Hoavi - Phobia Airlines (Fauxpas Musik:FAUXPAS 029)
Hoavi - Phobia Airlines
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NocowやRising Sunといったレーベルを初期から支えるアーティストに、そしてSven Weisemann変名のDesolateやConforce変名のSevernayaら著名なアーティストもカタログに名を連ねるドイツはライプツィヒのFauxpas Musikは、テクノからハウスにブレイク・ビーツからリスニング系まで多少なりとも幅を持った音楽性のあるレーベルだが、おおよそどの作品にも共通する要素は包み込むような温かいアンビエント性だろう。本アルバムもそのレーベル性に沿った内容で、手掛けているのはサンクトペテルブルク出身のKirill VasinことHoaviだ。Web上にもアーティストの詳細は余り公開されておらず作品数も多くないためどういったアーティストかは不明だが、まだ20代後半と比較的若手の存在である。アルバムの出だしこそ落ち着いたノンビート構成の"Cloud9"で深い濃霧に覆われたような視界もままならないディープなアンビエントだが、人肌の温もりを感じさせる温度感は非常に情緒的。そこからは曲毎に様々な変化を見せ、湿度のあるキックに硬いパーカッションが打ち付ける"Kill The Lama"はアシッド・サウンドが飛び交いつつアンビエントなパッドに覆われ、"Can't Explain"ではぐっとテンポを抑えたダウンテンポに80年代風のローファイなパーカッションやアシッドを絡めた叙情的ながらもヒプノティックな響きがあり、そして"Phobia Roadlines"ではしなやかなドラムン・ベースかブレイク・ビーツかと言わんばかりの小刻みなリズムを刻みつつ無重力で浮遊感のある上モノを張り巡らせたアトモスフェリックな作風と、とても一人のアーティストとは思えない程にバリエーションの豊かを強調する。"Contour"辺りは安定感あるキックとディレイを用いたダビーな音響による幻惑的なディープ・ハウスで、特に幽玄なエレクトロニックの響きに陶酔させられる。時に激しく振動するリズムから大らかな波のようにゆったりとしたグルーヴまで、曲毎に動静の変化を付けてリスニングとダンスを行き交うアルバム構成だが、一環して霞がかった深い音響によるディープなアンビエント性は鎮静作用があり、睡眠薬の如く微睡みを誘発する。前述のSven Weisemannらの静謐で残響心地好い音楽性と共鳴する内容で、まだアーティストとして未知な部分は多いものの期待が寄せるには十分だ。



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| TECHNO14 | 11:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Lay-Far - War is Over (In-Beat-Ween Music:NBTWN011S)
Lay-Far - War is Over
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ブロークン・ビーツからフューチャー・ジャズ、ディープ・ハウスからディスコ、ダウンテンポからヒップ・ホップへ、様々な音楽性を匠に操り言葉通りにクロスオーヴァーな音楽性を体現するLay-Farは、今やロシア勢の筆頭格の一人と呼んでも過言ではない程に実力と人気を兼ね備えている。Local TalkやSoundofspeedといった実力派レーベルからのリリースと共に、この日本においても若きパーティー・グループであるEureka!の積極的な後押しもあり正当な評価を獲得しているように思われるが、この3枚目となる2018年リリースのアルバムでその評価は盤石となるに違いない。アルバムの音楽性は前作である『How I Communicate』(過去レビュー)から大きく外れてはいないが、前作がサンプリング性が強かったのに対し本作ではより艶かしい生音も多くなり、これまで以上に多様性がありながらも円熟味という味わいで纏め上げている。始まりはPhil Gerusのローズ・ピアノをフィーチャーした"Sirius Rising"、比較的ハウスマナーに沿った曲ではありローズの耽美な響きが美しく、実に上品かつ優美に舞い踊る。続く"Decentralized Spiritual Autonomy"はダブ・ユニットのRiddim Research Labとの共作で、確かにダブの深くスモーキーな残響とずっしり生っぽく湿っぽいキックを活かした訝しい世界観が広がっている。そしてディスコ・バンドのThe Sunburst BandのシンガーであるPete Simpsonをフィーチャーした"Be The Change"、力強くソウルフルな歌と熱が籠もりファンキーな躍動のあるディスコ・ハウスと、アルバム冒頭3曲からしてLay-Farらしく様々な表情を見せている。"The Pressure"ではデトロイトの鬼才・Reclooseも参加しているが、それは相乗効果となりトリッピーながらも優美な音使いに変化球的にしなやかなブロークン・ビーツを刻んで、本家西ロンのアーティストにも負けず劣らずなリズムへのこだわりも見せる。かと思えばサンプリングを打ち出してややレイヴなブレイク・ビーツ感もある"Market Economy VS Culture (The Year Of The Underdog)"では切り込んでくる小気味良いビートに毒気のあるベースサウンドがB-BOY的だが、アイルランドのシンガーであるStee Downesが参加した"Over"はビートはエレクトロニックながらもそのうっとりと艶を含んだ声もあってネオソウルにも聞こえ非常にエモーショナルだ。曲毎のリズムやメロディーのバリエーションの豊富さはありながら、アルバムとしてそれらはばらばらにならずにLay-Farの洗練されたモダンなダンス・ミュージックとして一つの世界観となっており、表現力に更に磨きをかけている。なお、日本のみでCD化されているがオリジナルの倍近くである15曲収録となっており、アナログよりもCDの方が一層楽しめる事だろう。



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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ3 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Vince Watson - Via LP (Everysoul:esol013)
Vince Watson - Via LP
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最も熱心な、そして永遠のデトロイト・テクノのフォロワーを代表するであろうVince Watson、20年にも及ぶ長い活動の中で数多くのレーベルからエモーショナルなテクノ/ハウスのを送り出してきた彼も、近年はクオリティーコントロールを適切に行うためか自身のレーベルであるEverysoulを設立し、特に重要なアルバムはそこからリリースしている。そして本作、9枚目となるアルバムも自信の表れなのだろうか同様にEverysoulからのリリースとなり、そこには歴代最高傑作と呼べる程にエモーショナルかつディープなテクノ/ハウスが並んでいる。本人の説明ではパーティーからパーティーへの移動中の感情をコンセプトにしたようで、とあるパーティーでの興奮やそこからの日常に戻るリラクゼーションが各曲で表現されている事もあり、確かに過去の作品よりも更に感情が強く打ち出されているように思われる。基本的には金太郎飴的な作風である事は前提にしても、それでも尚深遠さとエモーショナル性が強くなった本作の強度は並大抵のものではなく、幕開けを飾る"Bon Voyage"から余りにも叙情的なパッドのディープな旋律、トランシーにも似た快楽的なシンセのリフが絡み合いながら、いきなり咽び泣くような感動のピークに連れて行く。続く"Via"はややグルーヴを落ち着かせてしっとりした4つ打ちから徐々に底から湧いてくるような泣きのシンセストリングスが望郷の念を呼び起こすようで、その深い情緒はデトロイト・テクノ以上にデトロイトらしいと言うか、もはや様式美ですらある。ぐっとテンポを落としてダウナーなハウス調の"Route303"では彼らしいメランコリックかつ繊細なピアノが艷やかに響きほっと落ち着きを取り戻しつつ、逆に"The Traveller"のような曲ではアッパーで攻撃的なテクノのビートにぐっと伸びていくパッドやエグミのあるシンセでパーティーの真っ只中にいるような興奮を誘う。アルバムの中盤もフロアをノックアウトするような攻撃的な曲が待ち受けており、ずっしりしたバスドラや激しいハイハットに打ち付けられながらもレーザーのような色彩豊かな電子音が快楽を上り詰めていく"Momentum"、そしてアルバムの中でも特に高揚感に溢れているグルーヴで疾走りつつヒプノティックな電子音のループと壮大なパッドが宇宙の広がりを思わせる"Tale Of Two Cities"と、このハイエナジーな感覚には抗う事は出来ないだろう。終盤は緊張感から解放されながらも丁度心地好いグルーヴ感の上に乗るメランコリーな旋律の美しさが際立つ"Lonely Journey"、そして最後のノンビート・バージョンで物哀しいメロディーが明確に打ち出され感動的な終わりを迎える"Via (Sun Rising Mix)"の流れで、アルバムは全ての感情を吐き出すかのようにエモーショナルな世界が一貫している。ややもすれば金太郎飴と揶揄されがちな完成されたスタイルは、しかし純度を高める事で更に聞く者を感動させるエモーショナル&ディープの先に辿り着き、Watsonの最高傑作となった。いつも同じだろ?と思っているファンや深遠で美しいテクノを求める人、そしてデトロイト・テクノ好きな人にも当然お勧めしたい。



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| TECHNO14 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Earth Patterns - First Light (Utopia Records:UTA 006)
Earth Patterns - First Light

Soichi Teradaの名作の再発やModajiやLars Bartkuhnなどのジャジーヴァイブス溢れる作品、そしてギリシャの現代音楽家であるVangelis Katsoulisのアルバムまでもリリースするなど、時代やジャンルを超越しながら質の高い音楽のみを提供するUtopia Recordsは新興レーベルながらも特別な存在感を示している。そのレーベルからの見知らぬ名義・Earth Patternsのミニアルバムがリリースされたが、これもレーベル買いしては損はしない作品だ。実はVoyeurhythmやDelusions Of Grandeurからの作品で頭角を現しているBen Sunによる変名で、メローな旋律とサンプリングのディスコ・ハウスからブギーなハウスまで展開する実力派であり、この新作では一転してLarry Heard辺りを意識したリスニング向けのピュアなハウスに挑戦している。冒頭の"Sunflower"からして完全にHeardの影響下にあるディープ・ハウスで、透明感あるシンセの流麗なメロディーを武器にコズミックな音響も加え、そして圧力には頼らずにメロディーを支える端正で軽快な4つ打ちのビート、一切の余計な音は加えずにシンプルな構成ながらもエモーショナル性を追求した作風はクラシカルな趣きさえある。より温かみのあるパッドを用いて穏やかさが打ち出た"Horus Rising"では心地良く抜けるパーカッションも効果的で、開放感や爽快感を感じさせるハウスだ。更にテンポを落としたダウンテンポ調の"Fourth Axis (Instrumental)"でもピアノの可愛らしい旋律や子供の歌声らしきものが朗らかなムードに繋がっているが、Ben Sun名義のブギーな音楽性に通じる所もある。裏面は内面の宇宙へと潜っていくようなアンビエント性の高い"Transit Pan"で始まるが、これもHeardの深遠なる世界観を思い起こさせる。そしてアフロかエキゾチックなのか国籍不明な不思議な感覚のあるプロト・ハウス風な"After The Rain"から、最後は光沢のあるシンセから始まるも分厚いアシッド・ベースが加わって最もダンスフルなハウス・グルーヴの"Eight Circles"でアルバムは幕を迎える。ハウス〜アンビエント周辺をうろつきつつどの曲にも言える事は、やはり慎ましく穏やかなメロディー、それは控えめに美しく情緒を含むものでしっとりと肌に染みていくという表現が相応しい。素晴らしい作品なのでミニアルバムなのが勿体無い位なので、是非ともこの名義には再度期待したい。



