Kuniyuki & Friends A Mix Out Session - Mixed Out (Soundofspeed:SOSR023)
Kuniyuki & Friends A Mix Out Session
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ここ数年、DJ NatureやVakulaにJimpsterなど著名なアーティストと積極的にコラボレーションを行い、プレイヤー/アーティストとしての手腕を発揮しているKuniyuki Takahashi。一連のシリーズとして続いたそのラストはロンドンの気鋭アーティストであるK15とのコレボレーションだが、K15と言えばWild Oatsからの作品を始めとしてオーガニックで情熱的な響きを打ち出してハウスのみならずブロークン・ビーツやダウンテンポやジャジーなものまで巧みに披露するアーティストで、そういった素養があるからこそKuniyukiとの共同作業は当然の如く相乗効果として働くに違いない。ここでは二人で制作した楽曲をそれぞれが解釈したバージョンで収録されているが、"Moving Minds (Kuniyuki Version)"はKuniyukiらしい人情味溢れる作風なのは当然としてフュージョンらしいの光沢のシンセが躍動し優美なエレピでしんみりムードを強めつつ、軽快ですっきりしたジャジーなマシン・ビート感で肉体を程良く揺らす。ジャズのスウィング感と呼んでも全く違和感はなく、Kuniyukiらしい熱き感情を誘発する作風が発揮されている。一方"Moving Minds (K15 Version)"も艶と温かみのあるシンセのメロディーで引っ張る点は変わらないが、全体的に慎ましくスピリチュアル性を増したモダン・フュージョンで、内面へと深く潜っていくような繊細なディープ性が際立っている。そして本作には過去にリリースされたJimpsterとの共作をTerre ThaemlitzことDJ Sprinklesがリミックスした"Kalima's Dance (Sprinkles' Deeperama)"が収録されているが、ある意味ではこれもリミックスという作業を通してのコラボレーションと解釈するのもありだろう。ジャズやファンクの要素に華麗な雰囲気もあった原曲から一転、DJ Sprinklesらしく無駄な脂を落としたつつ乾いたパーカッションも加えて枯れた侘び寂びの世界観を演出したディープ・ハウスは、全く派手な瞬間はないものの深い残響を活かしたアンビエント性によってしみじみと心に染み入る彼の作風へと生まれ変わっている。どれもアーティストの誠実さが伝わるような素晴らしい作品だが、特にDJ Sprinklesの枯れた中に存在する退廃的な美しさは圧巻だ。



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| HOUSE13 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Vakula - A (Bandura:Bandura005)
Vakula - A

ウクライナの才人・Vakula、変名も用いてFirecrackerやLelekaにDekmantelなど多数のレーベルからディープ・ハウスにビートダウンやミニマル・テクノにヒップ・ホップ、果てはニューエイジからサイケデリック・ロックまでリリースし、その音楽的な多彩性は現在のダンス・ミュージックの中でも随一だろう。クラブで効果的なツール性の高い楽曲のみならず、アルバムとしてのリスニング仕様な豊かな音楽性での表現力にも長けており、DJとしてよりはやはり制作面での評価が特に高い。そんなVakulaの新展開が自身で運営するBanduraからは3年ぶりとなる本作『A』で、実はこの後には『B』も予定されている事から、アルファベット順に作品がリリースされるのだろう。音楽的にもまた変化を促しており、端的に言ってしまえばBasic CnannelやRhythm & Soundを継承する深い音響系のミニマル・ダブを展開している。この手の音楽は既に作風が確立されほぼ完成形を成しているが故にVakulaが手を出そうとも革新性というものは無いのだろうが、だからこそ中途半端な作品を出す事いもいかない訳で、どんな音楽でも自分のモノとしてしまうVakulaの力量を以ってして水準の高いミニマル・ダブを鳴らしている。A面には14分にも及ぶ"Aberration"を収録しており、ゆらめき引いては寄せる波の様な残響が官能的な響きをなしており、間引かれたダブのリズムの隙間をしっとりと埋めていくBasic Channelスタイルのアブストラクトなになっている。裏面には3曲収録されているが、より湿ったダブのリズムが強調されたRhythm & Soundスタイルのミニマル・ダブと呼べる"Apperception"、"Quadrant Dub"を継承するもやもやしたリヴァーブに不鮮明なハウスの4つ打ちを組み合わせた”Agglomeration”、電子的なキレのあるリズムと呻き声のような低音によるオリジナリティーあるダブ・テクノな"Assertiveness"と、これまたどれも異なるタイプのダブを披露しておりVakulaのアーティストとしての底の深さはまだまだ計り知れない。



