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Byron The Aquarius - Astral Traveling (Mutual Intentions:MI-016)
Byron The Aquarius - Astral Traveling
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2016年にS3AのSampling As An Art Recordsからデビューするやいなや、Kyle HallのWild OatsやTheo ParrishのSound Signatureから立て続けにEPをリリースし、一躍注目を浴びる事となったアラバマ出身のByron The Aquarius。ファンクやジャズにヒップ・ホップまで吸収しながらハウスのフォーマットに纏めた音楽性は、DJが使えるクラブトラックのマナーに沿いながらもキーボーディストである手腕を活かして、豊かなメロディーの展開やライブ感溢れるグルーヴが存在し演奏家/作曲家としての面が強く打ち出されたものだった。新人なのにその完成度…というのも実は当然で、The Big Paybackというバンドでの活動を始めとして他アーティストの制作にも加わったりと、実は10年以上の音楽経験がある熟練者なのだからそれも納得の事だったのだ。そしてソロデビューを果たしてから3年、待ちに待っていたアルバムは当然の如くほぼ自身で楽器を演奏し、曲によっては歌まで披露するなどやはりプレイヤーである事に拘ったアルバムだ。過去の音楽性から全くぶれる事はなく、ジャズやソウルにヒップ・ホップからハウスまでが見事なまでに一つに溶け合った音楽は、全く外れがなく貫禄十分で実にベテランとしての横綱相撲的な内容だ。出だしのメロウな"Love Is 4 U"からして素晴らしく、切ないピアノのコードと美しく伸びるストリングス、そこにフェンダー・ローズが優しく情緒を付け加え、自身の霞んだような歌も相まってより郷愁が強く発せられるハウスから魅了される。"Sorry Kari (Lu$t)"でも優雅なストリングス使いとピアノ等の鍵盤ワークが印象的なハウスだが、そこにエレクトロニクスのループや咆哮するギターソロも加わってくると途端にファンキーさを増す。一方では完全にジャズに振り切れてインプロビーゼーション的に各楽器がのびのびとソロワークを披露する"Lost In Love (Intermission)"は燻し銀な渋さがあり、同じジャズ色が強めながらもビートが入り光沢を見せるような鍵盤が美しい"Deep In That *****"はコズミックなジャズと呼べばよいか、どちらも湿ったような情緒的な曲だ。気怠い呟きと優雅なコーラスから始まり、フュージョン的なシンセソロや透明感のある耽美なフェンダー・ローズとサックスを重ねてエモーショナルに展開するハウスの"Universal Love"は、アルバムの中でも特にうっとりさせられる。アルバム終盤はヒップ・ホップで纏めており、ビートレスながらも自身で軽快なラップを披露しヒップ・ホップの雰囲気を生む"Spazzing Out (4 U)"、ざっくりとスモーキーなダウンテンポに湿っぽいエレピコードを合わせて温かい感情に包んでいく"I Can't Help My$elf"と、最後は盛り上がった気分を徐々に落ち着かせるようにアルバムを締め括る。最初から最後まで見事なまでに捨て曲無しでByron The Aquariusらしいプレイヤーとして演奏力を発揮しつつ、勿論クラブでも違和感のないダンス性が込められた感情性豊かなアルバムは、デビュー作にしてほぼ彼の音楽性が完成されているように思える程だ。流行とか時代に関係なく、クラシック的なハウスとして魅力的である。



Check Byron The Aquarius
| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | - | |
Culross Close - Forgotten Ones (Esencia:ESC003)
Culross Close - Forgotten Ones

まだ決して知名度があったわけではない2014年、2枚組EPの『Insecurities』がKyle Hall主宰のWild Oatsからリリースされた事が起爆剤となり、一躍人気アーティストの仲間入りを果たしたロンドン出身Kieron IfillことK15。ハウスからヒップ・ホップ、フュージョンからネオソウルまで横断した自由自在なリズムと美麗なメロディーを武器とするこのアーティストは、実際にHenry WuやKuniyuki Takahashi等のアーティストと共同制作を行っている事からも分かる通り、00年代前後に繁栄した西ロンのブロークン・ビーツを現在に継承する存在だ。そんなK15が新たに立ち上げたレーベル・Esenciaにおいて力を入れるプロジェクトがCulross Closeで、これはK15名義よりも更にジャズへと傾倒しているそうで、実際に本作でもIfill自身はピアノや歌も披露しつつ、他アーティストがドラムにパーカッション、ベースやシンセにサクソフォンまでプレイするバンド形態となり、クラブ・ミュージックの枠を越えて果敢にも本格ジャズへと挑戦しているのだ。だからこそフリーフォームで曲毎に異なる姿があり、冒頭の"Fractured"では耽美なフェンダー・ローズとコズミックなArpシンセが咽び泣くような応酬を見せ、終盤に入るとけたたましく野性的なドラムが暴れる繊細さと激しさが交錯するジャズを披露。続く"Forgotten Ones"では落ち着いたフェンダー・ローズと愛らしい鉄琴がメランコリーを奏でつつ、落ち着きながらも切れ味のあるジャジー・ドラムが仄かに跳ねたビートを刻み、人肌の温もりを感じさせる音がしっとりと耳に入ってくる。ヒップ・ホップやブロークン・ビーツの要素がある"Acceptance"で00年代前後のクラブ・ジャズ黄金時代の雰囲気があり、ピアノとドラムとベースと歌のすっきりした構成はだからこそ逆に各パーツがはっきりと際立つ誤魔化しようのないもので、シンプルさを強調させながらアーバンかつメランコリーなジャズになっている。奇妙なシンセや変幻自在なドラムのビートがスピリチュアル性を醸す"Mood"はインタールード的な短い曲だが、そこから5/4の変拍子を刻む"The Tiniest Lights Still Shine"はアルバム中最も躍動感に溢れた曲で、ムーグの奇抜なコズミック・サウンドとサクソフォンの情熱的なメロディーや中盤以降ではアフロ・パーカッションが炸裂しパワフルなグルーヴを発揮するなど、一気に熱量を増して盛り上がる。そしてArpやムーグのシンセにピアノが前面に出て大人びた優雅さで舞う"Healing"で、ラストを飾るに相応しいモダンでエレガントなフュージョン/ジャズによって平穏へと還るように、うっとりとする余韻に包まれて締め括る。K15がクラブ寄りだとすると、このCulross Closeは恐らくK15のルーツ志向を実践するジャズの場であるのだろうか、しかしこの後者が単に懐古主義なのではなく両者が表裏一体としてアーティストの成熟を促す関係に違いない。Culross Close名義も注目すべきプロジェクトなのだ。



Check K15
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Robert Hood - DJ-Kicks (!K7 Records:K7376CD)
Robert Hood - DJ-Kicks
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オリジナル・デトロイト・テクノの重鎮、そして頑固一徹ミニマル・ネーションとでも呼ぶべき作風を貫く生粋のミニマリストであるRobert Hood、久しぶりにMIXCDへと参戦したその作品は長く続く老舗MIXシリーズの「DJ-Kicks」だ。このシリーズ自体はジャンル問わずに多方面のアーティストを起用する事でバラエティーを拡張しマンネリを避けているようにも思われるが、そんな中に飛び込んだミニマリストはやはりミニマル・テクノから全くぶれずに求道的に自分の道を貫き通している。近年はFloorplan名義を復活させてゴスペル性も伴ったディスコ・ハウスによって別の魅力も開花させていたが、ここで聞けるのはミニマル・テクノ、それもルーマニアやチリの官能と陶酔による揺らぎをもたらすそれではなく、ある意味では古臭くもありそれが味でもある直線的なグルーヴで猪突猛進するテクノだ。勿論ベテランだからといって昔を懐かしんだりクラシックに頼ったミックスではなく、それどころかヨーロッパの最新のハードなテクノを軸に選曲を行っており、しっかり現在形のDJである事を証明している。ヒスノイズのような凍てついた音響が続く"Connected (Intro)"によって幕が開き、即座にこのシリーズの為に書き下ろされた弾性のあるキックが鉄槌の如く振り下ろされるダークなテクノの"Focus (DJ-Kicks)"で直線的なビートが走り出す。ざらつきのあるリズムに睡眠的な電子音のループに引き込まれる"Terminal 5"、薄い電子音響を張り巡らせつつハードなキックが地面を揺らす"Remain"など、序盤から豊かさを排除しながら退色した世界観の中を疾走するこれぞHood流ミニマル・テクノな流れ。恍惚感のある電子音にハンドクラップが刺激的な"Mirror Man"からファンキーなサンプリング系の"King (Gary Beck Remix)"の流れはやや大箱を意識したであろう派手さがあり、中盤に入っても息抜きや下げもなく常に高いテンションで爆走するスタイルは、上手い下手で評価されるべきではなく愚直なまでのミニマルへの信仰を喜ぶべきだろう。ハードなだけではなく快楽的なループによって意識を融解させる"Signs of Change (Robert Hood Remix)"や、Floorplanの音楽性に近いファンキーなゴスペル・テクノとでも呼ぶべき"Make You Feel Good"など印象的な曲も用いつつ、そして壮大で派手なブレイクも導入して直線的で平坦なグルーヴながらもしっかりと盛り上げる場面も作っている。そのまま終盤までドスドスと太いキックが4つ打ちで大地を揺らし、最後は簡素なドラム・マシンによるリズムのみがファンキーさを生む"Protocol"でミニマルとして相応しい締め方だ。展開的な面白さという点では余り推せる内容ではないものの、妄信的なまでのミニマルなスタイルは骨太な芯があり、興味の無い人にとっては全く興味が無い代わりに好きな人にとっては一生愛せるミックスになり得る可能性も秘めている。兎にも角にも痛快な音楽性である事は断言する。



Check Robert Hood

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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
K15 - Be Glad You Create Anything (WotNot Music:WOT030)
K15 - Be Glad You Create Anything
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Kyle Hall主宰のWild OatsやFloating Points主宰のEgloなど、人気沸騰中のレーベルからも作品をリリースした事もあってか注目を集めているロンドンの新世代アーティストであるKieron IfillことK15。しなやかなグルーヴと情緒的な雰囲気のディープ・ハウスを軸にブロークン・ビーツやフュージョンにヒップ・ホップまでと、多彩なリズム感も取り込んで作品毎に異なる豊かな才能を発揮したその音楽性は、ロンドン出身らしく西ロンのかつてのフューチャー・ジャズの系譜上にある。ダンス・ミュージックの枠である前提は変わらないが、ただ踊れるだけでない音楽的にしっかりとした構成やハーモニーやメロディーの響きが必ずあり、例えばクラブ・ミュージックなんかは聞かないというジャズファンにだって訴求する音楽性を含んでいる。最新作は過去にもリリース歴のWotNot Musicからで、このレーベル自体がK15と同じようにヒップ・ホップやディスコにネオソウルなど様々な音楽を手掛けており、その点からするとK15とレーベルの相性は抜群である事は言うまでもない。ここでは僅か3曲16分程の小規模なEPではあるが、それとは対照的にK15の豊かな音楽性を知るには十分過ぎる程の曲が収録されている。ブロークン・ビーツやフューチャー・ジャズ路線の"Be Glad You Create Anything"は優美で情緒溢れるエレピにコズミックなオルガンが絡む幕開けから、徐々にハンドクラップやしなやかなで切れのあるリズムがビートを刻み、フュージョン色の強い光沢溢れるシンセのリフで装飾するモダンなハウスだ。やはりプレイしている姿も想像出来るような楽しげなキーボードの旋律は素晴らしく、またぐっと抑えられながらも躍動するエネルギーを秘めたビートメイクは流石で、ハウスやフュージョンにジャズ等の要素が見事に一体化している。また"Communion"は序盤こそ静けさが際立つ静謐なピアノのコードが繰り返されるが、そこに踊るような耽美なエレピと弾けるキックの4つ打ちが入ってくると途端にグルーヴ感を増し、その後も物憂いなムードでしんみり情緒が続くハウスはフロア向けな作風だ。そしてラストはロービート/ヒップ・ホップ調の"You're Alive (There's Still Time)"でねっとり粘るリズムを刻み、メロウなエレピや輝きのあるコズミックなシンセを用いてぐっと温まる。収録されたどの曲も異なるリズム感でK15のクロスオーヴァー性が存分に活きており、そしれ何よりも感情性豊かなキーボードプレイが素晴らしく、ぐっと心に訴え掛ける音楽性は共通している。



Check K15
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Jay Daniel - Broken Knowz (Technicolour:TCLR018)
Jay Daniel - Broken Knowz
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Kyle Hallと双璧を成すJay Danielはデトロイト・テクノ/ハウスの新世代を代表する若手のアーティストで、何とまだ25歳と若くして知名度を得た実力者である。Sound Signatureから2013年にデビューを果たしてからまだ数年だが、既に日本への来日も果たすなどデトロイトに於ける新世代としての期待を一身に背負い、デトロイトのアフロ・フューチャリズムの伝統を受け継ぎつつ今のサウンドを創作する。母親はPlanet-Eから作品をリリースしていたあのNaomi Danielなのだから、血筋としても裏切るどころか期待された通りの結果を残しているが、しかし母親のうっとりする官能的な歌モノハウスとは異なり、Jayの音楽性はとびきりに粗い。若さ故の衝動的なパワーと呼ぶべきか、その粗さは例えばテープでの録音や古い機材を使っている事も影響しているのだろうが、敢えて綺麗に作品を纏めるような事はせずに剥き出し感のある粗雑な音が熱いソウルをより実直に感じさせるのだ。その方向性はドラムプログラミングの制約に限界を感じた事で、本作では自分でドラムを叩く事へと繋がり、それが結果としてJayのラフな音楽に拍車を掛けつつより人間味溢れる音を鳴らす事になったのだ。ハンドクラップや生々しく土臭いドラムのリズムに先導される"Last Of The Dogons"は、何か黒いものが蠢くようなアフロ感覚もあり、単にハウスと呼ぶには異形なオープニング・トラックだ。続く"Paradise Valley"は正にドラムスティックの乾いた音がリズムを刻んでおり、何が物悲しいメロディーと相まって胸を締め付けるような感情的なロウ・ハウスだ。"Niiko"も生き生きと躍動的なドラムのリズムが土着的で、最早デトロイト・ハウスというよりはエキゾチックな原始音楽のような生命力があり、肉体から汗が吹き出すような胎動が感じられる。逆にこれぞJayのロウ・ハウスらしくあるのは"1001 Nights"で、ざらついたハイハットの粗さや骨格が浮かび上がった隙間だらけの構成が、逆説的に骨太なグルーヴを生み出している。どの曲も簡素な構成が故にドライかつ抑揚が抑えられてはいるものの、4つ打ちを逸脱した妙なリズム感が揺れを誘発し、ライブ感のある音によって直接肉体を刺激する。デトロイトの先人達のソウルを受け継ぎつつ、しかし単なる物真似にはならないオリジナリティー溢れる音楽性があり、新時代を切り開くアーティストとして期待は大きくなるばかり。



Check "Jay Daniel"
| HOUSE12 | 21:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
BEST OF 2016
今年も一年間当ブログを御覧頂いた読者の皆様、どうもありがとうございました。今年も例年と変わらず音楽/パーティー三昧…とはいかず、私生活の変化により忙しくなりなかなか音楽へ時間を割く事が出来ない一年でしたが、それでも音楽に対する情熱は全く変わらず新しい音楽への探求が途切れる事は変わりませんでした。パーティーに関しても新風営法が現場の感覚にはやはり馴染んでいないと感じる点がありつつも、新しいクラブが生まれ少しずつではあるけれどこの業界も活気を取り戻しているようにも思われ、ダンス・ミュージックの未来に展望が見えてきた年でもありました。当方は今後も毎週のようにパーティーに行く事は出来ないと思いますが、来年も新しい音楽も古き良き時代の音楽も分け隔てなく楽しみ、そして素晴らしい音楽をこのブログでアウトプットしていく事を続けられたらという気持ちは変わりません。そんな気持ちで選んだ年間ベスト、皆様の素敵な音楽ライフに少しでも参考になれば。それでは、来年も良いお年を!

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| BEST | 18:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Sound Signature Presents These Songs That Should’ve Been Out On Wax By Now - Part One / Two (Sound Signature:SSCD 09)
Sound Signature Presents These Songs That Should’ve Been Out On Wax By Now - Part One Sound Signature Presents These Songs That Should’ve Been Out On Wax By Now - Part Two

今も尚デトロイト・ハウスを引率し続ける鬼才・Theo ParrishによるSound Signatureは、近年は自身以外の作品も積極的にリリースするようになり、そのブラックネス溢れる音楽性をより豊かに実らせている。そして本作はそんな流れを含むレーベルコンピレーションであり、タイトルが示すように本来はレコードでリリースされる事を望んでいたであろう作品集だ(CDから後にアナログカットが始まっている)。曲を提供しているのはTheoを筆頭にHanna aka Warren HarrisやAlton MillerにMarcellus PittmanやKai Alceといったハウス側のベテラン、そして新世代を代表するKyle Hall、TheoによるバンドのThe Rotating AssemblyからJohn Douglasといった演奏者、過去にSound Signatureからもリリース歴のあるDuminie DeporresやAndrew Ashong、デトロイトのソウル・シンガーであるMaurissa Rose、Theoと共演したTony Allenら、Theoと関連性のあるアーティストが集まっておりレーベルの作品集として正しくあるべき姿での内容だろう。ただし参加アーティストは公表されているものの誰がどの曲を手掛けたかは記載されていないが、それこそただ音楽を感じ楽しめばよいというような意志の現れなのだろう。アルバムは恋焦がれるような熱い女性ボーカルとピアノ演奏によるソウル・トラックの”Somewhere Inbetween"で始まり、錆び付いたロウ・ビートと黒光りする官能的なピアノによるサイケデリック・ジャズな"Whachawannado (Instrumental)"、鈍く響く歪なビートがミニマルに展開し闇の中から色気も滲み出てくるTheo作の"Faucet"など、Part Oneからして間違いなくSound Signatureのレーベル性に違わない音楽性だ。また"Pure Plastic"は透明感のある優美なコード展開と軽快でジャジーなグルーヴが心地良く、Millerによる"Bring Me Down"もスムースな4つ打ちとソウルフルなボーカルにうっとりさせられ、時代に左右されないクラシカルなハウスも収録されている。Tony Allenが参加した"Wayshimoovs Rx"はやはりというか艶かしいアフロ・ビートが息衝いており、Theoのブラックネスをより濃厚にする個性を付加している。最後は2015年にEPでリリース済みのThe Unitによる"Ain't No Need (Live - Version 2)"で、原曲の優しさで包み込むディスコ感を損なわずに、肩の力が抜けたセッションをするジャズ・ファンクへと生まれ変わらせ、ルーツへの意識も忘れない。ハウスを軸にソウルやファンク、ジャズやヒップ・ホップなど黒人音楽を咀嚼し、メランコリーからサイケデリアまで表現するSound Signatureの作品集は、当然の如くそれらにはどれもTheoの濃密な黒さが投影されており、単なるダンス・ミュージックではないレーベルの強い個性を主張している。





Tracklistは続きで。
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| HOUSE12 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Omar S - The Best (FXHE Records:AOS 4000)
Omar S - The Best
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若手アーティストでありながらギャラが高いとか、作品が高額であるとか、最近のデトロイト・テクノ/ハウスにありがちな傾向はOmar Sにも当てはまる。その上、3年ぶりとなる新作のタイトルは『The Best』と、特にベスト・アルバムでないにもかかわらずこの有様は、ふてぶてしいと言わざるを得ない。だがそんなタイトルも実際に作品を聴けば納得させられる点もあり、確かに彼の成熟したキャリアの既に辿り着いたモータウン・ミニマルの境地と呼びたくなる。新作にはベテランであるNorm TalleyやAmp Fiddler、Divinityに若手のKyle HallやBig Strickなど、デトロイト勢で塗り固めたようにゲストを招いており、その意味でアルバムは正にデトロイトの音を語っている。アルバムは錆びたように鈍い唸りを聴かせるかっちりしたビートの"Time Mo 1"で始まり、序盤からロウな質感を打ち出しつつも荒廃した街の中にもソウルを感じさせるような温もりが伝わってくる。続く"Take Ya Pick, Nik!!!!!"も不気味で悲しげなシンセに導かれるロウ・ハウスで、この虚無感さえ発する作風はOmar Sのアンダーグラウンドな音楽性だ。"Chama Piru's"なんかはKyle Hallにも通じるようなダブ・ステップ以降のロウ・ハウスと言った趣きで、しかしHallを掘り起こしたのはOmar Sなのだからそれも当然か。Amp Fiddlerを歌でフィーチャーした"Ah'Revolution (Poli Grip For Partials Mix'Nik)"、Big Strickをフィーチャーした"Seen Was Set"と、ボーカリストを招いた曲ではソウルやディープ・ハウス仕立ての作風もあり、心の芯から温めるようなエモーショナルな響きを聴かせるのもデトロイトらしい。かと思えばジワジワと不気味なアシッド・ベースが迫り来る"Bitch....I'll Buy Another One!!!"など、一転して退廃的でDJツール的としての機能を高めた作風もある。ハウスにミニマル、ファンクやソウルにR&Bなど曲毎に様々な姿を見せるアルバムは確かに多様性が詰まったベスト盤のようでもあるが、しかし実際にはその完成度の高さからベストである事もOmar Sは証明しているのだ。粗雑で汚らしく、しかし生々しくソウルフルで、野蛮の中にも存在する美しさがあり、喜怒哀楽が詰まった感情的なデトロイト・ソウル。The Bestのタイトルに偽りはない。



Check "Omar S"
| HOUSE11 | 13:00 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Kyle Hall - From Joy (Music 4 Your Legs:IMFYL079)
Kyle Hall - From Joy
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早熟の天才である事は周知の事実であるデトロイトのKyle Hall。2007年に15歳で作品デビューしたのは驚きだが、自身で運営するWild OatsのみならずThird Ear RecordingsやHyperdubにMoods & Groovesなど歴史と確かな質を持つレーベルにも見初められるなど、音楽的才能はデトロイト新生代の中で突出している。そんな彼が2013年には初となるアルバム『The Boat Party』(過去レビュー)をリリースしていたのだが、2015年末にリリースされた2ndアルバムとなる本作はResident Advisorの記事によれば何と2010年以前に制作された物だという。刺々しくロウな質感と荒いビート感が際立った鈍いマシン・ソウルの1stアルバムも驚愕モノだったが、しかしそれよりも更に前に制作された本作は勿論ダブ・ステップ以降のビート感を含めジャズやファンクを感じさせるモノがあるが、何よりも温かみが伝わる情熱的なソウルとメロウさを打ち出していた点に驚かずにはいられない。若さ故の荒々しさ…ではなく何だかより大人に成長をしたようにも感じられる包容力を伴う作品が実は過去に制作されたとは、RAの記事を読まなければ気付けやしなかったであろう。冒頭の感傷的なエレピがしっとりと滴る"Damn! I'm Feelin Real Close"は、しかしビートは鋭く軽快に弾け前のめり気味でもあるが、やはり情感たっぷりな旋律がメロウネスを前面へと打ち出す。途中からは狂気ではなくコズミック感を活かしたアシッドもさっそうと導入されるなど、1stで聞けた粗暴な面は適度に隠匿された上でデトロイトの熱きソウルが染み渡っている。大胆なパーカッションの粗さが目立つ"Inverse Algebraic"はその点では1st時を思わせる点もあるが、手弾きしたようなシンセやベースからはファンクの躍動感が発せられ、ある意味ではそれ程作り込まれてはいないように聞こえる作風からは確かに若さも感じられる。煌めくシンセと耽美なエレピによる甘いメロディーに鋭くタフなハウス・ビートが乗っかる"Dervenen"は正にデトロイト・ハウスだが、初期デトロイト・テクノを思い起こさせる近未来の音を鳴らしていたかのような"Strut Garden"のように青々しさも見受けられる。『From Joy』というタイトルを真に受けるのであれば、確かに本作は陽気なムードとリラックスしながらも多様性のある弾けたビートで満たされており、デトロイト・ハウス/テクノの根底にある黒人音楽のジャズやファンクにソウルへの敬意を反映させたようにも想像出来るだろう。暴力的でロウな音質であるオリジナリティーを完成させる前の、つまりは若さ故にルーツに寄り添った事でメロウなムードが強調されているのか。このような方向性で来た事に驚きつつ、長く聞けるデトロイト・ハウスの傑作と言えよう。



Check "Kyle Hall"
| HOUSE11 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Wu15 - Wu15 EP (Eglo Records:EGLO48)
Wu15 - Wu15 EP
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破竹の勢いに乗るFloating Pointsが共同主宰しているEglo Recordsの新作は、WU15なる耳にした事のないアーティストだ。実はこのユニットはKyle Hallの主宰のWild Oatsからも作品をリリースしたK15、そしてEglo Records傘下のHo Tepから作品をリリースしたHenry Wuによるもので、ロンドンの新世代が手を組んだ企画なのだ。両者とも温かみのある素朴なディープ・ハウスやメロウなヒップ・ホップやR&B、そして小気味良いブロークン・ビーツまで手掛ける柔軟性があり、今注目を集めている若手である。本作はコラボとは言いながらもそれぞれのソロ作も収録しており、K15による"Love's Gambit"は優美なエレピやパッドに素朴なシンセなどのメロディーが融け合うように重なり、金属的なざらつきのあるマシンビートはヒップ・ホップやジャジーな雰囲気を発し、非常に手作り感のある構成やビートはラフながらも温かみが伝わってくる。Henry Wuによる"Shahada"はもっとMPCのプログラミングによるヒップ・ホップ寄りなビートでエッジを効かせており、そこにフュージョン風な煌きのあるシンセのメロディーがしっとりと入る事で、ファンキーなのにメロウな大人の味わいだ。WU15名義では2曲収録されていて、コズミックなシンセが反復する上に物哀しいエレピが場末の酒場感を生むねっとりダウンテンポの"Space And Time"、動きのあるメロウなエレピやシンセとジャジーな臨場感のあるビートが強調された"The Anthem"と、これらもやはりヒップ・ホップやフュージョンにジャズの要素を盛り込んでいるのが特徴だ。とても若手とは思えない渋くて大人びた世界観で、新世代ビートメイカーとしての面目躍如なる作品だ。



Check "K15" & "Henry Wu"
| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 13:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Joe Le Bon - House Music Love Music (Moods & Grooves:MG CD-6)
Joe Le Bon - House Music Love Music
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ここ数年、デトロイトのテクノ/ハウスが全盛期に比べると活気が無いのは多くの人が肌で感じているだろうが、逆に今になって勢いを増しているレーベルもある。Mike Grantによって運営されているMoods & Groovesはそれが顕著で、1999年に始動したこのレーベルはデトロイトのみならずシカゴ方面にも理解を示しながら、今となっては大御所と呼ばれるアーティストをサポートし、近年ではそこにKyle Hallも並んでいる。ここ3年程はレーベルの過去の名作を「Moods & Grooves Classics」シリーズとして編集した作品をリリースする傍ら、ニューカマーからGrantによる新作まで着々と手掛けているが、レーベルにとって久しぶりとなるアルバムである本作も遂にリリースされた。それを手掛けたアーティストはフィンランド出身、現在はベルリンにて活動するJarno EerolaことJoe Le Bonで、過去にはPro-tez RecordsやInternational Deejay Gigoloからもリリース歴はあるようだが、作品数は決して多くはなくその活動についても不明な点が多い。しかしMoods & Groovesというレーベルからのリリースという肩書きが付いた本作によって、少なからずともJoe Le Bonに注目をせずにはいられなくなるだろう。アルバムの音楽性は確かにハウスではあるが、デトロイトのそれではなく北欧の優美で洗練されたディープ・ハウスが中心と、レーベルの中では少々異色にも思われる点もあるがそのどれもが幽玄で神秘的だ。冒頭の”Ghosts On Cassette”、ふんわりとスペーシーなシンセの伸びと落ち着きのある滑らかなハウスのグルーヴからは、確かに黒さを感じる点は少なくむしろアンビエンスさえある微睡みのディープ・ハウスで官能的だ。"Berlin Panorama"はベルリンのあのクラブをコンセプトにした曲だろうか、オーロラの様に舞う美しいシンセのレイヤーには言葉を失う程で、決してビートを荒らげる事をせずに繊細なリズム感で静かに高揚させる。リスニング系だけでなくクラブを意識した曲もあり、シャープなハイハットとパーカッションが軽快なリズム感を生みつつ幻想的なシンセのリフが反復する"82 Degrees"や、ざらつきのある荒削りなビートでスピード感を強調し爽やかながらも仄かに官能を匂わすテック・ハウスの"Like Cotton Deep Orchestra"と、アルバムの中で良いアクセントとなっている。しかしJoe Le Bonの魅力はやはりその情緒深い味わいにあると思い、シネマティックでありしっとりと切なさに満たすダウンテンポの"The Road Is Under Repair"や、ビートレスな展開に羽毛が舞うような繊細なシンセが揺れるアンビエントの"For Yasuni"で、実にエモーショナルな音楽性を目の当たりにするだろう。前述のように確かにMoods & Groovesのレーベル性から見ると異色さはあるものの、アルバムとしてのリスニング性の高さを活かしたディープ・ハウスは本物だ。



