2017.04.18 Tuesday
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夏の陽気も迫るこの頃、既に季節外れではあるものの年初の厳寒におけるテクノの風物詩にもなったKompaktが送るアンビエント・シリーズの『Pop Ambient』、その2017年度盤を紹介しておきたい。このシリーズに関してはKompaktの元オーナーでもあるWolfgang Voigt(最近Gas名義を復活させた)が選曲を担当しており、アンビエントに対しての特別な審美眼を持つ彼だからこそ、毎年リリースする事で金太郎飴的な内容にはなりつつもその質の高さが保証されている信頼の置けるシリーズだ。本作でもKenneth James GibsonやLeandro FrescoにAnton KubikovやJens-Uwe Beyerなど新旧Kompakt関連のアーティストが曲を提供しているが、注目すべきは珍しく邦人アーティストであるYui Onoderaが参加している事だ。広告や建築空間への、または映画や舞台の音楽制作も行うクリエイターだそうで、クラブ・ミュージック側からは見えてこない存在ではあったが、本作では2曲も収録されるなどVoigtもその実力を認めているのだろう。アルバムの冒頭に用意された"Cromo2"は、透き通るようなシンセのドローンに繊細なピアノの音一つ一つを水玉のように散りばめて、美しさと共に神聖な佇まいを含ませた幻想的なアンビエントで、正に『Pop Ambient』シリーズに相応しい雰囲気を持っている。もう1曲はScannerとの共作である"Locus Solus"、こちらも柔らかく優しいピアノ使い聞こえるが、シンセのドローンが揺らぐ事でハートビートのような躍動感も体感させる。さて、Voigtはというとリミキサーとして参加して”Hal (Wolfgang Voigt Mix)”を提供しており、オーケストラを思わせる荘厳なストリングスやピアノによって重厚感に満ちたアンビエントを作り上げ、そのスケール感の大きさはVoigtらしい。Leandro Frescoは"Sonido Espanol"と"El Abismo"のどちらも吹雪を思わせるノイズ風のドローンが何処までも続く音響アンビエントで、雪が降りしきる極寒の地を思わせるところは『Pop Ambient』の季節にぴったりだろうが、逆に他のアーティストは音数を絞りながら有機的な響きでほんのりとした温かさを表現しており、Popという言葉が馴染み易さに繋がる一般的な意味であれば、そのタイトルはあながち間違ってはいないだろう。春が来るまでの寒い季節に、眠りに落ちるためのBGMとしてやはり聞くべきか。
Tracklistは続きで。