Takuya Matsumoto - (Some Lost) Time (BM:BM01)
Takuya Matsumoto - (Some Lost) Time

Claude YoungとのDifferent Worldでも活躍し、そしてまたソロではデトロイト・フォロワー的な音楽性でカルトな人気を博すIndigo Aeraからも日本人としては初の作品をリリースするなど、エモーショナルかつエッジの効いたテクノを手掛けるTakasi Makajima。この度自身でBMレーベルを設立して更に自身の求める音楽性の開拓を進める動きがあるが、そのレーベル第一弾には今や日本のみならず海外のレーベルからも引っ張りだこのTakuya Matsumotoが迎えられた。Matsumotoと言えば美麗なシンセやキーボード使いによって熱情を誘い、またテクノやハウスの中にジャズやフュージョンの要素も盛り込んだグルーヴ感があり、DJとしてではなくトラックメーカーとして機能性よりも音楽的な豊かさにおいて才能を光らせるアーティストだ。そんな音楽性があるからこそNakajimaのそれと共鳴するのは当然だったのだろう、今回は過去に制作された未発表作品を発掘してMatsumotoの魅力をより世界へと知らしめる事に繋がっている。"Time"からして哀しげなシンセのフレーズから叙情性が打ち出されており、そこに跳ねるようなシンセや流麗なパッドが多層的に重ねられて切なさに染まっていくような如何にもMatsumotoらしいトラックだ。機械っぽく響くざらついたブロークン・ビーツが淡々としておりメロディーや上モノとは対照的だが、冷えた雰囲気の中から燻るようにソウルが込み上げてくるように感じられる。こちらも鋭いハイハットが響き機械的な4つ打ちがクールな"Wrap"は、大空へと広がるようなフィルターの効いた淡いシンセや光沢のある綺麗な電子音のメロディーによって爽快感と開放感へと繋がっており、デトロイト・テクノ的なエモーショナルを感じさせる清々しいハウスだ。けたたましいキックに陽気なボーカルのループが印象的な"Springsdub"は、繊細に滴る美麗なピアノのメロディーがゴツゴツとしたグルーヴの中から控えめに優美な雰囲気を発しており、簡素で野太いリズム感が躍動しつつも心に訴えかける感情性も含んでいる。そしてMakajimaがリミックスをした"Jump Rope Music (Different World Remix)"、アコーディオンらしきメロディーが悲哀を奏で太いベースラインによって全体が支えられるこの曲は、当然揺れ動く熱き感情性を持ちながら比較的クラブでの機能性も意識した骨太さがリミックスの効果として現れている。それぞれ2011〜2014年頃に制作された曲のようだが、有名になる前のこの頃から既にMatsumotoのエモーショナルな個性が出来上がっていたのは驚きだ。決して古さを感じさせる事なく、タイムレスな作品であるように響いてくる。



