Jonny Nash / Lindsay Todd - Fauna Mapping (Island Of The Gods:IOTG003)
Jonny Nash Lindsay Todd - Fauna Mapping
Amazonで詳しく見る(アナログ盤)

ニューエイジの再評価が著しい昨今の中で、その要素の一つであるスピリチュアルな癒やしを体現する作品がリリース。リリース元はインドネシアはバリの新興レーベルであるIsland Of The Godsからで、「Island Explorer Series」ともう安直以上の何物でもないシリーズ(レーベル名もだが)の一環となっているが、それを手掛けているのが現行バレアリックを代表するMelody As Truthを主宰しMusic From Memory等からも作品をリリースするJonny Nash、そしてエジンバラの秘境レーベルであるFirecrackerを運営するLindsay Toddの二人だ。そんな二人が揃えば当然現実から逃避したミステリアスな辺境音楽が繰り広げられるのも自然な事だが、その上本作は2016年12月にバリにてセッションを行い録音されたと言う内容で、その島に息衝く生命の響きも含まれるフィールド・レコーディングを用いてこの上ないニューエイジを展開している。アルバムは便宜上各曲はタイトルは分けられているが基本的には一つの連なりとして聞ける持続性があり、バリという島の秘境めいたエキゾチック性が続く。原始的な打楽器の訝しい響きや水しぶきらしき音の静かな胎動から始まり神々しい電子音が入ってくると、途端にスピリチュアル性を増す"The Gecko That Wore Its Skin Inside Out"で開始し、土臭いパーカッションや不思議な木製の打楽器の響きが絡み合い未開の森の中を彷徨う"Dengue"、深い残響のダブ・パーカッションが広がって大気が振動するような"Pigeon"と、バリ島とは言っても観光向けのバカンスな海ではなく人の手が入っていないような生命力に溢れた緑が茂る森のムードだ。フィールド・レコーディングや電子音や交えてごちゃごちゃと音が混沌とした"Fauna Mapping"は、その不鮮明な音像の中から生命の胎動にも似た動きが感じられるだろう。そして沼地を歩くズブズブとした環境音で臨場感を生む"Petrol & Nag Champa"を通過し、桃源郷へと辿り着いたのか美しいパッドが伸びる夢現なアンビエント"Kokokan (Heaven Herons Of Petulu)"に安堵する。しかしそこから不思議な民族系打楽器や笛の音色に環境音が気分を高揚させる"Pipe To Pipe Bushment"でビート感を獲得し、宗教的なガムランと鳥や蛙の鳴き声による"A Series Of Small Frogs"で深い瞑想へと誘われ、最後の"Mushroom Omelette"ではオーガニックな響きと合わさった牧歌的な電子音のドローンによって内面を探るアンビエントへと振り切れる。フィールド・レコーディングを大量に用いた事で神秘的な森の中の生命力がリアルに迫ってくるような臨場感が生まれ、そしてその大自然の中で心の平穏へと行き着くヒーリング性を兼ね備え、バリ島に行った事の無い当方にとってもその風景を換気させていっときの現実逃避となるようだ。ある意味、極楽浄土が広がる霊的サウンド・スケープでもある。



Check Jonny Nash & Lindsay Todd
| ETC4 | 13:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Mac-Talla Nan Creag (Firecracker Recordings:FIREC015CD)
Mac-Talla Nan Creag

近年はダンス的な要素の強いEPではなくアルバムに依って音楽表現の拡大を続けているスコットランドはエジンバラのFirecracker Recordingsから、更にコンセプト重視のアルバムがリリースされている。公式サイトによれば「1万年より昔、最後の氷河期の後に人類は現在のスコットランドと呼ばれる場所で、探検をし定住を始めた…」という件から始める長いコンセプトがあり、そんなスコットランドに根付いた探検から生まれたのが本作なのだ。製作者として記載されているのはエジンバラで活動するLord Of The Isles、レーベル主宰者であるLindsay ToddことHouse Of Traps、レーベルとは馴染みの深いFudge Fingas、そして正体不明のD. Wrightの4人だ。彼らは2014年の暮れにスコッチを嗜みながら古美術を学びつつ廃墟を訪れてはセッションを行い、そしてフィールド・レコーディングで音を集めながら、それぞれがギターやシンセにパーカッション、ハーモニウムやハープを演奏して、そんな短い探検の末に得られた材料を元にして本作を完成させたそうだ。その意味で本作は正にスコットランドから生まれた音楽であり、レーベルが今までリリースしてきた作品の中でも特に異色さが際立っている。つまりは一般的なパーティーで聴けるであろうダンス・ミュージックは皆無で、民族音楽やレフト・フィールドにフォークのような音楽性が中心となっており、その土地から発せられたスピリチュアルな空気を含んでいる。特に曲によってはシャーマンによる祈りを喚起させる歌も入っており、そこに伝統楽器と電子楽器にその土地から発せられた環境音を絡めながら、半ば宗教的な神妙さと大自然の謎めいた営みを体感させるのだ。環境音やセッションを元にした音楽性だけあって、形式に則っるのではなく生き物のように常に流動的で自由な変化を続ける音楽からは、探検を続ける内に様々な未知なる風景に出くわすかの如く。Firecrackerのファンが期待している音楽性とは全く異なるだろうが、あくまでコンセプト有りきである事を考えれば、スコットランドを拠点として活動するレーベルの郷土への思いが表現された作品として面白い。

| ETC4 | 08:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |