Deadbeat - Wax Poetic For This Our Great Resolve (BLKRTZ:BLKRTZ018)
Deadbeat - Wax Poetic For This Our Great Resolve
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ミニマル・ダブという音楽を軸にその時その時でIDMからトライバル・テクノ、アンビエントからレゲエ等野心的にも振り幅を持って展開するベルリンを拠点にして活動するカナディアン・アーティストのDeadbeat。元々はエクスペリメンタルなダブを持ち味としていた~scapeをベースに活動していた彼が、しかしそのレーベルの閉鎖後にその音楽性を継承するBLKRTZを設立後は、無駄な音を削ぎ落としながら比較的ルーツ・レゲエ/ダブへと傾倒しているのだが、それでも例えばダブ・ステップの激しく躍動するビート感を取り入れたり、または長いドローンを用いたりと常に流動的にその音楽に対する意欲は留まる事を知らない。そして本作では全ての楽曲にボーカリストを迎えているのが特徴で、何とThomas FehlmannやMike ShannonにMarco Haas(aka T.Raumschmiere)らボーカルを本業とはしないアーティストらに「希望のメッセージ」を募り、各々が語った言葉を各曲に用いたというコンセプチュアルなアルバムになっている。比較的ダンサンブルでテック・ハウス気味でもあった前作『Walls And Dimensions』(過去レビュー)に比べると、本作のトラック自体は弛緩したアフタービートが心地好いルーツ・レゲエ/ダブのグルーヴへと戻っており、そこに薄いドローンの音響等を用いて繊細で研ぎ澄まされたダブ空間を作り上げている。出だしの"Martin"こそリズム無しの催眠的なドローンの持続の上に残響混じりの呟きを用いたアンビエントだが、そこから途切れずに続く"Steve And Fatima"では湿りながらも変則的でトライバルなリズムと淡々とした朗読、そして生温いオルガンや微かなピアノを用いて有機的なダブ感覚を打ち出しており、スピード感を抑えながらもゆったりと波乗りするようなグルーヴに揺らされる。そしてシームレスに続く"Gudrun"では湿度を帯びて深みのある朗読にやはり揺蕩うように横揺れするダブ〜レゲエ調の淡々としたビートに、遠くの地で鳴っているような微かなドローンが奥行きを作って、研ぎ澄まされた繊細な音響のミニマルダブに仄かな情緒感さえ加えている。どうやら本作は全ての曲が途切れる事なく繋がっているようだが、4つ打ちではない溜めのある変則リズムも相まって、MIXCD的な流れがねっとりしたスローモーなビートながらも実に躍動的で肉感あるグルーヴに自然と身体も反応する。後半のFehlmannに触発されたようなシャッフル調のヒプノティックなダブ・テクノである"Thomas"から、特に攻撃的で猥雑さが強調されたダンスホール色が打ち出た"Me And Marco"への流れも、アルバムの中でエネルギッシュな時間帯で熱く込み上げるものがある。Deadbeatらしくダブ〜レゲエ〜アンビエント〜テクノと様々な要素を盛り込んで貪欲に広がりを持たせつつも、軸よりルーツへの先祖返り的なトラックが中心となっており、だからこそトースティング的な各アーティストの言葉も上手く馴染んでいる。ここ数年のDeadbeatの作品を聞いてみると、やはり無理にダンサンブルにするよりはテンポを抑えた本作のようなレゲエ/ダブ方向が一番しっくりはまっていると思う。



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| TECHNO13 | 12:00 | comments(0) | - | |
2017/1/7 Hi-TEK-Soul Japan Tour 2017 @ Contact
2015年のカウントダウン、代官山Airのフィナーレを飾ったのがデトロイト・テクノの暴君・Derrick Mayだった。その後、渋谷には新たにContactなる新しいクラブが誕生したのだが、その名付け親もDerrickだったのは何か運命的なモノを感じやしないだろうか。そしてContactにその名付け親であるDerrickが遂に初登場となる今回のHi-TEK-Soulには、彼が運営するTransmatから日本人としては初の作品をリリースしたHiroshi Watanabeも参加するなど、待ちに待っていた一夜が到来した。
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| EVENT REPORT6 | 22:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Deadbeat - Walls And Dimensions (BLKRTZ:BLKRTZ014)
Deadbeat - Walls And Dimensions
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長らく音響派ダブ・テクノをリードしてきた~scapeから作品をリリースしていたDeadbeat。しかし2010年には残念な事に~scapeはクローズしてしまったのだが、そのレーベル性を引き継ぐ意味も込めてDeadbeatが自らBLKRTZを立ち上げ、ルーツ志向でダブやレゲエの音響やリズムをふんだんに盛り込みつつ、ダブ・ステップにも手を出しながら果敢に挑戦を続けているのが近年の話。随分と制作意欲は高まっているようで毎年アルバムやEPをリリースしているが、前作の『The Infinity Dub Sessions』(過去レビュー)から一年弱で2015年にもニューアルバムとなる本作をリリースしている。注目すべき点は、前作では盟友であるラガ・ヴォーカリストのPaul St. Hilaireを全面的にフィーチャーしていたが、本作では逆に様々なボーカリストを起用して音楽性も多様性を含んだ内容へと変化している事だ。冒頭の"Ain't No More Flowers"ではFinkをボーカルに起用しているが、ベースとなるトラック自体は気怠いアフタービートと煙たい残響が揺らぐレゲエ基調のダブ・テクノで、これぞDeadbeatに期待する艶かしいダブの音響だろう。しかし続く"I Get Low"では驚く事にDeadbeat自身がボーカルを披露し、トラックは乾いたパーカッションを用いた冷気漂うミニマル性の強いテック・ハウスで、何だか随分と4つ打ちテクノを意識している事に違和感を抱く。更にDelhia de Franceをフィーチャーした"Rage Against The Light"やElif Bicerをフィーチャーした"Got To Carry On"では、官能的で艶やかなボーカルと荘厳でダビーかつテッキーなトラックとの相性は確かに良いのだが、過去の音楽性を思い浮かべるとこういった曲にDeadbeatの個性は無いように思う。それならば例えば"Stekker Forever!"のように複雑に崩れたビートが揺れ、仄かに官能的なメロディーが闇からぼんやりと浮かび上がるダブ・ステップ気味のテクノの方が、ダブ/レゲエをルーツとするアーティストの個性の延長線上に感じられる。またラストの"Lights For Lele"は15分にも渡ってビートレスでドローンを展開する壮大な曲で、美しいストリングスのような上モノが果てしなく伸びながら優しく淡いノイズが空間に満たされるだけの流れながらも、光の放射を全身で浴びるような圧倒的なドローンに身を任せれば恍惚状態に陥る事だろう。今までの作品と比べるとダブを基調にしながらも随分とバラエティーが豊かで、それが成功していると断言するのはまだ早いだろうが、歩みを止めずに変化を促す最中なのであればそれは評価すべき事なのだろう。



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| TECHNO12 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Four Walls - Observe The Heavens EP (Eat More House:EMH002)
Four Walls - Observe The Heavens EP

ディープ・ハウスのファンであればFour Wallsを名乗るMihail Shvaikovskiについては、当然記憶の片隅程度にはその名を知っているだろう。ベラルーシ出身、1987年生まれのこのクラブ・ミュージックの業界では比較的若手のアーティストは、今までにもTraxx UndergroundやKolour LTDと言ったレーベルから、ジャジーでクラシカルかつソウルフルで黒いハウスをリリースして早速注目を集めている。特にKolour LTDからはFunkyjawsとの共作で非常に高品質なディープ・ハウスを送り出しているが、この新作はFour Walls単独によるものだ。ドイツの新興レーベルであるEat More Houseのカタログ2番と言う事もあり、レーベルの今後の方向性も占うような作品としても勝手に見做しているが、もしそうだとすればレーベルの将来を期待したくもなる良作である事を断言する。以前の曲が比較的洗練され優雅な印象もあったものの、新作に於ける"Constellations"はマイナー調のメロディーとざらついた音の質感に臨場感のあるパーカッションが、幾分かラフさを強調したディープ・ハウスの印象を残している。層になって重なっていくようなメロディーの酩酊感ある心地良さはFour Wallsらしく、DJツールとしてだけではなくエモーショナルな音楽性を活かしている点に変わりはない。よりFour Wallsに期待しているものが表現されているのは"Across The Ocean"だろうか、爽やかなパーカッション使いと空へと広がるような美しいシンセの中からファンキーなギターカッティングやフュージョン的な華麗なメロディーが飛び出してくるこの曲は、開放感と爽快感のあるフュージョン・ハウスでとてもポジティブに響く。またアシッドなベースラインが特徴的ながらも耽美なピアノのコード展開により切なさを打ち出した"Techride"は、スムースでグルーヴ感と洗練された世界観がクラシカルなディープ・ハウスへと繋がっている。奇を衒わずにオーセンティックな性質さえ伴うFour Wallsのハウスは、流行に左右されない普遍的な魅力に溢れているのだ。



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| HOUSE11 | 14:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Walls - Urals (Ecstatic:ECD010)
Walls - Urals
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2010年にドイツはKompaktからデビューしたWalls - Alessio NataliziaとSam Willis -は、テクノを推し進めるレーベルの中ではシューゲイズやクラウト・ロックも取り込み、ダンス・ミュージックを中心としたレーベル性に新風を吹き込んでいた。例えば同レーベルに所属するThe Fieldも同様にシューゲイズを軸としたユニットではあるが、それに比べればやはりクラブ的と言うよりはロックのダイナミックなリズム感がWallsの特徴でもあり、ポップなサウンドやアンビエントの雰囲気に於いてはKompaktのレーベル性を踏襲しつつもWallsの存在は独特だ。そんなユニットにとって3枚目となる久しぶりのアルバム - しかし残念ながらこれが最後のアルバムになるとWallsは公言している - は、マスタリングに元Spacemen 3のSonic Boomが迎えられている事からも分かる通り、やはりダンス性はありながらもロック的なグルーヴやサイケな音響が強い。先行EPである"Urals"からしてベースラインはエレクトロ調でもあるが、サイケデリックなギターの音色やヒプノティックなシンセが加えられ、そして何よりもスネアやキックのリズムが生っぽいざらつきを残している。もう1つの先行EPである"I Can't Give You Anything But Love"は捻れたようなエグいアシッド・サウンドが強烈ではあるものの、やはり基礎となるキックやスネアの臨場感ある生々しさはロックの躍動がある。抽象的な上モノや発散するノイズは非常にトリップ感満載なのだが、それらを纏め上げて激しい一つの勢いへと巻き込むグルーヴ感は、以前のユーフォリアを漂わせていたWallsからは想像もつかないだろう。"Moon Eye"では執拗に反復するシンセの旋律が快楽的に狂おしくミニマルな展開を生み、"Altai"では牧歌的な上モノが淡い田園風景を喚起させながらもリズムは鈍く潰れてパンキッシュな刺激となり、このテクノとロックの狭間に位置する音楽はBorder Communityにも近似している。アルバムの最後はこの世の終焉を示唆するような重苦しいドローンなサウンドがうねるように変容する"Radiance"で幕を閉じるが、この瞑想的な音響はプロジェクトの終わりを飾るのに最適な荘厳な世界観を確立している。残念ながら本作によってWallsのプロジェクトは終了するが、これでやりきったと言わんばかりの内容なのだから、ある意味では清々しくもあるのだ。