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| HOUSE12 | 11:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Takasi Nakajima - Basic Math (Indigo Aera:AERA015)
Takasi Nakajima - Basic Math
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デトロイト・テクノに影響を受けたような叙情的なテクノを得意とし、新作と共に過去の遺産を掘り起こしてはアーカイブ化する作業を行っているのが、オランダにてカルトレーベル的な存在感を放つIndigo Aeraだ。モノクロながらも異彩を放つジャケットの統一感や、作品毎に極少数でエクストラEPを付属させる販売方法など、そのレーベルの運営方針からは強い主張が感じられる。そんなレーベルの新作は邦人アーティストであるTakasi Nakajimaによるもので、ご存知の通り元々Claude Youngと手を組んでDifferent Worldとしてのユニットで活動していたその人だ。残念ながらDifferent World自体は多くの作品を残すには至らなかったが、Applied Rhythmic TechnologyやIndigo Aeraには名作を残し、Ostgut TonのMIXCDにも彼等の曲が使用されるなど確実な手応えはあったと思う。そしてNakajimaがソロになってから何と再度Indigo Aeraに見初められるとは、これを快挙と言わずして何と呼ぶか。"Basic Math One"は7分にも及ぶ無重力の中にいる静謐なアンビエントで、さざ波のような穏やかなパッドが押し寄せる中に空間的な音響も配置して、期待に満ちた門出を祝うような雰囲気だ。"Basic Math Two"では繊細に多数のシンセの奥に幻想的なパッドをうっすらと伸ばして、そして圧力のあるキックやキレのあるハイハットでゴツゴツとしたグルーヴを生み、デトロイト・テクノを丹念に精錬したような叙情的なテクノだ。広大な闇の宇宙に瞬く星の光を浴びるようなドラマティックな世界観があり、その美しさにうっとりと魅了される。"Basic Math Three"はもう完全に古典的なデトロイト・テクノだろう、エモーショナルなシンセのメロディーが軸となりシンプルなハイハットや引き締まった4つ打ちが続き、徐々に大袈裟感もあるシンセで盛り上がっていく叙情的な展開はデトロイト・テクノのそれに他ならない。そしてレーベルを主宰する二人がリミックスを行った"Basicmath One (Jasper Wolff & Maarten Mittendorff Remix)"も素晴らしく、原曲のイメージを塗り替えるように猛々しいキックを加えた肉体感溢れるテクノへと作り変えつつ、繊細ながらもヒプノティックなシンセを散りばめた荘厳な世界観が広がっている。本家のデトロイトからクラシカルな作品がなかなか生まれない現状で、日本にそれを継承して更に前進していく姿勢が感じられるアーティストが存在するのは嬉しい限り。是非ともこの路線で更なる飛躍を期待したい。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Claude Young - Celestial Bodies (Fountain Music:FMCD021)
Claude Young ‎JR - Celestial Bodies
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デトロイト第三世代のアーティストとして知られているClaude Youngは、ここ数年はTakasi NakajimaとのユニットであるDifferent Worldとして日本から世界に向けて音楽を発信していた。残念ながらDifferent Worldは解散してしまい僅かな作品のみしか残す事が出来なかったが、それとは並行して個人で音楽制作も行っていたようで、2013年には8年ぶりとなるアルバム"Celestial Bodies"を完成させた。2000年に入ってからのClaudeはトラックメーカーとしての活動が目立っていたわけではないので動向を知る由もなかったのだが、このアルバムを聴くと彼にとってはダンスミュージックは彼が持つ要素の一つでしかなく、テクノと言う音楽を元により自身の内に眠る世界を表現する事に重点を置いている事が伝わってくる。そしてデトロイトのアーティストと言えば思い付くのが「宇宙」と言う単語だが、このアルバムは正にそんな「宇宙」が想起される音楽性であり、例えば同郷のJeff Millsが追い求めるコンセプチュアルな音楽と共通する点は多い。"Celestial Bodies"、日本語では「天体」と名付けられた本作に含まれる楽曲の多くはダンス・ミュージックでないどころか、リズムさえも入っておらずアンビエントと呼ばれる音楽に近いほどだ。それどころか壮大な世界観と重厚かつ美しい音響にはオーケストラを思い起こさせる場面さえあり、電子楽器を元に重力から解放された宇宙へ、星と星の間を行き交うようなドラマティックなサウンド・スケープが広がっている。まるで遥か闇の彼方から宇宙線が降り注ぐようにドローンな電子音響が周辺には広がっており、その中で孤独な宇宙遊泳を楽しむかのようでもある。意外と言えば意外なまさかのリスニング系のアルバムには驚いたが、想像力を刺激するアンビエントとして心地良い。

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| TECHNO10 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2013/1/5 KMS RECORDS "TRIBUTE TO DETROIT" @ Air
2013年も遂に始まりましたが、その一発目のパーティーはデトロイトテクノのベルヴィル・スリーの一人であるKevin Saundersonが登場。Juan Atkinsがオリジネーターであり、Derrick Mayはイノベーターであり、そして一方Kevin Saundersonはと言うとエレベーター、つまり売り上げ的な面も含めて最もデトロイトテクノを高みに上がらせたアーティストです。コマーシャルな作風ではありつつもテクノ/ハウスの両面でヒット作を量産し、メジャーへ殴り込みを掛けたその功績は疑うべくもありません。そして今回は彼が主宰するKMS Recordsをフィーチャーしたパーティーと言う事で、日本からもデトロイト・テクノ/ハウスに造詣の深いSTEREOCiTIやDifferent World(Claude Young & Takasi Nakajima)らが招かれ、デトロイト好きには堪らないパーティーが開催されました。
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| EVENT REPORT4 | 19:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Claude Young & Takasi Nakajima - Rapture (Applied Rhythmic Technology:ART 11.1)
Claude Young & Takasi Nakajima - Rapture
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2009年から水を得た魚のように活発に運営を行なっているKirk Degiorgio主宰のART。Kirk自身の新作の発表と共に過去の名曲のリイシュー、そして新人の発掘も行うなど順風満帆ですが、その流れを止める事なく盟友であるClaude Young & Takasi Nakajimaの新作が到着。この二人は数年前に意気投合して以来Different World名義で活動しておりましたが、ようやく初の物理メディアでの作品が世に出る事になりました。全体的に線は細めながらもソリッドで弾けるリズムトラックを生かし、デトロイト・テクノ宜しくな透明感のあるリフにファンキーなシンセのメロディーが絡み合い、躍動感のあるテックハウスとなっております。本家デトロイトのエモーショナルな要素をダイエットさせ、上品に昇華させ洗練さが感じられるのが本家との違い。そして裏面には久しぶりにカムバックしたIan O'Brienがリミキサーとして曲を提供しています。力強いバウンス感のあるグルーヴの上にデトロイティッシュなメロディーと煌びやか音色を散りばめ、静謐で抒情的な世界を展開するハウスサウンドは正にIanの趣向が全開。この人のデトロイト・テクノへの敬愛と言うのは業界内でも屈指のもので、コズミックなサウンドはデトロイトの人達に一歩も引けを取らないですね。

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| TECHNO9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Marcel Fengler - Berghain 05 (Ostgut Ton:OSTGUTCD19)
Marcel Fengler - Berghain 05
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現在のドイツテクノシーンの引率するクラブ・BerghainのオフィシャルMIXCDシリーズ"Berghain"、その最新作はそのクラブでもレジデントを務めているMarcel Fenglerが手掛けている。日本に於いてはLabyrinthやFuture Terrorなど大きなパーティー出演しているが、しかしBerghainの他のタレントに比べるとまだその存在感は及ばないであろう。実際に自分も彼の音源は殆ど聴いた事は無い…が、Ostgut Tonからのリリースに加え、Luke Slaterが主宰するMote-Evolverもリリースしている事を考えると、注目しても損は無いだろう。さてBerghainのMIXCDと言えばどれもモノトーンなミニマルやら硬質なテクノが中心だが、本作もその例に漏れずやはり光の射さない暗い深海を航海するようなテクノミックスだ。しかしそれだけではなく、怪しく蠢くテクノから始まり凍てつくエレクトロ、厳しさの立ち込めるインダストリアル、感情的なテックハウス、そして終盤ではバンギンなテクノから深いダブテクノへと様々なテクノの海を航海して行く。色々と詰め込み過ぎたようでありながらしかしBerghainの灰色の世界観や硬い金属的な音質は保っており、なにより意外にもじわじわ染み入る感情的な流れも感じさせ、ハードな印象を残すBerghainに新しい息吹を吹き込むようでもある。決して臨界点を突破する過剰なエナジーは無いけれども、幅の広い選曲を一つの空気に纏め上げ心地よいグルーヴを生み出しており、Berghainの深部を体験出来るMIXCDである。

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| TECHNO9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Orlando Voorn - Sessions From The Deep (cynet:media:Cynet-CD002)
Orlando Voorn-Sessions From The Deep
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発売から時間が経ちましたがオランダのテクノシーンの重鎮・Orlando Voornが、Claude Youngの新レーベル・cynet:mediaからリリースしたMIXCDが素晴らしいので紹介します。さてOrlandoについてどこから話せばいいのか、最近だとUnderground Resistanceに加入してBlak Prezidentz名義でMad Mikeとユニットを組んでいたはずだが、それはいつの間にか解消していた。あと自分がよく知っている事だとFix名義の"Flash"は色々なMIXCDで回されていて、また地味な存在だけれど数々の名義で数々のレーベルから使えるデトロイトテクノのトラックを出しまくってます。今では有名となったデトロイトテクノを追求するDelsinとかRush Hourなどのオランダのレーベルはありますが、Orlando Voornはそれよりももっと前からデトロイトを追求していたようです。このMIXCDではそんな自分で創ったデトロイト系の楽曲を自分でミックスしていて、適度なファンキー加減と適度なエモーションがバランス良く配合されていてストレートなテクノミックスとして格好良いです。デトロイトフォロワーの場合、単にデトロイトテクノのシンセストリングスだけをぱくってたりする事は少なくないんだけど、このMIXCDに関しては土着的で図太いリズムが入ってたり4つ打ち以外のグルーヴもあったり、通り一辺倒にならずに上手く抑揚を付けております。DMCチャンピオンになった事もあるそうで、何の違和感も無く最初から最後までスムースに繋げてしまって、あれれ?とびっくりする位普通に聴けてしまいました。世界観が統一されているから、自然と聴けてしまうと言うのかな。デトロイトテクノと言う言葉を抜きにして、ストレートなテクノらしいテクノとして聴ける内容ですよ。

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| TECHNO5 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |