Munir - Grand Paradise Hotel (Dopeness Galore:DG 14 002)
Munir - Grand Paradise Hotel
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2018年8月にリリースされた本作にどうして手を出したのかもう覚えてはいないが、Dopeness Galoreというオランダのレーベルに多少なりとも関心があったのは間違いない。近年ではJorge CortesにStump Valley、Earth TraxやSan Proper、Andras Foxまで手広くカタログが充実しているこのレーベルは、その並んでいるアーティストを見れば分かる通りディープ・ハウスからミニマル、ファンクやソウルにニュー・エイジまで音楽性は拡散している。そしてこのMunirなるアーティスト、Midnight Runnersというバンドでも活動するインドネシアの新鋭であるHarry Septiandryによるプロジェクトであり、この名義ではレトロなシンセの響きを持った懐かしさのあるシンセ・ファンクやディスコを根底にしたハウスを手掛けており、その音楽性はこのアルバムにおいて更に豊かな広がりを見せている。『Grand Paradise Hotel』というタイトルが正に作品をイメージしているようにラグジュアリーな感覚もある本作は、風か波の音だろうか自然音と共に可愛らしく繊細なシンセのメロディーがラウンジ風なイメージを喚起させる"Late Checkout At 2 PM"で始まり、続く"Room Service 303"では軽やかなブレイク・ビーツやシンセボイスを用いたちょっと時代感を感じさせるハウスな作風は昔のエモーショナルなデトロイト・ハウス風でもあり、そしてTB-303系の多幸感を強調したアシッドも入ってくると何だかURを思い起こさせる。かと思えば"Balcony View"では生っぽいドラムマシンのブギーなリズムに合わせて南国の島を思わせるようなトロピカルな色彩感覚に気分は高揚し、"Room Service (Extra Bed)"では鋭く疾走感のあるリズムに引っ張られながらも、シンセファンク的な豊潤な音色に快楽的なアシッドも絡みながら快走するダンストラックであったりと、アルバムは変幻自在な様相でありながら清々しい開放感に溢れている。"Bamboo Garden"はそのタイトルが示唆する通り笛の音色を用いてややエキゾチックな感覚を打ち出したオールド・スクールなハウスだが、更にそこに続く"Outdoor Bathtub"では川が流れる音をバックに木琴系の有機的な響きをミニマルに聞かせて想像力を刺激するようなサントラ風のアンビエントへと展開したりと、中盤まででも予想以上に作風はあちらこちらに広がっている。そして情緒的な笛やアタック感の強いキックを用いてアジア圏のエキゾチック感溢れるシンセファンクを披露する"Nature Selection (Wouda Edit)"、透明感のあるシンセと弾けるディスコティックなリズムで躍動感持って弾ける"Hot Swim"、シカゴ・ハウスにも近い乾いて簡素なリズムで勢い付きつつも輝くようなシンセでエモーショナルに展開する"Members Only"など、ダンス・トラック方面も抜かり無く充実している。多様なジャンルが溶け込んだアルバムではあるが決して散漫でもなく、そこに何か共通項があるとしたらバレアリックな感覚であり、異国情緒溢れる長閑なリゾートの旅行気分に浸れるだろう。



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| HOUSE13 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Stump Valley - 森林 (Dopeness Galore:DG 15 001)
Stump Valley - 森林
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イタリアの若手アーティストであるStump Valley、2014年にデビューを果たしNo 'Label'やOff Minor RecordingsにUzuriといったレーベルからジャズやアンビエントの要素を取り込んだディープ・ハウスを手掛けており、特にロウで生っぽい質感が艶めかしい作風に繋がっている。音楽的な注目は集めつつも、しかし二人組のユニットであるという事以外は余り情報がなく、そのミステリアスな存在感が故に余計に興味を抱かせる。新作はオランダのDopeness Galoreからで同レーベルにはAndrax Foxも並んでおり、牧歌的な雰囲気での共通点は良い方向に働くだろう。タイトルは漢字で『森林』と名付けられているが何でも「禅」の精神をコンセプトにしているそうで、それが本作の享楽とは真逆の侘び寂び的な作風に繋がっているのだろう。レトロな響きのあるシンセが可愛くも切ないメロディーを奏でてのんびり闊歩するようなディスコ調なハウスの"Monkey Flutes"は、そのスローなビートもあってゆっくりと肌に染みるような哀愁に胸が締め付けられる。笛の音が牧歌的に用いられニューエイジらしい"Interlude"を挟み、ロウで乾いたキックやパーカッションによって質素な雰囲気を作りつつ朗らかで透明感あるシンセサウンドに微睡む"Tales Of Heike"は前述のAndrax Foxにも通じるものがある。力強いスラップベースとコズミックなシンセによるシンセ・ファック調の"Pagoda Forest"は古き良き時代のディスコの懐かしさを感じさせ、静謐さのある美しいシンセが官能的な"Black Sun (Above Japan)"は比較的ディープ・ハウス寄りの作風だがレトロな味わいもあり、そして最後はインダストリアルとダブの荒廃した音響による"Tokio Robot Rise (Mtrpls Shibuya Mix)"でガラッと不吉な空気へと変容する。基本的にはリラックスした感覚が続いて、真夜中のダンスフロアではなく都会の喧騒から離れた長閑な田園が広がる牧歌的な世界観、それはバレアリック的でもありアンビエント的でもあり心に安らぎをもたらす一枚だ。



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| HOUSE12 | 17:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Stump Valley - Magica Movida EP (No 'Label':RHD-026STUMP2)
Stump Valley - Magica Movida EP

オランダはRush Hour系列のNo 'Label'なるレーベルからStump Valleyの新作がリリースされた。アーティストについては2014年にデビューしたばかりのイタリアのアーティストであるという事以外は殆ど公開されていないが、昨年リリースUzuriからリリースされた「Recorded At Summer Forest Camp」(過去レビュー)ではディープ・ハウス〜シカゴ・ハウスからジャズにアンビエントの要素まで盛り込んだ人肌の温もりを感じさせるハウスで、Stump Valleyがまだ進化/変化中の存在である事を見せつけていた。この新作ではアナログ2枚組のボリュームで、またもミステリアスな存在を誇示するように前作とは異なる作風も披露しながら、そのユニーク性に磨きを掛けている。A面には9分にも及ぶ"Oceans Refuse No River"が収録されているが、初期シカゴ・ハウスのようなロウなビートから始まり抜けのよい爽快なパーカッションへの展開、そしてニューディスコのようなファットなベースと輝かしいシンセが前面に打ち出されたパートと、実に愉快に闊歩するような和やかで懐かしみのあるハウスは開放感のある屋外向きか。B面にはそのドラムパートを強調した"Drum Tool"と共に、エキゾチックなメロディーや不思議な太鼓の音が興奮を煽るトライバルな"Ritmo Maroleandro"が収録されており、こういった要素がアーティストの得体の知れなさを強調する。C面に移っても"Sunshine Hotel"ではトライバルなパーカッションや奇妙なベースが先導するが、途中から清涼感と控え目にバレアリック感のあるシンセが輝かしさを放ち、リラックスしたリゾート地にいるかのような開放感を体感させる。そして何故に本盤に紛れ込んでしまったのか、D面では荒廃したリズムやシンセが荒れ狂いスローモーな流れに感覚が麻痺するフリーキーなロウ・ハウスの"Escape From LA (MTRPLS mix)"が収録されており、その奇抜さが一際目立っている。的を絞らせない音楽性から未だアーティストの全容を知る事は難しいが、その個性は耳を惹き付けるには十分で、注目しておいて損はないアーティストの一人だろう。



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| HOUSE11 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Stump Valley - The Wilderness Sessions presents Stump Valley : Recorded At Summer Forest Camp (Uzuri Recordings:UZURI 021)
Stump Valley - Recorded At Summer Forest Camp
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UK出身のLeratoがロンドンにて主宰するUzuri Recordingsは、デトロイト・テクノやシカゴ・ハウスに影響を受けながらよりディープでエモーショナルな作風を得意とし、早くからウクライナ勢やアイルランドのハウスもリリースする等その音楽センスは確かなモノがある。新作は2014年にRush Hourからデビューを果たしたばかりのStump Valleyによるもので、Uzuriが新たに手掛ける「The Wilderness Sessions 」と言うシリーズの第1弾作品となる。Stump Valleyについては全く詳細は分からないものの、過去の作品はアナログマシン的な粗いビートを刻むロウ・ハウスのような無骨な音楽性で既に強い個性を発していたが、この新シリーズではジャズやアンビエントの要素を取り込んで過去のStump Valleyとは異なるディープ・ハウスを展開している。"Searching (MTRPLS British Hustle Mix)"はジャズのスウィングするグルーヴ感を打ち出しながら、眠気を誘うような気怠いシンセが煙の様に満たされる中から色気のある女性ボーカルによって湿り気を保つが、このねっとり黒い感覚はビートダウン的ジャズ・ハウスとでも呼ぶべきか。アンビエント性が特に強いのは"Caruso"で、穏やかで優しい4つ打ちが刻まれる中で微睡んだ温かいパッドが優雅に舞い、音像がぼかされたピアノが滴り落ちるようにドラマティックなメロディーをなぞるこの曲は、淡い叙情をふんだんに含むサウンドトラックのようなアンビエント・ハウスだ。B面には限りなくビートを緩めながらもシカゴ・ハウスのようなクラップがアクセントとなり、温かみのあるシンセを情緒的に用いて夕暮れ時の時間を演出するディープ・ハウスの"Quazar"、一転してスウィングして躍動するジャズのリズムとベースが主張し、そこにインプロビゼーションのように自由に耽美なピアノのコードを加えていく"Down The Dirt Road"と、こちらもジャズやアンビエントの要素が自然と盛り込まれている。「The Wilderness Sessions」なるシリーズの初の作品にしてその個性と質の高さは十分なものであり、ニューカマーであるStump Valleyの動向と合わせて注目に値する作品だ。



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| HOUSE10 | 07:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |