2023.02.25 Saturday
初期活動においてはコズミック・ディスコやハウスのアーティストという記憶も残る日本で活動するMax Essaだが、2015年を過ぎた頃からはバレアリックやダウンテンポの音楽性が顕著になり、特に2018年の『Lanterns』(過去レビュー)ではビート感は後退し代わりに夢幻の風景を描き出すニューエイジ/アンビエントへと更に踏み入れ、近年のムーブメントと寄り添いながらアーティストとして個性を確立させている。本作は2021年に自身の運営するJansen Jardinから配信のみでリリースされた現在における最新アルバムだが、前述の『Lanterns』の流れを継承する平穏な瞑想を誘発するニューエイジ/アンビエントな内容で、例えばまだ明るい時間帯の白昼夢を体験するかのような現実からの逃避へ導かれる。アルバムの開始はタイトル曲である"Miro In The Bathroom"、ゆったりとした湿り気を帯びたパーカッションのリズムに合わせ優しいハープシコードと微睡んだシンセが交互に現れる夢現なダウンテンポによって、心をリラックスさせながら夢の中に落ちていく。"Fascinating Lavender Compass"は薄っすらとしたシンセパッドの伸びの中にピアノや笛の音色が素朴さを添えて、ニューエイジ調ながらも明るい太陽の光が射すような昼間の清々しく爽やか雰囲気。そして"Come Come The Rain (Ambient Version)"はアンビエント・バージョンという通りに眠っていた木々や動物達が目を覚ます朝靄が立ちこめる早朝の雰囲気か、祈りのような歌や幻想的なシンセを静かに配して、静謐ながらもドラマティックな寝起きを迎える。遠くでぼんやりとアブストラクトなギターが鳴っているような"Temple Laundry"は序盤こそアンビエントだが、中盤から軽やかなパーカッションがリズムを刻み出し、麗しいストリングスに導かれながら夢の中を散歩するような浮遊感のあるダウンテンポへと変化する。そしてシタールやタブラも用いてワールド・ミュージック的な異国情緒を醸す8分にも及ぶ"Hearts In Flood (Alternative Version)"から、最後は静けさを取り戻すような優しいピアノが先導するノンビート・アンビエントの"Balcony"で、夢のようなリラックスした時間が終わりを告げる。ニューエイジ感覚はあるがスピリチュアル過ぎる事はなく、瞑想的であり穏やかな気分へ向かわせる日常の中に溶け込むBGMとして最適で、何時の間にか生活の中に存在するような音。忙しない喧騒から離れた極上の安らぎを提供してくれるだろう。
Check Max Essa