Joey Negro - Distorted Dreams EP (Z Records:ZEDD12262)
Joey Negro - Distorted Dreams EP

購入してから放置しておいたらいつの間にか発売から1年経過していた本EP、ソウルやファンク、そして特にクラシカルなディスコの求道者であるJoey Negroによるものだが、これがすこぶる良いので紹介したい。2017年にリリースされたアルバムの『Produced With Love』に収録された曲を他アーティストがリミックスしたEPなのだが、Negroの音楽性が比較的熱心なディスコ信者らしいクラシカルなスタイルなのに対し、ここではCrackazatとLay-FarにFoukと現在形のハウスを提唱するアーティスト、そしてシカゴ・ハウスの巨匠であるRon Trentがリミックスを手掛けて、これぞモダン・ハウスと言わんばかりの内容でアップデートを掛けている。Trentによる"Distorting Space Time (Ron Trent Remix)"はここではレイドバックして肩の力が抜けたグルーヴとダビーな残響を活かした開放感のある生っぽいディスコ×ダブ・ハウスで、生演奏によるギターやベースの湿っぽさやオルガンやシンセのうっとり甘いメロディーに軽く陶酔させられ、大人の余裕さえ感じさせる包容力に満ちた作風だ。対して"Latican Boogie (Crackazat Remix)"は序盤からすっきりと、そして太いキックが地を固めつつ、美しいシンセのリフやピアノのコード展開をフィルターで変化させながら盛り上げていくポジティブなハウスで、若々しいエネルギーが溢れ出すピアノ・アンセム的な爆発力を伴い高揚感の中を突き抜ける。"In Search Of The Dream (Lay-Far Remix)"もフューチャー・ジャズやディスコにファンクなどの要素が混在するLay−Farらしい音楽性が発揮されたリミックスで、ざっくりとした生っぽい響きのブロークン・ビーツにエレクトロニックで豊かなシンセやベースサウンドによって色彩豊かな感覚に包み込んで、喜びや希望が溢れるブギー・ハウスは現在形のモダン・ディスコでもある。そしてJunktionとDaniel LesemanのユニットであるFoukの"Distorting Space Time (Fouk Remix)"、こちらはライブ感あるパーカッションとざっくり生っぽい荒さのあるブギーなビートを活かして、浮遊感のあるTrentのリミックスよりもどっしり重心を落としややツール性を強調したディスコ・ファンクな趣きか。参加アーティストの豪華さに惹かれながら、更に期待を越えてくる位の各アーティストの音楽性が自然と表現されたリミックスで、これはもう文句無しだろう。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Crackazat - Magic Touch (Crackazat Reworks) (Local Talk:LTCD012)
Crackazat - Magic Touch (Crackazat Reworks)
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スウェーディッシュ・ハウス代表格のLocal Talkはハウスをベースにしながらジャズやフュージョンにテクノ等を交錯させ、ハイペースな量産体制ながらも質も保ち続ける稀有な存在だ。お薦めのアーティストを誰か一人というのは難しいが、しかしBenjamin JacobsことCrackazatもレーベルを代表する一人である事は間違いない。ブリストル出身で現在はスウェーデンで活動する元ジャズ・ミュージシャンであるCrackazatは、前述のレーベル性を兼ね備えて実にアーティストらしく優美なキーボードワークで魅了しクロスオーヴァーなグルーヴで踊らせもする間違いのない才能を持っている。さてこの新作はタイトル通りに全てCrackazatによるリミックス集で、これに先駆けてLocal Talk傘下のBeerからアナログでリリースされていたLocal Talk面子をリミックスした『Reworks』に加え、更にDJ SpinnaやTerrence ParkerにLay-FarらがLocal Talkからリリースした曲の未発表リミックスまでも加えた豪華な内容で、配信のみで8曲に纏められている。元はそれぞれ異なるアーティストの曲なれどCrackazatが手を加える事で輝かしいシンセのフレーズによる優美な世界観で統一されており、例えばDJ Spinnaによる原曲はジャジーながらも比較的落ち着いたしっとり目の作風だったものが、"Tie It Up (Crackazat Rework)"では跳ねるような弾性のあるリズムに凛としてウキウキとしたシンセが躍動するフュージョン・ハウスにへと生まれ変わり、動きの多いメロディーを活かしながら笑顔に満たしてくれるハッピーな世界観が堪らない。Terrence Parkerが手掛けたNY系のソウルフルなハウスも、"Unconditional (Crackazat Rework)"ではCrackazatらしい豊潤な響きのシンセを多層に被せてゴージャス感を打ち出しながらもフルートらしく切ない笛の音も胸を締め付けるようで、力強いハウスの4つ打ちでディープかつエモーショナルなハウスへと昇華している。Lay-farの"Submerging (Crackazat Rework)"は原曲の優美なストリングスはそのまま用いて大きくいじった訳ではないが、ヒプノティックなアシッドも用いたエレクトロニック調から、スモーキーな音響によってビートダウン風なブラック・ミュージック色を強めた作風へと転換し、じわじわと熱くなる展開に魅了される。他にも艶のあるシンセコードとパーカッションが効いたジャジー・グルーヴが絡んで弾むビート感を生む"Electric Piano On The Run (Crackazat Rework)"や、溜めのあるリズムでぐっと抑えられながらも光沢感のあるシンセが伸びて明るいヴァイブスに包まれるフュージョン・ハウスな"Tears (Crackazat Rework)"など、やはりどの曲にも共通するのはライブ感のある豊かなキーボードの響きで、リミックスとは言えどもCrackazatの個性でしっかりと上塗りされているのだ。



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| HOUSE14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Lay-Far - War is Over (In-Beat-Ween Music:NBTWN011S)
Lay-Far - War is Over
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ブロークン・ビーツからフューチャー・ジャズ、ディープ・ハウスからディスコ、ダウンテンポからヒップ・ホップへ、様々な音楽性を匠に操り言葉通りにクロスオーヴァーな音楽性を体現するLay-Farは、今やロシア勢の筆頭格の一人と呼んでも過言ではない程に実力と人気を兼ね備えている。Local TalkやSoundofspeedといった実力派レーベルからのリリースと共に、この日本においても若きパーティー・グループであるEureka!の積極的な後押しもあり正当な評価を獲得しているように思われるが、この3枚目となる2018年リリースのアルバムでその評価は盤石となるに違いない。アルバムの音楽性は前作である『How I Communicate』(過去レビュー)から大きく外れてはいないが、前作がサンプリング性が強かったのに対し本作ではより艶かしい生音も多くなり、これまで以上に多様性がありながらも円熟味という味わいで纏め上げている。始まりはPhil Gerusのローズ・ピアノをフィーチャーした"Sirius Rising"、比較的ハウスマナーに沿った曲ではありローズの耽美な響きが美しく、実に上品かつ優美に舞い踊る。続く"Decentralized Spiritual Autonomy"はダブ・ユニットのRiddim Research Labとの共作で、確かにダブの深くスモーキーな残響とずっしり生っぽく湿っぽいキックを活かした訝しい世界観が広がっている。そしてディスコ・バンドのThe Sunburst BandのシンガーであるPete Simpsonをフィーチャーした"Be The Change"、力強くソウルフルな歌と熱が籠もりファンキーな躍動のあるディスコ・ハウスと、アルバム冒頭3曲からしてLay-Farらしく様々な表情を見せている。"The Pressure"ではデトロイトの鬼才・Reclooseも参加しているが、それは相乗効果となりトリッピーながらも優美な音使いに変化球的にしなやかなブロークン・ビーツを刻んで、本家西ロンのアーティストにも負けず劣らずなリズムへのこだわりも見せる。かと思えばサンプリングを打ち出してややレイヴなブレイク・ビーツ感もある"Market Economy VS Culture (The Year Of The Underdog)"では切り込んでくる小気味良いビートに毒気のあるベースサウンドがB-BOY的だが、アイルランドのシンガーであるStee Downesが参加した"Over"はビートはエレクトロニックながらもそのうっとりと艶を含んだ声もあってネオソウルにも聞こえ非常にエモーショナルだ。曲毎のリズムやメロディーのバリエーションの豊富さはありながら、アルバムとしてそれらはばらばらにならずにLay-Farの洗練されたモダンなダンス・ミュージックとして一つの世界観となっており、表現力に更に磨きをかけている。なお、日本のみでCD化されているがオリジナルの倍近くである15曲収録となっており、アナログよりもCDの方が一層楽しめる事だろう。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Lay-far & Phil Gerus - Solitary High Social Club (Leng:LENG041)
Lay-far & Phil Gerus - Solitary High Social Club
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バレアリックシーンの代表的レーベルの一つであるClaremont 56、そのサブレーベルとして運営されるLengはどちらかと言うとユーモアや実験性もあるニューディスコ寄りのレーベルで、フロア向けのダンス・トラックを送り出している。そのレーベルの新作はロシアはモスクワからの人気アーティストであるAlexander LeyfaことLay-farと、そして同郷であるPhil Gerusの共作だ。Local TalkやSoundofspeed等からディープ・ハウスにヒップ・ホップやモータウン感覚を取り込んで優美に磨き上げた音楽をリリースする前者、そしてSonar KollektivやBastard Jazz等からブギーなディスコを送る後者と、今ではどちらもロシアン・ハウスの信頼の置けるアーティストだ。ここでは共作という形が単に話題性だけではなくその言葉通りに二人の音楽性が共存して良い具合に相乗効果となっており、Lay-farの色彩豊かな音色と多彩なビート感、そしてGerusの輝かしいコズミックなディスコ感が自然と一体化している。それが最も端的なのは"City 2 City, Star 2 Star"だろうか、もっさりしながらもずっしりブギーなディスコのビートに優美なエレピやシンセのメロディーで実に情感たっぷりに展開する豊かな音楽性で、特に咽び泣くようなシンセソロのエモーショナルな旋律に胸が締め付けられる。"Am I Tripping"もしんみりと憂いを含んだシンセのメロディーが耳に残るが、更にしっとりとした質感を生むヒップ・ホップかまたはエレクトロにも近い落ち着いたビート感で、勢いを抑える事によりしっかりとメロウな響きが耳に入ってくる。と思いきやずんどことけたたましく生っぽいディスコビートな"Love Life"ではゴージャスなシンセの響きやコズミックなSEもあって賑やかでハッピーなディスコ・ハウスを聞かせ、"4 Snowflakes On Her Lips"では優しく包み込むようなエレピのコードに豊かなシンセを被せて滑らかな展開で軽快なビートを生み、ブギーでうきうきと体も弾むディスコを披露している。比較的Gerusの影響と思われるディスコティックなビート感が強く出ているかなとは思うが、Lay-farによる動きの多いフュージョン風なシンセもしっかりと盛り込まれ、肉体的に踊れる感覚とリスニングの面でも申し分なく作曲家としての非凡なる才能を感じさせる作品だ。



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| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Good Mellows For Beautiful Lights (Suburbia Records:SUCD1007)
Good Mellows For Beautiful Lights
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渋谷にて良質な音楽を提供するCafe Apres-midiを運営する橋本徹が、近年メロウをコンセプトに選曲するシリーズ『Good Mellow』も本作にて9作目。作品毎に風景や環境を想起させるタイトルを付けてはそれに見合った選曲を行い、コンセプトを遵守しながらメロウを追求するシリーズは、橋本の新たなる顔となりつつある。アナログでしかリリースされないレアな曲などもさらっと盛り込む事で貴重な音源の紹介に貢献しつつも、しかし本質は音楽そのものであり、ディープ・ハウスからバレアリックにアンビエントやジャジーなものまで網羅したメロウな響きが根底にある。そんな新作のテーマは「美しい光」と太陽の朗らかな光を全身で浴びるようなイメージなのだろうか、比較的ここでは清々しく明るめでムードが強いように思う。幕開けにはUnknown Mobileによる"No Motion"、鳥の囀りとフィールド・レコーディングによってオーガニックな響きと澄んだ空気に満ちた透明感のあるアンビエントで、まるで朝靄の中の目覚めのようだ。続くはSorcererによるアコギやマリンバらしき音色に微睡むフォーキー・バレアリックな"Afro Heaven"、そして甘くも気怠いメロウでジャジーな"Southern Freeez (Mudd's Mix For Emma)"を通過すると序盤のハイライトが待ち受けている。それこそKenneth Bagerによる"Love Won't Leave Me Alone"で、Jean Luc Pontyの麗しいヴァイオリンも映える何にも束縛されずに開放感溢れるメローかつバレアリックなハウスは、その華麗な美しさに酔いしれる事は間違いない。コンピレーションが単なるBGMではなく素晴らしい音楽の紹介という導きの意味があるならば、この曲はアルバムの中でもその目的に最も適っているだろう。