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| TECHNO11 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Hands - The Soul Is Quick (Ecstatic:ELP004)
Hands - The Soul Is Quick
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The Field名義ではテクノにシューゲイザーの要素を持ち込み、またLoops Of Your Heart名義ではジャーマン・プログレのように電子音と戯れ、それぞれの名義で人気を博しているAxel Willner。そんな彼による第三のプロジェクトがこのHandsで、この度はKompaktでレーベル繋がりもあるWallsによるレーベル・Ecstaticからアルバムをリリースした。なんでも2012年の3〜4月頃に制作されていたそうなので、実はThe Fieldの3rdアルバムよりも前の音源である。また制作に使用した楽器はRoland JX-3PやRoland SH-101のヴィンテージなアナログ・シンセに、リズムマシンのElektron Machinedrum、そしてTENORI-ONのみと非常にシンプルな構成で、この非常に個人的な制作から生まれた音楽はベッドルーム・ミュージックと呼ぶのが相応しい。曲は僅か4曲のみだが全体で40分程もあるアルバムと言っても差し支えないボリュームで、その多くはMy Bloody ValentineやWolfgang VoigtによるGas名義、またはBoards of Canadaなどを想起させるドローンかつアンビエントな音がただただ浮遊するように流れている。朧気なノイズの中から微かに浮かび上がるリズムは単なる背景の一部と化し、実際の体感としてはおおよそノンビートに聞こえるアンビエント・ミュージックだ。ノイズにしてもアナログの柔らかな音がぼかしにぼかされ、全く角のないサウンドがただ揺らいでいるだけの単調なドローン状態ではあるが、その掴み所のない抽象的なサウンドが靄に覆われた幻想的な風景を描くようでもあり眠気を誘う程に心地良い。Loops Of Your Heart名義でも同じようなアンビエントの感覚はあったが、それ以上に電子音としての個性を濾過した淡い音がフラットな響き方に繋がっており、アンビエント性を高めている。就寝前のBGMとして聴くと効果の高い合法的な睡眠薬となる事、間違いなし。



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| TECHNO11 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Four Walls & Funkyjaws - One Night In Grodno (Kolour LTD:KLRLTD015)
Four Walls & Funkyjaws - One Night In Grodno

確実に勢力を盛り返しつつあるハウスも現在の中心地がベルリンである事に異論は無いが、アメリカに於いても一時期よりはハウス熱を戻ってきているようには感じられ、その一旦にはデトロイトからの新興勢力であるKolour Recordingsがある。本作はそのレーベルの限定ラインであるKolour LTDからの新作で、ベラルーシのMihail ShvaikovskiことFour Wallsと同郷のSergey AbramovことFunkyjawsの若手二人の共作となっている。二人ともまだ20代前半であり知名度がまだまだなのは当然だが、本作に於ける豊かな情感が広がる円熟味あるハウスは今後を期待させるには十分過ぎる程だ。エレガントなエレピのコードが下地になりつつ、その上を官能的で艶のあるサックスがアドリブ的に舞う"Jazzy Thing"、同じく気品のあるサックスの演奏と共に幾分かパーカッシヴな4つ打ちが躍動的な"His Name Is Eddie"、どちらも新鮮味には欠けるもののデトロイトの感情的な面も含みながら都会的な洗練された空気を纏っていて、現時点で既にベテラン的な貫禄を漂わせている。裏面にはソウルフルな歌を用いて郷愁が染み渡る黄昏時のハウス"Love Train"や、優雅な旋律を奏でるエレピに軽快なグルーヴ感が爽やかな風を誘い込むジャジー・ハウス"From Us"と、こちらも胸を締め付けるような切なさが堪らない。ジャズにファンクやディスコなど黒人音楽の要素が多くありながら、汗臭くなり過ぎずにさらっと聞かせるようなバランス感覚が今っぽくもあり、リスニングとしても耳を虜にするだろう。



