Fumiya Tanaka, Zip

2008/09/26 (FRI)
AIR 7th Anniversary [01] @ Air
DJ : Ken Ishii, Kaoru Inoue, Ryota Nozaki, DJ Sodeyama, ☆Taku Takahashi

2008/09/26 (FRI)
Taicoclub Presents So Very Show! @ Womb
DJ and Live : Jimmy Edgar
Live : De De Mouse
DJ : Kaoru Inoue

2008/09/27 (SAT)
WOMB Presents W @ Womb
DJ : Steve Bug, DJ Wada

2008/09/27 (SAT)
Directions @ ageHa
DJ : Funk D'Void, Osamu U

2008/10/04 (SAT)
CLASH39×STANDARD @ ageHa
DJ : Francois K., Ken Ishii

2008/10/04 (SAT)
Animismic ~Deep Spiritual and Organic~ @ Unit
DJ : Ron Trent, DJ Olive

久しぶりのジェフミルズ。2010年1月1日12:01AMに東京に帰還するらしいけれど、2009年〜2010年はカウントダウンで来日って事ですよね?それまではもうジェフは来日しないそうなので、今回は何としても行かないと。10月4日はフランソワ、ケンイシイ、ロントレントが被ってしまった。迷うなぁ…。
| UPCOMING EVENT | 21:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki Takahashi - Remixed (Mule Musiq Distribution:MMD07)
Kuniyuki Takahashi-Remixed
Amazonで詳しく見る(日本盤)
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札幌発の心温まる音楽家・高橋クニユキのリミックスアルバムが登場。ハウスのフォーマットを元に自然的・有機的な音で心の奥底まで響かせるトラックは既に海外のアーティストからも賞賛を浴び、日本においても既に注目に値すべきアーティストに成長しております。今回は著名なアーティストがリミックスを提供していて、Cobblestone Jazz、Theo Parrish、Henrik Schwarz、Chateau Flight、A Mountain Of One、Tony Lionniらと大変豪華な人選。圧巻はやはりTheo Parrish、やばいですね。14分にも及ぶ超大作のリミックスを披露しているのですが、ざらつきのあるローファイなリズムトラックが煙たく、ねちっこいグルーヴは期待通り。フランスのお洒落かつ変態ユニット・Chateau Flightも彼等らしく、奇天烈なピコピコサウンドが何とも可愛らしい見事なフレンチエレクトロを聴かせてくれます。Tony Lionniと言う人は全然知らないのですが、オーガニックなディープハウスを披露。原曲にあったフルートやピアノの旋律を壊す事無く生かして、正当派な4つ打ちに仕上げ心地良い横揺れグルーヴを生み出しています。そしてクニさん本人も新曲やリミックスを提供していますが、本人がリミックスした"All These Things"は、まるでJoe Claussellみたいなスピリチュアルハウスで、広大な大地に包容される様な優しさに溢れています。その他にも素晴らしいトラックが多く収録されていて、十分に聴き応えのある力作ですね。

残念なのはリリースが延長された挙げ句に、元々収録予定だったMoodymannとTokyo Black Starのリミックスが削除されてしまった事。一体何があったんでしょう。。。

HMVのサイトでクニさんによる全曲解説はコチラ

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Tracklistは続きで。
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| HOUSE4 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(2) | |
UPCOMING EVENT
2008/01/25 (FRI)
Taicoclub Presents So Very Show! @ WOMB
LIVE : Sleeparchive, Kuniyuki Takahashi
DJ : Fumiya Tanaka, Foog

2008/01/25 (FRI)
SQ presents FINE : Frogman “Cold Sleep” Party @ UNIT
SPECIAL LIVE SET : Quadra (a.k.a. Hiroshi Watanabe / Kaito), Hitoshi Ohishi
DJ : Kagami, Taichi Master, Toby