そこからは牧歌的なメロディーで多幸感が広がるテクノ寄りの"For You (DJ Koze Mbira Remix)"、優雅に舞い踊るピアノと軽やかに走るジャジー・グルーヴによって心地良い爽快感のあるディープ・ハウス"Father"、そして洗練されたジャジーなトラックに甘く優しいボーカルが朗らかさを添える"Rescue Me (The Sophisticado L.O.V.E. Mix)"、旬のアーティストであるLay-Farによる煌めく音色が華やかで端正なハウスの"Like The First Time"と比較的フロア方面からの曲が並んでいるが、そのどれもが音楽的に豊かでリスニング性を持っているからこそDJミックスではなくコンピレーションの中でも映えるのだ。そしてラストはメルボルンからのニューカマーであるAlbrecht La'Brooyによる"Encounter (Midnight)"、神秘的なアンビエントのムードとしっとりとハウスのグルーヴで徐々に微睡みに落ちていくように静かにクローズを迎える。タイトルに偽り無しの外交的な空気が広がる中で美しい光に包まれるようなサウンドは快適性に満ちており、勿論このシリーズに通底するメロウネスは本作でも変わらず、質素な部屋を彩るBGMになる事は間違いない。

Tracklistは続きで。
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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 14:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Lay-Far - How I Communicate (House of EUREKA!:ERKCD002)
Lay-Far - How I Communicate
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日本の新進気鋭の若かりしパーティー集団・Eureka!の強い後押しの影響もあってか、国内でもLay-Farの存在感は日に日に強くなっている。2011年頃にデビューしたLay-Farはロシア出身モスクワ在住のロシアン・ディープ・ハウスを代表する一人ではあるが、単にそれだけではなくヒップ・ホップも含めたデトロイトのモータウン感覚を吸収し、そこにヨーロッパのブロークン・ビーツやフュージョン等の優雅な空気も纏い、レトロとモダンを難なく同居させる新世代のハウサーだ。本作は彼にとっての3年ぶり2枚目となるアルバムだが、海外でのリリースは蜜月の関係を築いているLocal Talkからと満を持しての内容だ。そして喜ばしい事に海外では2枚のEPに分けてリリースされたアルバムが、ここ日本ではEureka!の支援により纏めてCD化されたのだから、通して聴く事を可能とするCD版を買わない訳にはいかないだろう。アルバムは優雅さが薫り立つような静謐な"Intro"から始まり、直ぐにスウィートな女性の歌と艶かしいベースラインが躍動するフュージョン風な煌きもある"Like the First Time"へと繋がり、優雅さを振り撒きながら心地良いダンス・グルーヴを刻み出す。華麗なストリングスに心が踊りどっしりブギーなビートに体が揺れる"Dva Kolca Dva Konca Interlude"による短いインタールードを挟んで、エレピがそっと耽美な空気を添える"Lock and Rock"やざっくり生っぽい変則ビートも伴ってライブ感溢れるノリを生む"Slope (Upbeat)"と、どれもこれも耽美なキーボードの旋律や豊かな音色と複雑かつ肉体的なビート感が融け合ったクロスーオーヴァーな路線は既に円熟の位置にある。中には少々重心低めでロウなビートにぶりぶりとしたシンセのベースが電子化を強めたディープ・ハウスの"Submerging"や、湿った歌も相まって温かさに包まれるダウンテンポの"Drop The Time"など、アルバムの中にちょっとしたアクセントを添える曲もある。アルバムの華々しさや豊潤な構成は勿論Lay-Farの実力があっての事だが、それを支えているAshley BeedleやMark De Clive-Lowe、Phil AsherやSean McCabeら実力者のサポートも加わる事で、本作は見事なまでに現代のクロスーオーヴァーな音楽性を成し遂げている。となれば、90年代に栄華を誇った西ロンのブロークン・ビーツにはまっていた人にも、この音楽はきっと高らかに響くに違いない。





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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 19:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Midori Aoyama - Local Talk vs EUREKA! - Our Quality House (House of EUREKA!:ERKCD001)
Midori Aoyama - Local Talk vs EUREKA! - Our Quality House
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どのジャンルでも多少はある事だと思うが、特にハウス・ミュージックという枠組みの中では半ば普遍的なクラシックと呼ばれる曲、またはレジェンドと呼ばれるDJ/アーティストが評価され、業界の中で代謝が進んでいないのを感じる事は少なくない。そんな中から割って出てきたのがMidori Aoyama、Kenji Endo、Sioによって開催されているEureka!で、2012年にかつてのLoopで始動したこのパーティーは、現在に至るまで転々と場所を変えながらヨーロッパのモダンなハウス・アーティストを招聘してこのシーンに刺激を与え続けている。特にEureka!が強くフィーチャーしているのが、元Raw Fusion主宰のMad Matsによって新たに立ち上げられたスウェディッシュ・ハウスのLocal Talkで、モダンとクラシックを両立させたハウス・ミュージックの新世代レーベルとして高い評価を獲得しており、創立から4年にして既にカタログは60を超えるなど飛ぶ鳥を落とす勢いがある。単にハウス・ミュージックという言葉で括られる狭い音楽性ではなく、そこにはブギーなりジャジーなり、テクノやブロークン・ビーツまで多様性を伴い豊かな感情性を伴う音楽の寛容性が魅力だろう。そんなLocal TalkとEUREKA!が手を組んで制作されたのが、同レーベル音源のみをAoyamaがミックスしてパーティーの臨場感を封じ込めた本作だ。冒頭のアフロなリズム感が爽やかな風を巻き込む中から華麗なエレピやギターの旋律でメロウに始まる"Hot Medusa (Kai Alce Remix)"、続いて仄かにメロウで気品も漂うテック・ハウスの"Sunday Morning"で情緒も放ち、トランペットのゴージャスな響きや湿って切ないピアノによる生っぽさが温かい"No One Can Stop Us"など、序盤からハウスを基軸にジャズやラテンのフレイバーを発しながら滑らかな流れで耳を惹き付ける。そして中盤のフロアを意識したオールド・スクール感の強いハウスの流れから、終盤に入ってライブ感のあるシンセワークに魅了される"Eye Light (Midnight)"や殆どパーカッションの変化だけで劇的な展開を生み出すDJツール性の高い"Trummor"など、味気無い展開には陥らずに終始うきうきと胸が高鳴るような変化で自然に聞き入ってしまう事だろう。Local Talkを知っていようがそうでなくとも、素敵な曲のそれぞれの魅力を壊す事なくミックスし、EUREKA!というパーティーの現場の高揚感やドラマティックな雰囲気を擬似的に生み出しているのだから、EUREKA!ファンだけでなく根っからのクラシック・ハウスを好きな中年以上にも是非耳を傾けて欲しいものだ。それに何といってもLocal TalkのEPは少々値が張るので、こうやってショーケース的に纏めて聴けるのもありがたいのだから。

Tracklistは続きで。
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| HOUSE11 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Lay-Far - Affirmation EP (Soundofspeed:SOSR017)
Lay-Far - Affirmation EP

ディープ・ハウスの界隈では飛ぶ鳥を落とす勢いを誇るAlexander Lay-Farは、モスクワを発とするロシアン・ハウスの波の最前線だ。何処か特定のレーベルに依存する事なく世界各地のレーベルから引く手数多な状況が、嘘偽り無くLar-Farの人気を示している。そんな彼の新作はエレクトロニック・ジャズやファンクにチルの要素も織り込んだ音楽を創造する日本のSoundofspeedからのリリースで、フュージョン的な生音と電子音を巧みに融合させたハウスを得意とするLay-Farとの相性の良さは当然といったところか。民族的なパーカッションが炸裂するイントロが印象的な"Affirmation"は、即座に生々しくもディスコ的なグルーヴを刻みながら官能的なコード展開や艶のあるコズミックなサウンドを見せる事で、黒人音楽由来のデトロイト・ハウスにも似たコズミックな世界の中に優美さを生み出している。"He Enters The Room"はリムショットを用いて爽やかなビートを刻むが、南米風のアコギや笛の音色などがしんみりと郷愁を醸すジャジー・ヴァイブス溢れる落ち着いた曲調で、ただアッパーなだけでなく円熟味さえも聞かせるLay-Farの懐の深さが感じられる。本盤での一押しはフランスのクロスオーヴァー系のユニットであるElectric Conversationのカバーである"Fly Away"で、ここではそのメンバーからボーカルであるCarolineもフィーチャーし、原曲よりも綺羅びやかにブギーテイストかつフュージョン風な爽やかさと甘さを強調し、これぞLay-Farの洗練された色気が発せられるハウスを披露している。最後はアトランタのラッパーであるStan Smith & Dipをフィーチャーした"Raw Rap Sh*t"だが、こちらは完全にヒップ・ホップ影響下のビートであるがしなやかさもあり、トランペットの怪しげなメロディーやジャズ風ピアノも用いてジャジー・ハウスに思わせる点もあったりと、クロス・オーヴァーな音楽性はここでも発揮されている。EPながらも多彩な作風がLay-Farにベテランの風格を漂わせつつ、ぶれないフュージョン・テイストに纏めており、やっぱりこの路線を望んでましたと期待通りの作品だ。