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| TECHNO12 | 16:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2016/1/9 RESPONSE NEW YEAR'S PARTY @ Warp
2015年の初めにRESPONSEがサポートについて開催されたgroundrhythmで披露された井上薫×DJ Hikaru×DJ Yogurtのゴールデン・トライアングルから一年、残念ながらAirのクローズと共にこの組み合わせももはや体験出来ないかと思っていた。しかしそれから一年、RESPONSEが中心となり場所をWarpに移して新年会と称して昨年と同様にゴールデン・トライアングルを復活させるとは、期待以外のなにものでもない。そして今回はメイン会場はWarp、そしてサブ会場にCheekyと2店舗を解放しての開催だ。
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| EVENT REPORT6 | 16:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
BEST OF 2015
今年も一年間当ブログを御覧頂いた読者の皆様、どうもありがとうございました。何やかんやで今年も大小51ものパーティーへと足を運び、また価格高騰にも拘わらず素晴らしいヴァイナルに出会うとついつい購入し、大量のCDを購入しながらも未開封のまま放置したりと、例年と変わらず素敵な音楽に囲まれた続けた一年でした。その一方で仕事やプライベートにも時間が取られる事が多くなった影響もあって、大量にリリースされる音源に追いつかず、ブログの更新頻度も例年に比べるとやや落ち気味になったのも事実。でも音楽は好きなので細々とでも素晴らしい作品を、来年以降も紹介し続けられたならと思います。歳をとったせいかは分かりませんが、ベストに選んでいる作品は何だかリスニング寄りの物が増えてきている印象ですが、部屋の中で聴く音楽とクラブで聴く音楽は別物であり、そういった点も何となく反映されているかもしれませんが、少しでも皆様が素敵な音楽に出会えるきっかけになれば嬉しいです。それでは、来年も良いお年を!
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| BEST | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Crue-L Cafe II (Crue-l Records:KYTHMAK 155DA)
Crue-L Cafe II
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事情は分からないが、2010年代に入ってから活発に活動を行っていたCrue-l Recordsが、ここ2年は全く新作をリリースする事なく沈黙を保っている。レーベルの公式HPにはもうずっと変わらずに、新作リリースのスケジュールが記載があるにもかかわらずだ。そんな空白を埋めるように丁度リリースされたのが、『Crue-L Cafe』(過去レビュー)以来3年ぶりとなる続編的な名義のレーベルコンピレーションである本作だ。Crue-lはご存知の通り瀧見憲司が主宰するインディー・レーベルで、初期の東京の空気を目一杯吸い込んだネオアコ〜渋谷系と呼ばれた時代から近年のバレアリックなダンス・ミュージックとして定着するまでの長い時間をかけて、混沌としたジャンルの坩堝の中からエレガントな要素を掘り起こす審美眼によって素晴らしい音楽をリリースし続けていた。その音楽性は幅広く、そしてレーベル・カタログに名を連ねるアーティストもある意味では無秩序であり、それは本作に曲を提供したアーティストの幅の広さからも分かるだろう。ポップ・ソングのプロデューサーを務める神田朋樹、テクノ・シーンで頭角を現すCrystal、Crue-lに見出されたチルウェイヴ系のThe Beauty、100% SILKでも活躍するモダン・ハウスのMagic Touch、更にはリミキサーにウクライナを代表するアーティストでもあるVakulaやデトロイトからTheo Parrishまで、そこに名前だけ見れば統一感を探しだすのは難しい。しかし実際に作品を聴いてみれば確かにCrue-lらしい自堕落なダンス・ミュージックの快楽性から生まれる多幸感と、そしてトリップ感やサイケデリック感に惑わされながらも決して下品にはならずに上質なエレガンスがあり、Crue-lというフィルターを通す事によりそれらがレーベルとしての共通項になっているように思われる。さて、本作は収録曲全てが初CD化、または未発表曲(本来は既に発売済みだったはずのEP等の曲)から構成されており、レーベルに詳しくなくても手に取る価値のある内容だ。何といっても注目なのは店舗では販売されなかった200枚限定の"(You are) More Than Paradise (Theo Parrish Translation Long Version 2)"だろうか、17分にも及ぶ華麗でファンキーなビートダウン・ハウスへと生まれ変わった本作は、その余りにも強烈な個性が故にDJとして使うのは難しいだろうが曲自体は文句無しの素晴らしさだ。原曲よりも更に無骨さとトリップ感を増して白色光に包まれる多幸感の真っ只中にある"Heavenly Overtone (Vakula Remix)"、ミニマルな展開へとエディットしながら後半にサイケ感が爆発するダウンテンポの”Everybody Wants To Rule The World (Hikaru& Miyashita's Naha City Free Feel 2 Edit)”など、こういった全く方向性の異なる作風があるのも面白い。そう、Crue-lにはジャンルの壁など無く時代のダンス・ミュージックの流行に左右されずに、彼等自身が信じる音楽性を一心に追い求めているレーベルなのだろう。

Tracklistは続きで。
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| HOUSE11 | 11:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2015/11/2 GRASSROOTS 18th Anniversary Day III 〜月光〜 @ Grassroots
高円寺を代表するクラブ…もとい音楽酒場も今年で18年目。今では有名となったDJもかつてはここGrassrootsで、小箱らしく自由なプレイでDJとしての経験を積み才能を磨いたという者も少なくはなく、また時にはこの小ささには似つかわしくないDJもひっそりとプレイする夜もあったりと、ジャンルに依らずに音楽ファンからは人気を博しているローカルな酒場だ。そんな18周年の記念として三日間に渡りアニバーサリー・パーティーが開催されたが、当方はその最終日に参加。Grassrootsでの月曜の夜…といえば、ご存知DJ Hikaruによって以前はレギュラー開催されていた「月光」があり、今回はその名を冠しての開催だ。出演はDJ HikaruにYA△MA、DJ KuriにDJ Yazi、そしてMasa aka Conomarkとこの場所にお馴染みの面子が集結した。
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| EVENT REPORT6 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Vakula - A Voyage To Arcturus (Leleka:LELEKA006CD)
Vakula - A Voyage To Arcturus