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| HOUSE11 | 19:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2015/6/12 Kyle Hall Japan Tour 2015 @ Air
デトロイト新世代を代表するKyle Hallが昨年に引き続き、今年もAirへと帰還する。デトロイト出身でありながら自身が過去のデトロイトのアーティストと比較される事に拒否し、自身の音楽性を鮮烈に植え付ける才能は、正にデトロイト新世代が現れた事を高らかに宣言するかのようだ。ディープ・ハウスだけでなはくロウ・ハウスにベース・ミュージックやダブ・ステップなども咀嚼しながら、デトロイトの殻を打ち破るように活動するKyleの音楽性は、DJによって如何に表現されるのか期待せずにはいられない。
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| EVENT REPORT5 | 15:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kyle Hall - Girl U So Strong (Hyperdub Records:HDB084)
Kyle Hall - Girl You So Strong
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今年遂に待望の来日を果たしたデトロイトの秘蔵っこであるKyle Hall。若干22歳ではあるが齢16歳にしてOmar-SのFXHEから作品をリリースしデビューしているのだから、既に若手と呼ぶには語弊があるだろうし、その実力は特にヨーロッパで認められ特別な評価を獲得している。その事実、彼の音楽に注目したのは例えばデトロイト外のUKベース・ミュージックのHyperdubであり、2010年には"Kaychunk EP"をリリースしている。本作はそのHyperdub10周年と関連してリリースされた作品ではあるが、実は"Kaychunk EP"と同時期に制作された作品がようやくリリースに至ったそうだ。しかしHyperdubからの作品ではありながらもやはり同レーベルの他者の作品に比べれば、やはりKyleのロウで汚らしい作風はレーベルカラーに染まらずに健在で、見事にアーティストの個性が勝っているように思われる。"Girl U So Strong"の安っぽく荒ぶれたキックやパーカッションが乱れ打ち、大胆な動きのある歪んだベースラインが蠢くトラックは確かにベース・ミュージックに通じるものはあるが、トラックものから突如としてコズミックなシンセのメロディーが入ってくると、光が差し込むようにポジティブな世界が開けてくるデトロイトらしさも感じられる。もう片面の"Take Me Away"はよりトリッキーさが打ち勝っているだろうか、痺れるような不協和音を示す電子音とゲーム音のようなチージーな音が絡み合い、引いては押し寄せる波のようなダイナミックな動きを見せるリズムトラックに体が揺さぶられる。ベース音が太いダブ・ステップやベース・ミュージックとは親和性がある点でHyperdubからリリースされている事に違和感はそれ程感じさせず、Kyle Hallの強烈な個性がデトロイトから海を越えてヨーロッパでも評価されるのも自然な流れであり、デトロイトの歴史を塗り替えていく可能性がある新世代の到来を予感させる。




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| TECHNO11 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2014/7/11 Kyle Hall Asia Tour @ Air
テクノ聖地のでもあるデトロイトで16歳にしてOmar-SのFXHEよりデビューを飾り、その翌年にはWild Oatsという自身のレーベルを立ち上げ、それと並行しThird Ear RecordingsやHyperdubからも作品をリリースし、そしてヨーロッパ含め世界的に大きなフェスティバルにも出演…と、性急な成長を遂げ若くして既に大きな注目を集めているKyle Hall。デトロイト・テクノ/ハウスという括りだけには収まらずロウ・ハウスの先駆け的な音楽性もあり、既存のデトロイトの音楽を更に上書きしていく活動は、正にデトロイトから久しぶりの本物の新星が現れた事を意味している。そんなKyleが待望の初来日をするのだが、日本からはかつてデトロイト・ハウスにも接近していたDJ Nobu、マシン・グルーヴで黒人音楽を解釈するSauce81、デトロイト・ハウスからの影響を公言するYou Forgotらが出演と、それぞれが考えるブラック・ミュージックが一体となったパーティーが開催された。
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| EVENT REPORT5 | 19:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Omar-S - FXHE 10 Year Compilation Mix 1 (FXHE Records)
Omar-S - FXHE 10 Year Compilation Mix 1

数多くいるデトロイトのアーティストの中で、00年代を代表する一人と言えばAlex. O. SmithことOmar-Sではないだろうか。デトロイト・ハウスの情熱と機能的なミニマルを掛け合わせた - 本人は「モータウン・ミニマル」と呼ぶ - スタイルで、エモーショナルながらも荒くれた衝動を発するハウスをアナログで量産してきた。作品の多くは自身が主宰するFXHE Recordsからリリースされているが、このレーベルではKyle HallやLuke HessにBig Strickら新世代の発掘にも貢献するなど、デトロイトの新世代の活動の場としても高い評価を得ている。そんなレーベルも活動10周年になるのに合わせ、レーベルのコンピレーション・ミックスがリリースされた。作品の多くはOmar-Sによる曲だが、中にはGunnar WendelことKassem MosseやKai Alce、Luke Hessらによる曲も収録されており、アナログでしか手にする事が出来なかった曲がふんだんに使用されている事に先ず価値がある。その上で音楽性にも言及すると、やはり一般的なデトロイト・ハウスとは異なりハウスが根底にはありながらもよりローファイな電子音を打ち出しており、確かにソウルフルな感情もありつつも何処か冷えているような黒さが特徴だ。荒涼としたデトロイトの空気を音像化したようにも聞こえる廃退的な音質の中から、仄かな情緒を含むシンセのメロディーが浮かび上がり、希望の火を灯すように低温の熱量が蓄積していく。決して高熱量の盛り上がりを引き起こす事はなく、どちらかと言えば地味に燻り続ける機能性重視でミニマル度が高いハウスなのだが、これこそがデトロイトの中でもOmar-Sに対して独特の個性として評価されているのだろう。ミックスはされているがあくまでレーベル・コンピレーションとしての作品なので、ミックスの妙技を楽しむのではなくFXHEのレーベル性を知るための作品として楽しむべきアルバムだ。




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| HOUSE10 | 08:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2014/3/15 Dope Dive -Jay Daniel- @ Module
一時期に比べるとテクノに於ける聖地とまで称されていたデトロイトも、最近ではベテラン勢が新作をリリースしない事からかその勢いに陰りが見られている。その中で今世界的に注目を集めているのが若手を代表するKyle Hallであるが、彼と活動を共にするJay Danielも忘れてはならない。2013年にはTheo ParrishのSound Signatureからデビュー作をリリースしたJayだが、その母親はかつてPlanet-Eからもリリース歴のあるNaomi Danielであり、正統なるデトロイトの血筋が息衝いている事を証明しに来日する。
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| EVENT REPORT5 | 14:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Jay Daniel - Scorpio Rising (Sound Signature:SS051)
Jay Daniel - Scorpio Rising

セオ・パリッシュによるSound Signatureから初めて聞く名のアーティストの作品がリリースされた。Jay Daniel、まだリリース歴は3年で22歳だそうで次世代とでも呼ぶべき存在だが、実は彼の母親はNaomi Danielだ。その名を聞いてピンとくる人は間違いなくデトオタだが、Naomi Danielと言えば20年程前にカール・クレイグがプロデュースして素晴らしい歌モノクラシックを残している人で、アーティストとしての血筋が息子にも引き継がれたのだろう。Jay Daniel自身は現在若手の中では最も注目を集めているKyle Hallとパーティーを共催し活動しているそうだが、そこから見つけられる共通項として本作にもロウハウス的な荒々しさは表れている。テープレコーディングを行った影響によるのだろうが、"No Love Lost"からはディープ・ハウスの幻惑的なメロディーが妖艶なムードを醸しつつも、それとは対照的にリズムはシカゴ・ハウスのそれで非常に荒く刺々しく突き刺さるようだ。"Brainz"に至ってはマシンガンから歪な弾が連写されるようにハイハットやスネアにキックが連打されるだけの原始的なシカゴ・ハウスなのだが、シーケンサーに頼らずにMPC1000を使用したと本人は述べている。もしかするとパッドを手で叩きまくったのかもしれないが、その野性的で厳ついマシンビートは今流行っているロウ・ハウスを、流行としてではなく素で体現しているようにも思われる。"I Have No Name"では何とラリー・ハードの"Stars"をサンプリングしスピリチュアルなディープ・ハウスを披露しているが、やはりローファイな感覚が通底しておりアナログの洗練はされていない温もりを感じさせる。確かにセオ・パリッシュの目に止まったのも納得なざらつきの強いシカゴベースなハウスが収録されており、デトロイトの旧世代に求めていた原始的な初期衝動がJay Danielからは見受けられる。フロアの爆音の中で全身で浴びてこそ最高な曲だろう。



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| HOUSE9 | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
KMFH - The Boat Party (Music 4 Your Legs:IMFYL065)
KMFH - The Boat Party
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デトロイト・テクノ/ハウスの新生代を担うだけでなく、今では世界中から注目を浴びるまでに急成長を遂げたKyle Hall。2007年に僅か15歳でOmar-Sが主宰するFXHE Recordsからデビューを果たしていたが、その時点でどれだけの人が原石に気付けていたのだろうか(当方も全く知らなかった)。明らかに状況が変わり始めていたのは2010年にThird Ear Recordings、Hyperdub、Moods & Groovesなどのレーベルから作品をリリースした頃で、何だかとんでもない新人が出てきていると話題に上がる事が多くなっていた。もうそれ以降の説明は不要であろう、今では知る人ぞ知る…ではなく22歳にしてアンダーグラウンドな活動でありながらその著名度はデトロイトのベテラン勢に匹敵している。本作はそんな彼による初のアルバムで、元々アナログでリリースされていたのが幸運にもCD化された。テクノと言うよりはハウスに近い作品集ではあるが、まだ若いだけあって荒削りな印象は拭えない。例えばTheo Parrishにも通じるような粗雑で歪んだ音質と共に、厳ついアシッド風なテクノに無機的に冷えたエレクトロ、そしてデトロイトの過去を踏襲した感情的なハウスから狂ったゲットー・テックまで、何でも咀嚼するように手を出している。そのジャンルとして統一感の無さは今尚成長過程にある状態を示しているのだろうが、かと言って本作がムード的に散漫になっているかと言うとそうでもない。特に際立っているのがデトロイトと言う寂れた街のムードを音に投影させたかのようなマシン・ビートで、剥き出しにも思える荒削りなビートは決して整ってはいないが、しかしそれは理性ではなく衝動から生まれたファンクを鳴らしている。それは初期のシカゴ・ハウスにも通じるものがあり、若さ故のパワフルなビートは今流行のロウハウスに含める事も不可能ではないが、それにしたってKyleの野性的で粗暴なサウンドは余りに個性的で、良い意味で周りから浮いているのだ。これが天然なのか狙った上での結果なのかは分からないが、今までのデトロイト世代には無い貪欲なスタイルの吸収と、ラフなマシン・ビートの組み合わせが、デトロイト・ソウルの光を鈍く放っている。



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| HOUSE9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Masterpiece Created By Carl Craig (Ministry Of Sound:MOSCD303)
Masterpiece Created By Carl Craig
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ジャンルを限定せずにダンス・ミュージックに於ける重鎮を起用して人気を博しているMIXCDシリーズ「Masterpiece」、その最新作には遂にデトロイト・テクノの中心に居座り続ける重鎮・Carl Craigが登場した。彼について言及しておくとアーティスト的な面でデトロイト・テクノをそこからより多方へと飛翔させた手腕の評価は誰もが認めているだろうが、その一方DJ面については大箱やレイブでは受けはするであろうド派手なプレイが際立ち、求道的に個性を確立させた音はそれ程聞こえてはこない。ここで本作に注目するとMIXCDはCD1の"Aspiration"だけであり、他は"Inspiration"と"Meditation"のコンピレーションとなっているので、つまり彼のDJに然程魅力を感じていない人に対しても十分な価値を持たせるものとなっている。

"Aspiration"について言えばデトロイト発のアーティストの作品を多用はしているものの、ここでは殆どデトロイト・テクノ的なエモーションを感じられる瞬間は無いだろう。出だしこそKyle Hallによる凶悪なアシッドテクノで強い印象を打ち付けるが、そこからはヨーロッパ的なテック・ハウス/プログレッシヴ・ハウスの端正な電子音を打ち出して、スムースなミックスを施しつつズンドコしたグルーヴ感と心地よい陶酔が広がるテック感を継続させ、良い意味では万人受けしそうな分り易い展開を作っている。後半ではヒット曲の応酬でフィルター・ディスコやデトロイト・ハウスにオールド・エレクトロなどCarlの派手な音楽性が見事に炸裂しており、盛り上がりと言う観点からすると十分な内容ではある。決して長年の経験を重ねた深みがあるわけではないが、大箱でのプレイを体験するようなエンターテイメントとして楽しめるMIXCDとして価値はあるだろう。

そして”Inspiration”はそのタイトル通りにCarlが影響を受けた音楽を選び抜いており、アーティストの背景を知る楽しみを持ち合わせている。年代もジャンルも多岐に渡り、ファンクにレゲエやダブ、ヒップホップにR&B、ジャズやボサノバ、そして勿論テクノまで収録しており、こんな選曲をクラブでは無理だとしても今回のようなプロジェクトの中でMIXCDとして披露すれば余計に面白いのではと思うところもある。

