Vril - Animist (Delsin:152dsr)
Vril - Animist
Amazonで詳しく見る(MP3)

当初はアンダーグラウンド・テクノを展開するGieglingと、その傘下のForumにおいて主力アーティストの一人だったVrilは、深いダブの音響と揺蕩うアンビエントの雰囲気を持ったディープなテクノを展開し、本名も明かされない事もあって謎めいた存在だった。いつしかドイツはハノーファー出身のUlli Hammannである事が明かされたが、DJではなくライブを主体とする活動から生まれる彼の音楽は、ダンスとしての機能性を前提としつつ繊細や複雑さも含んだサイケデリックな音響美が映える深遠なもので、単にミックスとして用いられる事に収束せずにアルバムで展開される事で魅力が伝わるというものだろう。さて、この最新アルバムは過去にもリリース歴のある名門Delsinからなので質についてある程度はお墨付きなのだが、それにしても本作の出来は素晴らしい。最初に言ってしまうとBasic Channelの系譜に属するミニマリズムとダブ・テクノの修練を積んだもので、その意味では新しさや革新性には乏しいかもしれないが、先人が気付いた伝統を深掘りし磨き上げ自身の音としている点で評価出来る。アルバムはタイトル曲である"Animist"から始まるが、この時点ではまだビート感は抑えられ、その代わりにサイケデリックで深い電子音響とアンビエントなムードを携えて、じっくりとエモーショナルに立ち上がって行く流れは優等生的だ。続く"Love Rollout"では淡々としたキックが空虚に刻まれつつ繊細なヒスノイズがバックを走り、徐々に幽玄な電子音が全体を覆うように広がっていき微かに抒情的なメロディーも展開し、ミニマリズムの中にエモーショナル性も閉じ込めている。"Katharsis"は完全にBasic Channel経由の揺らぐ残響が持続するダブ・ハウスで、芯のある機械的なキックと幻惑的なダブ音響を発揮しつつ、しかしノイジーにさえも感じられる電子音が荒れ狂うサイケデリック性は印象的だ。中盤以降はもっとダンスフロア寄りの曲が増えてくるが、例えば"Boom To The Moon"なんかも完全にBasic Channelのミニマリズムをなぞったテクノではあるものの、ノイズの奥底に繊細にデトロイト・テクノ風な叙情性のあるメロディーを隠すように配して、機械的ながらも冷え切る事はなく何か感情を揺さぶるエモーショナル性も魅力だ。ガラッとテンポを落として図太いキックと金属的なパーカッションを強調しつつ、しかし音を削ぎ落として空間性を強調した"Kuru"は、ミニマリズムに沿いつつ艶めかしいベースラインが躍動的で、電子的でありながらオーガニックな胎動も感じさせる。他にも刺々しいドラムが変則的なリズムを叩き出すグリッチなテクノや、ノンビートで美しい電子音響がオーロラの如く舞うようなアンビエント、トランス調な覚醒感のあるサウンドが麻薬的な曲など、アルバムだからこそダブ・テクノを軸に様々な表現が成されており、ライブパフォーマンス主体の活動だけあって表現の幅は流石だ。ダンスフロアの緊張感や興奮を閉じ込めたアルバムでありながら、深い音響に魅了されるリスニングとしての質も素晴らしく、最近のお勧めなテクノアルバムだ。



