Mangabey - Try To Chill (Toy Tonics:TOYT092)

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先日Toy TonicsからのKapoteを紹介したので、関連して同レーベルから作品をリリースするJose FehnerことMangabeyを紹介。フランス出身のアーティストで2013年頃からDJとして活動を始め、2017年に作品をリリースするようになると、ジャズやブラック・ミュージックに影響を受けたファンキーなハウスはToy Tonicsの音楽性にばっちりとハマり、新鋭として注目を集める存在の一人だ。如何にもToy Tonicsらしいディスコやファンクの要素を織り交ぜた直球ハウスは分かり易いダンス・グルーヴが強く、フロアを簡単に沸かせてしまうに違いない機能的なダンスだ。しかし驚いた事に公式の説明ではMangabeyは殆どサンプリングを用いずに自分で演奏しているとの事で、この新作も一聴してディスコ・サンプリングな作品だなと思っていたので、その演奏の表現力に驚かずにはいられない。"Just Luv Machine"は軽快でカラッとしたパーカッションを用いたハウスの4つ打ちから始まり、そしてサンプリングだと勘違いしてしまうようなジャズ/ディスコを思わせるキーボードやピアノにベースや管楽器が加わってくると、煌めくディスコ・ハウスの姿が現れてくる。陽気で希望を高らかに歌い上げるような歌も相まって、非常にハッピーでかつ肉体感のある骨太なハウスは、何か新しいサウンドというわけではないがクラシカルな作風さえ漂う芯の強さが感じられる。"My Saxophone"はそのタイトル通りなサクソフォンを用いたハウスで、しかし序盤の優雅な佇まいのあるピアノコードとしっとりと艶めかしいベースからうっとりムーディーさが漂っており、そして哀愁漂うサクソフォンが加わってくると更にしっとり情緒性を増してジャズ・ライブを聞いているかのようにも錯覚する。そして滑らかなビートを刻む"Try To Chill"では控えめながらも耽美なキーボードのコードで引っ張りつつ、チャカポコとした弾けるパーカッションを用いて実にリズミカルに展開するディープ・ハウス調、盛り上がりとムーディーな瞬間の切り替わりもあり沸かせる術を心得ている。またそんな曲をデトロイトからのRick Wadeがリミックスを行った"Try To Chill (Rick Wade Remix)"は、こちらはより太いキックが打ち付けるモロなデトロイト・ハウスで、より幽玄でしとやかなな鍵盤ワークによって上品な色っぽさや優美さを纏い、ガツガツと力強いグルーヴを刻みながらもエモーショナル性を打ち出している。新しさよりはむしろ古典的な感もあるハウスだが、それにしてもどれも出来が良くクラシカルな雰囲気さえも。



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| HOUSE14 | 20:00 | comments(0) | - | |
Rick Wade - Conscience EP (Unknown Season:USJS-008)
Rick Wade - Conscience EP