ロシアンハウス隆盛の中でその先陣を切っているのがウクライナのMikhaylo VitykことVakulaだ。変名も用いながら多作な活動を行う彼の音楽性はもはやディープ・ハウスだけに括る事は出来ず、アンビエントやジャズにコズミックなどの要素も盛り込みながら、アーティストとしての表現方法に磨きをかけている。その多様性はアルバムに於いて最も顕著だが、一年半ぶりのアルバムとなる本作でも同様にVakulaの隠れていた一面が新たに出現している。アルバムタイトルはDavid Lindsayによって1920年に出版されたSF小説「A Voyage to Arcturus」から拝借しており、曲名も同書の各章をそのまま引用している事から、推測するに同書に対してのサウンドトラック的な位置付けなのだろう。ここではかつてFirecrackerやDekmantelからリリースしていたようなダンストラックはほぼ鳴りを潜め、その代わりに70年代のジャーマン・プログレかクラウト・ロックか、そこにフュージョンの要素も加えながら現在の電子音楽に再構築したような、型に嵌まらないシンセサイザーの自由な響きが存在している。その意外性は落胆に結び付くかと言うとそうでもなく、もしテクノやハウスなどの電子音学を愛する者にとっては、ジャーマン・プログレの系譜はきっと興味をそそる作品であると断言する。曲によっては全くビートが入らずにトリップ感のあるシンセがうねり、生のギターやベースがバンドらしい一体感を生み、爽やかなパーカッションが肉体的なグルーヴを生む。酩酊感のあるジャーマン・プログレどころか、サイケやファンクやジャズなど様々なスタイルにも挑戦しており、CDでは2枚組の大作の中で早々と変化していくアルバムは正に音楽の旅なのだろう。もしVakulaというアーティスト名が冠されていなければどれ程の人がVakulaの作品だと気付くだろうか、それ程までにこのアルバムはかつてのディープ・ハウスの影を残していない。その変化故に戸惑う人もいるだろうが、サウンドトラック的なリスニング要素の強いこのアルバムは、Vakulaの音楽性の豊かさを示す作品として評価を高めるに違いない。全16曲の素晴らしきコズミックジャーニーが待っている。



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| ETC4 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2014/1/11 groundrhythm @ Air
Airにて最長不当を誇るレギュラーパーティー・groundrhythm。偶数月開催で11年継続していたこのパーティーは、2014年に入ってからは奇数月開催へと変更。井上薫をレジデントに据えて海外からのゲストを迎える事なく日本人を中心としたパーティーとして確立しているが、今回は沖縄から全国各地のアンダーグラウンドシーンで活躍しているDJ Hikaru、そして2月には拠点をドイツへと移す事が決定しているSTEREOCiTIを迎えて、12年目の門出を祝う事となった。
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| EVENT REPORT4 | 19:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2013/12/21 PRIMITIVE INC. & UNIT presents KOMPAKT.JAPAN 05 20th Anniversary edition KAITO "Until the End of Time" Release Party @ Unit
今年はドイツはケルンのテクノレーベル・Kompaktの20周年。年内にあるのかないのか微妙だったものの、紆余曲折の末ようやくレーベル20周年記念とKaitoのアルバムリリース記念を合わせたKompakt Japanの開催が決まった。今までにもKompaktの人気アーティストを招待し開催を続けていたが、今回はデンマークの新星・Taragana Pyjaramaを招待。弱冠22歳ながらも一枚のEPがKompaktに認められ、2012年にはKompaktよりデビューアルバムもリリースしている。そして日本のKompaktと言えばHiroshi WatanabeことKaito。今回は何と90分にも及ぶライブを行うと言う事で、いつも以上に特別にKaitoがフォーカスされるパーティーとなっていた。
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| EVENT REPORT4 | 17:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Vakula - You've Never Been To Konotop (Selected Works 2009-2012) (Firecracker Recordings:FIREC010CD)
Vakula - You've Never Been To Konotop (Selected Works 2009-2012)
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何時からだろう、ロシアン・ディープ・ハウスなる音楽が注目を集め始めたのはもう忘れてしまったが、兎に角その系統の音楽を押し上げる一角に居たのがVakulaである事に異論は無い。幾つかのアンダーグラウンドなレーベルからの初期ハウストラックはデビューから間を開けずに注目され、その後はLelekaにShevchenkoと自身でレーベルも主宰しながら膨大な作品を世に送り出してきた。一年前にはVedomir名義でアルバム(過去レビュー)もリリースしたが、Vakula名義でのアルバムは本作が初である。そしてリリース元はVakulaと蜜月の関係にあるFirecrackerとなれば、内容に関しては保証されたも同然だ。しかし大量にEPをリリースする傍らでその他にも制作は行っていたのか、本作には2009〜2012年の間に制作された曲が収録されている。Vedomirのアルバムでも実験を行うように多様な音楽の要素を詰め込んでいたが、Vakula名義なので当然と言うべきか本作には彼がEPで提示していたように、ビートダウンの低頭なグルーヴ感とアトモスフェリックなアンビエンス、そして自由なジャズセッションのような脈動を含んでいる。音楽性自体に斬新性があるわけではないのだが、ウクライナのアーティストに共通する穏やかなアンビエント感覚は温かく、その上でDJツールとして囚われないフリーキーなメロディー展開やコズミックな音使いが一つとなって、Vakulaの音楽を個性あるものとしている。わざと洗練されていない剥き出し感を残したような音質も臨場感ある生々しさへと繋がり、それが余計に温かみのある人間臭いサウンドとなっているのだろう。インターバルも含めて大量の曲が収録された事で、サウンド・トラックを聴いているような壮大な世界観も生まれ、これまでのVakulaの集大成と言っても過言ではない作品だ。アルバムを完成させてしまった事で、ともするとここで一旦Vakulaの評価はピークアウトする予感もするが、現時点での集大成としてアーティスト性をあまねく知らしめるアルバムだ。



