Joris Voorn - Fabric 83 (Fabric Records:fabric165)
Joris Voorn - Fabric 83
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かつてRichiw Hawtinが成し遂げたPCによって各曲を最小のパーツにまで分解し、それらを再度組み立て上げて同時に複数のパーツを層のようにミックスする事で、新たなる曲として創造する手法は今では決して珍しいものではない。またその手法が時としてライブ感を失い、見せびらかすように芸術的な面だけを強調してしまう恐れは多々あり、例えばオランダのテクノ貴公子ことJoris Voornについては典型的にその例に挙げられよう。活動の初期は複雑なミックスをする事なくテクノ・クラシックも多用しながら若いエナジーが溢れがつがつとフロアを盛り上げていたプレイも、近年リリースしたMIXCDでは多数の曲を糸を細かく編み込むような芸術的なミックスを披露する事に専念し、何かクラブの衝動は欠けていたように思われる。そんな折、新たに発表されたFabricシリーズからのMIXCDには、何と20トラックの中に65曲を詰め込むという以前からの手法を踏襲した内容だ。そこにまたもクラブの熱狂は存在しているのか不安になったが、そんな心配はどうやら杞憂だったようだ。本人が「Abletonがターンテーブルなどでは成し得ない、エディットとミックスとリミックスを可能にした」と述べているように、正にPCでしかありえない重層的なミックスをしながら各曲の繋ぎ目さえも消え去ったシームレスなプレイを披露しているが、それはまた目的ではなく手段として活かしながら、ミックスによって新たなる曲を創造しながらフロアのディープな感覚も確実に残す事に成功している。Jorisらしい美しいメロディーや感傷的なムードに甘い陶酔感はたっぷりと発揮されているが、侵食され何時の間にか抜け出せないミニマルな機能美やドラッギーなトランス感は間違いなく真夜中のフロアで体験出来るそれであり、それらが自然と一体化してドラマティックな世界観を構築している。また単にテクノやミニマルだけでなく、プログレッシヴ・ハウスやスピリチュアルな歌モノやエレクトロニカなど、多様なジャンルの音から要素を抽出しながらそれを違和感なく溶け込ませる手法は、ここをピークに迎えているようだ。勿論本作のような余りにも緻密な構成は生のプレイでは再現する事は不可能だろうが、しかしリリースされる作品としては本作は究極的な表現でもあり、それがフロアの空気も伴っているのだから素晴らしい。



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| TECHNO12 | 20:30 | comments(1) | trackbacks(0) | |
Roland Klinkenberg - Construct (Green:GR107LP)
Roland Klinkenberg - Construct
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オランダのテクノ貴公子・Joris Voornが主宰するGreenから、同じくオランダ出身のRoland Klinkenbergによる新作がリリースされている。Klinkenbergについて耳にするのは初めてだったが、調べてみると90年台から25年にも渡って活動しているベテランアーティストであり、膨大な名義を用いて既に100以上のテクノやトランスの作品をリリースしているようだ。しかし、もし彼の過去の音楽性を知らなくとも、例えばJorisの音楽を好きである人ならば、その音楽性を継承する本作を迷う事なく手にすればきっと気にいる筈だ。"Construct #1"からしていきなりJorisの曲かと間違える程の作風で、幻想的な分厚いシンセのサウンドが雲の様に淡い層となりエモーショナルな空気を発し、パーカッシヴで小気味良いリズムでさくさくと爽快に疾走するテクノは、壮大な音響空間もありフロアで快楽的に響くだろう。"Nuages"はJorisのメランコリーな作風が強く、甘く囁くような女性のボーカル・サンプルやプログレッシヴ・ハウス影響下のシンセの音使いがしっとりとした情感を生み出し、温かみさえもある郷愁たっぷりなテック・ハウスだ。"Neversleeps"もメランコリックなメロディーや淡く幻想的な音使い、そしてファンキーなボイス・サンプルをアクセントに用いながら、反復と音の抜き差しで気持ち良く引っ張っていく。"Yani"はよりシャープかつ揺れるリズム感があり、もこもことしたアブストラクトな音像の奥に煌めくような音が時折現れるが、突き抜ける事はなくエネルギーを溜めながらじわじわと引っ張り続ける継続感がある。どれもこれも実に初期Jorisの音楽性を踏襲し、もし近年のJorisに満足出来ていない人にとっては、これこそがそれを補完するに値するだろう。そして本アナログには何とアルバムのダウンロード・コードも付いており、EPの世界観を更に拡大してテクノやテック・ハウスにアンビエントまで、ダンスからリスニングまでを網羅する壮大な叙事詩のようなスケール感の大きさを披露している。それらはかつてのTechnasiaやJoris Voornが展開してきたデトロイト・テクノのエモーショナル性に影響を受けつつ、ヨーロッパの洗練された音で表現した音楽であり、ストーリー性のある見事な出来栄えだ。



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| TECHNO12 | 13:30 | comments(2) | trackbacks(0) | |