Check Vril
| TECHNO16 | 21:11 | comments(0) | - | |
Various - Midday Moon - Ambient And Experimental Music From Australia And New Zealand 1980 - 1995 (Bedroom Suck Records:BSR - 082)
Various - Midday Moon - Ambient And Experimental Music From Australia And New Zealand 1980 - 1995
Amazonで詳しく見る(アナログ盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
ここ数年のニュー・エイジ/アンビエントの再燃、それが正確に何時始まったかは筆者は断定出来ないものの、その開始以降に新旧問わずに良質なコンピレーションが多数編纂されている。その意味では2018年にオーストラリアはメルボルンのBedroom Suck Recordsから、Rowan Masonが選曲・監修を行ったこの『Midday Moon』(白昼の月というタイトルも素晴らしい)がリリースされたのもその流れの一環の中にある作品で、決して見逃してはいけない優れたアンビエント・ミュージック集だ。副題の「1980〜1995年のオーストラリアとニュージーランドのアンビエントと実験音楽」の通り、その国のアーティストによるプライベートプレスや劇場サウンドトラックにアーティストの秘蔵音源などが纏められているようで、質の良し悪し抜きにして先ず貴重な音源である。それを前提としてただそのレア度のみで注目されるものでもなく、メルボルンを拠点に活動するMasonが、シンセサイザーやDIY楽器が普及し始めた頃のオーストラリアやニュージーランドの新しい世代が新しい楽器を元に創造力をもって生み出した音楽の中から、特にアンビエントや実験性の高い音楽を選び抜いたのだから、メインストリームとは異なる自由なアイデアや独自性に長けており面白みに溢れているのだ。当然知っているアーティストは皆無、しかしだからこそフラットな気持ちで音を迎えられるのだが、冒頭の"Frogs"はロック・バンドであるNot Drowning, Wavingが手掛けている。しかしおおよそロックとは全く異なり蛙の鳴き声と共に清々しくドリーミーなシンセの上下動がドリーミーなアンビエント曲で、コンピレーションの道標的な意味合いだろうか。続くはMark Pollardによる9分にも及ぶ"Quinque II"、可愛らしいオルゴールの持続と清らかなピアノのリフレイン、そこに神々しいボイスも加わるが大きな展開はなく、ただただ何処までも広大に伸びていくような雄大なアンビエント感は穏やかだ。Blair Greenbergの"Beach"では正にビーチの波の音やそこにいる人々の環境音も取り込み、そこに奇抜な電子音を織り込み、賑やかと共に異空間的な不思議な感覚を持ち込んだエクスペリメンタル性が強い。John Heussenstammの"Sawan"ではカモメの鳴き声と共にモヤモヤとした電子音、そこを切り裂くように入ってくるサイケデリック・ギターが咆哮し、実験精神の強いジャーマン・プログレの進化系のように感じられる。面白いのは決してアンビエントではなさそうな曲も、しかし他の曲と同列に並べられる事でアルバム全体が一枚岩のようにアンビエント的な風格を持つようになり、環境に同化したような静か音がしかし想像力を活発に刺激するのである。タイトル通りに昼間の朗らかな雰囲気の中で佇む美しい月のような感覚を持ったドリーミーなアンビエント/実験音楽なアルバムで、アンビエント・リバイバルに惹かれる人達には必聴だ。

と筆者によるコメントを書かせていただいたが、今は停止してしまったアンビエントやニュー・エイジの方面では良質なレビューを残している『森と記録の音楽』に、プレスリリースの和訳が掲載されているので、そちらも読む事でより一層本作の魅力が伝わるであろう。



Tracklistは続きで。
続きを読む >>
| ETC(MUSIC)6 | 22:01 | comments(0) | - | |
Map.ache - The Golden Age (Giegling:GIEGLING 17)
Map.ache - The Golden Age

日本に於いては、特にメインストリームからはやや外れたダンス・ミュージックを聴かない人にとっては、このレーベルの存在を知らなくてもおかしな事ではない。だがしかし、2014年度のResident Advisor Poll部門で1位を獲得したという文句があれば、僅かでも興味を抱いても損はない筈だ。そのレーベルこそドイツ・ワイマールを拠点とするGieglingで、VrilやEdwardらもカタログに載るように奇才揃いなのである。そしてテクノやハウスのみならず、アンビエントやヒップ・ホップにまで手を広げつつも、そのどれもが工芸品のような美しさの中に仄かなメランコリーがあり、ただ踊れれば良いという以上の音楽性を秘めている。本作はJan BarichことMap.acheによるもので、過去にはヨーロッパの繊細な美的感覚を打ち出したディープ・ハウスもリリースしていたようだが、このGieglingからの作品ではそれを継承しながらも、レーベルの奇抜な性質も強めながらメランコリーに染め上げている。何と言ってもタイトル曲の"The Golden Age"が素晴らしく、つんのめるような変則的なビートの上に滑らかに展開するエモーショナルなシンセのコードの構成は、星空が広がる下の夜道を闊歩するような何だかウキウキとするムードがあり、ドラムのリズムとシンセのリズムの相乗効果で不思議な感覚の揺らぎで陶酔させられる。"Give Peace A Change"はぼんやりとして陰鬱な夢のようなシンセがリフレインするディープ・ハウスだが、ビートにはざらつきがあって生々しく、ロウな質感が曲にちょっとした刺激を加えている。と思っていると、裏面の"Message from Myself"ではまた弾けるようにキックやパーカッションが入り乱れ、そこに浮遊感を生む淡い色彩のシンセが情緒を添えて、何だか騒がしくもありながら軽快なグルーヴで晴々しいハウスを披露している。最後の"You Are The Bonus"は壊れた楽器が鳴っているような電子音が不協和音的に構成されたビートレスな曲で、これは踊るための音楽ではないかもしれないがメランコリーが感じられ、パーティーの朝方にプレイされてもおかしくはない。Gieglingらしくストレートなダンス・トラックは無いのだが、これら工芸品のような曲がミックスされるとDJの中にスパイスとして作用するのではと思わせられるし、実に面白い音楽だ。



Check "Map.ache"
| HOUSE11 | 20:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Vril - Portal (Delsin Records:110DSR)
Vril - Portal
Amazonで詳しく見る(MP3)

カルト、またはアンダーグラウンドと呼ぶに相応しい活動をするドイツのVril。本名や素性も明かされずに謎めいた活動を続けるそのアーティストは、しかし例えばGieglingやその傘下のForumからフロアを震撼させるディープなダブ・テクノをリリースし、そしてOstgut Ton一派からも信頼を集めMIXCDにも使われるなど、匿名性を守り単にその音楽性だけで評価される稀有な存在だ。2014年にはForumから初のアルバムである『Torus』をリリースし、ダンストラックだけでなくアンビエントや音響系まで多様な音楽性を披露したが、Delsinからのリリースとなるこの2ndアルバムではよりフロア向けのトラックで固められている。2013年11月に開催されたFuture Terrorで披露されたVrilのライブを体験した者ならば、きっとそのライブで感じ取った印象と同じ物をこのアルバムに感じるだろう。永遠に崩れる事のない端正な4つ打ちともやもやとした深い音響に包まれた"Portal 1"は、正にBasic Channelが作り上げたアブストラクトなミニマル・ダブをよりダンス性を強めたものだ。"Portal 2"では叩き付けるようなリズムによってグルーヴの勢いは増しフロアを激しく揺らすが、上モノにはDelsinらしい流麗さもある点に今までとは異なる音楽性も含まれている。よりDelsinのデトロイト志向が打ち出されたのが"Portal 3"で、ハンドクラップや潰れたようなスネアを用いたは生々しい粗さもあるが、そこにエモーショナルなメロディーが入ってくると宇宙の中を駆け抜けるようだ。"Portal 5"では毒気もあるブリーピーな音や金属的なパーカッションが荒廃さを生み出すインダストリアル・テクノへと繋がり、"Portal 7"では金属的な響きと共に闇の奥深くへと潜っていくような音響によってディープさも伴うインダストリアル・テクノを披露している。全8編のPortalは一切の煩悩や雑念を捨て去ったフロア機能型ダンス・トラックで、激しく荒々しい展開に誰しも抗う事の出来ない暴力的なエナジーが迸っている。



Check "Vril"
| TECHNO11 | 12:00 | comments(0) | - | |
Marcel Dettmann - Fabric 77 (Fabric Records:fabric153)
Marcel Dettmann - Fabric 77
Amazonで詳しく見る(US盤)
 Amazonで詳しく見る(MP3)
ドイツで最大級の人気を博すクラブ・Berghain、そこでレジデントを持つDJは複数いるが、その中でもやはりクラブの顔として存在感を放つのは(少なくとも日本では)他ならぬMarcel Dettmannだろう。日本に来日する度にパーティーでもフロアを満員にする程の人気を誇っているが、その音楽性は余りにもハードな面を持つ一方で、伝統的なシカゴ・ハウスから最新のダークなテクノ、又は理路整然とした機械的なマシンビートのミニマルに深遠なアンビエントまで網羅し、オールド・スクールからモダンを一つの世界に収めたテクノとしてミックスする手腕が持ち味だ。本作は彼にとって3作目となるMIXCDだが、その音楽性自体に大幅な変化は見られない。やはりオープニングには闇の奥底から静かに浮かび上がるダークなアンビエント"Arthure Iccon"でゆっくりと始まるが、続く"Sun Position"では錆び付いた金属が擦れるようなビートを、更に"Inside Of Me"でくらくらとした目眩を誘発する催眠的なミニマルをミックスし、序盤からして既にDettmannの淡々としながらも静かに重圧をかけていくようなグルーヴが疾走っている。そして序盤のピークはAnswer Code Requestによる"Transit 0.2"において現れる。空虚で機械的なビートの上に何度も被さっていくシンセのレイヤーが、爆発を伴い疾走感を増していくようで、そこから真っ暗なフロアの中に潜って行くように荒くれたテクノ〜幻惑的なミニマル〜不気味に唸るエレクトロまでミックスされ、甘さの全く無い廃退的な音が続いていく。しかし作品として制作されるMIXCDを聴くと、パーティーで彼のプレイを聴く時以上に理知的というか、単にハードな音楽をミックスしハードな展開を作るDJとは全く異なる抑制の取れたグルーヴ感がDettmannのDJを特徴付けているように思われる。表面的にはハードな曲は既にそれ程使用されていないが、曲の持つムードや鈍い響きにロウなビート感などを感じ取り、それらを的確にミックスしながらフロアの喧騒に内面的なハードさとストーリーを与えていくのだ。そして、本作の魅力はそれだけでなく、ここに収録された多くの曲が自身が主宰するMDRからの未発表曲でもあり、このMIXCDが未来へと繋がっていると言う点でも興味を掻き立てられるだろう。



Check "Marcel Dettmann"

Tracklistは続きで。
続きを読む >>
| TECHNO11 | 20:00 | comments(0) | - | |
2013/11/23 Future Terror 12th Anniversary @ Unit
12年に渡って千葉と言う場所だけに限って開催され続けていた、正に地元密着型の叩き上げパーティーがFuture Terrorだ。DJ Nobuを中心に音楽もメンバーも変化を遂げながら、しかし千葉と言うローカル性を守りながらファンを増やし続けてきた。今年の3月にも千葉でパーティーがあったものの、既にキャパオーバー状態であったのが実情で、12周年はそんな問題も考慮して遂に東京はUnitへの初進出となった。そんな12周年のゲストにはまだそれ程知名度は高くないのだろうが、DJ Nobuが惚れ込んだMetaspliceとVrilを招致している。当方もこの2アーティストについては情報を持ち合わせていないものの、有名無名に限らずDJ Nobuが惚れ込み自信を持って勧めるアーティストなのだから、期待せずにはいられない。
続きを読む >>
| EVENT REPORT4 | 17:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Marcel Dettmann - Conducted (Music Man Records:MMCD036)
Marcel Dettmann - Conducted
Amazonで詳しく見る(US盤)
 Amazonで詳しく見る(日本盤)
現在ドイツを代表するクラブ・Berghainでレジデントを張り、またOstgut Tonなどのレーベルからストイックに研ぎ澄まされたミニマルテクノをリリースするMarcel Dettmann。ここ日本に於いてもBerghainやOstgut Tonと言う単語は半ばブランド化しテクノファンの注目を集めるに至ったが、しかしここからはハイプは淘汰されどこまでが残っていくか試されるとOstgut TonのレーベルマネージャーであるNick Hopperが語っていた。その意味ではMarcelにとって2枚目となるこのMIXCDは、絶対なる評価を得たその後の試金石と言える作品なのかもしれない。彼が以前来日してプレイした時には過剰なエネルギーを放出するハードなミックスを行なっていたが、本作では所謂ハードテクノと言う言葉は相応しくないだろう。オープニングからしてSandwell Districtのビートレスなアンビエントで、そしてドタドタとしたSignalやRoman Lindauの重厚なテクノへと繋がっていく。決してハイテンションかつハードではない…が、しかしビリビリと得体の知れない不気味な何かが蠢くように音が振動し、グルーヴよりもテクスチャー重視のプレイをしている。そして新旧関係なく彼が好きだと言うトラックを使用した本作には、90年代のロウなテクノ/ハウスも収録されており、質素で乾いたリズムにはシカゴ・ハウスのそれにも通じる粗悪さが感じられる。勿論最新のテクノであるMorphosisやShed、Redshape、O/V/Rもプレイしているが、これらも冷たい感情が通底するダークなテクノだ。突き抜けるハードさよりもラフな質感とディープな情感を表現した本作は、分り易い爆発力は無いがオールドスクールと現在のドイツテクノを理解した彼が、静かな凶暴性を隠し持ち新旧を融合させている。派手さはないがしかし徹底してダークに染められた流れには、ドイツテクノの硬派な洗礼を浴びせかけられるはずだ。



Check "Marcel Dettmann"

Tracklistは続きで。
続きを読む >>
| TECHNO9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Marcel Fengler - Berghain 05 (Ostgut Ton:OSTGUTCD19)
Marcel Fengler - Berghain 05
Amazonで詳しく見る(US盤)
 Amazonで詳しく見る(日本盤)
現在のドイツテクノシーンの引率するクラブ・BerghainのオフィシャルMIXCDシリーズ"Berghain"、その最新作はそのクラブでもレジデントを務めているMarcel Fenglerが手掛けている。日本に於いてはLabyrinthやFuture Terrorなど大きなパーティー出演しているが、しかしBerghainの他のタレントに比べるとまだその存在感は及ばないであろう。実際に自分も彼の音源は殆ど聴いた事は無い…が、Ostgut Tonからのリリースに加え、Luke Slaterが主宰するMote-Evolverもリリースしている事を考えると、注目しても損は無いだろう。さてBerghainのMIXCDと言えばどれもモノトーンなミニマルやら硬質なテクノが中心だが、本作もその例に漏れずやはり光の射さない暗い深海を航海するようなテクノミックスだ。しかしそれだけではなく、怪しく蠢くテクノから始まり凍てつくエレクトロ、厳しさの立ち込めるインダストリアル、感情的なテックハウス、そして終盤ではバンギンなテクノから深いダブテクノへと様々なテクノの海を航海して行く。色々と詰め込み過ぎたようでありながらしかしBerghainの灰色の世界観や硬い金属的な音質は保っており、なにより意外にもじわじわ染み入る感情的な流れも感じさせ、ハードな印象を残すBerghainに新しい息吹を吹き込むようでもある。決して臨界点を突破する過剰なエナジーは無いけれども、幅の広い選曲を一つの空気に纏め上げ心地よいグルーヴを生み出しており、Berghainの深部を体験出来るMIXCDである。

試聴

Check "Marcel Fengler"

Tracklistは続きで。
続きを読む >>
| TECHNO9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Agoria - Balance 016 (EQ Recordings:EQGCD029)
Agoria - Balance 016
Amazonで詳しく見る(US盤)
 Amazonで詳しく見る(日本盤)
フレンチテクノシーンの奇才・Agoriaが、名物MIXCDシリーズとなっている"Balance"の16作目を担当。今までに2枚のMIXCDをリリースしていてそれらもジャンルレスで強烈なぶっ飛び感覚を感じさせる内容でしたが、この新作もやはり同様にテクノだけではなく様々な音を組み合わせ、フロアとチルアウトルームを行き来する様な変態的なミックスを披露しております。ジャンルの多様性はテクノ、ハウス、ダウンテンポ、ディスコダブ、アンビエント、ミニマル、ニューウェーブなどまでに及び、最早このMIXCDがどんな音に当てはまるのかを説明するのは意味が無い状態にまでなっております。そして単純に曲を繋げるだけではなく曲の一部のサンプルを途中に混ぜ込んだり、同じ曲を2度も使用する事で、1度目で感じた印象が2度目で更に強まる効果を誘発するなど、展開の作り方は確かに印象的。何よりも彼の創る音源からも感じられるギトギトでドラッギーな感覚が終始漂っていて、リズムトラックの強さやノリで引っ張っていく勢いのあるタイプのミックスとは異なる、つまりは精神作用の大きい麻薬的な覚醒感の大波に飲み込まれるミックスは、彼特有のトリッピーな感覚があり独創性が存分に感じられる事でしょう。その分振れ幅や展開の浮き沈みも大きく、また音の余りのどぎつさに体力が無い時は聴くのもしんどいかなと感じる点もあります。インパクトがある分だけ聴く人を選ぶ内容でもありますが、はまる人には心底はまって抜け出せなくなるのではないでしょうか。

試聴

Check "Agoria"

Tracklistは続きで。
続きを読む >>
| TECHNO7 | 10:30 | comments(2) | trackbacks(0) | |
Laurent Garnier - Retrospective 1994-2006 (F-Communications:F255DCD)
Laurent Garnier-Retrospective 1994-2006
Amazonで詳しく見る(US盤)
 Amazonで詳しく見る(UK盤)
フランステクノシーンの伝道師・Laurent Garnierの待望のベスト盤が登場。実は以前にもベスト盤が出てるんですけど、未発表バージョンや初CD化の曲を含んだ今作で彼の10年以上に渡る軌跡を辿る事が出来ます。まず注目はライブバージョンの「Man With The Red Face」と「Acid Eiffel」ですね。どちらもドラムスやベース、サックスフォンらを生演奏で行うバンド編成で、オリジナルよりもかなり有機的でこうゆうのはMad MikeよろしくなGalaxy 2 Galaxyのライブにも近さを感じますね。前者はデトロイト直系のメロディアステクノ、後者はアシッドハウスでどちらも傑作ですぞ。徐々に盛り上がりハードなシンセがガリガリ鳴り響く「Crispy Bacon」も素晴らしい。Carl Craigの狂気のトライバル「Demented」も、Laurentがエディットしてるせいかついでに収録してますね。「Butterfly(Laurent Garnier Remix)」はDJ Markyのドラムンベースを、ムーディーで綺麗目のダウンテンポに調理しています。初期の名作「Astral Dreams」なんかは今聴くと、まだまだ垢抜けない新人らしいピコピコでチープなテクノで微笑ましい。ただこれは彼の音楽史を辿った物なので、どの時代の作品も均等に収録しているのはコンセプトには合っていますね。しかし聴いた後思ったのは意外とLaurent Garnierの作品って、暗いと言うか重いと言うか楽観的な面が殆ど無いんですね。この闇の深さと言うのは、デトロイトのSuburban Knightを思い出させますね。デトロイトフォロワーと言うと表層上の希望や夢に満ちた点だけを抽出する場合が多いですけど、Laurentの場合はしっかりと根底にある怒りや反骨精神も継承している所が流石です。そんなご託もいらんと思うので、四の五の言わずに聴いて欲しい。

試聴

Check "Laurent Garnier"

Tracklistは続きで。
続きを読む >>
| TECHNO4 | 23:00 | comments(2) | trackbacks(1) | |