本作でリリース前に最も注目を集めていたのは"Meditation"ではないだろうか。なんと全曲未発表曲でボリュームはアルバム級と、つまり久しぶりのオリジナルアルバムと考えれば熱心なファンが反応するのは当然だろう。しかし"黙想"と名付けられているようにここには彼らしいファンキーなグルーヴも実験的なサウンドも無く、沈静化したアンビエントが広がる正に"Meditation"な音が待っている。フロアからは遠ざかった神妙で張り詰めたムードがあるが、その一方では電子音と戯れながら自由に音を鳴らしたようなラフスケッチ的な印象も受け、作品としては少々煮え切らなさもある。ただ目を閉じ音に耳を傾ければ、世の中の喧騒から解き放たれ雑念も消えるような瞑想音楽としては確かに合っているようでもあり、就寝時のBGMとして心地良さそうだ。Carlによる最新のダンス・ミュージックが聴きたかったのも本音だが、先ず先ずは新作が聴けただけでも嬉しい限りだ。

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| TECHNO10 | 17:00 | comments(0) | trackbacks(1) | |
Da Sampla - West Side Sessions (Wild Oats:WO-SH8K)
Da Sampla - West Side Sessions

Da Sampla、初めて耳にするアーティスト名ですが、実はデトロイトのAnthony Shakirの変名。本作は97年にリリースされた作品を同じくデトロイトのKyle Hallがリイシューし、更にはKyle HallとAnthony Shakirの共作も収録した7インチも付けた特別版です。A面には"pursuit mix 3"とそのバージョン違いの"pursuit mix 2"収録されていますが、どちらもドラムサンプルやディスコサンプルを用いてフィルターハウス化した荒くて安っぽくて、しかしディスコティックなテクノ。手数の多いドラムサンプルが忙しなく差し込まれ、モコモコとしたフィルターの掛け具合で展開を広げていくミニマルな作風でもありますが、兎に角勢いがあってフロアでの爆発力は間違いないでしょう。B面の"Over"も典型的なフィルターハウスでディスコの上物をサンプリングしてループさせただけの単純な作品ですが、ファンキーなボーカルの使用やパンピンなリズムトラックからはシカゴハウスの影響も感じ取れます。"Track 4"は更にリズムトラックが図太いパンピンなテクノ、音自体は古臭いけれどシンセやリズムの温かいアナログ感が懐かしくてカッコいい。7インチには二人の共作である"G.J."と言う曲が収録されているのですが、こちらはDJツールとして使用する為の「GJ」と言う呟きが執拗に繰り返されるサンバ風なリズムのトラックとなっております。その裏面の同じく共作である"Frictional Beat #6 (KMFH 808 DUB)"は、不鮮明なフィルターを用いたミニマルダブなDJツールとして機能的で、7インチの方は正にDJに使って下さいと言う意図が込められているようでした。

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| TECHNO9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Motor City Drum Ensemble - L.O.V.E. (Remixes) (Studio !K7:!K7285EP2)
Motor City Drum Ensemble - L.O.V.E. (Remixes)
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!K7が手掛けるMIXCDシリーズ"DJ-KiCKS"は担当したアーティストの新曲を収録する事が恒例ですが、ドイツのディープハウサーであるMotor City Drum Ensembleも自身の"DJ-KiCKS"に新作である"L.O.V.E."を収録。更にそこから発展してデトロイトの新星・Kyle Hall、Kompaktの総帥でもあるミニマリスト・Wolfgang Voigt、Underground Quality等からもリリースしているハウスユニット・Smallpeopleを招いてのリミックス盤もリリースしている。最近著しく高い評価を獲得しているKyle Hallのリミックスは、極度にコンプレッサーをかけ -例えばTheo ParrishやOmar Sのように- 金属が錆び付いたような鳴りを強調している。音質が悪くさえ聴こえる程にグシャッと潰しながらも、しかしメロウなパッドも被せたデトロイト仕様で低温で燻りつ続ける火のような温かさが感じられる。そしてWolfgang Voigtは当然の如くミニマル仕様かと思いきや、ブルージーなディープハウスを披露していて意外にもこれが一番デトロイト・ビートダウンな作風になっている。正確な4つ打ちのミニマルなリズムの上をシンセストリングスが郷愁の旋律を奏でていて、非常にしっとりとしたハウスだ。Smallpeopleは透明感のあるエレピのリフを生かしたテックハウスで、しかし足元ではアシッドハウス風のベースラインも主張していて、デトロイトとシカゴを行き交うオールドスクールな味が効いている。三者三様にエモーショナルな空気も醸しだしており、MCDEの味を受け継ぎつつ上手くアップデートしているナイスな一枚。

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| HOUSE7 | 18:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Rick Wilhite - Vibes : New & Rare Music (Rush Hour Recordings:RH111CD)
Rick Wilhite - Vibes - New & Rare Music
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オリジナル3 ChairsのメンバーでもあるRick Wilhite aka The Godson。昨年はRush Hour Recordingsから2枚の貴重なる名作がリイシューされたおかげで正当なる知名度を得た事でしょうが、その流れを継続して今度は彼がデトロイト〜シカゴを経由するハウスコンピレーションを手掛けました。流石に地味に活動の長いベテランだけあって伝手があるのか、デトロイトからTheo Parrish、Marcellus Pittman、Urban Tribeらのベテランから話題急騰中の新鋭・Kyle Hall、シカゴからは大ベテラン・Glenn UndergroundとRicardo Mirandaらを招集。更にVincent Halliburtonなるアーティストも収録されているのだけど、経歴を調べたらD-HA名義やThe Beat Addicts名義でUnderground Resistance周辺のレーベルからリリース歴のある人でした。と言う訳でこれだけの面子が集まれば試聴せずとも買えるレベルであるのは当然なので説明も不要なのですが、そもそもここに集まってる人達は流行に左右されずにマイペースに自身の作風を貫くタイプなので、ローファイで生臭い感情が溢れるオールドスクールなハウスを十分に堪能出来る一枚になっております。時代を越えて新世代と旧世代が交差するハウスコンピレーション。

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| HOUSE6 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(1) | |