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| HOUSE11 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2014/12/26 EUREKA! with Lay-Far @ Galaxy - gingakei
Kenji EndoとMidori Aoyamaが主催するEureka!は良質なハウス・ミュージックの比較的新しいパーティーだそうで、2014年にはLocal Talkの日本初のショーケースも開催するなど目を見張るものがあった。そのEureka!の年内最後の開催には、今ロシアのディープ・ハウスで一際注目を集めているLay-Farがゲストで出演する。このLay-FarもLocal Talkからのリリース歴がある事を考えれば、今年のEureka!はLocal Talk押しである事が伝わってくるというもので、Local TalkとLay-Farが好きなハウス・ミュージックのリスナーであればこの機会を逃す訳にはいかないだろう。そして日本からはDJ Kawasakiもゲスト出演と個人的には未だ体験のした事がないDJ陣が出演という事もあり、初めてのEureka!へと遊びに行ってみた。
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| EVENT REPORT5 | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Lay-Far - So Many Ways (Glenview Records Inc.:GVRCD004)
Lay-Far - So Many Ways
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静かに、しかし着実に押し寄せるロシアからのディープ・ハウスの波。その中で2014年に躍進を遂げたアーティストと言えばモスクワ出身のAlexander Lay-Farは、必ずや新世代を担う一人になると確信している。まだ6年という短い音楽キャリアながらも2013年には今回紹介するアルバムをリリースし、2014年にはLocal TalkやCity Fly RecordsにAmp Art Recordingsからジャズやファンクにディスコ、そしてデトロイト・ハウスをも咀嚼した音楽性の作品をリリースし、ロシア勢の中でも一際注目を集める事になった。さて、このアルバムに話を戻すと、今年リリースされたクラブトラックとしての方向性が強いEP群に比べると、アルバムとしてDJツール性には固執せずにより豊かで柔軟力のある懐を垣間見せるような、つまりはDJというよりはアーティストとしての才能を発揮した作品だ。ゴージャスなジャズバンドの演奏を思わせる煌めくような"Intro"から始まり、そして洗練され耽美なエレピやキーボードに生音のように活き活きとしたベースラインが主導するハウスの"Let Me Fly Away"、しっとりした感情的な歌とざっくりライブ感のあるトラックがレイドバックしたフュージョンのような"Stand Up"と、アルバムは序盤から生音とエレクトロニック(サンプル)を巧みに融合させながら、音楽の中に感情と熱量を込めるように展開する。ボーカリストを多く起用しているおかげで特に魂を熱くするソウルフルな曲も目立つが、例えば"Can't Deny"のように美しいコーラスワークや洗練されたピアノやストリングスの響きが豊かな音色を聞かせながらも、Lay-Farの音楽には良い意味で汗臭さは皆無で都会的でラグジュアリーな大人の空気が強い。そんな点からまだこの若い新星が既に円熟味を発している事に驚きだが、それだけでなく"We Are the Drum"や"A Piece of Devotion"のように変則的なブロークン・ビーツを刻むしなやかなビート感やリズムの多彩性には、舌を巻くしかない。そのようにアルバムの中にルーツである様々な音楽の要素を落とし込みながら、モダンなハウス・ミュージックとして纏めあげており、デビュー・アルバムにしてその後の躍進の予兆は既にあった訳だ。



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| HOUSE10 | 21:00 | comments(2) | trackbacks(0) | |