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| HOUSE13 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
EMMA HOUSE XX Non Stop Mixed By DJ EMMA 30th Anniversary (Universal Music:UICZ-9075)
EMMA HOUSE XX Non Stop Mixed By DJ EMMA 30th Anniversary
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1985年にDJ活動を開始してから芝浦GOLDやSpace Lab Yellow等伝説的な箱でレギュラーパーティーを開催し、また早くからクラブの臨場感を宅内でも体感させるMIXCDの制作に積極的に取り組み、現在も尚シーンの最前線でDJとしての生き様を見せるEMMAは、日本のダンス・ミュージックに於ける生き字引の一人と呼んでも過言ではないだろう。本作は2015年にDJ活動30周年を迎えた事を記念するMIXCDであり(リリースは2016年10月)、またシリーズとしても20周年目の通算20作目と、記念づくしの『EMMA HOUSE』シリーズの最新作である。彼の音楽を現す『EMMA HOUSE』にはハウスという言葉が使われているが、決してハウスだけではなくテクノやロックにアシッド・ハウスまでも網羅した分け隔てないダンス・ミュージックのプレイが前提であり、当然本作もそんな彼のクラブに於けるプレイがそのまま閉じ込められている。Disc1は彼の音楽性では最も特徴と思われるソウルフルなNYハウスの"A Deeper Love (A Deeper Feeling Mix)"で始まり、いきなり胸を熱くするソウルフルな歌によってぐっと引き込まれていく。続くピアノの華やかなコード展開に盛り上がるピアノ・ハウスの"Soul Roots (Piano House Mix)"、現在形のロウでトリッキーなハウスである"Looking 4 Trouble"から90年代のハードなハウス時代を象徴する"Jumpin"へと繋がれるなど、ある種のクラシック的な趣きでがつがつと攻める前半。そしてEMMAの中で再燃するアシッド・ハウスの勢いを爆発させた"Acid City"から"The Original Disq Clash (DJ EMMA Jesus Remix)"へと流れは正に現在と言う時代性も含んでおり、そこからイタロ・ディスコ名作の"Chase"やハードロック・バージョンの"I Feel Love"へと古き時代に戻り懐かしさを誘いつつ、ラストにはこれまたハウス・パーティーでは定番とも言える"You Are The Universe (Curtis & Moore's Universal Summer Groove)"で幸せなパーティーの空間を共有する雰囲気を作って上手く纏めている。Disc2も古き良き時代のゴスペル・ハウスやレイブ・アンセムから現在のバレアリック・ミュージックやソウルフル・ハウスまで、過去と未来を同列に混在させる選曲で実に感情的に実にドラマティックに聞かせるプレイで、これこそEMMAの魂を震わすDJなのだ。驚くべき展開は無いかもしれない、流行を意識する事もない、そんな事に頼らずともクラブでのパーティーで培われた経験を元に実直に音楽に向き合った結果、真っ直ぐにプレイする事が感情が最もダイレクトに伝わる事を証明しているかのようだ。

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| HOUSE12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Rebirth 10 - Compiled And Mixed By Larry Heard A.K.A. Mr. Fingers (Rebirth Records:REB036CD)
Rebirth 10 - Compiled And Mixed By Larry Heard A.K.A. Mr.Fingers
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シカゴ・ハウスのレジェンド…とだけで括るのでは恐れ多い、時代を越えて何時までも残る曲を制作する音楽家として孤高の位置に存在するMr. FingersことLarry Heard。初期シカゴ・ハウスのロウで荒ぶれる作風から、次第にそこにツール性のみならず趣深い情緒や琴線に触れるエモーショナル性を加えた張本人であり、伝説的な存在として尊敬の眼差しを浴びながらも今も音楽家として制作を続け、求道的な生き方を続けている。アーティストとしての技量は言うまでもないが今までにDJとして公式にミックスをリリースした事はなく、活動歴30年を経てようやくMr. Fingers名義でのミックスがここに届けられた。オフィシャルでの初のミックスである事は非常に貴重ながらも、今回はイタリアのレーベルであるRebirthの10周年を記念した作品とあって、あくまでレーベルの音楽性を伝えるショーケースが前提になっている。レーベルからの作品にはテクノからハウスにディスコ、USから欧州まで幅広い要素があり、レーベルを追い続けている人でなければその全容を計り知るのは困難だろう。しかし決してDJとしては超一流という訳でもないLarryが、ここでは穏やかで慎み深い点で音楽的には親和性のある事をベースに、ショーケースとしては十分に魅力あるミックスを披露している。ショーケースというコンセプトが前提なのでトリッキーさや派手な展開はほぼ皆無で、曲そのものの良さを打ち出す事を前提としたミックス - それは普段のLarry Heardのプレイでもあるのだが - で、幽玄なディープ・ハウスからアシッド・ハウスに歌モノハウス、またはディープ・ミニマルも使用して、穏やかな地平が何処までも続くような優しさに満ちた音楽性だ。丁寧に聞かせる事でしっとりと体に染み入るような情緒性を含みつつも、勿論ダンス・ミュージックとして体が躍り出すようなグルーヴ感もあり、Larryらしい大らかな包容力とレーベルの美しく幽玄な音楽性が見事にシンクロして相乗効果を発揮している。リスニングとしての快適性が故に部屋で流していて自然にさらっと聞けてしまうBGM風にも受け止められるが、それもLarryやレーベルの音楽性としてはあながち間違っていないのかもしれない。願わくば次はショーケースとしてではなく、よりパーソナリティーを打ち出したMIXCDも制作して欲しいものだが、さて今後の活動を気にせずにはいられない。



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| HOUSE12 | 12:00 | comments(2) | trackbacks(1) | |
2015/9/13 Two Faces of Soichi Terada : Omodaka / Japanese House Origin @ 寺田倉庫 G1
近年になりRush Hourにより過去作品がリイシューされた事で、再評価されているジャパニーズ・ハウスのオリジンの一人でもある寺田創一がTodaysArtのパーティーに出演する。ヒップ・ホップやハウスに魅了された彼は1990年頃から日本のポップスのリミックスも手掛けつつ、和製ハウスの制作も行い、それがいつの間にか本場NYでも評価されるという日本のハウスの先駆け的存在であったようだ。その後はドラムン・ベースにも傾倒しつつゲームミュージックの制作においても注目を集めるなど、特にクラブとの繋がりにこだわる事なく電子音楽の道を進んでいた。が、やはりダンス・ミュージックを楽しむ人にとっては寺田のハウスに魅了されるのは当然だろう。そんな寺田の音楽において、この日は寺田創一としてのハウス・セットと、Omodaka名義による民謡テクノ/ドラムン・ベースを同時に行うという、彼にとっては初の試みでもあり貴重な内容となった。
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| EVENT REPORT6 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Marcel Dettmann - Fabric 77 (Fabric Records:fabric153)
Marcel Dettmann - Fabric 77
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ドイツで最大級の人気を博すクラブ・Berghain、そこでレジデントを持つDJは複数いるが、その中でもやはりクラブの顔として存在感を放つのは(少なくとも日本では)他ならぬMarcel Dettmannだろう。日本に来日する度にパーティーでもフロアを満員にする程の人気を誇っているが、その音楽性は余りにもハードな面を持つ一方で、伝統的なシカゴ・ハウスから最新のダークなテクノ、又は理路整然とした機械的なマシンビートのミニマルに深遠なアンビエントまで網羅し、オールド・スクールからモダンを一つの世界に収めたテクノとしてミックスする手腕が持ち味だ。本作は彼にとって3作目となるMIXCDだが、その音楽性自体に大幅な変化は見られない。やはりオープニングには闇の奥底から静かに浮かび上がるダークなアンビエント"Arthure Iccon"でゆっくりと始まるが、続く"Sun Position"では錆び付いた金属が擦れるようなビートを、更に"Inside Of Me"でくらくらとした目眩を誘発する催眠的なミニマルをミックスし、序盤からして既にDettmannの淡々としながらも静かに重圧をかけていくようなグルーヴが疾走っている。そして序盤のピークはAnswer Code Requestによる"Transit 0.2"において現れる。空虚で機械的なビートの上に何度も被さっていくシンセのレイヤーが、爆発を伴い疾走感を増していくようで、そこから真っ暗なフロアの中に潜って行くように荒くれたテクノ〜幻惑的なミニマル〜不気味に唸るエレクトロまでミックスされ、甘さの全く無い廃退的な音が続いていく。しかし作品として制作されるMIXCDを聴くと、パーティーで彼のプレイを聴く時以上に理知的というか、単にハードな音楽をミックスしハードな展開を作るDJとは全く異なる抑制の取れたグルーヴ感がDettmannのDJを特徴付けているように思われる。表面的にはハードな曲は既にそれ程使用されていないが、曲の持つムードや鈍い響きにロウなビート感などを感じ取り、それらを的確にミックスしながらフロアの喧騒に内面的なハードさとストーリーを与えていくのだ。そして、本作の魅力はそれだけでなく、ここに収録された多くの曲が自身が主宰するMDRからの未発表曲でもあり、このMIXCDが未来へと繋がっていると言う点でも興味を掻き立てられるだろう。



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| TECHNO11 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Rising Sun - Pause EP (Fauxpas Musik:FAUXPAS 013)
Rising Sun - Pause EP
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ドイツはハンブルグのFauxpas Musikはディープ・ハウスとダブ・ステップを融合させたような面白い音楽に取り組み、Sven WeisemannによるDesolate名義やNick SoleにYoko Duoらの作品をリリースしている。もしそんなレーベルに興味を持たれたならばSteffen LaschinskiことRising Sunも、注目しておいて損はないだろう。Rising SunにとってFauxpas Musikからは2枚目となる本作はディープ・ハウス色が強めだが、踊らせる事だけを目的としないホームリスニングも意識した作風だ。冒頭を飾る"After Party (LA)"からしてボーカルを交えて控え目なエモーションを漂わせているディープ・ハウスだが、そこに熱気や汗の臭いは全くなく俯瞰したような落ち着きがある。続く"Think Twice (Dub)"では爽快なパーカッションと骨太なキックが揺さぶりをかけ、黒人が生み出すファンキーな要素もありつつやはりひんやりと低音を保っている。メランコリーなピアノの旋律が零れ落ちる"Everybody"はしっとりと濡れるように情緒的で、"In My Heart Of Hearts (Version)"は幽玄なストリングスと淡々と呟かれる言葉がまるで映画の一場面に挿入されるサントラを思わせる。どの曲にも控え目に一歩引いたふんわりとしたメランコリーが通底しているが、感情を爆発させると言うよりはじんわりと染み渡らせる滲んだ音の鳴りで、とても慎ましく達観したような侘び寂びさえ感じられる。EPではあるが6曲とそれなりのボリュームがあるので聴き応えは十分なのと、更にはクリアカラーヴァイナルと言う仕様が購買意欲を掻き立てるだろう。



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| HOUSE9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
DJ Rolando - The Aztec Mystic Mix (Underground Resistance:URCD-049)
DJ Rolando - The Aztec Mystic Mix
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元Underground Resistanceの看板DJであったDJ Rolando。URとの確執から狭いデトロイトを脱出し世界へと羽ばたいたロランドは、今ではDelsinやOstgut Tonとも絡むなど自由な活動を行なっております。そして今年のタイコクラブでかなり久しぶりの来日も決定し、今からもう期待せずにはいられません。さてそんな彼がまだURクルーの頃にリリースした本作は、UR周辺の音源のみを使用したURファンにとってはなくてはならないMIXCDです。一言で言うと「Hard Music From A Hard City」、デトロイトテクノやURのコンセプトを体現した骨太な力に満ちた音楽です。ロランドの大傑作"Jaguar"もURのハードで狂気の潜むエレクトロも、火星人のロマンティックな世界が広がるテクノも、黒人音楽の元であるファンクも、URのありとあらゆる音が詰まったレーベルのショーケース的な意味合いも含まれているでしょう。だからと言ってレーベルの音をただ紹介するだけの陳腐なプレイなんて絶対にしない、エネルギッシュで力強さも切なさも表現しながらデトロイトの希望と暗部までをも脳裏に焼き付けるようで、最初から最後まで筋金入りの不屈の闘志が漲っておりました。ハイプでもない、流行でもない、URは昔も今も変わらずにハードに生きる野郎の為の音楽を作り続けている。そんなURの精神性がここに記録されております。

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| TECHNO8 | 13:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Agoria - Balance 016 (EQ Recordings:EQGCD029)
Agoria - Balance 016
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フレンチテクノシーンの奇才・Agoriaが、名物MIXCDシリーズとなっている"Balance"の16作目を担当。今までに2枚のMIXCDをリリースしていてそれらもジャンルレスで強烈なぶっ飛び感覚を感じさせる内容でしたが、この新作もやはり同様にテクノだけではなく様々な音を組み合わせ、フロアとチルアウトルームを行き来する様な変態的なミックスを披露しております。ジャンルの多様性はテクノ、ハウス、ダウンテンポ、ディスコダブ、アンビエント、ミニマル、ニューウェーブなどまでに及び、最早このMIXCDがどんな音に当てはまるのかを説明するのは意味が無い状態にまでなっております。そして単純に曲を繋げるだけではなく曲の一部のサンプルを途中に混ぜ込んだり、同じ曲を2度も使用する事で、1度目で感じた印象が2度目で更に強まる効果を誘発するなど、展開の作り方は確かに印象的。何よりも彼の創る音源からも感じられるギトギトでドラッギーな感覚が終始漂っていて、リズムトラックの強さやノリで引っ張っていく勢いのあるタイプのミックスとは異なる、つまりは精神作用の大きい麻薬的な覚醒感の大波に飲み込まれるミックスは、彼特有のトリッピーな感覚があり独創性が存分に感じられる事でしょう。その分振れ幅や展開の浮き沈みも大きく、また音の余りのどぎつさに体力が無い時は聴くのもしんどいかなと感じる点もあります。インパクトがある分だけ聴く人を選ぶ内容でもありますが、はまる人には心底はまって抜け出せなくなるのではないでしょうか。

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| TECHNO7 | 10:30 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Ken Ishii - KI15-The Box (Music Mine:IDCK-9101-9103)
Ken Ishii - KI15-The Box
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昨年はケンイシイ日本デビュー15周年記念でベスト盤やら未発表曲集(過去レビュー)やらをリリースしておりましたが、本作はその最後を飾るケンイシイが思い入れのある曲を選んだプライベートベスト盤。と言うよりも昔からのケンイシイのファンであれば、昨年のベスト盤よりはむしろケンイシイ名義以外の実験的なトラックも収録された本作にこそ共感を感じるであろうし、ここにこそケンイシイの他の何者でもない唯一無二のオリジナリティーを感じられるはず。特に初期のUTU、RISING SUN、FLARE名義での普通じゃないダンストラックやアンビエントは、まだケンイシイが世界的なアーティストに成長する前だからこそ出来た野心的かつ独創的なトラックメイクがなされており、既存の枠に当てはまらないエクスペリメンタルな音は今ではかなり貴重な存在でしょう。勿論彼がテクノゴッドと呼ばれる様になってからはフロアを意識した強烈な4つ打ちテクノも披露しだし、"Butter Bump Blaster"や"Iceblink (Beat The Strings Attack Mix)"、新曲"The Axe Murderer"などの疾走感のあるテクノトラックは素直に格好良いと思います。しかし昔からのケンイシイファンであれば(自分もそうですが)ここら辺の曲はほぼコンプしてあるだろうので本作に興味は持たないでしょうが、なんと初回限定盤には95年当時のライブが収録されたボーナスディスクが付いてくるのです。もうこの為だけにわざわざ限定盤を買っちゃいましたよ。生憎とライブ盤は30分弱とボリュームは少ないのですが、内容自体は非常に興味深いもので、ケンイシイのあの未来的、そうネオンライトの様な澄んで輝くシンセサウンドを多用したトラックは、ユニークで面白いのにフロアをも意識した内容でケンイシイがパイオニアであった事を証明しております。テクノゴッドの愛称は伊達じゃなかったんですね。そしてケンイシイ自身が全曲に対してコメントしたライナーノーツも書いていて、そちらも感慨深い内容で非常に読み応えがありました。

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| TECHNO7 | 11:00 | comments(0) | trackbacks(1) | |
Luciano - Sci.Fi.Hi.Fi Volume 2 (Soma Quality Recordings:SOMACD46)
Luciano-Sci.Fi.Hi.Fi Volume 2
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クリック〜ミニマルハウスシーンではRicardo Villalobosと双璧を成すと言っても過言ではない存在、そしてVillalobosと同じくチリ人のLucien NicoletことLucianoのMIXCD。それもなんとリリースはグラスゴーの名門テクノレーベル・Somaからとはちょっと驚きです。まあSomaからリリースしたからと言ってテクノっぽくなる訳でもなくて、普段通りのゆる〜くてまったりしてしまう渋いプレイを披露するLucianoなのですが。しかしチリからこう言ったクラブミュージックに根ざした音が出てくるのも意外なんですが、Villalobosと言いLucianoと言いなんでチリ出身のこの二人は無味乾燥と言うか派手さがないんでしょうね。良く言えばスルメの様な酒のつまみだと思いますが、MIXCDの前半は味気無くてこのままだったら寂しいなって思いました。ところがどっこい、中盤以降はドライな音ながらもグルーヴィーにリズムも振れだし、音に厚みも出て来てポヨンポヨンした豊満さが心地良いです。これがチリのドライなファンキー加減とでも言うのかな、派手さはないけれどラテンの血が秘かに隠れている様な冷たさと熱さ。真夏に聴いても部屋の空気をクールに一変させる心地良さと、体の奥底から溢れ出る情熱が共存しています。

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| HOUSE2 | 22:00 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Joey Beltram - Live @ Womb 02 (WOMB Recordings:WOMB-010)
Joey Beltram-Live @ Womb 02
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去年の11月にDeetronと一緒にWOMBでプレイしたJoey Beltramのプレイをそのまま真空パック詰め…と言う訳でもなく、実は後からある程度処理を施したMIXCDがこれ。それはさておきBeltramはNYをハードなテクノで長く生き抜いている素晴らしかったアーティストであり、昔の作品は今でも好きです。と言うのも最近はフィルターディスコ路線なので、ちょっと僕の好みとは違うのですね。フィルターディスコは嫌いじゃないけど、Beltramのはあんま好きじゃないだけ。でこのMIXCDも案の定フィルターディスコ満載で、デンデケベースがメインです。プレイがそんなに上手いとも感じないので、この人の場合とにかく派手な曲で盛り上げる感じだね。歓声を聞く限りでは良い感じで盛り上がっていたのではないでしょうか?しかしイントロはまじ酷い、これは悪夢だ。WOMBを嫌いな理由がここに凝縮されていると言っても過言では無い。いらねーMCをつけるな!TIMELINEの時もそうだったけど、ここは場の雰囲気を読める関係者はいないのかね?これは一体何のパーティーなんだ?とにかく一曲目だけは完璧に閉口です。でBeltramのプレイの話に戻るけど、一番の盛り上がり所はCaliber→Start It Up辺りかなと。やっぱり彼の曲は確かに格好良い。特に今でもKen Ishiiのプレイリストに載るStart It Upは砕岩機の様に、怒濤のパーカッション攻めで破壊力満点のベリーナイスなトラックです。注ですが、CaliberもStart It Upも実は10年以上前の作品です。昔はマジでハードエッジで格好良かったね。で後半はCaveの未発表曲からBen Sims Remixに繋げる辺りのトライバル感も宜しい。でもトライバルはここだけです。全体的に終始アッパーで休む事がないので、とにかく盛り上がりたい人向け。ここまで自分の曲ばかりを回すDJも珍しいけど、彼のエゴは相当な物なのだろう。NYと言う街で今までテクノ一筋で生き抜いてきた彼の、タフなDJのプライドみたいなのが滲み出ている。でも、個人的にはもろにシカゴハウス影響下にあった頃のコンピの「Joey Beltram-Trax Classix」がお薦めです。

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| TECHNO1 | 21:00 | comments(5) | trackbacks(4) | |
Joey Beltram - The Rising Sun (Tresor:Tresor214CD)
Joey Beltram-The Rising Sun
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NYテクノのドン、ジョーイベルトラム。ドンと言うか風貌がヤンキーっぽいと言うか。音の方も当然男っぽいかな?と言うのも昔はシカゴライクでハードなテクノを作ってたんだけど、最近はノリノリのフィルターディスコばかりで昔のファンは戸惑いを見せてたのではないかと思っている。もちろんそれなりに音圧もあるしそこら辺のフィルターディスコよりカッコイイけど、やっぱりベルトラムと言えばハードで荒いテクノが良いんですよ。その気持ちをくみ取ったのか、それともテクノの優良レーベルTresorからの為か、今作はフィルター系を生かしつつもテクノもしっかりやっていると思います。ノリノリ、イケイケな点も見られるけど許容範囲内であるかと思う。しかしもうゴリゴリなテクノに興味ないのかな、ベルトラムは。「Start It Up」みたいなパッカーシブなゴリゴリテクノは最高だったのに。最近の曲はまるで卓球が回す曲みたいではないか。む〜…合掌。

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| TECHNO1 | 23:54 | comments(2) | trackbacks(1) | |