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| HOUSE9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Anton Zap - Water (Apollo Records:AMB1311LP)
Anton Zap - Water
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ここ1~2年だろうか、VakulaをはじめAlex Danilovらロシアン・ディープハウス勢の台頭が著しいが、その代表格とも言えるのがモスクワ発のAnton Zapだろう。USのUnderground Quality、UKのQuintessentialsやUzuriなどディープ・ハウスでは確かな質を誇るレーベルに曲を提供し、そして自身が主宰するEthereal Soundもディープ・ハウスを中心に才能ある若手にフォーカスしながら成長を遂げている。本作は2007年頃にトラックメーカーとしてデビューしてからようやく初のアルバムになるが、過去の作品と新曲を組み合わせながらZapの音楽性を十二分に伝える作品となっている。何と言っても素晴らしいのが"Water"だろう。アンビエントやディープ・ハウスの要素をダウンテンポに落とし込んだ余りにも包容力が豊かな曲で、それは何処までも平たく静かな水面が広がる大海原を喚起させる。ふんわりと柔らかなパッドが引いては寄せて、実際に海の音をサンプリングしたような持続音も入り、足元がすっと浮かび上がる浮遊感が終始継続する。よりハウスのグルーヴ感にこだわった"Road Trip Song"でも空間の広さを生み出すダビーな音響を用いながら、なだらかな地平が遠くまで続くような柔和な流れを持続させ、決して大きな緩急を付ける事なくただただゆったりとしたサウンドスケープを描き出している。また発信音のような淡々とした反復する音とアンビエンスなパッドをぼんやりと浮かび上がらせた"Miles And More"は、抑揚を抑えてミニマル性を強調したアンビエント的トラックの快楽性があり、一方"Funky Man"ではZapらしい優美なピアノの旋律と共に鋭角的なブレイク・ビーツが強調され、タイトル通りにファンキーなリズムに自然と腰が揺れてしまう。少々残念なのはアルバムの半分が既発曲なので新鮮味は少ないのだが、それを差し引いても本作での繊細なアンビエンスと慎ましい深遠なディープ・ハウスの融解具合は素晴らしく、リスニングとしても安息効果の高い音楽として充実している。

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| HOUSE9 | 07:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Vedomir - Musical Suprematism / Dreams (Marcel Dettmann Remixes) (Dekmantel:DKMNTL012)
Vedomir - Musical Suprematism / Dreams (Marcel Dettmann Remixes)
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最近ディープ・ハウス方面のアーティストがハードなテクノへと接近する事象があるが、このアナログ盤もその類に属している。Vedomirと言えばビートダウン系のハウスでは一躍注目を集めているVakulaの変名なのだが、なんと彼の作品をドイツはBerghainを代表するMarcel Dettmannがリミックスしたのだから、驚きを隠す事は出来ないだろう。両面に1曲ずつの収録だがどちらもDettmannがリミックスを施しており、DJ御用達と言った1枚と言えるだろう。オリジナルは生っぽくコズミックなビートダウン系だった"Musical Suprematism"は、より電子音のクリアな音像と躍動感のあるベースラインを強調し、ビリビリと振動するようなSEや不安を煽るマッドなボイスサンプルを追加し、闇の中を突き進むダークなミニマル・テクノへと塗り替えている。そして元々は安っぽく乾いたシカゴ・ハウスだった"Dreams"も、やはりベルリンらしく硬い金属音へと変化したインダストリアルな雰囲気さえあるテクノへと変貌しているが、決して無味乾燥としているわけでもなく狂騒に満たされたフロアを喚起させる汗臭さもあり、強靭な音質と強迫的に迫るグルーヴ感が素晴らしい。どちらも基本的にはフロアを意識した作風なので部屋で聴くと地味な印象は拭えないが、これが現場でミックスされる事により凶暴なアクセントを加える事になるに違いない。

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| TECHNO10 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2013/7/6 Freedom Sunset feat.Kaoru Inoue @ Jicoo
Freedom Sunset @ Jicoo1

夏の名物パーティー・Freedom Sunset(現在はSunset Lounge)。湘南は江ノ島の展望台で開催されているこの野外パーティーは、国内のアーティストだけの開催にもかかわらず素晴らしい音楽と共に感動的な風景に囲まれた環境もあって、老若男女問わずに人気を博している。そして更なる飛躍を求めてFreedom SunsetはJicooと言う船上パーティーへと辿り着いた。Jicooはご存知である方も多いだろうが松本零士がデザインを手掛けた未来的な船で、そんな中でのパーティーとなれば普段とは違う体験を出来る事は間違いない。
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| EVENT REPORT4 | 17:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Crystal - Vanish Into Light (Crue-L Records:KYTHMAK148)
Crystal - Vanish Into Light

2011年末にリリースされた"Heavenly Overtone"は国内のパーティーで燦然と輝くアンセムとなり、アルバムへの期待も一気に加速したCrystal。そこから一年を経て前作の多幸感を更に上回る強力な一枚をリリース、それこそが"Vanish Into Light"だ。鐘の音が鳴り響くとグルーヴは加速し始め、眩いばかりのユーフォリアを奏でるシンセサウンドが多段に絡みながら、徐々にタイトル通り白色光に包まれながら光の中へと疾走し消えて行く圧倒的なエクスタシーを奏でる。止めどなく溢れる絶頂感、天にも昇る飛翔感、突き抜ける多幸感、一点の曇りもない状態が最初から最後まで継続する。シリアルになりすぎるきらいがあるフロアに、闇を切り裂き光を降り注がせる事を可能とする至高のアンセムだ。そして以前から噂にはなっていた"Heavenly Overtone"のVakulaによるリミックスも収録されているのだが、こちらも期待していた以上の出来だ。オリジナルの天国へと上り詰める高揚感のある曲をどうリミックスするのか楽しみにしていたが、全体的に荒いやすりで表面を削り出したようにごつい音に作り変えながらも、途中からはハイテックなシンセのリフが浮かび上がるドラマティックな仕様となっている。骨太なテクノ色が強くオリジナルとは差別化しながら、アンセム感を失っていないのが素晴らしい。同じくHouse Mannequinによるリミックスは、ぽこぽこした太鼓をフィーチャーした浮遊感のあるパーカッシヴなハウス仕様で、パーティー序盤にゆっくりとフロアの空気を作っていく時に最適そうな落ち着いたメロウさが際立っている。新曲もリミックスもどれも文句無しに素晴らしく、年末にリリースが予定されているアルバムへの期待は高まるばかりだ。



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| HOUSE8 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
2013/3/22 UNIT & HITOMI Productions present VAKULA JAPAN TOUR 2013 @ Unit
デトロイトハウスやビートダウンの系譜にあり更にその先へと進むウクライナのMikhaylo VitykことVakulaは、2008年頃から大量の作品を残して注目を集めている。特に生っぽいロウな質感と4つ打ちからジャジーなものまでねっとりしたグルーヴから生まれる情熱的な音には定評があり、トラックメーカーとして高い評価を得ている。今回はそのVakulaの来日と共に、瀧見憲司と神田朋樹によるBeing Boringsの初ライブ、そしてGonnoのDJと楽しみな面子が集まったパーティーがあったので、遊びに行ってきた。
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| EVENT REPORT4 | 19:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Vakula & Kuniyuki - Session North #1 (Soundofspeed:sosr 011)
Vakula & Kuniyuki - Session North #1

ジャズ/ファンク/チル/アンビエントと言った要素をダンス・ミュージックとして解釈し、国内外問わずに良質なアーティストの作品を粛々とリリースしている日本のSound of Speed。カタログにはEddie CやJimpsterも名を連ねているが、本作は過去にもレーベルから作品をリリースしているVakulaと高橋クニユキによる音楽性豊かなコラボレーションだ。両者ともツールとしてではなく音楽として作曲能力の高い事から、本作でもその絡みは上手く作用し生演奏のフィーリングを活かした作風となっている。面白いのは二人で2曲を共作し、それらの曲を各々がリミックスをする事で両者の違いを聴ける事だ。太くうねるベースラインとざっくりと生々しいハウスのグルーヴは力強いが、透明感のあるキーボードや爽快なカリンバ風のメロディーが清々しく、途中から入るピアノがクニユキらしいスピリチュアルを生み出す"Session North #1 (Kuniyuki Version)"。対してVakulaによる"Session North #1(Vakula Version)"もカリンバ風のメロディーを使用しているが、グルーヴがよりジャズを匂わせる有機的な躍動があり上モノはスペーシーで、全体としては優雅なフュージョンテイストになっている。また"Passage To The Moon"も両者のバージョンが収録されており、特にVakulaによるバージョンは複雑に入り組んだリズムトラックはジャジーだが、ロマンティックなシンセやエレピの使い方はうっとりする甘美で、中盤以降は広大な宇宙の無重力空間へと放り出されるドラマティックな世界が広がっている。EPで2曲だけのコラボレートでは本当にもったいない、そんな気持ちになる素晴らしい1枚だ。

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| CROSSOVER/FUTURE JAZZ2 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Lord Of The Isles - Geek Chic / Radio Lollipop EP (Catune:Catune-48)
Lord Of The Isles - Geek Chic / Radio Lollipop EP
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UKはスコットランドからの期待の新星・Neil McDonaldことLord Of The Islesの活動には、目を背ける事は最早出来ないだろう。DJ Chidaが主宰するEne Records、エジンバラのカルトレーベル・Firecracker傘下のUnthank、またはVakulaが主宰するShevchenkoなど名立たるレーベルからの作品で注目を集めているが、本作は日本のポスト・ロックを主軸とするインディー・レーベルであるCatuneから意外とも言えるリリースだ。しかし前述のレーベルからのリリース歴を見れば想像が付く通りで、Lord Of The Islesの音楽性はニューディスコやバレアリックと呼ばれる弛緩した多幸感が満ち溢れた煌めきがある。デケデケとしたシンセベースの麻薬的な心地良さに様々なシンセのメロディで攻勢をかける開放的なニューディスコの"Geek Chic"、柔らかいコズミックなシンセ使いとざっくり荒っぽさも残した仕上げの"Radio Lollipop"、どちらも白色光に包まれるようなトランシーなシンセが多用され長閑でリラックスしたグルーヴが継続する。何処か生っぽさも感じさせるそのアナログ的な感覚も、彼等の音楽性をより人懐っこいものとしている。両者ともオリジナル自体が素晴らしいのだが、更に本作では各々に対し高橋クニユキとVakulaが極上のリミックスを施している。Kuniyukiにしては珍しくアシッドベースを使用した内なる精神世界に沈み込む危ない香りのするディープ・ハウスな"Geek Chic (Kuniyuki's Journey Remix)"、煌めきを排除し日本語のスポークンワードと蝉の声に不鮮明な音の層を被せてミステリアスな空気を生み出したビートダウンな"Radio Lollipop (Vakula Autumn Cicada Mix)"、これがまたオリジナルからがらっと作風を変えているのだが非常に個性を主張するリミックスなのだ。計4曲収録しているがどれもこれも外れ無しの内容で、Lord Of The Islesへの期待が一段と高まる一枚だ。



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| HOUSE8 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Yuri Shulgin - Beluga (Black Wall:blwa-001)
Yuri Shulgin - Beluga

2010年に突如としてMistanomista名義でデビューし、自らも各楽器の演奏が出来るマルチプレイヤーとしてのロウなハウスで注目を集めたYuri Shulgin。ロシアを含めた旧ソ連圏のディープ・ハウスは、例えばVakulaやAnton Zapを含めてにわかに盛り上がっているが、このShulginも注目に値するアーティスだ。本作は自身のレーベルであるBlack Wallを設立しての第一弾作品となるが、DJではなくアーティストとしての面を打ち出した楽曲制作を十分に活かした内容となっている。オリジナルはしなやかに跳ねるブロークンビーツの上を透明感のあるパッドで滑らかに統制をとりつつ、束縛から解放されて自由気ままに幻想的なメロディーを奏でるシンセを被せ、セッションを思わせる躍動させ見せるディープ・ハウスだ。自然であるがままの温かさが通底しており、また煙たくなり過ぎない適度な黒さのバランス感覚が長けている。ノルウェーからの新星であるAnders Wasserfallのリミックスはよりディープ・ハウスとしてのスタイルを進めた4つ打ちの安定したリズムを刻んでいるが、端正なエレガンスを纏いしっとりとしつつDJツールとしてハウスの機能を上手く高めている。対してShulginと同じくロシアで活動するAlex Danilovのリミックスはふらつく酩酊感を打ち出したロウな質感のディープ・ハウスで、肉を削ぎ落して何処か気の抜けたドライな感情が漂っている。最後のInsane Bass Versionは誰が手掛けたのかは不明なものの味気ないアシッドなベースやハンドクラップを多用したシカゴ・ハウス仕様だが、途中から徐々に幽玄なメロディーが微かに入ってくる対比の展開が美しくもある。それぞれ個性のあるリミックスとなっておりどれもフロアで機能する事も間違いなく、ロシアンハウスの躍進は目が離せない状況だ。

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| HOUSE8 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Vakula - Curves (Downbeat Black Label:BL002)
Vakula - Curves

新作EPやリミックスワークでもほぼ毎月何かしらの名義と形で新しい楽曲を世に送り出しているウクライナの才能であるVakula。新作はスペインでディープ・ハウスを得意とするDownbeat傘下のDownbeat Black Labelと言うこれまた未知なるレーベルからとなるが、名は体を表すと言うかダウンビートと言うレーベル名通りのスローモーなハウスを収録している。A面には何故かフランスのKira Nerisの"With All Is Might"をリミックスした"For Kira Neris"を収録しており、回転数がずれたように練り歩くジャズリズムにピアノやシンセが色っぽく暗闇に浮かび上がるブラック・サイケ・ジャズとでも呼ぶべき一筋縄ではいかないトラックとなっている。染み染みとしたホーンの音色やリズミカルに下部を支えるウッドベースなど湿っぽさも十分で、Vakulaらしいアナログ感覚が根を張っている。"Curve"も同様に相当にピッチを落とした端麗なエレピが美しく控えめに響くビートダウン・ハウスで、妖艶な女性ボーカルが耳にしっとりとした吐息を吹きかけるように歌い上げる。B面にはジャッキン度を高めたシカゴ・ハウスとブロークン・ビーツを掛け合わせたような"Lbeat"を収録。ネジの外れたトリッピーなシンセ音とドタドタとしたもたついた変則グルーヴに不穏な呟きを反復させながら、途中からはエモーショナルに滴り落ちるピアノが入る事で何とか楽曲性を保っている不思議な曲だ。全3曲とも個性をひしひしと感じさせる灰汁の強さが抜群である。

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| HOUSE8 | 22:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
The Tortoise - The Puffing Tortoise (3rd Strike Records:Strike10)
The Tortoise - The Puffing Tortoise

実直に言うとダンスミュージックに於いてはオーストラリアはそれ程先進的とは言えないが、Torquhil AndersonことThe Tortoiseのように確かな才能を以って評価を集めつつあるアーティストもいる。The Tortoiseは2011年にロンドンの3rd Strike Records(ErdbeerschnitzelやVakulaもリリースするカルトレーベルだ)からデビューを果たし、更にはデトロイトの新興ハウスレーベルであるUndertonesからも作品を送り出し、ビートダウン・ハウス的な作風が高い評価を得ている。そして3rd Strike Recordsに戻っての通算3枚目となるEPには、The Mole & HrenoやRondenionをリミキサーに迎えている。タイトル曲である"The Puffing Tortoise"はフィルターを大胆に利用して展開を付け更にガヤガヤしたファンキーなボイスサンプリングを導入し、過剰なエネルギーを放出するスローモーなビートダウン・ハウスでこれは間違いなくフロアでバカ受けするであろう。それをThe Mole & Hrenoは展開を抑えた冷たいミニマルなテック系へと作り変えて、淡々とした電子音のリフが長い時間をかけてドープに染める印象だ。それとは対照的にカットアップさせたように鋭利な切れ味を強調しつつ、熱量を増幅させるべくファンキーなベースやらギターカッティングが導入されたRondenionのリミックスは、正に彼らしいファンクネス溢れるブギー・ハウスへと生まれ変わっている。そしてもう一曲、"Keep On Keepin On"は金属質なパッド音が執拗に繰り返されスペーシーなSEが飛び交う、ある意味未来的なディスコ・ハウスで華々しいモダンなダンスミュージックだ。まだ作品数は少ないながらも自身の音を確立しており、今後にも期待の出来るアーティストの一人だ。

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I'm Starting To Feel Okay Vol. 5 (Endless Flight:Endless Flight CD 7)
I'm Starting To Feel Okay Vol. 5
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世界各地の実力派アーティストを擁し世界有数のレーベルにまで成長した日本発のMule Musiq。その傘下にはこれまた癖のあるアーティストを揃えたEndless Flightがあり、Mule Musiqが比較的有機的な演奏力を伴うハウスな印象を持つのに対し、Endless Flightもハウスがベースと言う点では同じだがサンプリング・ベースなフロア寄りのコンセプトで運営しているそうだ。そんなEndless Flightのレーベルコンピも5枚目となりましたが、この新作はLawrence以外のアーティストは完全に新曲を提供しておりレーベル運営の充実っぷりが伝わってきます。幕開けには今大人気のVakulaが清涼感のある軽くてゆる〜いジャジーディープハウスを提供しており、その洗練された透明感がアーバンで流石の内容。そしてレーベル常連であるEddie Cは彼らしいサンプリングを使用し、スローにねっとりと反復するミニマルディスコを提供。Philpotからもリリース歴のあるRoman Rauchはざらついたリズムトラックと共に繊細なピアノのメロディが耳に残るディープハウスを、そして日本からはこれまたレーベルを初期から支えるKuniyukiが人肌の温もりを感じさせるメロウでパーカッシヴなハウスをと、各アーティスト共にエレクトロニックでありながら生っぽい質感もあるソウルネスな楽曲が揃っているのがレーベルの強みでしょう。かと思えばJuju & Jordashによるクラウト・ロック風なサイケ感とアシッド風味なハウスの融合の面白みもあれば、MCDE主宰者であるCreative Swing Allianceのジャジーなピアノ・コードと無機質なスポークンワードから生まれる最高にグルーヴィーなビートダウン・ハウスもあります。ハウスをベースに様々なスタイルの多様性を持ちつつ何処かで必ずソウルを感じさせる共通項もあるEndless Flight、お世辞抜きに脂が乗っている充実したレーベルコンピだと思います。

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Barnt - Hark (Mule Musiq:mule musiq 147)
Barnt - Hark
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日本発の世界レベルのレーベルであるMule Musiqの最新作は、Daniel AnsorgeことBarntのEP。この人は実はLoops Of Your HeartやWolfgang Voigtもリリースしているドイツの新興レーベル・Magazineを主宰しているメンバーの一人で、まだまだリリース歴は浅いものの本作に於いても光る素質を感じさせる曲を収録しています。Mule Musiqが見込んでリリースしただけあって単純な反復だけの電子音楽ではなく、手弾き感覚のある手作りを意識したメロディーやコード展開を披露し、ディープなハウスでありながらクラウト・ロック的なトリップ感を伴うどろどろとした重苦しさで暗黒の底無し沼に引きずり込む引力・重力はなかなかのモノ。そして裏面には現在引っ張りだこで人気となっているVakulaがリミックスを提供していますが、こちらは靭やかに伸びるシンセや微睡みの音で抽象的に全体をぼかしながら、浮遊感や透明感を加えて重苦しさを取り除いたアトモスフェリックなディープハウスへと生まれ変わらせています。何処と無く雨上がりの新緑が生い茂る爽快感もあり、体の中からすっきりと浄化される美しい曲だと思います。Barnt、Vakula両者の作品に明確な音の差はありますが、どちらもじんわりと染み入るハウスで優しいフィット感が心地良いですね。

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Vedomir (Dekmantel:DKMNTL 009)
Vedomir
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2010年頃からFirecracker Recordingsや3rd Strike Recordsと言ったカルトなハウスレーベルからの作品で注目を浴び、2011年に至ってはほぼ毎月世界各地の良質なハウスレーベルから新作をリリースし、2012年になってもその勢いが全く衰えないウクライナのMikhaylo VitykことVakula。EP中心に非常に膨大なアーカイブを残してはいたものの全容を知る為のアルバムのリリースには至っておりませんでしたが、遂にVedomirと言う変名でLP2枚組でのアルバムリリースを果たしました。Vakulaと言えばポスト・デトロイト・ビートダウン的なねっとりとしたグルーヴ感を持ち、華麗に浮遊するシンセサウンドや温かみのあるアナログ風な手作り感を重視していた様に思われますが、Vedomir名義での本作では更に進化/深化を遂げていてアルバムと言うフォーマットを十分に生かした作品となっています。幕開けとなる"Jump In The Past"からして壮大な展開を予感させる不気味な胎動が蠢くアンビエントで、そこからディレイの効いたコズミックなシンセが心地良い物哀しいハウスである"Musical Suprematism"へと続き、更にはAIテクノ風のレトロ感匂わせるブレイクビーツ"Casserole 80s"など序盤から意外な展開が続きます。そして幽玄なシンセと図太い4つ打ちによる踊れるディープハウス"Forks. Knives And Spoons"もあれば、"Scream Of Kind Morning"の様にざらついたロウなハイハットに不気味な雄叫びが絡むシカゴ・ハウスまで、Vakula名義とは異なり自分の中の音楽的影響を全て曝け出す事に専念している様にも聞こえます。確かに様々な音楽性を取り組んではいるものの統一性が無い訳でもなく、手作り感のあるラフなビートや人情味のある優しいメロディーでアルバムを染め上げられて、彼が愛するアナログサウンドの温かさを前面に出した作風は確かにVakulaである事を主張もしています。色々なタイプのハウスが収録されているのでDJにも重宝するでしょうが、ホームリスニングとしてもVakulaの魅力が伝わってくる力作ですね。

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Linkwood - Secret Value (Shevchenko:SHEVC 004)
Linkwood - Secret Value

UKディープハウスにて一部から狂信的な人気を誇るFirecracker Recordingsは、昨年傘下にShevchenkoを設立しVakulaの作品を立て続けに3枚リリースした。そして4枚目となる作品は遂にレーベルオーナーであるNick MooreことLinkwoodが登場。透明ヴァイナルにハンドスタンプが押された180g重量盤の限定プレスはアンダーグラウンドなだけあって手作り感満載だが、これが限定と言うのもなんだかもったいないと思う秀逸なディープハウスを収録している。タイトル曲の"Secret Value"はまるでPepe Bradockの"Deep Burnt"を思わせるあの流麗なストリング風なパッドを導入しながら、フィルターでの抑揚やキックとベースの抜き差しでじわじわと変化をつけるディープハウスで、真夜中のフロアでも華開く優雅な時間帯を演出するであろう一曲。そしてそれを更にダブミックスした"Between Me & You"は、左右に音を散らしより音をぼやけさせSF的な世界観に仕立て上げている。裏面には乾いたパーカッションや不穏なシカゴ・ハウスのベースラインが特徴的な"Ignorance Is Bliss"が収録されているが、リズムはシカゴなのに上物は朧げに消え入るような幻想的なパッドや小洒落たコードが美しさを保っており、贅肉を落としながら華麗なディープハウスを鳴らしている。本作は今年Firecrackerからリリースされると言うアルバムへの布石らしいが、期待を抱かせるには十分な内容だ。

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Fudge Fingas - What Works EP (Firecracker Recordings:FIREC 007)
Fudge Fingas - What Works EP
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スコットランドはエディンバラのカルトレーベル・Firecrackerの新作は、ポストデトロイトハウスの役割を担うFudge Fingasが担当。10年以上の活動を経て今年リリースした初のアルバム"Now About How"(過去レビュー)ではハウスのみに収まらない総合的なブラックミュージックへの造詣の深さを示しましたが、新作ではFirecrackerらしい厳かなディープな作風のハウスを披露。幻想的なパッドやコズミックなシンセ、重厚なベースサウンドに浮遊感のあるか細いギターを一体化させた重層的なディープハウスは、漆黒のと言うよりは洗練と上質に向かったデトロイトハウスのようで、フロアでの機能性はばっちり。裏面には同じくFirecrackerからリリース歴もあり、今年大躍進した新星・Vakulaがリミックスを提供。端整に研ぎ澄まされた美しいシンセストリングスを追加しつつも、リズム対をロウに荒らした分だけ混沌としたビートダウン的な印象も感じさせるリミックスを行なっており、Vakulaの才能はもはや疑うべくもない。それに続く"Mass X"はビートレスなアンビエント・ハウス風で、望郷の念を静かに残してEPを締めくくる。年に一枚のペースでリリースするFirecracker、流石に質が高い。

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Mankind - Metro City Blues (3rd Strike Records:STRIKE7LTD300)
Mankind - Metro City Blues

謎に包まれたロンドンのディープハウスレーベル・3rd Strike Records(どうやらディスコレーベル・Under The Shadeの別ラインらしい)。Erdbeerschnitzel、The Tortoise、Vakulaなどまだそれ程世に知れ渡っていないアーティストの作品をリリースするも、そのどれもが局所的に高評価を得ている正にアンダーグラウンドと言う言葉が相応しいレーベルです。そんなレーベルの新作は詳細不明のMankindなるアーティストのデビュー作、しかも全世界で300枚限定と言うファン泣かせなリリース。タイトル曲である"Metro City Blues"からして秀逸で、プリミティブなシンセのリフレインとローファイなキックやパーカッションで、まるで大海をゆらゆらと漂流するようなゆったりとしたBPMのメロウな小波に揉まれ、気分も夢見心地なディープハウスに包まれます。裏面の"Come Go"は微妙に黒くジャジーな味も醸し出しつつ、やはりゆったりとしてディープハウス、又は適度に洗練されてビートダウン的な音を聴かせてくれます。更にそれをスムースかつパーカッシヴに仕立て上げたフロアライク仕様の"Honey Soundsystem Remix"も、深みが増しており非常に使い易いハウストラックになっております。デビュー作からして既にベテランの風格を感じさせるMankind、兎に角レーベル共々に目が離せません。

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