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| HOUSE9 | 22:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Kaito - Recontact (Octave-lab:OTLCD1970)
Kaito - Recontact
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10年以上に渡りレーベル唯一の日本人としてKompaktから作品を送り出し続けているKaito。Kaito、またの名をワタナベヒロシはかつてKompaktの魅力を世に伝えるべく"Contact To The Spirits"(過去レビュー)と言うKompakt音源縛りのMIXCDを制作したが、2013年はレーベルの20周年記念と言うこともあり再度同じアプローチを手掛けるのに最適な瞬間であったのかもしれない。本作はその企画が還ってきた事、そして再度レーベルの音楽性と接触する意味合いも込めて"Recontact"と名付けられている。前作と明らかに異なる点は2枚組であり、1枚目は確かにKompakt音源のみなのだが、2枚目は傘下のSpeicherの音源を使用している事だ。Kompakt Sideに関しては膨大なカタログと多岐に渡るジャンルを取り扱うレーベル性をあまねくとは言えなくとも、しかし非常にストイックなミニマル性からシャッフルするテクノの躍動感、またはレーベル発足当初から息衝くアンビエントな佇まい、そして忘れてはならない快楽的ともさえ思われるポップな世界観まで掬い上げ、スケール感の大きい展開を生み出す緩急を付けたミックスを行い、これぞ正しくKompaktと言える世界観を引き出している。対照的にDJツールとして機能美を引き出したと言えるのがSpeicher Sideであり、こちらはKompaktに比べると多様性よりも断然ダンス・ミュージックとしてのグルーヴ感を主張したトラックが並んでいる。勿論全く幅が無いだとか味気ないツール集だとかそんな事はないが、ハイエナジーに漲るラフな攻撃性や図太いグルーヴながらも疾走感を伴っており、肉体に直接作用する事を目的とした音楽性がSpeicherなのだろう。不気味ささえ発するエグい狂気や平常心がドロドロと融解するトランス感覚もあり、Kompaktでは出来ない音楽性を実験しているようにさえ聞こえる。Kaitoと言う同じ一人のDJが手掛けながらも、兄弟レーベルでの違いをまざまざと感じさせれる事に興味を覚えつつも、Kaitoらしい激情が溢れる心情の吐露が大きな波となって迫り来るMIXCDだ。

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| TECHNO10 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Walls Vs. Gerd Janson & Prins Thomas (FM X:FM X / Walls 001)
Walls Vs. Gerd Janson & Prins Thomas
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ハードテクノ全盛のドイツにおいてそれには一向に寄り添う事なく、シューゲイザーにも手を出し音楽性を広げているドイツの老舗テクノレーベル・Kompakt。その中でエレクトロニカやシューゲイザーにロック的なノリも持ち込んでテクノと枠を飛び越えて活躍するニューカマーのWallsが、Gerd Janson & Prins Thomasのリミックスを含む限定EPをリリースした。Prinsと言えばノルウェーを代表するニュー・ディスコ大使であり、片やGerdは今ドイツで注目を集めているRunning Backを主宰するニュー・ディスコの有望株だ。この二人が手を組んでリミックスとなれば当然晴々しく開放的なニュー・ディスコ以外には成り得ないわけで、オリジナルが淡いノイズで空間を埋め尽くすドリーミーなシューゲイザー+ディスコな4つ打ちだったのに対し、二人によるリミックスは濃霧を吹き消しながら煌めきシンセサウンドとブリっとした重いベースを前面に打ち出して徹底的に楽天的なムードに染め上げたバレアリック・ディスコで、クラブの真夜中ではなく終盤の朝方のフロアで全身で浴びたくなる爽快な内容だ。そして裏面にはWalls自身によるエディットが収録されていて、こちらはオリジナルよりもリズムが先導する部分を引き伸ばし、フロアで使い易くなったダンス仕様と言えるエディットが施してある。ギターらしき淡いノイズやキュートなシンセがふんわりと空間に充満し、可愛らしくメロウな世界観に溺れてしまいたくなる曲だ。Kompaktの次世代を担う存在としてWallsは目が離せない。

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| HOUSE8 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Taragana Pyjarama - Tipped Bowls (Kompakt:KOMPAKT CD 101)
Taragana Pyjarama - Tipped Bowls
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かつてはテクノ/アンビエントでドイツテクノを先導していたKompaktも近年は手探りでレーベルカラーを押し広げているが、その一例がThe FieldやWalls、Gui Borattoと言った新鋭らのシューゲイザーを取り込んだテクノだ。その取組は成功しこの路線がKompaktの新たなる顔になりつつもある中で、そこに更に加わるのがデンマークからの新星であるNick Kold EriksenことTaragana Pyjaramaだ。2011年に他のレーベルからリリースしたEPがKompaktに気に入られ、案の定青田刈りと言うか才能を見出されKompaktからデビュー・アルバムをリリースする事になったのだ。EPは未聴だったので試しに聴いてみると、これが白色光に包まれる躍動感あるシューゲイザー・ハウスで確かに素晴らしい。そしてこの本アルバムに繋がる訳だが、アルバムではダンス的な作風は抑えてリスニング志向に傾いた淡くサイケデリックな世界を展開している。何はともあれ"Growing Forehead"が素晴らしく、はっと息を呑むような女性ボーカルに連れられて夢の世界に没頭するノンビートなこの曲が耳に残る。Border Communityらしいサイケデリックなシンセ使いながらも、毒気を完全に抜いてポップな音へと昇華させている。"Lo Ng"では逆に中毒性を残したシンセがじわじわと侵食する下で力強いキックが4つ打ちを刻み、"Ballibat"ではスーパーマリオの効果音らしきサンプリングを用いたグニャグニャと視界が歪むコミカルなダウンテンポを聞かせ、タイトル曲では冷めきった正にチルアウトまでも披露している。正直な気持ちで言えばもう少し弾けた音も聴きたかったし何処か物足りなさもあるのだが、しかしまだ21歳でこれだけの色彩豊かな淡いサイケデリックな世界感を展開させているのだから、今後の活躍に期待せざるを得ない。