デトロイト・ハウスの作曲家としては恐らく最も多作を誇るであろう生粋のアーティスト、それこそRick Wade。特にここ数年のリリースペースは尋常ならざるもので、自身のHarmonie ParkやHolic Trax、HousewaxやYore Records等の著名なレーベルからよりマイナーなレーベルまで所構わず新作をリリースし、ディスコ・フィーリングな煌めくハウスからしっとりムードあるディープ・ハウスまで安定した品質を保ってアーティスト性を確立している。その反面、余りにもリリースペースが早いので作品の全てを拾い切るのは困難でもあるが、本作に於いてはブラックネス溢れるハウス〜ヒップ・ホップに素養のあるHugo LXや、叙情性を強く奏でるハウス・アーティストのTakuya Matsumotoがリミキサーとして参加している事もあり、必然的に惹かれて購入した。新曲の"Conscience"は彼にしては随分とジャジーでムーディーなハウスで、流麗なストリングスや内向的なキーボードワークを軸に軽い風が舞い込むようなラテンフレイバーもあるドラムやリム等のリズムが軽快なビートを刻み、身体が火照るようにメランコリーでしっとりした情感を滲ませるこの曲は、ピークタイムよりは例えばパーティーの早い時間かまたは朝方の寝ぼけ眼な時に聞きたくなる。また"Authentideep (Hugo LX Twelve Hundred Mix)"は原曲よりもざっくり生っぽいリズム感を強調しているが、叙情的な部分は残しつつもより上モノや散りばめられた音の粒は陶酔感が強くなり洗練されたテック・ハウスな響きもあり、黒っぽさとアダルトなエレガンスが融合している。特に個性的な作風になった"Conscience (Takuya Matsumoto's Low Position mix)"、重心が低くねっとりとしたロウなビートが先ず耳に入ってくるビートダウン・ハウスで、そこに催眠的なシンセのリフをミニマルに用いてじわじわと絡み付くように粘性を持って展開する異形な音楽性ながらも、そこから発せられる黒さは原曲以上だ。最後の"Mack Equation"はデジタルオンリーだった作品の初ヴァイナル化で、ディスコティックなストリングスが優雅に舞いエレピが色鮮やかに彩るミッドテンポのディスコ・フィーリング全開で曲で、落ち着いた展開ながらも陽気なノリに心がうきうきとする。Wadeのオリジナルには安心印があるし、またリミキサー二人も個性を発揮した曲を聞かせてくれており、全曲外れ無しの磐石な内容だ。



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| HOUSE13 | 14:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Cassy - Panorama Bar 01 (Ostgut Tontrager:ostgutCD02)
Cassy-Panorama Bar 01
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テクノ系の音楽ではお世話になっているVinylismacid over the rainbowで紹介されていたので、ならば良質であろうと考え購入した一品。Cassyって言う女性DJで詳細は知らんが、LucianoやVillalobosらと一緒に名前が出てくる事が多いですね。でもまあ今ベルリンで最も隆盛を誇るであろうクラブ・Panorama BarのオフィシャルMIXCDなんで、期待していいんじゃないだろうか。ふむふむ、渋めのミニマルな流れが中心ながらもデトロイトっぽいのやアシッドも上手くミックスしていて、地味ながらも徐々に上げていく展開がかっこいいよ。そして特筆すべきはミニマルかつ冷淡でありながらも、ねちっこいファンクネスを感じさせる事が彼女のオリジナリティーを発揮させておるのだ。血の通ったプレイって言うのかね、奥底には熱さを感じさせるイメージ。テクノともハウスともミニマルとも言える幅広い選曲で、それらを上手くまとめて地味に盛り上がるよ。Ostgut Tontragerは今後とも注目しておいて損はないでっせ。

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| TECHNO6 | 00:10 | comments(4) | trackbacks(1) | |
DJ Nobu - Creep Into Shadows - The Midnight D Edits (Underground Gallery Productions:UGCD-801)
DJ Nobu-Creep Into Shadows - The Midnight D Edits
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デトロイトには有名無名に関わらず素晴らしいダンスミュージックレーベルが数多く存在するのですが、アンダーグラウンドなハウスをリリースしているレーベルと言えばMike Grant主宰の"Moods & Grooves"があります。このレーベルからはTheo Parrish、MoodymannことKDJ、Alton Miller、Rick Wade、Brian Hardenらデトロイトの猛者が、レーベル名通りに心地良い暖かさを持ったムードとグルーヴを発する質の高い楽曲をリリースしています。そしてそのレーベルの音源のみを使用してDJMIXを手掛けたのが、日本でアンダーグラウンドシーンから叩き上げられたDJ Nobu。千葉で"Future Terror"と言うパーティーを主宰し近年注目を浴びているその人であります。2006年末には"No Way Back"(過去レビュー)と言うテクノ系MIXCDで評価を得ており、自分はまだ生で彼のプレイを体験した事はないのですがとにかくカッコいいプレイをする人みたいです。

余り予備知識が無いのでとにかく本MIXCDを聴いてみましたが、正直地味だと思います。ひたすらローテンションで暗く地べたを這いずる様なローファイハウスが続いていて、まあ地味ですよ。実はどの音源もDJ Nobuがリミックスやエディットを施していて、オリジナル音源の大半を所有していないので正確な判断は出来ないのですが、多分オリジナルよりも更にざらつきなり深みなりを強めている気がします。だから確かに音や展開は地味だけれども、このローファイ感覚はデトロイトのアーティストとも共振していて、日本人にしては珍しいどす黒い音をたっぷりと聴かせてくれます。勿論それは"Moods & Grooves"と言うレーベルの音源を使用していると言う理由もありますが、それ以外にもDJ Nobuの音源の再構築の仕方や曲の使い方に拠るものも影響しているのでしょう。激しいプレイも無いし幸福感も全く無いけれど、どこか感傷的な気持ちになるのはやはりソウルが籠っているからです。暗い暗いトンネルを抜けた後には、きっと明るい未来が待っているはず。MoodymannやTheo Parrish好きなら、DJ Nobuのプレイに耳を傾けても損はないはず。

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| HOUSE3 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Soul Heaven Presents Kerri Chandler & Dennis Ferrer (Soul Heaven Records:SOULH04CD)
Soul Heaven Presents Kerri Chandler & Dennis Ferrer
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良くも悪くも売れ線のハウスの量産するDefectedが大物DJをフューチャーしたMIXCDシリーズを立ち上げておりますが、その名もなんとSoul Heaven!う〜ん、なかなかイカシタシリーズ名でありますが、Blaze、Masters At Workと来てKerri Chandler & Dennis Ferrerの黄金コンビを召喚しました。まあこの二人が揃えば悪い物など出来るはずもなく、素晴らしきディープハウスMIXCDがちょちょいと出来上がってますね。まずはケリチャンサイドなんですが、出だしはあれ?っと言った感じで緩めのソウルフルなハウスから。いつもは重いキックが特徴な彼なんですけど、今回はちょっと違います。そこから空間系ディープハウス「Dub Life」に繋げて、中盤ではかなり明るめでデトロイト風のシンセが鋭く入る「Shimmering Stars」でピークを持ってきます。それ以降もNY系のボーカルハウスを多用して、かなりメロウだったりジャジーだったりな展開ですねー。全体的にのびのびとスムースな流れで、アフターアワーズに聴くとぴったりなスウィートな出来ですね。意外なプレイだけど、これはこれで素晴らしいです。

対する初のMIXCDとなるフェラーさんは、出だしは同じく緩めのメロウなハウスから。と思いきや2曲目でいきなり超ディープな「Rej」を打ち込み、深く落としてきます。そこからは普段のケリチャン並にパーカッシブに盛り上げていき、なかなか図太いボトムラインで体を揺さぶります。でもしっかり透明感のある優しいメロディーもあって、耳に馴染みやすい音だと思います。終盤は太鼓がかなり入るアフロトライバル系の曲が多く、土着臭強し。ディープとアフロを程よくブレンドさせて、良くも悪くもそつのない出来ですね。

今作はケリチャンもフェラーさんも、ガツガツとぶっといボトムで攻めるよりはハーモニーを強調している気がしますね。デジタルを駆使したトラック作りが特徴のケリチャンの割りには、なかなか湿っぽく生暖かいソウルフルな面が前面に出ています。盛り上がるよりもしっとりと耳を傾けて聴きたいタイプですね。ボーナスCDの3枚目は、ケリチャンとフェラーの素晴らしいトラックが半分ずつ収録。硬めのディープハウスもしっかり収録で、トラックメーカーとして才能を感じます。不朽の名作「Inspiration(Main Vocal Mix)」が聴けるだけでも、美味しすぎるボーナスCDですね。

