2020.06.28 Sunday
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そのレーベル名が示す通り奇妙なアシッド・サウンドを試験するAcid Testの尖った個性は言うまでもないが、そのサブレーベルであるAvenue 66にもLowtecやTruxにJoey Anderson、そして最近ではJohn FruscianteのエレクトロニックなプロジェクトであるTrickfingerもカタログに名を連ねてきており、レフトフィールドな音楽性は親レーベルに全く引けを取っていない。そのような事もあり少なからずレーベルの作品には注目していたので、2019年10月にリリースされたRelaxerによる本アルバムにも手を出してみた次第である。この名義では2016年頃からリリースがあったので新人かと思いきや、NYで活動をするDaniel Martin-McCormickは過去にはハードコア・ノイズ・バンドのBlack Eyesに所属し、またはItal名義ではPlanet Muや100% Silkからもリリース歴のあるベテランのようだ。バンドを解散しエレクトロニックな路線に転換してからも完全にダンスフロア向けというよりはバンドらしい刺激的でパンキッシュな性質も残ってはいたものの、本作ではそんな残像をも掻き消すかのようにアナログやローファイといった要素が目立つディープなテクノへと染まりきり、Relaxerとしても新たなフェーズに入った事を告げている。歪な金属音がギクシャクとしたリズムを刻むような始まり方の"Serpent In The Garden"は、次第に4つ打ちへと移行し酩酊を誘うトランシーな上モノによって快楽の螺旋階段を上り詰めるようで、いきなりトリップ感のある出だしに魅了される。しかしダンスに振り切れる事はなく、続く"Fluorescence"はドローン的な重厚感あるシンセと快楽的なメロディーが液体の如くゆっくりと溶け合うアンビエント基調で、内なる深層へと潜っていくような瞑想を演出する。"Cold Green"はこのレーベルらしいアシッド×ローファイなハウスで、緩やかにうねる不安なアシッドが魔術のように精神へと作用し、終盤に向けて徐々に不気味さを増しながらずぶずぶと底無し沼へと誘う。"Born From The Beyond"のようにリズミカルで早いテンポの曲にしても、霞んだボーカルサンプルと不気味にうねる分厚いシンセがミステリアスな雰囲気を作り出していて、どの曲も開放的というよりは内省的で陽の当たらない深い地下世界のようだ。それ以降も、どんよりと暗雲立ち込める暗さながらも神秘的で美しいシンセが充満するディープなアンビエントの"Steeplechase"、粗雑なキックやドラムが突き刺さるような刺激的なグルーヴとなりエレクトロ感を生む"Breaking The Waves"と、リスニングとダンスを往来しながらも真夜中の夢の中を彷徨うディープな世界観で統一されており、Relaxerというアーティストの音楽性が新たに確立されているように思われる。
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