2018.04.13 Friday
2015年にベルリンのディープ・ハウスを先導するレーベルであるMojuba傘下のa.r.t.lessよりデビューを果たしたJanis & FabianのコンビによるTrap10は、生粋のライブアクトかつ制作者だ。年に一枚程度のゆっくりとしたペースではあるが新作をリリースして近年のa.r.t.lessを代表するアーティストにまでなっているが、レーベル自体がデトロイト・テクノの音楽性を継承している事と関連し、彼等も90年代のデトロイト・テクノの叙情性を吸収しつつ更にハードな側面も含む音楽性によって、現代のシーンにも適合したテクノを開拓している。本作は前述のa.r.t.lessから彼等にとって3枚目のEPとなるが、ここでもフロアを激しく揺らす鋭く攻撃的なテクノ性は全く変わっていない。それは特にA面に収録された"VLV"で顕著で、図太く冷気を帯びたハードな4つ打ちのキックや荒々しいハイハットが押し迫る激しいビート感の中に幻想的なパッドやエモーショナルなリフを執拗にループさせて、単純な流れながらもスピード感ある勢いと美しい叙情性で押し切るピークタイム向けの仕様になっている。リズムやシンセの音からは90年代のオールド・スクールながらもハイエナジーなレイヴ感も漂っており、懐かしく感じつつもデトロイトに影響を受けた新世代としての視線もあるだろう。"ABV"はよりレイヴ色が強いと言うか、強烈で荒々しく揺れるブレイク・ビーツはダブ・ステップのようにも思われるが、毒々しく禍々しいベースラインが点々と刻むのとは対照的に上モノは流麗で叙情感さえもあるメロディーを展開し、自然と体をグラグラと揺さぶりつつ深く精神にも作用するエモーショナルなテクノだ。"DST"は反復する鈍い響きを持ち催眠的なアシッド・ベースが特徴的な4つ打ちテクノで、その上をリヴァーブの効いたシンセが疾走り切れのあるハイハットが疾走感を生みながら持続感を含む機能的なツール色が強い。どの曲もひんやりとした質感や響きを持つアンダーグラウンドなテクノではあるが、一方で淡白にはならずに耳を引き付ける魅力的な旋律やリフで引っ張っていく音楽性はデトロイト的で、十分にフロアで心も体も震わすダンス・トラックの制作者として期待は高まるばかりだ。
Check Trap10