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| TECHNO9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Masterpiece Created By Andrew Weatherall (Ministry Of Sound:MOSCD287)
Masterpiece Created By Andrew Weatherall
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Ministry Of Soundが提供する「Masterpiece」、そのタイトルからしてDJ中のDJが担当すべき3枚組MIXCDシリーズの最新作は、遂に久しぶりのクラブでの来日プレイを控えているUKテクノ番長のAndrew Weatherallが担当。テクノ、ロック、ダブ、パンク、ハウス…そこに境界線を引く事なくあらゆる音楽を一夜の内に自分のモノとして表現出来る素晴らしいDJが、CD3枚と言うボリュームに渡って繰り広げる音楽は、彼が2010年からロンドンで開催しているパーティーである「A Love From Outer Space」がコンセプトになっているそうだ。夜の11時、12時、1時と1時間毎に区切りをつけてはいますが、アッパーなテクノや沈み込むディープハウスは封印して、BMP105〜120までに抑えたロッキンでパンキッシュ、そしてディスコディックでダブな雑食性の高いプレイは、これこそWeatherallの真価と呼べるでしょう。1枚目は特にWeatherallのリミックスや制作した曲が含まれているせいか、ねちねちとした足取りながらも鉄槌で叩かれるようなグシャッとしたキックが破滅的で、途中のダークなアシッドも入ってきたりすると90年前後のインディーダンスにかかわっていた頃のサイケな空気も漂ってきます。対して2枚目は重苦しい空気も晴れたようにコズミックなディスコダブや、煌きのある奇妙なシンセ音が印象的なニューウェブやエレクトロなどで、無心になり楽天的なダンスミュージックを軽快なノリで楽しむ様な音楽が聴ける事でしょう。そして3枚目はパーティーのラスト1時間を飾るが如く昂揚感と開放感が混ざり合うドラマティックな展開が待っていて、ダンスビートを強めながら獰猛なしばきによって鼓舞されつつ、終盤では盟友であるPrimal ScreamのWeatherall Remixでふっと放心し、ラストのWeatherallがインスパイアを受けたA.R. Kaneの”A Love From Outer Space"でハッピーにパーティーは終焉を迎えます。と3時間に渡る異形のダンスでロッキンなDJ、あっと驚く様なトリッキーな技は無くとも本当にWeatherall以外に成し得ない弾けるパワーと痛快なユーモアが感じられる選曲で、3時間にもかかわらず全く飽きないどころか中毒性の高いプレイは流石です。今までにも多くのMIXCDをリリースしてきた彼ですが、これはお世辞抜きに現時点での最高傑作と言えるでしょう。

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| TECHNO9 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(1) | |
Walls - Coracle (Kompakt:KOMPAKT CD 91)
Walls - Coracle
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ドイツに於いてミニマルテクノ、アンビエントを推し進めていたKompaktも新たな局面を迎えているのか、近年はクラブミュージック以外からの影響も多く取り入れております。その一例がThe FieldやJatoma、そしてこのAlessio NataliziaとSam WillisのユニットであるWalls。クラブミュージックにクラウトロックやシューゲイザーの要素も取り込んで、折衷主義に則った行く宛も定まらない音を聴かせます。デビューアルバムから一年弱でのリリースとなる新作では、前作でのサイケデリアと憂いのある至福の音もそのままに、更に絶対的なユーフォリアが充満したポップなアルバムとなりました。しかし前作にあった視界を遮る様な重層的なサウンドやバンドらしい曲調は後退し、本作では晴れ晴れしく視界も開けたポップなアンビエントやミニマルな電子音楽が鳴っていると言う点では、逆にKomapktらしさが強まったとも言えるのでしょう。空気の様に軽やかなフニャンフニャンな電子音の浮揚感やポップなメロディーやコード感は、有無を言わさず夢に溺れる事が出来て現実から逃避するには最適なものだし、窮屈な今と言う時代に於いて只ひたすら気持ち良さを追求した音楽も必要なものなのかもしれない。アルバムの後半ではほぼアンビエント化し夢の世界へまっしぐら、前半のハッピーな盛り上がりをしっとりチル(冷やす)させてくれて快適な安眠剤となる事でしょう。

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| TECHNO9 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Trax Re-Edited : The Original Chicago House Label Reborn (Harmless:HURTCD098)
Trax Re-Edited The Original Chicago House Label Reborn
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シカゴハウスの歴史において重要な位置付けである二つのレーベル、一つはDJ International、そしてもう一つがTrax。なんでも2010年はTraxの創立25周年だったそうで、Harmless RecordsとDJhistory.comがチャット上でのその為に何か記録を残したいと言う話題が発展し、この度このTrax Re-Editedコンピレーションへと結実しました。Trax Recordsに関して言えばシカゴハウスの基礎となる音を形成したレーベルでもあり、アシッドハウス拡大に貢献したレーベルでもあり、そして音楽で一儲けしたいと淡い夢を抱いたアーティストが集結したレーベルでもあります。才能や理論に後押しされた音楽性ではなく、衝動や欲望を優先して作られたある意味一発屋みたいなアーティストも多かった。がそれでもそこにはハウスの初期衝動と可能性があったのでしょう。そんな偉大なるレーベルの音源をリエディットするのだからきっと大胆な事は出来なかったのであろうか、結論から言えばまあ予想通りでオリジナルの良さを越えられない平凡なリエディット集になっています。オリジナルの雰囲気はそのままに曲尺を伸ばしたり、ミニマルな展開でDJユースにしたりと使い勝手は良くなっているものの、25周年記念としての意味合いは正直余り無いかなと。オリジナルから遠からず的なトラックが多いので、入門者向けにシカゴハウスの歴史の道標としては意味合いがあると思います。

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| HOUSE6 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
BEST OF 2010
今年も一年間当ブログを御覧頂いた読者の皆様、どうもありがとうございました。世間では音楽が売れないだとか、アナログ文化の衰退だとか音楽業界の悲鳴が聞こえてきておりますが、決して音楽自体がつまらない物になった訳ではないと思います。ようは今までは金かけて宣伝していた物が売れていただけで、今はそのシステムが通用しなくなったので心底なファンしか買わなくなっただけなのでしょう。そんな時代だからこそ、自分の耳を信じて意識的に聴く事を、興味と探究心を持って新しい音楽を探す事を行い、受身でなく積極的に自ずから音楽を聴くようなリスナーが増えればなと思います。さてそれでは毎年恒例の年間ベストと共に、来年も良いお年を!
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| BEST | 11:30 | comments(4) | trackbacks(1) | |
Jatoma - Jatoma (Kompakt:KOMPAKT CD86)
Jatoma - Jatoma
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ドイツテクノ帝国の総本部・KompaktがThe Field、Wallsに続いて送り出す新星は、デンマークの3人組ユニットであるJatoma。なんでも平均20歳弱と言う若さだそうですが、それ以外の情報が未知な謎のユニット。The Field、Wallsらと共通するのはクラブサウンドにロックらしい演奏やノリを取り入れたと言う事で、その点では最早新鮮味は感じられないけれども、Kompaktらしいキュートでポップなサウンドやエレクトロニカ的な不思議な電子音、シューゲイザーの淡い世界など色々な要素を含んでおりただのダンスミュージックじゃあありません。彼らはAnimal CollectiveやFour Tet、James Holden、Herbertらの大ファンと公言している通り、単純な4つ内のダンスミュージックだけを披露するだけでもなく、音をこねくり回し遊んでごちゃごちゃとごった煮にしたファンタジーとユーモアの広がる童心の世界を創り上げておりました。しかしまあ浮き沈みの激しいテクノシーンの中で10年以上も繁栄しているKompakt、そんなレーベルのお眼鏡にかなうのも納得。

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| TECHNO8 | 12:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |
Aaron-Carl - Detrevolution (Wallshaker Music:WMAC-9805)
Aaron-Carl - Detrevolution
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デトロイトのベテランアーティスト・Aaron-Carlが、悪性リンパ腫と判明してから5日後の9月30日に亡くなりました。Mike Banksに才能を認められ、1996年にMike Banksが主宰していたSoul Cityからデビューを飾ると、その後はOvum Recordings、Metroplex, Subject Detroit等の実力派レーベルからも作品をリリースしておりました。近年は自身が主宰するWallshaker Musicの運営を軌道に乗せていたのですが、道半ばの37歳にして逝去と言う残念な結果に。デトロイトのアーティストらしく手に汗握るソウルフルな歌物ハウスを得意としていたAaron-Carlですが、このアルバムもその路線を進みながらもヒップホップやゲットーテック、ドラムンベース等にも挑戦し、ジャンル的には幅広く感じられます。が、基本はソウルフルでしかもボトムが太く腰に来るグルーヴィーなリズムはフロア仕様。奇を衒うよりはオーソドックスでスムースな4つ打ちをしっかりと聴かせてくれて、だからこそメランコリーな旋律も活きてくる歌心の感じられるアルバムです。何気にAaron-Carlは自分でも歌を披露するアーティストで、このアルバムでも今は亡き彼のうっとりとさせられる優しい声を聴く事が出来ます。その巨体に似合わない優しい声を聴くと、なんだかしんみりとしてしまいました。

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| HOUSE6 | 17:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
James Holden - DJ-Kicks (Studio !K7:!K7261CD)
James Holden - DJ-Kicks
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人気MIXCDシリーズ最新作になんと奇才中の奇才・James Holdenが登場。Holdenと言えばプログレッシヴハウスと言うジャンルから出発した新星ですが、ジャンルを飛び越えテクノやトランス、エレクトロニカやポストロックまでも飲み込み、James Holdenの音としか表現出来ない唯一無二の世界観を創り出すまでに成長したアーティスト。そんな彼がMIXCDを手掛ければただの4つ打ちだけが聴ける訳はなく、テクノやシューゲイザーやアシッドハウスやら…とかもうジャンルで括るのはナンセンスなHoldenとしか言えないミックスになります。特に彼が作る世界観には強烈なサイケデリアとトリップ感が満ちていて、時間軸と空間軸さえも歪めてしまうよう毒気のあるサイケデリックな音は心地良ささえも超越した狂った夢想を誘発し、薬無しでぶっ飛んだ感覚を生み出します。かと思えば突如天使の舞うノスタルジーに満ちた和やかなムードや、デカダン的な壊れ行く中から生まれる耽美な美しさが降りてきたりと、奇想天外なミックスとは正に本作の事。目も眩むほどの強烈な色彩に包まれて、身も心も昇天してしまう。

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| TECHNO8 | 10:00 | - | trackbacks(0) | |
Walls (Kompakt:KOMPAKT CD 82)
Walls
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テクノ帝国ドイツの中心的存在であるKompaktが自信を持って送り出すニューカマー・Wallsの1stアルバムは、新人らしく初々しい爽やかさとカラフルでサイケデリックな世界観を持った素晴らしい内容となりました。Kompaktからのリリースとは言えフロア直結なダンスビートは殆ど無く、むしろリズムはほぼロック風。テクノとの接点と言えば電子音と言う位なもので、フィードバックギターが炸裂するシューゲイザーロックもあればセンチメンタルなエレクトロニカもあり、果ては淡い霧靄に包まれるサイケデリックなアンビエントまで色々と取り組んでいます。しかしそのどれもに共通するのは、甘くてとろけるメロディーをカラフルでキュートかつ眩いばかりの輝きを放つ音がなぞっていて、多幸感が徹頭徹尾貫いている事。特に自分が本作に感じたのはジャーマンプログレのHarmoniaやNue!にも通じる楽天的な突き抜けるヒッピー思想で、何物にも縛られないその独創性はKompaktのレーベルの方向性と同じなのかもしれない。8曲で30分程とコンパクトにまとめられたこのアルバムは、何度もリピートしてしまう程に清々しい心地良さに満ち溢れていて、そして自然と幸せな気持ちになれる事でしょう。ここには不安も悲しみも無い総天然色ハッピーな世界が待ちわびていたのでした。最近の大推薦盤、Animal Collective、The Field辺りのファンは必聴。

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| ETC(MUSIC)3 | 06:00 | comments(5) | trackbacks(0) | |
Santiago Salazar - Your Club Went Hollywood (Wallshaker Music:WMAC32)
Santiago Salazar - Your Club Went Hollywood

Los HermanosやIcanの一員として活躍しているデトロイトのDJ S2ことSantiago Salazarの新作。Ican名義ではラテン色の強いアッパーなハウスを量産しておりますが、ソロ名義だとラテン色の無いテクノ/ハウスが多く、本作も夜の帳が下りる時間のムーディーなハウス、そう色気のあるデトロイトハウスを披露しております。スポークンワードを挿入し、そしてメランコリックなシンセラインが耳に優しく残るアダルティーかつセクシーな一曲で、踊って騒いで聴くのではなくお酒を片手に愛を語らいながら聴きたい感じですかね。B面は同じくデトロイトからAaron Carlがリミックスを提供していて、こちらはがっつり踊れる4つ打ち仕様。オリジナルのムーディーな雰囲気を大事にしながらも、リズムが太くグルーヴィーな流れになっていてフロアで使うなら断然こちら。微妙にシンセサウンドも付け加えられていて程良く派手目になっているので、ピークタイムでも盛り上がりそうな感じですね。そして何故か異様に短いアカペラも収録されておりますが、使い道は謎。

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| HOUSE5 | 00:30 | comments(0) | trackbacks(0) | |
The Kings Of House Compiled By Masters At Work (Rapster Records:RR0045CD)
The Kings Of House Compiled By Masters At Work
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長らくNYハウスミュージックの歴史を切り開いてきたMasters At Workが、ハウスミュージックを根こそぎ掘り下げたMIXCDが本作。最近のハウスはほぼ皆無、なのでまあこれに食い付くリスナーはだいたい30歳以上とかのクラバーが多いんじゃないかと。Kenny Dope Gonzalezはシカゴ〜デトロイト、Little Louie Vegaはシカゴ〜ニューヨークのハウスを中心にガチなオールドスクールっぷりを発揮。80年代のトラックが多めでやっぱり音自体は古いと言うか時代を感じるし、最近の綺麗目でお洒落かつ洗練されたハウスに慣れている人は、こんな昔のハウスを聴いてどう感じるのだろうか。確かにここら辺の80年代のトラックは素人臭さの残る未完成な部分もあったりするんだけど、それでも何かが生まれる胎動や衝動も確かに存在している。技術や知識よりも勢いや気持ちが前に出ていて、とにかくハウスが爆発しようとしていたその瞬間の空気がここにはあるんじゃなかろうか。特にKenny Dopeの方はシカゴアシッドとかデトロイトのクラシックがたんまりと使用されていて、デトロイトファンとしは血が騒ぐってもんです。最初期のハウスの歴史を知る為の教典として、そして昔を懐かしむためのアーカイブとしても良さそうです。

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| HOUSE4 | 00:30 | comments(0) | trackbacks(1) | |
Trax Records The 20th Anniversary Edition Mixed By Maurice Joshua & Paul Johnson (Trax Records:CTXCD5001)
Trax Records The 20th Anniversary Edition Mixed By Maurice Joshua & Paul Johnson
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取り合えず本日で一旦シカゴハウス特集は終わり。最後はシカゴハウスにおいて最も重要な二つのレーベルの内の一つ・Trax Recordsについて。自分は勿論Trax Recordsが設立された当時(84〜85年?)はまだお子ちゃまな訳で当時の状況に関しては詳しく知らないのですが、Larry Shermanによるレーベル運営に関しては相当酷いもんだったらしいです。レコードの売り上げに対しての対価を払わないだとか(Larry Heardはその事のうんざりして自分のレーベルを立ち上げた)、最も有名な酷いエピソードはレコードプレスには材料費がかかるので、売れ残ったレコードを買い集めてそれを再プレスし販売していた(だからTrax Recordsのレコードの音は悪いそうです)とか、とにかく無茶しまくり。それにやたらめったら何でもかんでもリリースしていたから、音楽の質にもばらつきがあって決して優良なレーベルであるかと言うとそうでもないんです。それでもAdonis、Phuture、Joey Beltram、Larry Heard、Marshall Jefferson、Vincent Lawrence、Sleezy D、Frankie Knuckles、Armando、Farley Jackmaster Funkを含め多くの素晴らしいアーティスト達がここを経由して行った事を考えると、やはりシカゴハウスだけに限らずハウスと言う音楽においてとても重要な存在であった事は否定出来ません。

さて前置きはそれ位にしてそんなTrax Recordsの20周年記念盤が本作。1、2枚目はMaurice JoshuaとPaul JohnsonがTrax音源を使用しミックスを施していて、3枚目はアンミックスのコンピレーションとなっております。チープでファンキーなシカゴハウスや毒々しいアシッドハウス、そしてディスコな歌物までTraxの魅力が満載で、80年代のハウスの流れを知るには十分過ぎる内容となっております。音楽としての完成度は決して高い訳じゃないから聴く者を選ぶ感じなんだけど、ハウスについて掘り下げようと思うなら決して避けては通れないですね。

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| HOUSE4 | 21:15 | comments(6) | trackbacks(1) | |
Larry Heard - Can You Feel It Trax Classics (Nippon Crown:CRCL-2004)
Larry Heard-Can You Feel It Trax Classics
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今まで行こう行こうと思いつつ見逃していたLarry HeardのDJプレイ。今週末Yellowに降臨するので今回はまじで行かなくてはと、心の奥底で燃えてます。多分DJが上手い人ではないと思う。と言うよりも彼は一アーティストであり僕は彼の雰囲気に、心に抱かれたいだけなのです。彼の作り出す音楽はハートフルでありハウスだとかクラブミュージックだとか、そんな事はどうでも良くなる位暖かみがあり心に残るものです。きっと彼のDJだってそんな風に優しい空気に満ちたものに違いないと勝手に想像し、期待は高まるばかりです。「Can You Feel It」(感じる事が出来るかい?)、僕らはそれを感じる事が出来るのだろうか?それとはその場に居なくては感じる事が出来ない物。彼と同じ場所、同じ時間を共有してこそ感じる事が出来る物。かつてはアンビエントハウスなんて死語で語られる「Can You Feel It」だが、これこそ真のディープハウスである。淡々と鳴り続けるTR-707のリズムトラックに、どこまでも切なくて限りなく哀愁を感じさせるシンセメロディーのシンプルな二つの組み合わせによって、世界中のハウスファンどころかクラバーを熱狂させ心震わせたハウス史上の名曲です。この曲が出来てからもう20年近く経とうとしているのに、彼の音楽に打ち込む熱意は変わらずに昔以上に今の曲は輝いている。彼は多くは語らない、何故ならば彼の音楽が全てを語っているからです。「Can You Feel It」はインスト、歌詞有りを含め4バージョン存在していますが、インストバージョンこそ彼の音楽性を語っていると僕は思います。

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| HOUSE1 | 21:00 | comments(0) | trackbacks(2) | |
Carl Craig - The Workout (React:REACTCD227)
Carl Craig-The Workout
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デトロイトテクノの発展の中心となっていたCarl Craigはアーティストとして超一流だと思います。でも昔のDJMIXを聴くとしょぼ〜って感じで、実際生でDJを聴いた時もあんまり興奮しなかった記憶があります。そんな彼も最近はなかなかのプレイをするようになったと、このMIXCDを聴いて思いました。2枚組、どこをとってもデトロイト。と言っても結構ハウスよりなMIXで、丁寧で大人しめ、部屋でまったり聴く感じです。お薦めは2枚目の方で、開始からNewworldaquarium→Terry Brookes→Soul Designer(Fabrice Lig)の繋がりは格好いいですね。Niko Marks、Urban Culture(Carl Craig)、Aardvarckとかその他もろもろデトロイト風味の曲が使われていてジャジー、テクノ、ハウスを上手く使い分けています。テンションを上げずにミドルテンポでムーディーで良い感じだけど、Carlが凄いって言うか選曲が良いだけなんだろう。いや、それでもデトロイト好きな人にはよだれが出る選曲に違いない。Carlが本気になったせいか曲毎の頭出しは無し、最初から最後までノンストップで聴くしかない。入門編の為にも、頭出し位はつけてやれよと思いました。発売元のレーベルは倒産済みなので、見かけたら早めに購入するのが吉でしょう。

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| HOUSE1 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) | |