SALOON (B3F)
DJ : C.T. Scan (a.k.a. CMJK), Hirofumi Goto (a.k.a. Rondenion), Susumu Yokota, KEN=GO→
SPECIAL LIVE SET : Hulot, Jun Yamabe (a.k.a. Mexico), Riow Arai

2008/01/26 (SAT)
FACE presents ANDRE COLLINS JAPAN TOUR 2008 @ YELLOW
DJ : Andre Collins, Ryo Watanabe

2008/02/02 (FRI)
LUKE SOLOMON "The Difference Engine" Release Tour @ YELLOW
DJ : Luke Solomon, Remi

2008/02/07 (THU)
SPiN30 : ElecTek @ YELLOW
Guest DJ : Rennie Foster
DJ : DJ Khadji, Shigeru Tanabu

2008/02/08 (FRI)
Orbdjsessions feat. Alex Paterson & Thomas Fehlmann @ UNIT
DJ : Alex Paterson & Thomas Fehlmann

2008/02/08 (FRI)
King Street Sounds presents Kerri Chandler Japan Tour @ YELLOW
DJ : Kerri Chandler

2008/02/10 (SUN)
Deep Space @ YELLOW
DJ : Francois K.
LIVE : Henrik Schwarz, Kuniyuki Takahashi
| UPCOMING EVENT | 22:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
BEST OF 2007
来たるべき大晦日が遂にやってきました。今年は特に年末年始は予定が無いので、今日はDynamite!!でも見ながら酒を飲みつつ年を越そうと思います。ちなみにロシアン皇帝VSチェ・ホンマンなんて、でくの坊のチェに勝ち目なんてねーだろ。何て言いながらチェが勝ったらどうしよう…。そう言えば今年は長年お世話になってきたシスコがクローズしたり、クラブ営業への圧力が一層高まったり、クラブミュージックがどんどんと良くない状況になっているのを感じました。元々一般人には馴染みのない世界、音楽なのに更に追いつめられてどうしようもない状況ですな。まぁ中には一般受けにヒットしてるアーティストもいるので、今後はよりアンダーグラウンドとオーバーグラウンドで境が出来ていくのでしょうか。とにかく真夜中のクラブ営業だけは、法を改善して問題を無くして欲しいですね。何で24時間営業の居酒屋で飲むのは合法で、クラブで夜中に踊るのは違法なんでしょうね?意味の無い法律は必要ありません。

無駄口が続きましたが、これから2007年のマイベスト作品を紹介致します。でも昨日掲載した売上ベストに出ている作品は敢えて外してあります。それらの作品でも自分の年間ベストに入っている物はありますが、折角なので今日はそれ以外を紹介したいと思います。ベタなチョイスではありますが参考にして頂ければ幸いです。

それでは続きをどうぞ。
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| BEST | 17:00 | comments(4) | trackbacks(2) | |
Kuniyuki Takahashi - All These Things (Mule Musiq:mmd5)
Kuniyuki Takahashi-All These Things
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世界における日本の音楽の評価は一般的に低いと思われますが、クラブミュージックのみは世界標準を保っている素晴らしき現状。そして又しても日本がそのクラブミュージックの層の厚さを世界に示す事になるのが、この高橋クニユキの2NDアルバムです。いやしかし、ハウスを基調にしたオーガニックなサウンドではあるものの、これをクラブミュージックのみにカテゴライズしてしまうのは失礼な位素晴らしき内容です。今までもバンドアンサンブルを意識した人間味のあるハウスは数あれど、更にその上を行く年を経て滲み出る味わいと豊潤な情熱は間違いなく最上級の物。特に注目すべきは哀愁を奏でるスパニッシュギターと静謐ながらも彩りを飾るピアノの音色で、ただただその美しさに耳を惹かれサウダージを呼び起こされる事は間違いないでしょう。スピリチュアルと言うのも良いでしょうし、オーガニックとも言えるでしょう。またディープハウスであり、クロスオーバーな作品でもあります。しかしそれ以上に大事な事は、高橋氏の音楽への愛、そして人への愛が素直に伝わってくる作品である事。音楽に大事な事は技術以上にどれだけ音に心を注ぎ込めるか。そうゆう意味では、本作は高橋氏の真心100%で構成されております。四の五の言わずにこの音楽は皆に聴いて欲しいと思います。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ1 | 23:00 | comments(2) | trackbacks(2) | |
Saikoss - Kossaiko (Mule ElectronicMED08)
Saikoss-Kossaiko
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スピリチュアル、クロスオーバー、エレクトロニック、オーガニックなど色々な表現が当てはまる日本の高橋クニユキをご存じでしょうか。KOSS名義ではトリッピーでアンビエンスなミニマル作品を、そして本名名義では壮大で自然回帰的なハウスをリリースし、去年辺りから一躍注目を浴びているアーティストです。異なる名義で上手く異なる音の表現を行い、両者で高い評価を得ていて非常に奥の深いアーティストだと思います。そしてそんな彼とCrue-L Recordsで活躍する女性ピアニスト・塚本サイコが手を組んだのが、その名もSaikoss。役割は塚本がピアノ、KOSSがエレクトロニクスと完全分業制ですが、基本的にはピアノが織りなすサウンドスケープと言えば良いのでしょうか。物静かで厳かなピアノに対しエレクトロニクスは奥深い景観とゆったりとした時間軸を被せて、現実の世界から解き放たれた時間も地平の果ても無い唯一無二の世界へと引き込むのです。映画のサウンドトラックか、安く言えばヒーリングミュージックとも冠せられてしまうような心地良さがありますが、凛とした気高い美しさは決して色褪せる事無く輝き続けると思います。きっと塚本だけでも、またKOSSだけでも成し得なかった二人の相乗効果が生み出す美しい世界は、日々疲れた現在人を癒す事の出来る優しい音楽です。

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| ETC(MUSIC)2 | 21:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
UPCOMING EVENT
2007/03/16 (FRI)
Taicoclub Presents Innervisions @ Womb
Live : Nathan Fake
DJs : Ian O'Brien(Live + DJ Set), Kaoru Inoue, Force Of Nature

2007/03/20 (WED)
mule musiq 3rd anniversary party meets KOMPAKT NIGHT @ UNIT
Live : Saikoss (Saiko Tsukamoto aka Museum Of Plate & Kuniyuki Takahashi),
code e, Koss aka kuniyuki Takahashi
DJ : Michael Mayer, Toshiya Kawasaki

2007/03/23 (FRI)
TECHNASIA presents X PARTY @ WOMB
LIVE : Joris Voorn
DJ : Technasia

2007/03/30 (FRI)
TRI-BUTE 3RD Anniversary @ ageHa
Arena
Special Live Set : Chab, Spirit Catcher
Island Bar
DJs : Q-Hey, Mayuri

3月に気になっているイベントはこれ位かな。WIREで事情があってヨリスヴォーンのライブを聴けなかったので、今度こそは聴きたいです!最近注目株のSpirit Catcherのライブも気になるなー。
| UPCOMING EVENT | 23:00 | comments(2) | trackbacks(0) | |
A Year of Mule Electronic (Mule Electronic:med03)
A Year of Mule Electronic
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Kompaktがディストリビュートする日本のレーベル・Mule Electronic。Koss(Kuniyuki Takahashi)、Dublee、Terre Thaemlitz、Code Eなどを擁する新興レーベルで、Kompaktの支援もあるせいかやはり音にもKompaktを思わせるミニマルで幻想的な空気が漂います。なかなか日本から世界に羽ばたくレーベルは出て来ませんが、Mule Electronicは今までのリリースを見る限りだと質は結構高いんじゃないかと思っています。2005年にレーベルは発足したのですが、2006年には早速レーベルの傾向を知る為のコンピレーションが登場しました。幕開けは塚本サイコに依る全くエレクトロニックでは無い、ピアノソロ曲。でもとても神秘的で美しく、静寂の中にゆったりとした時間が流れていくようで良い曲です。2曲目のKossは、ミニマルなリズムトラックにアンビエントな上物が載った浮遊感のあるテクノ。奥深さを感じさせる音響が心地良く、これまた素晴らしいですね。3曲目のDubleeはモロにクリックハウスで、この系統のお手本らしい作りです。6曲目はまたKossですがリミックスをKarafutoが行っていて、田中フミヤらしいスカスカのクリック+ミニマルになっています。都会的で上品、知的さを醸し出す彼らしいリミックスですね。7曲目はまたもDubleeですが、リミックスはなんとKompaktの御代・Thomas Fehlmann。悪い訳が無いのは当たり前、それ以上に研ぎ澄まされたシンセサウンドが薄いレイヤーの様に延びていき幻想的な世界を見せつけます。最後にはエレクトロニカで一時期注目の的だったWechsel Garland(懐かしいなぁ)ですが、意外にもテクノっぽい4つ打ちサウンドでそこに牧歌的な和やかさを取り込んだ愛らしい曲です。アルバムを一通り聴くとMule Electronicの音を言う物をはっきりと感じられましたか?やっぱりKompaktと通じるセンスを感じましたが、如何でしょうか。

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| TECHNO4 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Koss - Live Ring (Sound Of Speed:SOSCD04)
Koss-Live Ring
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さて、昨日紹介したKuniyuki TakahashiことKossですが、以前にリリースした「Ring EP」(過去レビュー)のライブ盤も出ています。2000年7月1日、以前はクラブイベントも行われていた青山CAYでのプレイを収録した物ですが、相変わらずの5曲50分と長尺なプレイ。昨日紹介したアルバムと異なる点は、このライブではビートがはっきりと明確な事。終始ハウス調の4つ打ちが持続されて、永続的な快楽を引き起こすには充分。無機質に持続されるビートの上を、螺旋階段の様に上ったり下ったり永遠に終わりの無い幻想的なシンセサウンドが反復を繰り返します。こりゃセカンドサマーオブラブ真っ盛りなアンビエントハウスとでも申しますか。また音の一つ一つに柔らかみがあり丸みを帯びていて、耳当たりが優しく心地良く聞けるのも嬉しいですね。しかしマシンが生み出す音なのに、この人が発する音は暖かみが感じられるね。なんとなく彼の人柄も温和そうに思えてしまいます。これを聞いて微睡みの世界に落ちてしまいたい。

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| TECHNO3 | 23:00 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Koss - Four Worlds Converge As One (Mule Electronic:MED06)
Koss-Four Worlds Converge As One
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はぁ〜、やっと自信を持って紹介出来る久しぶりのアンビエントミュージックがリリースされましたよ。北海道を拠点にオーガニックでディープなハウス作品をリリースするKuniyuki Takahashiさんは、電気的でよりミニマルな面を強調したKoss名義でも活動していて、ドイツ・Kompaktとも共振する和製レーベル・Mule ElectronicからKossの新作を届けてくれました。まず驚くべきは4曲収録で計77分と言う、かなり壮大な展開が予想される長尺な作り。そして4曲は4つのエレメント「水、火、空気、大地」を表し、またそれは「北海道、本州、四国、九州」で感じた物が、それぞれ反映されているのだとか。では実際に中身を聴いてみると…圧巻はオープニングの「水」。30分近くもある曲なのですが、殆ど展開も無くただゴォーっとシンセが鳴り響くのみ。空気の揺らぎの如く、薄いシンセ音もゆっくりとゆっくりと揺らぎを繰り返すのですが、この余りにも深淵で美しい世界はMike InkのGas名義を彷彿させます。時々コポコポと水の様な音も聞こえてきて、延々と変わらない時間の中で体の中から癒されますね。「火」ではじっくりとか弱く萌える炎の様に、静かな佇まいの中にも徐々に変わりゆく変化が聞こえます。業火では無く、ローソクの火の様な静けさです。「空気」はフレッシュで清々しい空気が満ちていき、ストリングスが取り入れられSteve Reichを思い出させるミニマルミュージックを聞かせます。そして最後の「大地」では、予想通りと言うべきかパーカッションが蠢く大地を表現し、地球本来の生命力を感じさせます。地球の全てを包括する深淵さが、ここに聞こえるのです。Koss名義では電気的と言いましたが、今作ではその中に自然の温かみも含まれていて、全く無機質ではなくそれどころか有機的です。寝る時に良い塩梅に効くヒーリングアンビエントですね。また4つの曲を同時にプレイすると新たな1曲になるそうなのですが、誰か実践してくれないでしょうか…。

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| TECHNO3 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kuniyuki Takahashi - We Are Together (Mule Musiq:mmd03)
Kuniyuki Takahashi-We Are Together
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○○が支持しているなんて紹介を見るとついつい手を出しちゃう人がここにいます、はい私です。だってJoe Claussell、Ian O'Brien、Larry Heard、Laurent Garnier、Alex From Tokyo、井上薫ら大勢のアーティストが賛辞のコメントを寄せているんですよ。そりゃね、多少は商業的な事があるのは分かってるけど、やっぱり良くなければコメント自体も残さないだろうとは思いますよ。つー事でこのアルバムを買いました。Kuniyuki Takahashiは札幌を拠点に活躍するアーティストで、今まではDego(4 Hero)のレーベルコンピやIan O'Brien監修のコンピに曲を提供したり、Ananda Projectのリミックスを行ったり、意外な所で活躍していたアーティストです。またはKOSS名義ではラップトップをフル活用した壮大なサウンドスケープを描き出したりもいていて、最近名前も知られて来ている様になっていました。そしてこの本人名義では、相当にネイチャー志向に傾倒したディープハウス〜クロスオーバーな作品を感動と共に送り出しています。ここではプログラミングと共に人力によるパーカッションやドラムス、ギター演奏を中心として、地球と言う大地に根ざした繊細かつ躍動的な音楽を奏でています。一般的にはハウスと言うジャンルに属する雰囲気に近いのですが、地球とシンクロしたその鼓動は僕らの周りに存在する自然音その物。きっと太古に人間が感じた地球本来の音色を、このアルバムからも感じ取れるのではないでしょうか。「We Are Together」とは人間だけでなく、周りの動物やそして地球までもを含めた事であり、そしてこれを聴く者も一緒だと言う事であるに違いない。北海道の有名なクラブ・Precious Hallへのトリビュート曲であるアフロかつダブな「Precious Hall」、また大地へと同化してゆく儚い「Earth Beats」は一聴の価値有り。じわじわと心の中に大地の音が浸食してきます。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ1 | 23:30 | comments(4) | trackbacks(2) | |
Koss - Ring (Mule Electronic:MUELCD002)
Koss-Ring
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KompaktディストリビュートによるMule Electronicから、天使のブラならぬ天使の羽の様な快適性を持ったアルバムが届けられました。以前にもアルバムは出ているようですが、これが世界規模でのデビュー盤。6曲のみの収録ですが総時間は60分超え。完全にリスニング向けで、まどろみに陥るにはぴったりな作品です。ディレイを繰り返し少しずつ音階が変化していく様はSteve Reichの様であり、まるでこのCDを掛けている間だけ時間の進み方が遅くなっている様です。アンビエントな音ではあるけれど、ずぶずぶで重厚な作りではありません。暖かみのある音が心地良く繰り返し、瞑想の世界に彷徨い込む様です。イベントのアフターアワーで火照った体をさます時に聴いてみたり、日曜の午後にちょっと都会の喧騒を忘れたい時に聴いてみたり、そんな感じで癒しが必要な時にぴったりです。Kompakt好きには間違い無いでしょう。

試聴

収録曲が被ったKoss-Live Ring EPなんてのもあります。
詳細はこちら

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