Trap10 - Three EP (a.r.t.less:A.R.T.LESS 2182)
Trap10 - Three EP

2015年にベルリンのディープ・ハウスを先導するレーベルであるMojuba傘下のa.r.t.lessよりデビューを果たしたJanis & FabianのコンビによるTrap10は、生粋のライブアクトかつ制作者だ。年に一枚程度のゆっくりとしたペースではあるが新作をリリースして近年のa.r.t.lessを代表するアーティストにまでなっているが、レーベル自体がデトロイト・テクノの音楽性を継承している事と関連し、彼等も90年代のデトロイト・テクノの叙情性を吸収しつつ更にハードな側面も含む音楽性によって、現代のシーンにも適合したテクノを開拓している。本作は前述のa.r.t.lessから彼等にとって3枚目のEPとなるが、ここでもフロアを激しく揺らす鋭く攻撃的なテクノ性は全く変わっていない。それは特にA面に収録された"VLV"で顕著で、図太く冷気を帯びたハードな4つ打ちのキックや荒々しいハイハットが押し迫る激しいビート感の中に幻想的なパッドやエモーショナルなリフを執拗にループさせて、単純な流れながらもスピード感ある勢いと美しい叙情性で押し切るピークタイム向けの仕様になっている。リズムやシンセの音からは90年代のオールド・スクールながらもハイエナジーなレイヴ感も漂っており、懐かしく感じつつもデトロイトに影響を受けた新世代としての視線もあるだろう。"ABV"はよりレイヴ色が強いと言うか、強烈で荒々しく揺れるブレイク・ビーツはダブ・ステップのようにも思われるが、毒々しく禍々しいベースラインが点々と刻むのとは対照的に上モノは流麗で叙情感さえもあるメロディーを展開し、自然と体をグラグラと揺さぶりつつ深く精神にも作用するエモーショナルなテクノだ。"DST"は反復する鈍い響きを持ち催眠的なアシッド・ベースが特徴的な4つ打ちテクノで、その上をリヴァーブの効いたシンセが疾走り切れのあるハイハットが疾走感を生みながら持続感を含む機能的なツール色が強い。どの曲もひんやりとした質感や響きを持つアンダーグラウンドなテクノではあるが、一方で淡白にはならずに耳を引き付ける魅力的な旋律やリフで引っ張っていく音楽性はデトロイト的で、十分にフロアで心も体も震わすダンス・トラックの制作者として期待は高まるばかりだ。



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| TECHNO13 | 12:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Trap10 - Interregnum EP (a.r.t.less:a.r.t.less 2184)
Trap10 - Interregnum EP

ベルリンのディープ・ハウスの深層部を突き進むMojuba Recordsが、よりデトロイト・テクノの方向性を突き進めるべく立ち上げていたレーベルがa.r.t.lessであり、察しの良い方ならばお気付きかと思うがKirk DegiorgioのART(Applied Rhythmic Technology)にもレスペクトを表している事から、その音楽性は推して知るべしだろう。レーベルの新作はライブユニットであるJanis & Fabianから成るTrap10による2枚目のEPで、前作も同様にa.r.t.lessからだった事を鑑みるとレーベルがプッシュしているユニットなのだろう。一年ぶりの新作は前作負けず劣らずにデトロイトからの影響、またはデトロイトへの敬意が感じられ、特に"Dimi"はピークタイム仕様の荒々しく骨太な勢いがありつつも幽玄な旋律による世界観は正しくデトロイト・テクノだ。曲の開始には硬質でロウなキックや鋭利なハイハットがエッジの効いた流れを生むも、少しずつ現れる情感の強いシンセが執拗に繰り返される事でエモーショナル性を伴い、そして不気味に蠢くアシッド・ベースも加わる事で真夜中の狂騒の中で映える仕様になっているのだ。裏面の"Tale Of Stu"も鈍く錆びたようなキックが膨れ上がりビートを激しく叩きだすが、うっすらと上辺に伸びる幻想的なパッドの使い方はデトロイトのそれらしく、更に揺れるように反復するシンセが加わる事でメロディアスな構成が完成する。”FRQ62”はミステリアスにも聞こえるアルペジオ風なメロディーが特徴でじわじわと侵食するような効果があるが、野太く粗いキックが非4つ打ちの厳ついグルーヴが激しく揺さぶりを掛けて、縦へ横へと肉体を鼓動させるこれもピークタイムに映えるテクノだろう。今風と言った雰囲気は無いどころか流行に惑わされないデトロイト・テクノへの妄信とも思える作風は、しかしそのロウな音質や心に訴えかける旋律による軸のぶれなさがあり、自分達の音楽性を信じているが故の強さがある。間違いなくこれはテクノだと声を大にして言いたい。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Trap10 - Westside EP (a.r.t.less:A.R.T.LESS 2187)
Trap10 - Westside EP

ベルリンにてオールド・スクールなハウスの復権も担うディープ・ハウスのMojubaに対し、その傘下のA.r.t.lessは最近はテクノへと傾倒しており、そのレーベル間の対比を強めながら両レーベルはベルリン最深部をひらすら突き進んでいる。そんなA.r.t.lessの新作はドイツはミュンヘンからJanis & Fabianによるユニット・Trap10のデビュー作だ。シカゴ・ハウスへの理解もあるMojubaに対しA.r.t.lessはデトロイト・テクノからの影響を滲ませるが、本作もやはり古き良き時代のデトロイト・テクノをルーツに持ちつつハードな音質で攻めの姿勢を持ったアグレッシヴなテクノだ。何といってもA面の"Radisc"が素晴らしく、切れ味のあるハイハットやみぞおちに重圧を加えるような重いキックによるハードグルーヴに、デトロイト・テクノ的な反復するドラマティックなメロディーが叙情性を加えるこの曲は、パーティーに於ける真夜中のピークタイムではっきりと印象に残るような鮮烈さがある。裏面の"N19"はファットなキックが入るもやや隙間が出来てリラックスしたビートを刻み、そこによりエモーショナルで望郷の念に駆り立てるような切ないメロディー使いがやはりデトロイト・テクノからの影響が現れている。擦り潰したような鈍い重低音がロウな質感を生むみながら、透明感かつ浮遊感のあるハイテックな上モノに酔いしれる"Wb"も、フロアでの機能性を含みながらも情感がたっぷりと込められたテクノだ。どれもが決して新鮮味や流行的なモノは全く感じられないが、A.r.t.lessがリリースするテクノだけあり質そのものの高さは疑うべくもなく、また流行り廃りとは無縁のクラシカルな作風に安心する。



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| TECHNO11 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |