2021.12.14 Tuesday
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2018年リリースと少々古いものの、今まで紹介していなかったのがもったいない一枚。Max Graefと共にブラック・ミュージックを軸にハウスやヒップ・ホップをクロスオーバーさせたMoney $ex Recordsを運営していたGlenn Astroが、同レーベルからリリース歴もあるDes GriffinことHodiniと手を組んで完成させた本作は、当然の如くブラック・ミュージックを下地にしつつ、それまでのデトロイト・ビートダウン調なスモーキーな作風からより一歩踏み込んでハウスにジャズ、ヒップホップやソウルと今までより更に音楽的な豊かさを得て、身が軽いとも言える小気味良い展開が貫くアルバムとなっている。それは実際にR & S Records(テクノやハウスといったダンス主体)傘下のApollo(発足当初はアンビエント中心で、そこからより幅広くダンスフロアに依存しない自由度の高い音楽性となっている)からのリリースとなった事からも、アルバムがフリーフォーム的な内容となっているのが分かるだろう。二人は一切出会う事なくそれぞれが曲を制作しデータファイルをやり取りしながらアルバム完成に至ったそうだが、それでも相互作用が働きアルバムの多様性に繋がったのではなかろうか。冒頭の"Viktor and the Quasar"はねっとりしたビートこそヒップ・ホップのそれなものの、感情を吐き出すような歌はソウルで、そこにコズミックな効果音も加えながらフューチャリスティックな空気を纏わせていく。"Malaysian Moped"ではざっくりしたヒップ・ボップのリズムやスクラッチを交えて軽快なビートミュージックをあっさりと聞かせ、そこから艶めかしいベースが躍動しつつしなやかなブロークン・ビーツが跳ねる"Funky Dude"で実に鮮やかで色彩感豊かな西ロン経由のフューチャー・ジャズへと至る流れも、ブラック・ミュージック繋がりで自然と展開する。盛り上がった流れからAjnascentをフィーチャーした"Found!"で湿り気を帯びて哀愁溢れるネオソウルへと落ち着いたり、ファンキーなスクラッチを交えつつアフロ・パーカッションを生かしたハウス寄りの"El Gato"で軽快な流れを保ったり、サックスを生かして大人びた官能を込めたダウンテンポの"Blue Cheese"でムーディーな時間を演出したりと、一曲単位でビート感を遷移させて矢継ぎ早なDJのミックスを聞いているような感覚もある。それぞれの曲が2〜3分の構成だからこそ余計に展開の多彩さが強く感じられるのだろうが、本作ではそのビートの幅広さと変化の速さが魅力の一つに思われる。何年か前からクロスオーバー系の復権の兆しがあったものの、本作を聞くとその予兆は今確かなものとなっていると確信させられる。
Check Glenn Astro & Hodini