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| HOUSE2 | 23:00 | comments(3) | trackbacks(0) | |
Juan Atkins - Wax Trax! Master Mix Vol.1 (Wax Trax! Records:TVT 7254-2)
Juan Atkins-Wax Trax! Master Mix Vol.1
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遂に明日ageHaにおいてKen Ishiiと競演するJuan Atkinsが、テクノ創世記とでも言うべき選曲でMIXしたのがこれ。わ〜曲目だけ見ても凄いね〜、Model 500、Rhythim Is Rhythim、A Number of Names、Rob Hood、Infiniti、Maurizio等ちょーすげー面子の曲ばかりじゃん。こんなの悪い訳ないじゃん。つかすっげークゥゥゥゥ〜ルだよ。エレクトロ、シカゴハウス、デトロイトテクノ、ハウスなど、それもまだエレクトロニックミュージックの創世記を思わせる曲ばかりで構成されていて、さすがテクノを創造したJuan Atkinsだと思わせられるよ。前半は比較的ハウス路線で抑えめに来るけど、中盤は淡々としたミニマル路線でそこからドッカン!とInfinitiの名曲Game Oneで見事に弾ける。幾何学的なシンセのプリズムに囲まれて、サビでは薄く伸びるシンセラインがかっちょいい!後半ではハウス、ダビーミニマルでおとなしめの展開と思いきや、終盤でゲットーテクノで安っぽい音ながらもファンキーな攻め具合。意外や意外、思ったよりも展開に起伏があると言うか選曲に幅があるんだねぇと感心しました。聴けば分かるけど上手いMIXではないんだけど、この人の場合選曲センスでなんとかなるパターンなんだろうね。テクノのドンらしい硬派で媚びないMIXなんじゃないかと。派手なプレイで盛り上げるのももちろん楽しいけれど、こんなプレイが出来るDJはそうはいないんじゃないかな?ここに収録されているアーティストだって大半はJuan Atkinsに影響を受けているはずなんだけど、そんなアーティストの曲を使った師匠×落とし子達の美味MIXだよ。

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| TECHNO1 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Southport Weekender Vol.2: Mixed by Blaze & Joe Claussell (SuSU:SUALBCD7)
Southport Weekender Volume2
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ハウスはそんなに詳しくないけれど、そんな僕でもどうしても欲しくなってたCDがこれ。ブレイズのケビンヘッジとジョークラウゼル!!がMIXですよ。ジョーと言えばスピリチュアルでディープで、ああホントに大好きなアーティストで熱がこもってしまいます。発売前からトラックリストを見てとにかく欲しかった。

まずはジョーの方から紹介。幕開けはChris Brannでゆったりと幻想的に始まる。3曲目で人気上昇中のFranck Roger、NEEDS風味なジャジートラックで盛り上げます。続いて爽快なボーカルハウス、Divinity-Find A Way(Danny Krivit Edit)、更にPassion Dance Orchestra-Worlds(Theme 2)ととにかく大ネタ使いまくり。中盤ディープめになり後半でジョーの名曲Awadeから今年最高のハウストラック、Louie Vega-Love Is On The Wayに繋がり最高の盛り上がりを見せます。軽快なラテンパッカーションに甘いボーカル(ブライズの片割れジョシュミラン)が乗ったこの曲は、もうすぐ出るLouie Vegaのアルバム「Elements of Life: Extensions」に収録なのでお見逃さずに。通して聴いた感想としては、以前に出たMIX The VIBEと言うMIXCDよりは明るめだし、ハウスの入門者にも聴きやすいトラックが多いのかなと思います。一曲一曲が素晴らしく、軽快でボーカル入りのが多いし。ディープさは薄れましたが、内容はもちお薦め!

お次はケビンの方。全体的にアップテンポなボーカルハウスかな。ブレイズの曲が好きな人なら、気に入るんではないかと。ジョーの方に比べてはしょっちゃってすみません。ブレイズにMIXと言う事は特に求めていないので、彼らは純粋にトラックメイカーである事を期待しています。そうゆう意味では6曲目のBlaze-We Are Oneは高揚感のあるピースフルな素晴らしいボーカルトラックですよ。

何にしてもハウス好きな人は、買って損はございませんよ。

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| HOUSE1 | 22:21 | comments(3) | trackbacks(1) | |